【能登半島地震 第一歩】職人の仕事創出 輪島塗×九谷焼の協業と仕事場再建にむけて

2024.05.15 18:27
能登半島地震により、存続の危機に立っている輪島塗。再興を段階的に目指すなか、第一歩として輪島塗の職人たちが仕事を早急に再開できるよう、同じく被災した九谷焼の陶片を金継ぎするプロジェクトを開始しました。震災から2ヶ月を迎えた今、職人の二次避難先にて仮設工房をお借りし、皆さまと前を向いて進んでいきたい。
|プロジェクトについて
能登半島地震により、存続の危機に立っている輪島塗。再興を段階的に目指すなか、第一歩として、まずは輪島塗の職人たちが仕事を早急に再開できるよう仮設の工房を整備し、そこで、同じく被災した九谷焼の陶片を金継ぎするプロジェクトを開始しました。


|「手が忘れんうちに仕事がしたい」職人の方々へ仕事をつくりたい
輪島市で漆器業を営む「高洲堂」の大向と申します。このページにご訪問いただきありがとうございます。この度同じく石川県に拠点をもつCACL(カクル)さんと共にクラウドファンディングにてプロジェクトを立ち上げる事となりました。
少し長くなりますが、ご一読いだだければ幸いです。
2024年1月1日、能登半島地方を震源としたマグニチュード7.6の地震が発生。数万軒に及ぶ石川県での全壊住家、半壊住家、一部破損住家の数のなかには、輪島塗の多くの職人たちの工房、そして私たち塗師屋(ぬしや:漆器制作の総合プロデューサーのような役割)の事務所兼倉庫も含まれました。
観光客で賑わう朝市通の小路にある市姫参道。突き当りには商売繁盛の市姫神社があり、毎朝参拝していた場所。
  2か月近くたった今もなお町中がこのような状況。
地震発生翌日。寸断された道なき道を歩いて仕事場のある市街地へ。
かつては海だった場所。土砂崩れをさけ、海底隆起の上を歩く。
次女は集団避難、高校生の長女と小学生の長男は親元を離れ富山へ避難しました(新潟日報 1月18日 日刊)。
輪島塗関係者だけでなく多くの方が私たちと同じように被災され、先行きのみえない現状です。正直にお話すると、同じように苦しんでいる方々がいる中、自分たちだけがクラウドファンディングで資金を集めることに抵抗があったことも事実です。しかし、このまま売るものもない、仕事場もない状況をただ茫然と眺めているだけでいいのだろうか、と考え始めるようになりました。廻りを見渡せば、倒壊した建物ばかりです。しかし人と人との繋がりがある。応援して下さる方、これまでもこれからも共に輪島で頑張っていこうと言ってくれる職人さんやお取引様がいる。復興、復旧には長い時間がかかるかもしれませんが、まず立ち上がるための第一歩を皆様にご支援いただきたく、どうかお力をお貸しいただけますよう、宜しくお願い申し上げます。
弊社は輪島市河井町を拠点とする、塗師屋(ぬしや:漆器制作の総合プロデューサーのような役割)です。今回の地震により、事務所兼倉庫は全壊しました。何とか大切な商品を取り出したく、小さな隙間に入ろうともしましたが、続く余震により私たちの判断では中に入る事も手を出すこともできない状態となりました。
また、共に輪島塗を広めるために頑張ってきた作家や職人の方の多くの工房は全壊・半壊などすぐに仕事を始められる状態ではなく、二次避難を余儀なくされている方がほとんどです。
弊社倉庫兼事務所。建物内には納品物や仕掛品が埋もれている。
販売する商品もなく、一時的とはいえ職人がいなくなった輪島で輪島塗を作る事はもうできないのではないかと、言葉にできない打撃に打ちひしがれる日々が続いていきました。そんな中、下地職人の方が、「仕事がしたいな、手が忘れんうちに仕事がしたい」と尋ねてこられました。手作業である伝統技術は一度途切れると再開が難しい。
またみんなで輪島塗をつくりたい!
これまで助けてくださった職人の方、作家の方のためにも輪島塗を世に広めるためもう一度立ち上がり乗り越えて伝統工芸輪島塗の技術を絶やすことなく、この輪島の地で再建をしたいという思いを新たにしました。


