いま一番ホットなライバル対決! ホンダ・フリード対トヨタ・シエンタを「シート・荷室・走り・燃費・装備」とあらゆる点で比較した

2024.07.23 10:00
この記事をまとめると
■ホンダから新型フリードが登場したのでライバルとなるトヨタ・シエンタと比較した
■全体的に後発となるホンダ・フリードのほうが使い勝手や快適性で優れている部分が目立つ
■シエンタに対してやや高めの価格設定となるフリードだがその内容を知れば納得できる
フリードvsシエンタのガチンコライバル比較
  このWEB CARTOPでは、すでにいま、大注目のコンパクトミニバン、3代目となる新型ホンダ・フリードの概要、試乗記をお届けしているが、ここではフリードの直接的ライバルとなるトヨタ・シエンタとの徹底比較を行ってみたい。
  まず、新型となったフリードとシエンタの大きな違いが、ボディタイプである。シエンタは1種類で、それもサイドアンダープロテクターの装着による、ちょっぴりクロスオーバーテイストを加味したものだけとなる。
  一方、新型フリードは標準車のクリーンかつシンプルなエアーと、無塗装樹脂製ホイールアーチプロテクターを装着し、前後スタイリングもまったく異なる、先代モデルからSUVテイスト、クロスオーバー感をより一層強めた、全幅1720mmとなる2種類のボディタイプを用意しているのだ。
  パワーユニットも大きく違う。シエンタは3気筒1.5リッターエンジンを基本に、トヨタ自慢の2モーターシリーズパラレル式ハイブリッドとガソリン車を用意。それぞれのスペックはハイブリッドがエンジン91馬力/12.2kg-m、駆動用モーター80馬力/14.4kg-m+CVT、ガソリン車は120馬力/14.8kg-m+CVT。WLTCモード燃費はハイブリッドが最高28.5km/L(7人乗り)、ガソリン車が18.3km/L(7人乗り)となる。
  新型フリードのパワーユニットはシエンタの3気筒に対して、4気筒、1.5リッターエンジンを基本に、ハイブリッドは先代の1モーターi-DCDからホンダ最新の2モーターハイブリッド、e:HEVに換装。スペックはエンジン106馬力/13.0kg-m、駆動用モーター123馬力/25.8kg-m+CVTと、モータ―パワーの余裕が際立つ。ガソリン車は118馬力/14.5kg-m+CVT。WLTCモード燃費はハイブリッドが最高25.6km/L(エアー6人乗り)、ガソリン車が16.5km/L(エアー6人乗り)となる。
  カタログ値の燃費性能ではシエンタがややリードしているが、エンジンのスムースさや静かさでは4気筒がリードすることは、実際の試乗からも明白だ。
  走行に関わる機能面でも、さすがに新しいフリードに見るべき点がある。それが新型フリード全車に採用された電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能である。結果、フリードのACC(アダプティブクルーズコントロール)は停止保持、渋滞追従機能付きとなった。
  一方、シエンタは依然、足踏み式サイドブレーキが基本で、最上級ハイブリッドのZグレードのエレクトロシフトマチック式シフトレバー付きにのみ、ACCの停止保持機能が付く。高速走行でACCを使う頻度が多ければ、新型フリードが、どのグレードを選んでも有利になるということだ。
  ただし、シエンタにも強みがある。それは、トヨタセーフティセンスに含まれるプロアクティブドライビングアシスト(PDA)だ。これは、ACCを使わない一般道でも機能する、先行車・カーブに対する減速支援、歩行者・自転車運転者・駐車車両に対する操舵・減速支援を行ってくれるもので、そのサポートは安全・安心に直結。これは新型フリードでは得られない先進運転支援機能といっていい。
  ミニバンとして重要なパッケージ、シートレイアウトも大きく異なる。3列シートモデルでは、シエンタは全車7人乗りの2-3-2席、つまり2列目席は3人がけのベンチシートのみ。
  フリードは6人乗りの2列目キャプテンシートと、7人乗りの2列目ベンチシートを用意。2列目キャプテンシートなら、より贅沢でパーソナル感ある居心地を味わえるとともに、1-3列、2-3列スルーが可能(1-2列スルーは両車OK)。車内移動のしやすさによって、車内で完結する乗員(子どもや愛犬)のケアもよりしやすくなることになる。
  両車は3列目席の格納方法でも大きな違いがある。シエンタは初代からの伝統である、2列目席を一番前にスライドさせ、2列目席を立てて畳み、3列目席をその下に潜り込ませる……という手順が必要だ。3列目席を使わないときにはすっきりと格納できる反面、格納、復帰ともにそれなりの手間が必要になる。
  フリードの3列目席格納方法は、ホンダの国内向けミニバン唯一の左右跳ね上げ式(ステップワゴンやオデッセイは床下格納式)。先代は跳ね上げ操作が重く、高く、ベルトで固定する位置も高く、遠く、小柄な人ではかなり大変だったのだが、新型では3列目席を、かけ心地を損なわずに薄く、軽量化し、なおかつ格納位置を先代より90mm低め、ベルト固定位置を手前にもってきたことで、小柄な人を含む格納操作性は劇的に向上。格納操作としては、新型フリードのほうがしやすい……と思える人が大多数ではないだろうか。
  しかも、先代フリードは3列目席を左右に跳ね上げて固定すると、リヤクォーターウインドウが塞がれてしまったのだが、新型ではリヤクォーターウインドウの面積を1.5倍に拡大するとともに、格納位置が下がったことで、リヤクォーターウインドウ上部に80mmの灯り取りと視界を確保。
  さらに3列目席格納時の荷室左右幅を、シートの薄型化によって160mm広げているのも注目点。先代の3列目席格納のデメリットはほぼ解消されたといっていいだろう。
