富士山を背景にしたコンビニが観光スポットとして注目を集めた「富士山ローソン」。地元の人々にとって日常の風景が、インバウンドを呼び込む観光資源となったこのニュースに驚きを覚えた方も多かったのではないでしょうか。「地方観光AR」は、「ARによる観光体験のアップデート」を目指したサービスです。AR技術を用いることで、見慣れた街並みが魅力的な観光コンテンツに生まれ変ります。
【地方観光AR】
)は、佐賀県鳥栖市に本社を置き、地域の選択肢をプロジェクトで創造するをミッションにする企業。「だれもが主役であり応援者である社会」の実現に向けて、地方の中小企業のマーケティングやPR、資金調達等を進めるとともに、産学官連携のプロジェクト創出にも挑戦しています。
今年1月から3月にかけて実施した「ARミライナビ基山プロジェクト」では、地元高校生と協力し、基山町の商店街にAR作品を設置しました。このストーリーでは、プロジェクトを通じて誕生した「地方観光AR」の開発秘話についてお届けします。
地元愛が繋いだ高校生と企業の協力。「ARミライナビ基山プロジェクト」始動
きっかけは基山町に在住する橋本(株式会社JICU)と東明館高校の山元先生に親交があったことでした。2人は東明館高校の探求学習を通したまちおこしプロジェクト(通称「基山プロジェクト」)の一環として、高校生にスタートアップとの交流や先端技術を活用したまちおこしを出来ないか、と考えました。
そんな中、橋本が声をかけた株式会社palanが活動理念に深く共感し、高校生たちにARツールの無償提供や授業の実施を申し出てくれました。
橋本 基山町に恩返しがしたい。町が元気になってほしい。
山元 基山町をもっと好きになってほしい。生徒たちに様々な体験をしてほしい。
齋藤(株式会社palan) 未来の技術的ARを身近に感じてほしい。
三者の想いが一つになった「ARミライナビ基山プロジェクト」はこうして誕生しました。さらに地元のメンバーを中心に様々な方がボランティアでの活動を申し出てくれ、少しづつ支援の輪も広がっていきました。
ARで何ができるの?
ARとは、「Augmented Reality」の略で、日本語では「拡張現実」と訳されます。デバイス(ARスマートグラスやスマートフォンなど)画面上の現実に、現実には存在しないデジタルコンテンツ(動画や画像、3Dキャラクターなど)を表示することで、現実を拡張する技術のことです。
この技術を活用することで、基山町の各商店の特徴や特性を活かしながら、ARでコンテンツを加えていけば、より魅力的な町づくりができる。私たちはそう考えました。
さらに、プロジェクトを進める中で大きな夢もできました。基山町のDX化を若い力で推進するだけでなく、地元の産業や商店、古くから残った景観や街並みを大切にし、基山町に関わるすべての人が誇りに思える「新しいけど懐かしいミライのまち、基山町」を実現する、という夢です。
ARをどう使えばいい?広報するお金もない!!
地方でのAR活用事例はまだ少なく、試行錯誤の連続でした。高校生はもちろん、プロジェクトに関わるメンバーの多くがARに初めて触れる状況。そのため、当社と共に株式会社palanの伴走を得ながら、全員でARについて学び、理解を深めていきました。
そして、高校生たちは自らAR作品を作りたい商店に連絡し、実際に訪問して課題のヒアリングを行いました。作品は商店と協力して作り上げていきました。
しかしここで問題が発生。資金がないのです。これではせっかく高校生が頑張って素敵な作品を作っても、QRコード付きのポスターを各店舗に貼ることも、プロモーションも何もできない。そこで、クラウドファンディングに挑戦することにしました。その結果、多くの人々が支援してくれることとなり、見事目標金額を達成しました。
QRコードで簡単アクセス!基山町の魅力を引き出すAR作
AR作品は株式会社palanのプラットフォームを利用し、高校生がノーコードで開発しました。作品を閲覧するのに必要なのはスマートフォンのみ。アプリのインストールは不要で、各店舗に設置されたQRコードを読み取るだけでAR作品にアクセスできます。
利用者は、スマートフォンを通してお店の外観や内装、商品などを実際に見ながら、高校生が付加したストーリーや情報を楽しむことができます。さらに、ARマップを通じて全てのAR作品が一覧化されているので、利用者は各店舗を回遊する楽しみもあります。
◆ 実際に実装したARをご紹介します。
駅を出るとキャラクターが基山の名所(大興善寺/基肄城跡)を案内する機能
店内を歩くと各所でおみくじが表示されクーポン件が受け取れる機能
「ARミライナビ基山プロジェクト」の成功と反響。実感した地方×ARのポテンシャル
「ARミライナビ基山プロジェクト」は、予想以上の反響を呼びました。平日にもかかわらず、200名近くの観客が成果発表会に訪れ、高校生たちの発表に熱心に耳を傾けました。
また、商店街にも変化がありました。商店街一面に「観光AR」のぼりを並べ、小さい規模の田舎の方々が「AR」という単語を口にするようになったのです。
そして、プロジェクトを通して「地方観光AR」のポテンシャルにも気付かされました。
滞在時間が長くなり、接客価値も高まる
店頭で AR を試す際、店員と自然な流れで会話が生まれます。アイデア無限大
仮想現実のため、物理の制約がなく無限大のアイデアを実現できます。デジタルへの抵抗感の払拭
店舗スタッフも試しながら顧客と会話することで、デジタルを身近に感じられます。導入が身軽
店舗はQR コードを設置するだけでOK。
設備投資や IT ツールが不要で少ない負担で導入できます。
「地方観光AR」サービスの展望
「ARミライナビ基山プロジェクト」は、技術革新と地域愛が融合した、新しい地方創生の形と言えるのではないでしょうか。見慣れた風景が最新のAR技術によって魅力的な観光資源に生まれ変わる。そして、その過程で地域の若者たちが成長し、地元への愛着を深める。このプロジェクトは、日本の多くの地方にとって希望の光になる、と私たちは信じています。
地方自治体が観光プロモーションを行う際、人材の確保やイベント人件費の高さがハードルとなり、インバウンド需要の取り込みに苦戦している現状があります。
AIによる多言語対応やARによるガイドの実現で、人手不足の問題を解決しながら、新たな付加価値を創出し、ユニークな観光体験を実現していきたい。人的・物的資源に限りがある地方だからこそ、創意と工夫で無限の可能性を生み出せるARを活用し、多くの観光客をもてなし、その地方で生活する人々の笑顔を作りたい。さらに、「地方観光AR」を通じて、東京など大都市に出ていった若者たちが、最新技術に溢れた自分の故郷を誇りに思い、Uターンしたくなるような魅力的な地域づくりを目指しています。
一緒に地方を、日本を盛り上げませんか?
当社は今後もARなど、新しい技術を活用した地方創生プロジェクトを全国へ展開していく予定です。自治体、商業施設、観光施設、商店街、ホテルなど、地域の観光エリアや商業エリアを活用して、新たな来場体験を共創してくれるパートナーを広く募集しています。地方の様々な社会課題の解決と、地域の明るいニュースの発信を通じて、持続可能な地域づくりに貢献していきたいと考えています。
最新技術の力で地域の魅力を引き出し、そこに暮らす人々の誇りを高める。それが、株式会社JICUが目指す「だれもが主役であり応援者である社会」の実現につながると信じています。
私たちと共に、地方を、日本を、一緒に盛り上げていきませんか?