宇宙業界未経験の女性たちが、人工衛星打ち上げへ~女性中心の宇宙コミュニティ「コスモ女子アマチュア無線クラブ」の道程~

2024.08.02 14:00
コスモ女子アマチュア無線クラブとは
「コスモ女子アマチュア無線クラブ」は、宇宙業界で活躍したい女性中心の宇宙コミュニティ「コスモ女子」から、独立・発足したコミュニティです。
「コスモ女子アマチュア無線クラブ」は、日本時間2024年8月4日に人工衛星の打ち上げ予定です。
 2024年4月15日にJAXAへ人工衛星を引き渡し


「コスモ女子」は、「宇宙業界のキャリアを身近にする」をテーマに、宇宙業界で働きたい女性へのキャリア支援、勉強会の開催などを行っています。「コスモ女子アマチュア無線クラブ」は、コスモ女子の部活動から始まり、人工衛星打ち上げに特化した団体です。
宇宙開発の経験のない女性が主体で人工衛星を打ち上げることで「宇宙は誰でもチャレンジできる」ことを伝えたいという思いで活動しています。


宇宙開発は、最先端の技術を持つ企業や大学が主体となって進められており、コミュニティが主体となって人工衛星を打ち上げるケースは日本はもとより、世界でもあまり例がありません。民間で、しかも未経験の女性が中心のコミュニティが人工衛星を打ち上げるのは日本では初のことです。

なぜ人工衛星を打ち上げようと思ったのか、打ち上げまでの経緯をコスモ女子副代表かつ、人工衛星打ち上げプロジェクトのプロジェクトマネージャーとして初期から関わってきた塔本愛(とのもとあい)さんに話を聞きました。
 コスモ女子副代表、人工衛星プロジェクトマネージャー 塔本愛(とのもとあい)
なぜ未経験から人工衛星を打ち上げようと思ったのですか?
子供の頃から宇宙が大好きで、大学時代には専攻とは別で、高度30km上空からの地球の姿を撮影する「バルーンサットプロジェクト」に関わっていました。
就職してからは宇宙から離れていましたが、2020年にコスモ女子代表のゆかさんから、コスモ女子を立ち上げるという話を聞き、改めて宇宙業界に関わりたいと、コスモ女子に参加しました。


最初はコスモ女子のイベントや勉強会に全て参加し、新しいプロジェクトの立ち上げに関わっていました。その中で、新しい事に挑戦すればするほど、このコスモ女子という場と、同じ熱量で活動するメンバーとなら、より大きな事に挑戦できるという想いが強くなりました。もっと大きな事に挑戦したい。そしてその姿を通して、挑戦することの面白さや、宇宙の魅力をより多くの人に知ってもらいたい。そんな私達にとって一番の挑戦は何か、と議論を交わす中で芽生えたのが、人工衛星の打ち上げでした。


私達のような知識も経験もない、民間のコミュニティが、本当に人工衛星を打ち上げることができるのか、最初は不安もありました。ですが、民間企業の打ち上げや、学生の打上げといった先行事例を知るにつれて、「努力すればできるかもしれない」という希望を持つようになりました。

そこからは、メンバー探しと、協力者を見つけることに注力しました。人工衛星打ち上げに興味を持つ方や、通信技術に明るい方など、様々なバックグラウンドを持つ方がメンバーに加わりました。また、コスモ女子の運営会社である株式会社Kanattaの井口恵社長からも、人工衛星の打ち上げについて応援をしていただける事となり、宇宙業界の協力者を紹介いただきました。
そうして、人工衛星打ち上げまで道のりが見えたところで、「コスモ女子アマチュア無線クラブ」として独立し、本格的に動き出しました。これが2022年5月のことです。
 コスモ女子アマチュア無線クラブの人工衛星Emma(エマ)
人工衛星打ち上げにあたって大変だったことはなんですか?
人工衛星打ち上げプロジェクトでは、大きく2つの面で苦労しました。
1つ目は人工衛星打ち上げに関する知識や経験をもっているメンバーがいなかったことです。「ミッションとは何か」、「どこに何を申請すべきか」といった所から分かっておらず、宇宙業界の方々に指導を仰ぎながら進めていました。何が必要かが分かった後も、「やりたいことと、できることとの現実のギャップ」はなかなか埋めるのが大変で、何度も議論を繰り返しました。

2つ目は、コスモ女子のメンバーが基本的に仕事や学校に通いながら活動していることです。すべてが初めてのことで想定よりも時間がかかり、デッドラインが迫っていることも多くありました。そのため、両立が難しくなりこんなにハードな生活を続けられないというメンバーも出てきました。しかし、その中でチームワークを学び、協力しながら進めることや、一人に集中しないよう調整することも学びました。
人工衛星打ち上げプロジェクトを通して得たものはなんですか?
私達のこれまでの道のりは、色々な障害がありました。だからこそ、3つの大切なものが手に入ったと感じています。

