この記事をまとめると
■1993年、日産から9代目スカイラインが登場
■9代目スカイラインはR33型と呼ばれている
■R33型スカイラインについて詳しく解説
R32型のデメリットを解消するためサイズアップ
R33型こと9代目スカイラインが登場したのは1993年8月。トヨタ・マークIIなどをライバルとしたハイソカー路線にコンセプトを変えて大失敗した7代目の跡を継ぎ、“スカイラインらしさ”を強調した先代となる8代目(R32型)からフルモデルチェンジで登場しました。
R32型の大きな特徴は、走行性能を重視するため全長を2ドアクーペは4530mm、4ドアセダンですら4580mmとコンパクト化したことでした。全高も先代比40〜50mm低くおさえたスポーツセダンにチェンジしたことや、16年ぶりにGT-Rが復活したことで、8代目は人気ブランドに返り咲きました。スカイラインはみごと復活を果たしたのです。
ただ、スポーツセダンらしさを強調したことで居住性が犠牲になったことが一部ユーザから不評だったこともあり、販売的には大ヒット……とまでは至りませんでした。
そこで、9代目となるR33型が重視したのが走りと実用性の両立。3ナンバーサイズとなったボディはホイールベースを8代目から105mm延長し、後席スペースを拡大しました。
ニュルのタイムを大幅更新するもR32型の人気には及ばず……
とはいえスカイラインの代名詞とも言える走行性能にも力が入れられています。サスペンションも方式こそ先代同様ですが、剛性を高めアクティブLSDを新採用。後輪操舵を可能とするハイキャスは電動制御のスーパーハイキャスに進化しています。
ただ、スカイラインファンはある種、らしさにこだわる信者化したファンが多かったことで、ボディが大きくなったR33型について批判的に論ずる声が多かったのも事実。
4ドアセダン、2ドアクーペに続き1995年に登場したR33型スカイラインGT-R(以下、GT-R)も、ニュルブルクリンクを7分59秒(R32型は8分20秒)で走破するほど走行性能を高められたものの、人気はR32型に及びませんでした。
結果、スカイラインファンにとってR33型はGT-Rも含め、らしさ抜群のR32型と最後の直6搭載モデルとなったR34型の間に挟まれた中途半端なモデルだったと位置づけられます。
ただ、登場から20年経ったいまになり、実用的かつ走行性能が高かったR33型スカイラインを再評価する声も少なくありません。
R32型から向上した室内空間
R33型スカイラインの大きな特徴は居住性を高めるためボディを大幅に拡大したこと。全長は4ドアセダンが4720mm(R32型は4580mm)、2ドアクーペは4640mm(同4530mm)、ホイールベースは2720mm(同2615mm)へと大きく拡張されました。
また、全幅も1720mmとなり、全車3ナンバーサイズになったこともR33型の特徴です。
全長やホイールベースの延長はおもに後席のスペース拡大に充てられています。後席ニールームはR32型と比較すると4ドアでプラス52mm、後席ヘッドルームはプラス12mm拡大されました。
ただ、トランクルームは燃料タンクの配置位置を変更したことで奥行きが短くなってしまいました。そのぶん、深さを拡大したことでトランクルームの容量はR32型と同じ数値を維持しています。
多彩なパワーユニット
R33型スカイラインには3種類、GT-Rを含めると4種類のパワーユニットが用意されています。ただ、このモデルから歴代モデルに用意されてきた4気筒エンジンが廃止されました。
いずれも直6エンジンとなりますが、エントリーモデルに用意されるのが最高出力130馬力を発揮するRB20E型2リッター直6OHCガソリンエンジン。
続いてローレルなどに搭載されていたRB25DE型2.5リッターDOHCガソリンエンジン(最高出力190馬力/タイプSは200馬力)。同エンジンはトルク向上を図るなど大幅な改良が施されていました。
スカラインのスポーツグレードには最高出力250馬力(AT車は245馬力)を発揮するRB25DET2.5リッター直6ガソリンターボエンジン。同エンジンにはリニアチャージコンセプトと名付けられた新たな過給方式を採用しています。
また、GT-RにはR32型に搭載されていたRB26DETT型2.6リッター直6ツインターボエンジンを継続。
280馬力の最高出力こそ変わっていませんが、最大トルクを4.2%向上させるなど、R33型に搭載するにあたりチューニングが施されています。
走行性能を高めたボディ
ひとまわり大きくなったボディですが、プラットフォームはR32型をベースとした改良型。サスペンションもR32型同様、4輪マルチリンク式を採用していますが、パーツを見直すことなどで剛性を高めるとともに、ブッシュ剛性やフリクションの軽減を実現しました。
