ガンディーニとスタンツァーニが作ったのに……アレ? 期待度MAXだったランボルギーニ・ウラッコが鳴かず飛ばずで消えたワケ

2024.07.31 17:30
この記事をまとめると
■1970年に発表されたランボルギーニ・ウラッコは手頃で高性能でスタイリッシュなモデルとして注目を集めた
■フェラーリのディノやポルシェ911の好敵手となることを期待されたが故障が多くヒットとなることはなかった
■ウラッコはジャルパに任を引き継いだ
V8エンジンを搭載するベビーランボとして登場
  商売の秘訣はいろいろとあるようですが、ランボルギーニを見ているとやっぱり情熱だけでなく「なんとしてでも売ってやる」みたいな気概、いってみれば猛烈な商魂が欠かせないとわかります。これは、クルマのビジネスというよりトラクターでの成功が如実に示しているかと。
  そんなフェルッチオは、1960年代に差しかかると、ミウラやイスレロといった家内制手工業みたいなクルマではなく、トラクターのようにコストを抑えて大量生産できるクルマに思いを馳せたのでした。むろん「猛牛のたぎる血潮」は欠かすことなく、です。
  1970年のトリノサロンでランボルギーニが発表したウラッコは、観客の注目を集めたのはもちろんのことですが、それよりもライバルメーカーたちが戦慄を覚えたそうです。だって、それまでのランボにはミウラというハイエンドはあったものの、他にはハラマ、エスパーダといった「ライバルたりえない」ラインアップだったのに、いきなり手ごろでそこそこ高性能、しかもそれなりにスタイリッシュなモデルを発表したのですから。
  居合わせたマセラティ、フェラーリ、そしてポルシェのセールスマネージャーたちは慄然としたはずです。
  2.5リッターのV8エンジン、これをリヤよりのミッドシップとし、スチールモノコックのシャシーと+2シートを備えたパッケージは、それこそマセラティ・ギブリやフェラーリのディノ、あるいはポルシェ911に真っ向から挑戦状を叩きつけるもの。
  しかも、大量生産ラインのメリットを活かした戦略的な値付けによって、色を失うライバルたち。これを見てフェルッチオがほくそ笑んだこと、いうまでもないでしょう。
当時のオールスターによる開発も故障が多く泣かず飛ばず
  車両設計は当時のランボ、というより世界のパオロ・スタンツァーニによって工夫が凝らされ、スタイリングはベルトーネに在籍していたマルチェロ・ガンディーニというツートップですから、出来が悪いはずもありません。
  オールアルミのティーポL240 V8エンジンは2.5リッター(P250)とイタリア国内向け2リッター(P200)の2種が用意され、それぞれ220馬力/7500rpm、23kg-m/5750rpm、182馬力/7500rpm、18kg-m/3800rpmとカタログに記載。0-100km/hはP250が6.2秒、P200は7.2秒とされていました。
  ちなみに、ギブリ(4.7リッター)が6.8秒、フェラーリ365GTB/4デイトナ(4.4リッター)5.4秒、そして911S(2.2リッター)が6.7秒とされていましたから、ウラッコは立派なデータを誇っていたと思われます。
  ウラッコの生産は発表の翌年1971年に開始される予定でしたが、例によってオイルショックでもってランボのトラクター部門が大打撃を受けることに。これでフェルッチオが構想していたコンピュータ制御の生産ラインという計画がとん挫、というか遅れに遅れてしまいました。もっとも、これくらいの躓きはイタリアンスーパーカーには付き物。1972年の秋には生産が始まり、1973年の発売にこぎつけると、最初はまあまあの売上げだったとされています。
  が、アルミブロックやクランクシャフトの精度が低かったのか故障が頻発。それらがタイミングベルトにおよぶとシリンダーヘッドの損傷まで招いてしまい、致命的なトラブルが少なくなかった模様です。年間2000台を予定していた計画はにわかに下方修正を余儀なくされ、初年度はようやく100台強、1974年に至ってどうにか500台を確保できたという有様。しかも、貧弱な生産ラインとトラブル対応へのコストがかさみ、フェルッチオの大量生産によるコストメリットはどこへやら。ウラッコは、作れば作るほど赤字という最悪な状況を招いてしまったのでした。
  テコ入れというか打開策とされたのはチェーンドライブ化して排気量をアップしたP300(2997cc、250馬力/7500rpm、最高時速265km/h)でしたが、すぐさまランボとして初のタルガトップを装備したモデル「シルエット」を追加。フェイスリフトは再びガンディーニに委ねられ、彼ならではの角ばったオーバーフェンダーや、テレフォンダイヤルホイールを装備したものの、総生産台数はわずかに54台というお馴染みの家内制手工業っぷり(笑)。
  残念ながらウラッコはこの時点でカタログから消え、シルエットをベースとしたジャルパへとバトンタッチすることに。オーバーフェンダーやカウンタックと同様のリヤウィング(オプション)を備えたルックスはいかにも1980年代のスーパーカーらしいものですが、ウラッコのシンプルなウェッジシェイプこそフェルッチオが望んだ新世代ランボルギーニだったのかもしれません。
  だって、ご本人が「ジャルパはアメリカ人好みだろ」とコメントしていたらしいですからね(フェルッチオは最後までアメリカ人のセンスを疑っていたそうです)。
  V12ではなく、あえてのV8を積んだウラッコは、たしかにランボルギーニのメインストリームではないかもしれませんが、フェルッチオの情熱と商魂が詰め込まれたという点ではカウンタックにも劣らない存在感を放っているといえるのではないでしょうか。

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