この記事をまとめると
■MT車に乗ってみたいと考えている人は意外と多いといわれている
■乗ってみると操作フィーリングに違和感があるモデルが存在する
■左ハンドルモデルを右ハンドル化した輸入車は構造上の問題から違和感が出やすい場合がある
乗ってみたら意外と操作がしにくい!?
新車販売台数のシェア的には全体の2%程度まで落ち込んでいるMT車ですが、近ごろではKINTOが往年のセリカXXやMR2、80スープラなどのMT車をレンタルするサービスを開始したり、新車で限定モデルとしてMT車が発売されて即完売するなど、趣味のクルマとして、憧れのクルマとしての価値は、むしろ上がっているようにさえ思えます。皆さんも、いつか乗ってみたいと思っているMT車があるという人は多いのではないでしょうか。
ただ、いくら憧れて買ったMT車とはいえ、すべてが思いどおりとはいかないこともあるようです。多くのMT車ユーザーを取材した経験から、聞こえてきた声のなかで「ここがちょっとガッカリだった」というポイントをご紹介したいと思います。
まず1台目はスズキ・ジムニー。世界最小の本格クロカン4WDで、高い悪路走破性にファンが多く、現行モデルはデザインの魅力もアップ。いまだに納期が1年以上ともいわれている大人気モデルですが、MTモデルのユーザーから「シフトレバーの位置が低くて操作しにくい」という声がチラホラ。
ATモデルはあまりレバーを操作しないため感じないのですが、MTモデルは頻繁に操作することと、着座位置が高めなので腕を伸ばす必要があること、ハンドルから遠いこと、などによって、頻繁な操作の際に「もっと近くにあったらいいのに」と思うようです。そのため、わざわざシフトレバーを伸ばすアクセサリーなどを装着している人もいました。
2台目は、女性など小柄で足のサイズが小さい人はなんとも感じないのかもしれませんが、男性など大柄で足のサイズが大きい人からすると、「狭い!」という声があるのが、以前は日本でも販売されていたフィアット500のMTモデルです。
輸入車でもともと左ハンドルが主流となっているモデルを、右ハンドルにしているモデルにはありがちなのですが、どうしてもインパネの内臓物の構造上、ペダルの位置がぎゅうぎゅうになってしまうことがあり、コンパクトサイズの500ではそれが顕著となってしまったようです。
長く乗っている人のなかには、クラッチ操作をする左足の靴の側面がズリズリと毛羽立ってくる、という声も。でもそれも、運転するのが楽しくてついついたくさん乗ってしまうから、ということなのが微笑ましいですね。
構造上仕方ないモデルも……
さて3台目は、クラッチペダルを踏み込み、回転数を上げながらクラッチがつながるポイントまでペダルを上げてくる感覚が、「ちょっと長くてタイミングがとりにくい、足が攣りそうになる」といった声があるのが、ルノー・メガーヌR.S.。たしかに、一般的な国産のMT車よりも踏み込みが深い感覚で、シート位置が後ろの方にあるとつま先をギリギリまでのばして踏んでいるような状態になりがちです。
ジムカーナのようにスパ、スパ、とシフトチェンジをしたいときなどは、ちょっとクラッチ操作が間のびしてしまうように感じるところもありました。ただ、これも慣れの問題で、毎日乗っていれば俊敏な操作ができるようになるのはないでしょうか。
実際、メガーヌR.S.はニュルブルクリンクサーキットでFFコンパクト最速タイムをホンダ・シビックTYPE Rと競い合っているくらいなので、しかるべき腕のある人が乗れば、爽快にドライブできることは間違いありません。
4台目は、リバースに入れるのが遠くてやりにくいという声がある、トヨタ・スープラ。一般的なMT車は、6速のあとにリバースがくるので、ドライバーからはもっとも近い位置にシフトレバーをもってくる形になります。でもスープラの場合は、1速の前にリバースがあるため、いちばん遠い位置かつ、レバーを押しながら斜め左上に入れるという配置になっているのです。
感覚的に、「これからバックで後ろに下がるというときに、シフトレバーを斜め上に入れるのがしっくりこない」という人もいれば、単純に「手が遠くて力が入りにくい」という人も。でもこれには理由があって、スープラはBMW Z4と共同開発のため、左ハンドルも視野に入れて作られています。そのため、左ハンドルだとこの配置が操作しやすいから、ということになりますね。
最後に5台目は、以前は販売されていたMINI 3ドアのMTモデル。これも元気いっぱいでエモーショナルな走りが楽しめる、とびっきり魅力的なMTモデルで中古車市場でも人気がありますが、アクセルペダルとブレーキペダルがかなり離れた位置にあり、MT車のドライビングテクニックである「ヒール&トゥがやりにくい」という声が。
というのも、MINIのMT車はペダルがオルガン式といって、フロアからニョキッと生えているタイプ。吊り下げ式のペダルよりも離れた位置に配置されているのです。先につま先でブレーキを踏みながらアクセルペダルをカカトで煽る、というヒール&トゥですが、ブレーキを踏んでからアクセルにカカトが届く前に、減速しすぎてしまうという声がありました。
ということで、ここだけがちょっと、というMT車のガッカリポイント。でもすべて完璧なクルマよりも、ひとつくらいそういうところがあった方が、余計に愛しくなったりするものかもしれませんね。