【開発ストーリー】ゲーミフィケーション×インフォグラフィックで町がもっと好きになる!金山町ちがいさがしに見る自治体広報のミライ

2024.03.19 11:02
セガ エックスディー(以下、セガXD)とあさひ会計は、山形県金山町(かねやままち)と連携し、公会計の情報や行政の施策について紹介する冊子『金山町ちがいさがし』を2022年11月にリリースしました。


『金山町ちがいさがし』は、「公会計」や「町政」といった難解なテーマについて、町民の方が楽しく考えられるきっかけとなることを目指して企画・制作されました。


ゲーミフィケーションを活用した体験デザインに強みを持つセガ エックスディーが手がける『金山町ちがいさがし』の特徴は、表紙が現在の町と20年後の未来の町の様子を比較した「間違い探し」になっていることです。


誰もが一度は遊んだことがある「間違い探し」の遊びと、視覚的に情報を伝えるインフォグラフィックの手法を取り入れることによって、町民の方が「つい見てみたくなる」行政文書にデザインしました。


▼『金山町ちがいさがし』PDF版はこちら
都心・地方に限らず、町民とのコミュニケーションや行政への参加意欲の低下を課題と考える自治体は少なくありません。


『金山町ちがいさがし』の開発に携わった荻野(プロデューサー)と桑原(プロダクトマネージャー)に開発背景を取材し、行政と町民のコミュニケーションのあり方に、ゲーミフィケーションがどのように寄与するのかを話してもらいました。
「公会計のプロ」×「開かれた行政」で模索する、”コミュニケーションのあり方”
ーー早速ですが、「町ちがいさがし」はどのような経緯でプロジェクトをスタートしたのでしょうか?


荻野:あさひ会計の田牧様とは、当社代表の谷とイベントでご一緒させていただいたのが接点です。
田牧様は東北を中心に企業や自治体の税務業務をサポートしている税理士法人あさひ会計グループの代表を務められています。


自治体の会計業務支援を通じて、自治体の財政情報を町民の皆さんに届けることの難しさを課題に感じる中で、ゲーミフィケーションやセガ エックスディーの情緒価値を訴求するような体験設計の考え方に共感していただき共同開発のお話をいただきました。


桑原:田牧様からご相談の際に共有いただいたのが、国税庁が発表している「国の財政を家計に例える」ような記事でした。これを起点に、行政と町民が自分が住む町と向き合うためのコンテンツ制作のプロジェクトが始まりました。




ーー今回、協力いただいた金山町はどのような経緯で合流されたのでしょうか?


荻野:金山町様には、「町ちがいさがし」の着想がある程度固まった段階で、あさひ会計様からご紹介いただき、プロジェクトに参画していただきました。


金山町は日本で初めて情報公開条例を制定した自治体で、いわば「開かれた行政」を日本でどの市町村よりも先駆けて行ってきた自治体です。現在も町民の皆さん目線の情報発信を心がけて町づくりをされているので、この取り組みの趣旨に共感いただきました。


地方公会計のプロと情報の透明性や双方向のコミュニケーションを重んじる自治体、そしてゲーミフィケーションをコアナレッジとしたCXデザインに強みをもつ当社、三位一体となって行政と町民のコミュニケーションのあり方に向き合ったプロジェクトです。
実は「町、間違い、待ち時間」のトリプルミーニング
ーー「町ちがいさがし」の着想はどのようなものだったのでしょうか。


荻野:本プロジェクトの目的は「町民に町の財政に興味をもっていただくこと」であり、着想の原点となったのは、田牧様から共有いただいた国の財政を家計にたとえるコンテンツでした。


桑原:私たちが改めて企画を考える中で、町民の方も私たちと同じく、行政や会計知識が無い上に関心も薄い人だと想定すると、町の財政や行政の情報を自分ごと化、読み進めたくなるようなコンテンツにするには、もっと嚙み砕いた表現が必要に思えました。


荻野:また、伝えるべき情報は必ずしもポジティブであるとは限りません。芳しくない財政状況や、予算繰りが難しくインフラが縮小などネガティブな情報も町の現状として伝えることも必要です。そういったネガティブな町の現状も理解してもらいながら、地域づくりのために行政と町民が向き合わなくてはいけません。


桑原さんには企画・プロジェクト面でリードしてもらい、町民の方の心を動かすような自治体の広報誌の”理想の形”を検討してもらいました。ボツ案になったのは、ラブレターや町の伸びしろの成績表、健康診断結果などです。


桑原:色々考えましたよね...手に取ってもらえる情報ってなんだろうなと自分の身近にあるものを思い出しながら沢山アイデアを出していました。




ーー「町ちがいさがし」の読み手はどのような方を意識していましたか?