また、日産自慢の位相反転機能を有するHICASをR33型も装備。ただ、従来の油圧型から電動モーター駆動式となったスーパーハイキャスへと進化しています。
先代同様、R33型はスポーツセダンとして走行性能を重視していましたが、そのひとつがバッテリーの配置位置。旋回性や運動性能を向上させるため、バッテリーをボンネット内ではなくトランクの奥(リヤアクスル上)に配置しました。
その他、路面状況をセンサーで検知しリヤの左右駆動配分を制御するアクティブLSDの搭載など、スカイラインらしい走行性能をもたらす装備も備わっていました。
ハイパフォーマンスモデル「R33型スカイラインGT-R」
R33型スカイラインがデビューしたあともR32型が継続販売されていたGT-R。1995年に満を持して登場したR33型GT-Rは当時、同車が参戦していた「スーパーN1耐久」(現・スーパー耐久)に勝つため、ベースモデルとしての基本性能を、R32型より大幅に高めることをテーマに開発されました。
パワーユニットは先ほど述べたようにチューニングを施したRB26DETT型2.6リッター直6ツインターボエンジンを搭載。大容量マフラーの搭載をはじめ、排気系を見直したことで排気抵抗の低減を可能としています。
前後サスペンションはR33型スカイライン同様、4輪マルチリンクサスペンションを採用。R32型と同様に電子制御トルクスプリット式4WDシステム“ATTESA E-TS”を採用しました。
ただ、R33型GT-RのVスペックにはアクティブLSDとABSを組み合わせた“ATTESA E-TS PRO”を標準装備。進化した4WDシステムの採用でハンドリングの向上に寄与しています。
R33型GT-Rは、1996年にル・マン24時間レース参戦記念の“LMリミテッド”、1997年にはスカイライン生誕40周年を記念した“オーテックバージョン40th ANNIVERSARY”といった限定車を追加。
なかでも99台限定で販売された“NISMO 400R”は幻のモデルともいわれる希少なモデル。迫力ある外観を身につけただけでなく、パワーユニットも最高出力400馬力を発揮するRB-X GTC型2.8リッター直6エンジンを搭載しました。
デビュー時の車種体系
R33型スカイラインは4ドアセダン、2ドアクーペ、GT-Rと大きくわけて3つのボディをラインアップしています。
また、パワーユニットは2リッター、2.5リッター NA&ターボ、GT-Rに搭載される2.6リッターターボといずれも直6ガソリンエンジンを用意。R32型スカイラインまで用意されていた4気筒エンジンがラインアップから外れました。
R33型スカイラインデビューからの進化を辿る
R33型スカイラインは、1993年8月のデビューから次期モデルとなるR34型にフルモデルチェンジされる1998年まで追加モデルやマイナーチェンジ、一部改良などが施されました。
まず1993年11月に4WD仕様のGTS-4(4ドアセダン&2ドアクーペ)を追加。同車にはRB25DE型エンジンを搭載しています。
1995年1月には待望のスカイラインGT-Rを発売。
1996年1月にフロントマスクをはじめとした意匠チェンジや、デュアルエアバッグを全車標準装備するなどのマイナーチェンジを実施。4ドアセダン、2ドアクーペともにボンネットフードやフロントバンパーのデザインを変更したことで精悍さが増しています。
この意匠チェンジはR32型と比べて販売が低下したことに対してのテコ入れで、同時にスポーティグレードを追加するなどの変更も行われました。
1997年2月にはスカイラインGT-Rをマイナーチェンジ。ヘッドライトをプロジェクター式キセノンランプに変更、フロントスポイラーを大型化&エアインテークを追加するなどワイド感を強調したデザインに変更しています。
デザイン以外にもサスペンションやブレーキの性能向上を図るなど、走行性能にも手が加えられました。
R33型スカイラインは1998年に生産終了。スカイラインGT-Rも同年生産終了となりました。
まとめ
筆者は5〜6年ほど前に、イギリスのフォードで働いていたデザイナーと飲む機会がありました。当然、日本車についての話をつまみに飲んだのですが、彼が「R33型スカイラインGT-Rは、いまでも手に入れたいほどクールだ」と話していたことをいまだに覚えています。
R33型スカイラインGT-Rはイギリスに輸出されていたこともその理由なのでしょうが、正直、同車をR32型やR34型と比較した場合、「パッとしないクルマだな」と思っていた私にとって、当時、なぜ好きなのか理解することができませんでした。
ただ、今回改めてR33型スカイライン&GT-Rを振り返ってみると魅力が多く、パッとしないと感じていたデザインでさえかっこよく見えてきたのも事実。
実用性(居住性)と走行性能を併せ持つスポーツセダンとして、R33型スカイラインは高い実力を備えていたことに、いまさらではありますが気がつきました。