シンプル路線の「最近のホンダ車」デザインはちょっと物足りない! 黄金時代のような「個性ありき」のシンプルさがほしい

2024.08.27 11:40
この記事をまとめると
■1世代前のホンダ車は過剰なラインや派手なディテールが目立った
■最近の新車ではシンプルな路線にシフトしている
■シンプルなデザインは評価されている一方で「どれも同じに見える」という弊害が出ている
シンプルイズベスト? ホンダのデザインを検証
  最近のホンダ車はシンプルでクリーンなスタイリングを展開していますが、新型N-BOXやステップワゴンの販売状況がイマイチなのは、そのシンプルなデザインが原因だ、といった声が聞かれます。果たしてそれはホントなのでしょうか? 今回はあらためて最近のホンダデザインを検証してみたいと思います。
●大きく舵を切ったシンプル&クリーンデザイン
  恐らくですが、最近のホンダデザインのシンプル指向は従前への反動がその理由と思われます。1世代前のホンダ車は、過剰なラインや派手なディテールなどにより、かなり煩雑なスタイリングでした。もちろん、そこにはホンダらしい「元気さ」「快活さ」を表現する意図があったワケですが、いささか表面的に過ぎたかと……。
  そこで、より本質的なスタイリングへ舵を切ったのが現在のホンダデザインなのです。
  コンパクトなボディで、視界のよさと居住性の高さを最大限に表現したフィット。初代の「箱」イメージを現代風に再解釈、面の美しさを打ち出したステップワゴン。初代の道具感、2代目の乗用車感に続き、身近な雑貨感を打ち出したN-BOX。新しいHVの滑らかな走りや使い勝手のよさを素直に表現したフリード。
  こうした志の高いデザイン開発については筆者も賛同しており、今後も期待大。ただ、「最近のシンプルデザインは退屈だ」「販売不振の原因はデザインでは?」という声にも一定の理解はできるのです。それは一体どういうことなのでしょうか?
●新しさと個性にあふれていたホンダデザイン
  わかりやすいのは、ホンダデザインの黄金期と呼ばれた80~90年代を振り返ってみることでしょう。
  初代のトゥデイやシティ、ワンダーシビック(3代目)、リトラクタブルランプのクイント・インテグラにアコード、そしてビート。もはや解説不要ですが、どのクルマも圧倒的な個性と独創性、そして強いキャラクターを持った名車たちです。で、肝心なのは、どれも余計な線や飾りのないシンプル&クリーンなデザインだったことです。
  つまり、シンプルなデザイン自体が目的なのではなく、いかに新しくて個性的なクルマを作り出すかが最初にあって、それをシンプルにまとめることは当然のことだったのです。そこに現在のホンダ車との違いがあるのではないでしょうか。
どれも同じに見えるという声が……
●シンプルデザインを目指すライバルメーカー
  皮肉なことに、それを実践しているのがライバルのトヨタです。
  やはり、一世代前は複雑なラインや派手な造形で「目立つ」ことばかりを優先していましたが、最近のシエンタ、ランクル250、プリウス、レクサスLBXなど、どれもがシンプルな造形でまとめられ、同時に明快な個性が与えられています。
  たとえば、シエンタとフリードの比較が好例でしょう。シエンタは、某イタリア車そっくり? という一部の声を別にすれば(笑)、TVCMの愛犬のようなカジュアルで愛らしい要素を散りばめながら、最終的にはシンプルにまとめられています。つまりキャラクターが立っているし、自由で伸び伸びしているのです。
  一方のフリードは、少々煩雑だった先代の面や線を整理し、後席の視界など使い勝手のよさを目指しましたが、「キレイに整える」ことが優先され、フリードとしての個性や新しさがパッと見わかりにくい。また、シエンタのような明るさや自由さもチョット足りないのです。
  ただ、初代の「箱」を極めるため独自の面質を獲得したステップワゴンや、3代目としてのテーマを明快にしたN-BOXには相応の新しさが感じられます。しかし、多くのユーザーにはどれも「最近のホンダ車」として括られてしまうワケです。
  それでも現在のホンダデザインのクオリティが高いことに変わりはなく、志の高さでは国内随一かもしれません。あとは「やっぱりホンダはほかと違うね」という新しさが加われば完璧なはずなのです。

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