桑原:今回の「町ちがいさがし」の制作にあたってターゲットにしたのは、普段から行政サービスやまちづくりとの距離が近い人です。例えば自営業の方や、、お子さんが生まれたばかりの親御さん、介護が必要な家族を持つ人のように、行政との接点を持つことが多いと予想される方ですね。
桑原:当初は、学生や小さな子供など、町の未来を担う人たちに向けて...と考えていたのですが、金山町の年代別人口の推移を見ると進学や就職のタイミングで町外に引っ越してしまう若者が多いことがわかりました。せっかく町の行政について理解を深めても、行政や地域のコミュニティに参加する年齢になる頃には町を離れてしまう傾向にあるということです。そこでまず最初のターゲットとしては、これからも町に住み続ける可能性の高い人たちに焦点をあてることにしました。


行政の施策は一朝一夕でどうにかなるものではなく、中長期的な取り組みがほとんどです。町民の方とのコミュニケーションの最初のステップとしては、これまでもこれからも町に根差した暮らしをしていて、継続的に町の在り方に向き合える可能性が高い人に情報を届けるのがベストだと考えました。






ーーゲーミフィケーションやエンタテインメントが施策に活きてくる理由について教えてください。


荻野:ゲーム性やエンタテインメント性を活かした「やりたくなる仕掛け」により、その人の行動に対するモチベーションを向上できると考えています。


セガ エックスディーが専門性を持つゲーミフィケーションの得意分野は、「重要性はわかっているものの、やらない・やりたくない」にあたる領域です。


私たちは自身の行動を決めるにあたって「重要か・重要ではないか」という軸と、「やりたいか・やりたくないか」という軸の中で行動する傾向があります。大抵の人は「やりたくて重要性を感じること」については抵抗感がなく率先して行います。


一方、耳が痛い話ですが「重要だとわかるけれど、やらない、やりたくない」と思う物事については、消極的になり、大抵の人はやらないという選択になりがちです。


公会計や行政に関する情報は、一般的に「重要性を感じつつも、(わからない・難しいから)やらない、やりたくない」に該当すると思うので、ゲーミフィケーションが活きてくると考えました。ゲームやエンタテインメントの「ついやってしまう」「つかってみたくなる」仕組みが、心理的なハードルを下げて行動の後押しをしてくれます。
ーー「町ちがいさがし」を冊子形式にした経緯を教えてください。


桑原:セガ エックスディーでは、アプリやWEBサービスなどデジタルを活用したサービスをご提案することが多いですが、金山町は人口のおよそ四割が六十五歳以上の方です。


スマホが普及してデジタルリテラシーが高い高齢者も増えていますが、多くの町民の方に「町ちがいさがし」を手に取ってもらいたいので、普段からなじみのある冊子の形式で配布することにしました。


荻野:一方で金山町以外の様々な方に見ていただく場合も考慮し、金山町の町役場のホームページでは「町ちがいさがし」のPDFも公開されています。


広報活動を通じて「町ちがいさがし」に興味をもってくださった人や、金山町を離れている人、移住を検討している人にとってはデジタルの方が便利ですから、目的とターゲットに応じた使い分けをしています。




今回のケースに限らず、お客様の課題や目指しているものをヒアリングする中で最適な届け方を考えてご提案をしています。






ーー「町ちがいさがし」の着想やプロジェクトはどのように進められたのでしょうか?


桑原:プロジェクト自体は大体6か月で、企画に2か月、制作に3か月、あとは広報連携などで約1か月といったイメージでしょうか。


「町ちがいさがし」は町と間違い探しのダブルミーニングになっていますが、実は「待ち時間を、町の未来を考える時間に変える、間違い探し」が元のコンセプトで、トリプルミーニングだったんです(笑)。


荻野:行政の手続きや交通機関の待ち時間に手に取ってもらえればと思ったのですが、町の担当者の方にお伺いしたところ、金山町ではあまり待ち時間が発生しないということで、ダブルミーニングになりました(泣)。