ミニバンにとって最重要な後席の快適性もフリード有利
  ミニバンの特等席といえば2列目席。しかし以前のコンパクトミニバンは、エアコンが前席にしかついておらず、暑い日の後席空調環境は厳しかったといわざるを得ない。現行シエンタでは、軽自動車の採用例もあるリヤサーキュレーターを天井に用意(ZとGにオプション)。
  しかし、新型フリードはその先をいく。そう、クラス初、フリード初のリヤクーラーをエアーのEXグレード、クロスターの3列シートに標準装備したのである! つまり、後席でもより涼しく過ごせるようになるわけだ。後席に乗る暑がりの人、1年中毛皮を着ている愛犬にとって、これは嬉しすぎる快適性のポイントとなる。
  ここで、ミニバンの快適性にかかわる、新型フリード、シエンタ3列シートの後席居住スペースの独自ツールによる実測値を紹介したい。いずれも身長172cm、体重65kgの筆者のドライビングポジションが基準である。
  まず、シエンタは2列目席頭上に220mm、膝まわりに最大260mm(スライド後端位置)、3列目席頭上に70mm、膝まわりに0~40mm(2列目席膝まわりを100mmにセット)のスペースがある。
  一方、新型フリードは2列目席頭上に230mm、膝まわりに最大360mm(6人乗り、2列目キャプテンシートのスライド後端位置)、3列目席頭上に130mm、膝まわりに0~80mm(列目席膝まわりを130mmにセット)というスペースの余裕がある。
  そんな寸法の差もさることながら、シートのかけ心地でも、新型フリードが、キャプテン、ベンチシートともに優位に立つ。フリードは1列目席(ステップワゴンのシート骨格を用いる)、2列目席ともに分厚いクッション感、ソファ的なソフトで心地よい、乗り心地のよさにも影響するかけ心地が素晴らしい。
  一方、シエンタは1列目席こそ快適なかけ心地だが、2列目ベンチシートは平板で硬めのかけ心地となり、その差は大きい。
  しかも、フリードは2列目キャプテンシートを用意するとともに、3列目席のシートサイズもたっぷり。具体的には、フリードは座面長425mm、シート幅575×2=1150mm、シートバック高480mm。シートのクッション感もなかなかだ。シエンタは座面長420mm、シート幅445×2=890mm、シートバック高500mmと、シートアレンジの制約から、とくに横幅が狭い3列目席となる。
  ただし、着座、立ち上がり性にかかわるフロアからシート座面前端までの高さ=ヒール段差はシエンタ330mm、フリード260mm(先代からシート先端で20mm減少。シートの薄型化、格納のしやすさのため。頭上方向の余裕もこのシートレイアウトのため)。ひとり乗車であれば、シエンタのほうが座りやすく、立ち上がりやすいと感じるかも知れない(いずれにしても狭いシートではある)。
  では、ラゲッジルームについても比較してみたい。3列シートモデルでは、新型フリードは開口部地上高460mm(FF)、フロア奥行3列目席使用時240mm~3列目席格納時990mm、フロア幅930~970mm。最小フロア高1140mm。
  シエンタは開口部地上高505mm(FF)、フロア奥行3列目席使用時310mm~3列目席格納時860mm、フロア幅1105mm。最小フロア高1105mm。重い荷物の出し入れ性にかかわる開口部地上高の低さと3列目席格納時の奥行、最小フロア高で有利なのはフリードだ。
  ちなみに、フリードクロスター、シエンタに用意される2列シート5人乗り仕様のラゲッジルームはといえば、荷室を上下2段に仕切れるユーティリティボードが”標準装備”されるクロスターが開口部地上高320mm(FF)、フロア奥行ボード上段885mm、ボード下段1000mm、最大フロア幅1270mm。フロア高ボード上段885mm、ボード下段1130mm。さらに後席をダブルフォールダウン格納した際の、フラットなフロア長は1840mmに達し、車中泊にも適する(先代のフリード+同様、ニトリの折り畳みマットレスがジャストフィット)。
  クロスター5人乗り仕様の開口部地上高が極端に低いのは、車椅子の使用だけでなく、アウトドア用のキャリーカートの積載にも活躍してくれるスロープ仕様と共通だからである。
  一方、シエンタの2列シートモデルは、開口部地上高565mm、フロア長840mm、フロア幅1265mm、フロア高1055mm、後席格納時のフロア長1670mm。フリードクロスターの2列シートモデルに標準装備されるユーティリティボードはシエンタではラゲージアッパーボードセット4万1800円のオプションとなる。※フロア長は最大荷室長とは異なる
  最後に、両車の試乗経験に基づく走行性能の違いだが、エンジンの3気筒、4気筒の差、ハイブリッド車同士のモーター出力の大小もあり、よりスムースで全席で静かに走り、乗り心地が上質で、あらゆる挙動がリニアで、とくにミニバンにとって重要な2/3列目席の快適性(キャプテンシートの有無とリヤクーラーの装備が大きい)、全列のシートのかけ心地のよさでリードするのは新型フリードだと思えた。
  ただ、シエンタ・ハイブリッドのEV走行の粘り強さ、繰り返すけれどプロアクティブドライビングアシスト(PDA)の安心感は大いに評価できる。また、車中泊のしやすさでも、ユーティリティボードが標準装備され、”フロア長”に余裕があるフリード・クロスターの2列5人乗りが好ましい。
  シエンタの発売は2022年8月。それから約2年後、ライバルのシエンタを横目で見つつ開発され、満を持して発売された新型フリードなのだから、よく出来ていて当然ともいえるだろう。シエンタに対してやや高めの価格設定も、内容を知れば、納得できるものではないか。

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