1つ目は宇宙業界とのつながりができたことです。最初は誰に聞けばいいのかも手探りだったため、人工衛星について詳しそうな人や団体を調べて連絡し、お話を伺いました。また、色々な宇宙関係のイベントに参加したり、自分たちでイベントを企画したり、宇宙科学技術連合講演会という学会で発表したりしました。


最初はどこまで本気なのか、遊びでやっているんじゃないかと見られることもありました。ですが宇宙業界の方や、宇宙に興味がある人たちと繋がる中で、私達がチャレンジすればするほど私達の真剣さが伝わり、たくさんの方に応援や協力いただけるようになりました。今ではコスモ女子として講演依頼をいただくことも増え、本当にありがたい限りです。
   国際会議「7th Global Moon Village Workshop & Symposium」に登壇



2つ目は、プロジェクトでの経験を通して、コスモ女子メンバーの自己実現につながっていることです。私達は、コミュニティでの活動を通して、宇宙業界で活躍する人を増やしたいと考えています。宇宙業界の方々とのつながりを通して、コスモ女子で力をつけて、宇宙関連企業に転職したり、業務委託が決まったメンバーも10人を超えてきました。


例えば、宇宙飛行士を目指す娘さんの宇宙服を作りたいとコスモ女子に入会し、コスモ女子の活動を通して、宇宙業界の仕事に就かれたかたもいらっしゃいます。


3つ目はコスモ女子メンバーや、コスモ女子を応援してくださっている方々とのチームワークが生まれたことです。会社以外でこれだけ集中して一緒に作業できる人々が集まるのは、強い意志と情熱を持っているからだと感じています。協力し合い、刺激を与えあう関係を築き、活動できていることがとても面白いです。
専門家の方々もとても協力的で、熱意を伝えることで協力者が現れることを実感しました。
8月4日に人工衛星の打ち上げです。今後の展望は?
約4年間のみんなの想いの詰まった人工衛星がついに打ち上がると思うと、とても感慨深いです。これまで一緒にプロジェクトを進めてきたコスモ女子メンバーと、アメリカ現地で打ち上げを見届けます。オンラインでも配信予定ですので、たくさんの方と体験を共有できることがとても楽しみです。

最近では、私達の人工衛星打ち上げへの取り組みを知って、宇宙に興味をもったと、問い合わせや入会される方も増えてきました。宇宙に興味を持つ人を増やし、その一歩を踏み出すきっかけになれたらと思って続けてきた活動が、身を結び始めていることが実感できてとても嬉しいです。


コスモ女子を宇宙業界最大のコミュニティにして、宇宙関連企業にコスモ女子が1人はいる状態をつくりたいです。宇宙業界での女性の割合は2割以下と言われています。コスモ女子の活動を通して活躍する女性を増やし、宇宙業界全体の発展にも貢献できればと考えています。宇宙に興味を持つ人を増やし、仕事として宇宙にかかわる人が増えるよう、今後もチャレンジし続け、宇宙の魅力や面白さを発信していきます。


私達が歩んできたプロジェクトの軌跡については、
でもまとめています。私達と想いを共有し、一緒に頑張りたい方や、応援いただける方は、どうぞお声がけください。
コスモ女子が所有する地上局のアンテナ

あわせて読みたい

社会と戦う女性たちを描いた映画5選!
Safari Online
ホリエモンがプロデュース 寄付27億円を集めた北海道「人口5000人の町」でフェス開催
ITmedia ビジネスオンライン
大学生と共にパラスポーツの魅力を伝えていく共創プログラム「パラスポデザインカレッジ」が4期生の募集を開始!
ラブすぽ
【イベント開催報告】9/23(月)コスモ女子による人工衛星打ち上げ成功記念パーティーが大盛況で終了!
ラブすぽ
ドローンと宇宙で描く新たな未来——女性たちの可能性を広げるコミュニティの軌跡
PR TIMES STORY
世界も驚いた「日本人宇宙好き女子」の衛星打上げ
東洋経済オンライン
2040年には「1兆ドル超」の市場規模に…日本の「宇宙開発」はどれだけ進んでいる?専門家が解説
TOKYO FM+
1億個が時速2万5千キロで浮遊…宇宙ゴミ(スペースデブリ)の脅威と地球規模の対策とは?
@Living
【日本初の挑戦】宇宙バイオ実験で未来を創る、未来への貢献はあなたの支援が鍵に!
CAMPFIRE
人工衛星での「宇宙撮影体験」ラストチャンス! 参加登録を本日より受付開始!!
PR TIMES
Gen1es初来日! 唯一の日本人メンバー・RUAN(池間琉杏)に単独インタビュー
bis
ソニーの人工衛星『EYE』で、『宇宙なんちゃら こてつくん』とちょっくら宇宙撮影しよう!
PR TIMES
解けないと着れない:トキキル代表が語る、謎解きアパレルの新たな挑戦
Fashion Tech News
史上初モルディブ産の天日塩工房プロジェクト - 美と健康を支える新産業創出
CAMPFIRE