私たちSUZU GROUPは『UPDATE OUR LOCAL』というテーマのもと、地域の食の魅力を通じて地域循環やまちづくりを創造する、新潟発の地域デザインカンパニーです。
一軒の飲食店から始まった会社ですが、現在は「プロデュース事業」「店舗事業」「観光事業」「食品事業」「教育事業」「お弁当・ケータリング事業」と、6つの事業を展開しており、その全てに『地域の食』というキーワードで繋がっています。
今回のストーリーでは、私たちが行っている教育事業について、取り組みの理由や『地域の食』とのつながり、事業を通じて伝えたい想いを、過去に実施した事例とともにご紹介します。
1、食を通して地域そのものを見つめる
人の暮らしと密接した「食」。今や“食育”という言葉が浸透し、教育のジャンルの一つとして確立していますが、食を通じた教育は古くから私たちの日常の中に組み込まれており、現代においても食をキーワードに学びとれることは多岐にわたると考えています。
私たちが軸としている『地域の食』は、それを深掘りすることにより、その土地にある文化や風土を学び、それを活用することにつながっていきます。
食を通して地域そのものを見つめることで、現代社会を取り巻くフードロス、食のサプライチェーン化、福祉、高齢化といった様々な課題までが見えてくる。
また、「その課題をどう捉えるか」「見つけた魅力をどう伝えるか」といった視点は、コミュニケーション能力・編集力・経営学といったにもつながると考えています。
飲食店を営みながら、様々な地域課題や人材育成について俯瞰的に捉えて実践してきた経験から、私たちだからできる教育を実践しています。
2、多角的な視点を養う体験型の教育
私たちが『地域の食』と同様に大切にしているのが『体験すること』です。
実際に見る、触れる、香る、味わう、感じる、考えるといった、机上だけでは想像できないものを組み込むことで、体験型の教育を実践しています。
できれば直接、畑や蔵などへ出向き、作り手の想いや考えを直接聞く機会を作ります。(それができなければ、教室にお招きして実際にお話を伺ったり、事前に現場へ足を運びお話を伺ったり、可能な限りでリアルな現場の声をお伝えするようにしています。)
例えば、一次産業について。世間ではよく「食べることで応援」と謳われることがあります。
もちろん、食べることや知ることは大きな応援になると思っています。ですが、私たちはそれ以上に実際に現場に行って五感で感じ、「気づくこと」をして欲しいと考えています。
畑や生産の場に行くことは、現状に触れるだけでなく「どんな方法で栽培されているのか」「なぜその方法なのか」「どんな対策をしているのか」「どうしてそれが課題なのか」といった課題の裏にある歴史や環境の全体を見て、さまざまな情報を得ることができます。
“応援の気持ちで食べている食材”がどのような場所でどうやって育てられているか知ることで、もしかしたら他のアクションで応援することができるかもしれない。他のところにある課題を見つけるかもしれない。
体験することは、物事の表面だけを見るのではなく、全体を捉えることにつながると考えています。実際に足を運び体験することで、物事を多角的に捉える教育を目指しています。
3、物事を俯瞰し、組み立てる力を育てる
ここで言うデザインとは、【物事を通じてどう捉えるか】という考え方のことです。
飲食店の現場にいても、「これとこれがどう組み合わさると良い(おいしい)か」「どう伝えたらこの魅力が伝わるか」と考えることがたくさんあります。
組み合わせ方・繋げ方・伝え方を磨くことが必要で、少しの視点の違いや考え方の違いで、結果の質が上がり、面白さが出てくるのだと思っています。
さまざまなことを俯瞰的に捉え、一つ一つを組み立てるような考え方。
同時多発的に様々な問題が起こる現代社会において、この力が必要になると考えています。
私たちの教育事業もなるべく型にはまることはせず、ご依頼いただく際の要望やイメージ、参加される方の表情やアイデアといった要素をもとに、できるだけ自由で多くの目線から学ぶ時間を作りたいと思っています。
ここからは、実際にお受けした授業や講演についてをご紹介します。
事例①学校教育(小学生):食を通じて子どもたちへ地域の魅力を伝える
県内の小・中・大学からの依頼を受け、特別講師としての授業を実施しています。
地元の会社としての職業講話やメニュー開発をすることあり、学生主体の企画のフォローとしての参加をいただくこともあります。
その中の一例として、授業を通してお弁当の開発を依頼された際のプログラムをご紹介します。
【1. 調査】
畑や蔵へ行き地域や産地の特徴、生産者のこだわりとその想いを直接聞く。
【2. 考察】
産地の強みや現状の地域課題などを精査し、様々な視点から考察する。
【3. 提案】
