メリットはあれどそう簡単には進まない! トラックやバスのEV化に立ちはだかるいくつもの壁

2024.07.19 20:00
この記事をまとめると
■自動車のEV化が進むが日本国内で販売されている量産型電動トラックは小型ばかり
■現状では蓄電技術・製造コスト・充電時間などの問題で大型トラックのEVシフトはスムースに進んでいない
■大型トラック、バスの電動化を進めるための条件について解説
国内で販売されている電動トラックはいずれも小型
  欧州では、自動車の電動化に熱心である。2022年10月の欧州会議で、2035年には乗用車・小型商用車のEV義務化を決めたくらいだ。しかし、その後に協議を重ねて一部の環境にいい合成燃料を使う燃料車は容認する姿勢を示し、ややトーンダウンしたのではないかといわれている。EV化の背景はいろいろと憶測を呼んでいるが、環境問題(地球温暖化)が大きな理由であることは間違いない。
  確かに、EV化は正しい選択である。なぜならば、エネルギーの変換効率が高いからだ。化石燃料であるガソリンは約30%、軽油でも40%程度といわれているが、電気モーターは80~90%程度もある。しかし、現状では蓄電技術(一充電の航続距離)・製造コスト・充電時間などといった問題があり、スムースに移行することができていない。これは電動トラック・電動バスといった、大型の輸送用車両ではなおさらのことだ。
  現在、国内で販売されている量産型の電動トラックはいくつかあるが、三菱ふそうトラック・バスの「eキャンター」、日野自動車の「デュトロ Z EV」、いすゞ自動車の「エルフEV」がおもなところで、いずれも小型トラックである。大型トラックで実用化に漕ぎつけているのは、おもにダイムラートラックやテスラであり、いずれも海外市場に投入されている。
  ダイムラートラックは、2023年10月に「フレートライナーeM2」をアメリカ市場で販売開始した。一充電の航続距離は290km。近々発売するといわれている「eアクトロス600」は、同距離を500km程度にまで伸ばすことに成功したそうだ。テスラの「セミ」は、トラクタである。こちらは2022年12月からアメリカで納車が開始されており、一充電の航続距離は800kmに及ぶ。これに対して日野自動車も2024年後半ごろ、米市場に電動大型トラックを投入する計画だという。
問題はバッテリーや車両コスト
  国内における電動バスの製造・販売状況は、日野自動車が「ポンチョ」をベースに電気バス(小型バス)を受注生産したといった程度だ。現状は、圧倒的に中国製が強い。なかでも比亜迪汽車(BYD)製のK8 2.0(大型バス、1充電の航続距離240km)や、J6 2.0(日本仕様の小型バス、1充電の航続距離220km)などは国内各地に多数投入されている。
  このような現状に照らすと、電動トラックや電動バスを利用するための条件が見えてくる。ネックになっている航続距離の短さを考えれば、営業拠点(充電拠点)が近くにある範囲での運用とならざるを得ない。トラックであれば、街なかの配送が中心になってくる。路線バスの場合は、運行管理を行いやすいので比較的導入が容易だ。また、導入コストがかかるので公共交通機関・大手輸送事業者などが、補助金などを受けて運用する例が多くなる。
  根本的な問題は、バッテリー技術にあるといえよう。テスラの「セミ」は一充電の航続距離が800 kmに及ぶとされているが、それがバッテリーの寿命まで続くわけではない。劣化が進めば、20%ほど航続距離が縮まることも考えられるのだ。また、急速充電30分で7割程度回復できるという性能も、時が経てば5割程度の回復力に低下するという。充電設備の充実もそうだが、充電時間ももう少し縮めたいところだ。
  また、車両コストをダウンすることも重要である。日野自動車の「ポンチョ」の場合、ディーゼル車(量産車)は1800万円程度だが、EVに改造した車両は8000万円程度になったという。その多くが、バッテリーコストなのだそうだ。
  トラックの場合は荷室容量や積載重量の確保から、バッテリーを小型化することも重要である。要するに、鍵となるのは現在主流となっているリチウムイオンバッテリーに替わり、蓄電量の増大・軽量化・低コストの新たなバッテリーが開発できるか否かということなのだ。

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