ジムカーナが上手い人はサーキットでも速い! 両刀遣いドライバー4名に「共通点」と「相違点」を聞いてみた

2024.04.02 17:20
この記事をまとめると
■全日本ジムカーナの2024年シーズンがスタート
■ジムカーナを走るドライバーにはサーキットでのタイムアタックに勤しむドライバーも多い
■サーキットでのタイムアタックとジムカーナでは必要な要素が共通しているのも特徴だ
ジムカーナとサーキットをそれぞれ楽しむ選手は意外と多い
  舗装を舞台とするスピード競技、ジムカーナでは各ドライバーが1台ずつタイムアタックを披露。ミニサーキットやパイロンコースで時に豪快に、そして時に繊細な走りを披露しているが、彼らジムカーナドライバーたちのなかには、サーキットを舞台にしたレース競技やタイムアタック競技に挑むドライバーも少なくはない。
  しかも、国内最高峰のジムカーナシリーズ、全日本ジムカーナ選手権で活躍するトップドライバーのなかには、サーキットのタイムアタックに参加し、好タイムをマークしている選手もいるのだが、果たしてジムカーナとサーキットのタイムアタックで、ドライビング面において共通するものはあるのだろうか? また、車両のセッティングにおいて、ジムカーナとサーキットのタイムアタックでどのような調整を行なっているのだろうか?
  というわけで、3月15〜17日、全日本ジムカーナ選手権の第1戦および第2戦が行われたモビリティリゾートもてぎ南コースで、サーキットのタイムアタックでも活躍するドライバーを直撃した。
  まず、ジムカーナとタイムアタックの“二刀流”としておなじみのドライバーが、ポルシェ911 GT3RSで全日本ジムカーナ選手権のPE1クラスに参戦している古谷和久選手だ。
「もともとは19歳から26歳までジムカーナをやっていたんですけど、その後はレースとタイムアタックを中心に活動していました。2022年に2ペダルのクラスが設定されたのでジムカーナに復帰したんですけど、いまもジムカーナのシーズンオフにタイムアタックをしています」と古谷選手。
  そんな古谷選手がジムカーナとタイムアタックに共通するテクニックとして挙げたのがブレーキングで、「ジムカーナを初めた当初はミニサーキットしか走ったことがないので、初期制動の強いブレーキングができなかった。ブレーキを踏み増ししながらターインするようなブレーキングしかできなかったんですけど、タイムアタックで国際コースを走るようになってから初期で車速を殺して、リリースしながらコントロールするブレーキングを覚えましたが、そのブレーキングはジムカーナに戻ってきてからも生かすようになりました。いまでは2種類のブレーキングを使い分けています」とのことだ。
  その以外の部分でも共通することが多く、「確かにサイドターンはジムカーナだけのテクニックですが、フロントに荷重をかけて曲がっていくという部分では、ジムカーナもタイムアタックも同じです。とくに、ポルシェ911はフロントに荷重をかけてあげないとアンダーステアになるので積極的に荷重をかけています」と古谷選手は語る。
  一方、ジムカーナで学んだことがサーキットでも生かされているようで、古谷選手によれば「ジムカーナはタイヤが冷えた状態で走らなければいけないんですけど、その経験がレースで役に立ちました。冷えた状態から攻められるので、レース序盤で首位に立つことができるようになりました」とのことだ。
  気になるマシンに関しても、古谷選手はジムカーナとサーキットはほぼ同じセッティングで参戦しているようで、「ジムカーナでは規定に合わせてフロントタイヤは245/40/19、リヤタイヤは285/35/19を装着していますが、タイムアタックではフロントに265/35/20、リヤに325/20/20を装着。それに合わせてジムカーナはキャンバーを立てたりと、クルマを曲げやすいようにアライメントを変えていますが、それ以外は大きく変えていません」とのことだ。
  こうしてジムカーナとサーキットでのタイムアタックを両立させている古谷選手は、3月17日に行われた全日本ジムカーナ選手権の第2戦において、PE2クラスで3位に入賞したほか、筑波サーキットではラジアルタイヤで1分フラットの好タイムをマーク。「ポルシェ911はオールマイティなのでジムカーナもサーキットも楽しいです」と語るように、二刀流を満喫している。
  また、全日本ジムカーナ選手権のPN3クラスにトヨタGR86で参戦する西野洋平選手も筑波サーキットを舞台にタイムアタックを行なっているドライバーのひとりで、16日に開催された第1戦でクラス5位に入賞したほか、筑波サーキットでのタイムアタックにおいてもジムカーナ仕様のマシンで1分5秒をマークしている。
「車速はサーキットのほうが高いですし、サイドターンはジムカーナだけのテクニックですけど、基本的なドライビングは同じだと思います。このコーナーを抜けて、次のコーナーにどうアプローチするのか……という部分も同じです」と西野選手。
  そのうえで「コース適応能力はジムカーナドライバーのほうが高いと思います。ウォームアップでコースの状況を把握したり、路温の低い状態でアタックする部分においてはジムカーナドライバーのほうが長けていると思いますが、どうしてもジムカーナドライバーはコンパクトに走る傾向にあります。タイムアタックのスペシャリストをみると、高速コーナーのアプローチやタイヤのウォームアップの仕方とかは上手いですね」と西野選手は付け加える。