強みや課題に対してどうあるべきかを考え、ディスカッションし提案する。
【4. 開発】
お弁当などのメニューや商品名を考案。宣伝コピーの作成など広報も行う。
【5. 販売】
店頭で商品を販売し接客を体験。お客様の生の声を聞く。
対象は小学生で、『地場の名産品・名物を使ったお弁当を開発したい』とのことでした。
当初の目的を達成したのはもちろんなのですが、この授業を通して、生徒さんたちの目指すお弁当が「おいしいお弁当」ではなく、「この地域だから作れるお弁当」「こうやって作られた野菜を使う」というものに変わりました。
初めて知る・触れることも多い中、子供たちは一つ一つのテーマに真っ直ぐ取り組んでくれ、メニューを考える際は純粋に楽しんでいる姿も見られました。
食という身近なものを通して地域を俯瞰的に見ることで、教育を通して地域の魅力を伝えることができたと感じています。
事例②企業研修(飲食店企業):商業主義ではなく、地域とつながる視点をプログラムに
全国チェーンの飲食店企業様から【地方出店を目指す中で、地域とコミットするための研修】というテーマで社員研修(一泊二日)のご依頼をいただきました。
地域と連携した地域づくりができる飲食店の取り組みや考え方をお伝えできるよう、以下のプログラムを組みました。
【1日目】
Niigata food campus SUZUVEL&TABI BAR(新潟市)→新潟市内の酒造さんを訪問→長岡市内の農家さんを訪ね、収穫体験→HAKKO HOUSE NAGAOKA(長岡市)→収穫した伝統野菜を使って調理体験&ご夕食→ご宿泊
【2日目】
長岡市内の老舗だんご屋さんを訪問→摂田屋エリアをアテンド・県内最古の酒蔵を訪問→おむすびと汁と茶 6SUBI(摂田屋)&ランチ→SUZUDELI(千秋)→SUZU365(下々条)→ミライエ長岡
他ジャンルを運営している自店舗では、店舗ごとに存在するコンセプトや取り組みをご紹介。その他にも同じエリアで活動している農家さんや生産者さんと連携し、可能な限り体験を盛り込んだツアーを実施しました。
首都圏でよくあるような商業主義の考え方ではなく、コミュニティ・地域連携といった目に見えない部分を知っていただくことで、地域と企業相互に良い事業を知るきっかけづくりになれば、という狙いがありました。
飲食店以外のさまざまな場所にある現状や課題に触れ、地域側の視点になっていただくことで、参加者の方々の受け取り方や考えが少しずつ変わっていったことを感じました。
地方ならではの魅力はもちろん、課題を含めた生の声についても触れていただく機会を作ることで、地域全体とつながる視点づくりができたと思っています。
ちなみに、今回の研修は大変好評だったそうで、次年度の予算にも組み込むことが決まっているとご連絡いただきました。
事例③社内研修(当社):フィールドワークから新たな発想を得る
当社では、新入社員と中堅社員(入社3年目以降)に向けて社内研修を実施しています。その他にも、不定期で希望者が参加する勉強会を積極的に開催しています。
もちろん会社への理解や自身の仕事を振り返り、スキルを磨くといった意味もありますが、研修で予定されている時間のほとんどが「フィールドワーク」です。
日頃からお世話になっている農家さんを訪問し、見学や収穫体験をさせていただく。生産者さんを講師としてお招きし、お話を伺うなど。
普段の業務内で触れているものの背景や作り手の想いを聞くことで、見えているもの以上のものをキャッチし、自身で考え、今後に活かしていく作業をして欲しいと考えています。
フィールドワークの後は振り返りの作業としてアウトプットすることを大切にしています。自由な発想と率直な感想を交換することで、また新しい視点や考えを得ることができる。
当たり前のようですが、それを深掘りする機会を作ることで、体験を一人ひとりのものとして磨き上げるところまでを研修としています。
一人ひとりが『気づく』きっかけを。教育事業で目指す豊かな未来
私たちは、地域に根ざした地域づくり企業として、多くの方と出会い、たくさんの魅力や面白さ、課題や困難に触れてきました。
まだまだ、新たに見つけるもの・知ることもたくさんあります。その全てが考えるきっかけであり、私たちが動く理由です。
私たちの教育事業は、子ども・学生から企業まで、一人ひとりが「気づく」きっかけを作るための事業として取り組んでいます。
・俯瞰力(見る力)
・創造力(デザイン的思考)
・主体性(自分の意志)
・行動力(飛び込む力)
・継続力(やり続ける力)
これらは、私たちの考える【これからの社会に必要な力】です。
地域の食を軸に社会全体に何かのきっかけを創り、みんながうれしい豊かな未来の創造につなげていきたいと思います。
(関連リンク)
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