|二次避難先で仮設工房をつくる意義
2024年2月24日時点で日本政府は、職人たちの臨時作業場として、輪島市にある石川県輪島漆芸美術館敷地内に仮設工房を設置すると発表しました。国費から支出していただくという大変ありがたいお申し出ではありますが、輪島塗の大半の職人たちは、現在二次避難で輪島市を離れている状況です。輪島市に工房ができても、家がなく、結局現実的な解決にならないという職人さんもいます。これらの現状を踏まえ、職人の二次避難先での仮設工房の設立を急いでいます。


|「STAND WITH NOTO」プロジェクトが目指すこと
震災前からのご縁で、同じく被災された石川県の伝統工芸である九谷焼との出会いがありました。そこでまずは少しでも職人たちの仕事を作るという目標のもと、比較的早く行える「金継ぎ」を、震災で割れた九谷焼に施す「STAND WITH NOTO」プロジェクトに取り組むことになりました。分業制で作られるのが輪島塗の特徴です。私たち高洲堂は木地から加飾までを各職人に依頼する「塗師屋(ぬしや)」という立場から、職人さんとの強い信頼関係と繋がりをもって1つ作品を作り上げます。大げさになりますが、職人さんとの繋がりを1つの工房としています。九谷焼と輪島塗が出会った今、これまで培ってきた繋がりとものつくりの経験を活かし、復興のシンボルとなるプロジェクトに希望の光を感じました。職人たちはまるでアスリートやピアニストのようで、1日でも指を動かさないと感覚が鈍るといわれているため、仮設工房の設立が急務です。輪島塗の職人たちが避難し、九谷焼の産地として知られる石川県能美市にて、なるべく早く制作の準備を整えたいと思っています。
また明日やるべき仕事があるということや、必要とされている実感が、どれだけ私たちの希望になっているか。職人さんたちが輪島塗を諦めてしまわないよう、できるところから着実に一歩を踏み出そうと思います。
今回の震災により被災した九谷焼の工房で、割れてしまった焼き物たちを輪島塗の職人たちが継いでいきます。
「工芸大国」石川県を代表する九谷焼と輪島塗の職人たちが、今回の震災を機にタッグを組みます。
今回のプロジェクトで金継ぎをして下さる江端俊雄先生。先生のご自宅兼工房も被災し2次避難されました。今後は、能美市にあるCACLさんの工房を整備し作業をしていただく予定です。


|自己紹介 高洲堂について
石川県輪島市で輪島塗の製造、販売、企画を営む 高洲堂 代表の大向正浩と申します。こちらのページにご訪問いただき、改めて本当にありがとうございます。素朴な田園風景と青い海が広がる漆器の町、輪島で私は生まれ育ちました。祖父が戦後、商売を立ち上げ、後に二代目である父が輪島塗の全盛期ともいえる時代を駆け抜けてきました。2011年に一時廃業しましたが、ご迷惑をおかけしたにも関わらず助けてくださった作家の先生方、職人の皆様、元従業員の方の支えにより、規模を縮小しながらではありますが新たなスタートに立たせていただき、昨年は10年の節目の年を迎えました。
高洲堂の大向正浩と、妻の裕子です。どうぞよろしくお願い致します。ご一緒させて頂いているのは、漆本来の美しさを追求する人間国宝の先生方や、繊細な蒔絵で海外ジュエラーともコラボレーションしている漆芸作家、これから世に羽ばたこうと邁進する若手作家など多岐にわたります。そんな事業がようやく軌道に乗りだしたところ、今回の能登半島地震で被災しました。私が生まれた昭和48年はまさに輪島塗全盛期。自社工場で試作された製品が食卓に並び、あたりまえのように輪島塗を使い、生活してきました。漆の柔らかさ、木に流れる樹脂から掻き出される漆の力強さ。掻きだされた一滴の命を頂くような気持ちで両手にお椀を持つときの感触。1300年の歴史を持つ輪島の技術が確かなものと自信をもって、この震災に負けずまたこの輪島の地で立ち上がり商いを続けていきたいと思います。
|自然と人がつくる伝統工芸 輪島塗について
堅牢、優美な漆器 輪島塗。その工程は100以上に及び、完成までに1年以上かかることもあります。独特の「塗師(ぬしや)文化」と「高度な技術の伝承」により世にその名を広めた輪島塗の歴史は江戸時代にさかのぼります。日本海に面した能登半島の先端にある人口3万人足らずの小さな町に、なぜそのような文化が生まれたか不思議ですよね? 原料である漆の木とケヤキ、アテなどの木地が豊富であったこと事に加え、数多くの行商人、職人、そしてお客様により磨かれてきたことが今日まで続く輪島塗の発展を支えてきたといわれています。
また、忘れてはならない輪島塗の特徴があります。それは、修理が可能だということ。修理をすることにより、何代も受け継いでいくことができます。美術品としてはもちろん日用品として気軽に使っていただきながら、代々受け継ぐことができる芸術品であることも是非知っていただければ嬉しいです。 輪島塗とは、長年受け継がれてきた文化と、漆・地の粉などの自然が生み出す命が吹き込まれたもの。私たちはそんな漆器を見るたび、「日本人の心」という言葉を思い出します。
震災前の輪島市市街地北の鴨ケ浦に続く、白浜の海岸。青い海と透明な海水が美しい。
輪島市石休場町の手弱女桜  道路脇に立って道行くドライバーの目を愉しませてくれます。