  一方、マシンに関しても西野選手はジムカーナ仕様の状態でタイムアタックを行なっているようで、「ジムカーナ用のブレーキパッドは1周か2周しか走れないので、タイムアタックなら大丈夫ですが、レースに出る場合、ブレーキパッドは変えた方がいいでしょう。最初は自分もレース用のパッドとローターに交換していましたが、いまはタイヤを含めてジムカーナ仕様のままで走っています」とのことで、西野選手はジムカーナのパッケージのまま、サーキットのタイムアタックに挑んでいるそうだ。
人によって考え方やマシンのセッティンが異なるのもポイント
  これと同様に全日本ジムカーナ選手権のPN3クラスで活躍するユウ選手もサーキットのタイムアタック競技で活躍するドライバーだ。全日本ジムカーナ選手権では2023年にPN3クラスで3連覇を達成したほか、2024年も第1戦で2位、第2戦で3位に入賞。さらに筑波サーキットのタイムアタックでは、1分5秒をマークするなど、まさにジムカーナとサーキットのタイムアタックで躍進している。
  そんなユウ選手も、「コースを攻略するという意味ではジムカーナもサーキットでのタイムアタックも同じだと思います。それでも、サーキットは車速域が高いのでクルマのもっているエネルギーが大きく、たとえば筑波サーキットの80RではGの入れ替わりなんかはジムカーナにはない感覚。それに、富士スピードウェイの100Rのように、カントがついている長いコーナーはジムカーナにはないので、いままでに感じたことのない感覚がありますね」と分析している。
  さらに、ユウ選手は「たとえばジムカーナドライバーはブレーキングでグッと止めて、グッと曲がることが上手いんですけど、サーキットではそうしちゃいけないコーナーも多い。どうしてもサーキットに対する完熟度が低いので、僕はブレーキで止めすぎる傾向にあるんですけど、タイムアタックのスペシャリストはそうではないので、止め過ぎない、曲げ過ぎないように注意しています」とブレーキングの使い方の違いを解説する。
  一方、マシンに関してユウ選手はジムカーナもサーキットのタイムアタックも同じセッティングで行なっているようで、ユウ選手によれば、「サーキットを周回する場合、ブレーキパッドを変えないと危ないけれど、タイムアタックの周回数は少ないのでブレーキパッドもタイヤもそのままの状態で走っています」とのことである。
  そして、ジムカーナもサーキットでのタイムアタックも徹底的にチューニングしたマシンで取り組んでいるドライバーがホンダS2000を駆る広瀬献選手にほかならない。2023年の全日本ジムカーナ選手権ではリヤ駆動の最速クラス、BC2クラスで3連覇を達成したほか、筑波サーキットのタイムアタックでは1分0秒4をマークするなど、両カテゴリーで素晴らしいパフォーマンスを発揮。
  そんな広瀬選手は「基本的にジムカーナもサーキットのタイムアタックもドライビングは同じです。もちろん、ブレーキングについていえば、“止めるブレーキ”と“曲げるブレーキ”があって、曲げるブレーキがメインとなるジムカーナに対して、サーキットではスピードレンジの高いコーナーが多いので、止めるブレーキが長くなったりと微妙に違う部分はあるんですけど、ドライビング的にはほぼ変わらないと思います」と分析している。
  気になるマシンに関しても、「ジムカーナではサイドターンを行うのでリヤのブレーキパッドはメタルにしていますからね。そのままの状態でサーキットを走ると3周ぐらいで終わっちゃうから、サーキットでタイムアタックをする場合は、リヤのブレーキパッドだけ交換していますが、それ以外はそのままの状態です。車高もバネレートもジムカーナ仕様のままタイムアタックしています」とのことである。
  ちなみに広瀬選手によると、メンタル的なアプローチでいえばジムカーナとタイムアタックは近く、「サーキットではタイムウォーマーを使えますが、筑波のタイムアタックもコースインして2周目にタイムアタックを行うので、メンタルの持っていき方はジムカーナに近いと思います」と語る。
  さらに広瀬選手は「タイムアタックでは2周目にピークを合わせるために、タイヤはもちろん、最近ではブレーキやミッションも温めていますが、ジムカーナではそれが許されていない。ジムカーナはスタートしてから、できるだけ早くピークに持っていってタイムを出さないといけない……という部分で難しさはありますが、タイムアタックも1周目にタイヤやブレーキが冷えていきますからね。そのあたりの難しさはありますが、ジムカーナドライバーはすぐにピークへ持っていくことに慣れています」とのことだ。
  以上、4名のドライバーに話を聞いてみたが、ジムカーナもサーキットのタイムアタックも共通する部分が多く、その違いを意識してアジャストすれば両カテゴリーに対応可能。さらにマシンに関してもブレーキパッドを交換すれば、それぞれのカテゴリーでマシンのパフォーマンスを活かせることから、ジムカーナドライバーたちはサーキットでも好タイムをマークしているのである。

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