BEV化が急速に進むタイに押し寄せる中国メーカー! 普及にブレーキがかかりそうな要素も見え隠れする危うい戦略

2024.05.05 07:00
この記事をまとめると
■第45回バンコク国際モーターショーでは中国系メーカーの出展が多かった
■満を持してXPENGとZEEKRも進出しており、今後は2社のBEVの普及が進む可能性が高い
■中国メーカーのタイ市場への進出によりタイのBEV事情は混迷の時代に突入していくかもしれない
急速に進むタイ市場における中国企業のBEV戦略
  2024年3月末から4月上旬にかけ、タイの首都バンコク近郊で開催された「第45回バンコク国際モーターショー」では、中国メーカーの出展が目立った。そのなかでも新規出展ブランドで話題となったのが、中国新興BEV(バッテリー電気自動車)ブランド御三家のひとつともされるXPENG(小鵬汽車)と、吉利汽車のNEV(新能源車/新エネルギー車)ブランドとなるZEEKRであった。
  満を持してともいえるXPENGとZEEKRの進出。ZEEKRブランドを展開する吉利汽車の親会社となる「吉利控股集団(ジーリーグループ)」は、スウェーデンのボルボカーズも傘下にもち、ジーリー車とボルボ車ではパワートレインの共用も進み、ZEEKRもボルボカーズのBEVとパワートレインを共用しており、ほかの中国メーカー車とは一線を画す存在となっているので、その意味でも今後のタイでの動きが注目できる。
  そのわけは街なかへ出ればわかる。街なかでは古いボルボ車をもともと多く見かけるのだが、ここのところはコンパクトモデルを中心に最新のボルボ車も多く見かけるようになってきた。「日本でも同じかもしれませんが、こちらでも所得に余裕がありインテリジェンスの高いひとの一部ではボルボ車に乗りたがる傾向があります」とは地元事情通。古いボルボ車を大切に乗る人が多いことからも、ZEEKRは単に「中国製BEV」とは違う側面で普及していくかもしれない。
  さらに、この2ブランドそれぞれをタイ国内で販売する代理店は、国営の石油・ガス事業会社「PTT」の子会社だということ。PTTはすでにNEV(新エネルギー車)の普及に伴い、タイ国内の充電インフラ普及にも積極的に取り組んでいる。
  あるショー主催関係者は「この2ブランドの販売をPTT系子会社が行うということはじつに興味深い」とのコメントを寄せてくれた。
  今回のショーでは主だっただけでも、8つの中国系ブランドがブースを構えた。BYDオート(比亜迪汽車)やNETA(哪叱汽車)、NEVブランドとして出展しているAION(広州汽車)、XPENG、ZEEKRなどはBEVのみをタイでラインアップしているが、GWM(長城汽車)やMG(上海汽車)、チャンアン(長安汽車)などはHEVも含むICE(内燃機関)車もラインアップしている。それでもやはり、中国ブランドの販売の中心はBEVとなっていることには変わりはない。
  しかし、会場で見てもタイという市場規模に対しては中国ブランドの進出する数とそのスピードに、単に市場拡大という以外の思惑も見えてきてしまう。
中国企業の進出がタイ市場を混迷の時代へと導く
  街なかを走るクルマを定点観測していると、確かに中国ブランドのBEVを多く見かける。とはいえ、その大半はBYDとMG、そしてNETA(哪叱汽車)のモデルばかりとなっている。
  つまり、進出している中国ブランドの半分ほど以外は、街なかではなかなか見かけることはできないのである。すでに一部では「たたき売り」に近い状況になっているとも聞くので、地元事情通にそのあたりを聞いてみると……。
「ブームというわけではありませんが、いままではあまり細かいことを考えずに物珍しさも手伝ってBEVが注目され売れてきたと感じております。バンコクは首都なので最優先で電力は確保されていますが、ここまでハイペースで普及してくると、そろそろ『いろいろなこと』を気にするようになってきているように見えます。たとえば、そろそろ乗っているBEVの売却がはじまる時期になります。しかし、一般論でもBEVの再販価値は低いとされていますので、いざ売却段階となってユーザーの多くが『中国ブランドのBEVの再販価値は低い』との印象を強く持てば、リピート需要は望めないでしょう」と語ってくれた。
  BEVの割高イメージが強いのはタイでも同じ。購入層は所得レベルが一定以上に限られ、その多くは意外なほど複数保有が多く、セカンドカーとして中国系BEVを購入する傾向も多い。スペックを抑えて割安感のあるNETAのBEVがよく売れているのもそのような背景がある。
  このような層は短期間でクルマを乗り換える傾向も多いので、本来なら再販価値も強く意識して新車購入している。そのため、根強く日本車が支持されてきた。したがって、中国製BEVの再販価値の行方次第では、BEV普及の目覚ましいタイ(バンコク首都圏があくまでメイン)でも、その熱が急速に冷める可能性は十分高いのである。
  ショー会場は、バンコク首都圏でも「ニュータウン」と呼べる振興開発地域にある。しかし、今回訪れると、隣接するホテルや開催中の会場内で相次いで停電する事態が発生した。因果関係はわからないものの、とくにバンコク市内では2年ほどで数千台の路線バスがBEV路線バスに入れ換えられている。あちこちの国々をフラフラしている筆者も、このスピードでの普及は聞いたことがない。そこで、「充電インフラはどうなっているのか」とあちこちで聞いてまわるのだが、明確な返答が得られないでいる。
  スピード感を持ってショーへの出展が増え続けている中国ブランドだが、タイ国内でのBEV普及のためのバックアップや社会不安のない普及度合いを意識して進出しているようには、筆者の目には映らない。中国ブランドのなかでも中長期的視野も含めて腰の据わった参入を進めているところと、中国国内の事情など「自社の都合」を強く意識してタイに進出するしかなかったブランドもあるように見える。
  タイ国内におけるBEV普及は、これから混迷の時期に突入するのではないかとの声が多くなっている。

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