|応援チーム
今回の震災以前から高洲堂および、大向家と親交のある皆さまが私たちを助けてくださっています。特にお力添え頂いている奥山さんを、ここでご紹介させてください。
・奥山純一/「カクル」代表
石川県発の共生文化創造集団「CACL<カクル>」の代表。石川県能美市にて福祉事業所を運営する他、九谷焼事業や、社会問題を解決する複合的な取り組みを行う。また廃棄されるだけだった割れた九谷焼の陶片の問題について取り組む。今回のプロジェクトでは、石川県能美市に所有する福祉施設の一部を、避難していた輪島塗の職人のために貸しだす。プロジェクトの実務を担当。
輪島という地は私にとって、家族と共に訪れた思い出あふれる場所です。
この災害をきっかけに、大向さんとの関係は一層深まり、共に困難を乗り越えようという絆が生まれました。石川県に根ざす者として、深い共感を感じています。震災の直後、大向さんの紹介で輪島塗蒔絵師、江端先生に出会いました。ご自身の自宅兼工房が半壊し、「こんなに長い間、職人としての仕事を離れるのは初めて」と先生は言い、その言葉は私の心に深く響きました。輪島塗が失われる可能性に対する強烈な危機感を感じ、私も石川県民として、また伝統工芸に携わる一人として、輪島塗と輪島の未来を守り、繋げていくために、皆様の支援と共に力を尽くしたいと強く感じています。震災がもたらした絆を基に、私たちは一歩ずつ前に進み、輪島塗の職人たちとともに、新たな未来を築いていきます。


|資金で実現したいこと
最終的な目標である輪島塗再興の第一歩として、九谷焼の陶片と輪島の金継ぎ技術により割れた九谷焼を復元するだけでなく、新たな復興シンボルとなる作品を制作し、職人たちの仕事の創出と、1日でも早く仕事に戻れる仮設工房の整備、事務所倉庫の再建に使わせて頂きます。まだまだ先が見えないため曖昧で恐縮ですが、私たちの再建だけでなく、これまで共にものづくりに取り組んできた職人達の仕事を守り輪島塗りという伝統工芸、ひいては今回被災されたすべての方々の希望となるような仕事をしていきたいと思っています。


|スケジュール
2024年3月 クラウドファンディング開始
5月 クラウドファンディング終了
5月 ご支援いただいた資金をもとに、制作と仮設工房の整備を進める作品の発表
6月 東京にて展覧会の予定


|リターンについて
状況にもよりますがリターン品商品の選定はこちらにお任せいただくかたちとなります事をご了承ください。お届けは、プロジェクト終了から既製品で約6ヶ月、新たに制作する場合で約1年〜2年を目指しています。復旧のスピードなどによりお待たせしてしまう可能性もありますが、必ず活動レポートにてご報告させて頂きます。
現在倒壊した倉庫より商品の救出を行っております。
|最後に
長々と書いてしまった文章を、ここまで読んで頂き本当にありがとうございました。令和六年元旦の能登半島地震から今日まで、たくさんの方に応援のお言葉をいただきました。不安でどうしようもない時、自分の事のように涙しながら背中をさすってくれた方、一緒にがんばろうと手を携えてくれた方、すぐに支援物資を届けてくれた方……。思い起こせばこの2ヵ月間辛いことばかりでしたが、1日1日が感謝に溢れていました。伝統工芸輪島塗の技術をこれからも継承していくために、職人さん、漆芸作家の皆様のために、再び起きあがり、未来につなげていきたいと思います。九谷焼との出会いが、輪島塗の復興のはじめの一歩となりますよう、1人でも多くの皆様にお力を貸して頂けましたら幸いです。
きっと皆様のご支援にふさわしい、強く美しい輪島塗を作っていきます。

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