桑原:間違い探しに注目した理由は、某有名ファミリーレストランが客席に設置している間違い探しが話題になっていたからです。小さな子供が料理を待つ間に楽しむための暇つぶしかと思いきや、意外にも難易度が高く、大人もついつい夢中になってしまうんです。


実際に私も面白いと感じて遊んでいる一人で、「最初の1品目が運ばれてくるまでに全ての間違いをみつけきる!」という自分なりの縛りを作って楽しんでいます。(笑)


誰にでもわかりやすいルールで、幅広い年代の人が夢中になれる普遍的な楽しさが良いフックになると思い、表紙のアイデアに採用しました。
ブレない・失速しないプロジェクト進行、秘訣は“セーブポイント”の存在
ーー確かに、いきなり町の行政を解説するより、間違い探しを通じて変化に気づいてからの方が理由や解説が欲しい気持ちになりますね。企画の方向性が決まった後はどのように進んだのでしょうか?


桑原:打合せを重ねながら掲載する情報や内容、文言を決めていきました。最後は週2回以上、あさひ会計様、金山町様と細かい議論や検討を重ねて、入稿の直前までブラッシュアップしていきました。
自治体の広報誌としてオフィシャルなものとして発信する以上、町民の方にわかりやすく、かつ心に響く言葉や表現になっているかを意識しました。


荻野:最終確認のフェーズでは、プロジェクトオーナーであるあさひ会計様と金山町の職員の皆様と一緒に、テキストを一行ずつ読み合わせしました。




ーー「町ちがいさがし」は全9ページですが、掲載する情報の取捨選択は大変ではありませんか?


桑原:そうですね、どうしてもより多くの情報を伝えなくてはという気持ちになってしまいがちです。しかしもっとも重要なのは、「読み手の方に受け取っていただけるかどうか」なので、丁度良い塩梅を考えていました。
情報の取捨選択に役立ったのはプロジェクトの始めに作成したステートメントです。ステートメントとは、「町ちがいさがし」の目指すところやありたい姿を言語化したものです。これは議論を進めて行くうえで迷った際に、全員で立ち返ることができる“セーブポイント”のような役割を果たします。


常に大元の目的に立ち返る場所があったことで、情報の選別や意思決定が出来たように思います。このステートメントは、実際の「町ちがいさがし」のまえがきにもなっています。
桑原:デザインに関してはパートナー企業さんに協力してもらう際に、私がインフォグラフィックのイメージをラフに起こして共有していました。テキストよりもビジュアルで伝えることでデザイナーとの齟齬が生まれにくくなり、作業のスピードも早まります。
大変でしたが、金山町が将来どんな姿になっていくのかを想像しながらイラストに起こしていく作業は楽しかった工程の1つでした。




荻野:「町ちがいさがし」は、あさひ会計様、金山町様などプロジェクトに携わった方々の思いが凝縮されているので、実際に出来上がった冊子を手に取った時は本当に感動しました。
“わかりやすい”から考える、意見が集まる、自分の住む町が好きになる
ーー「町ちがいさがし」の成果面や評価はいかがでしょうか?


荻野:「町ちがいさがし」の中で金山町の特産品である「金山杉」を使った産業のアイデアを募ったところ、1週間もせずに回答が約100件集まったそうです。


冊子を読んですぐにアンケートに答えてくれるほど熱量が高い方が多くいらっしゃったのは大変嬉しいです。また、集まったアイデアから新たなビジネスが生まれるのが楽しみです。


桑原:町役場以外でも、認定こども園や小中学校、新庄南高校金山校にお子さんがいるご家庭にも配布されました。親子で町の行政について向き合うきっかけになったとも伺っています。




ーー「町ちがいさがし」は自治体の広報活動にどのように役立つと思いますか?


桑原:町の状況をフラットに理解してもらうことは、簡単なようで難しくて、日本中の自治体担当者の方々が頭を悩ませている課題なのではないかと思います。「町ちがいさがし」は、行政広報・自治体広報を通じて、町民の皆様とのコンセンサスの形成を行いたい場合にマッチするサービスだと思います。


また、「町ちがいさがし」の制作過程では、町民の皆様に向けて何をどう伝えるのがベストなのかをプロジェクトメンバー全員で本気で考え抜きます。そのプロセスは、自治体職員の皆様にとっても、自分たちの町に対する理解や愛着をさらに深めるきっかけになるのではないかと感じています。


「町ちがいさがし」は、税収や人口が急激に増えるといった魔法のような施策ではありませんが、地域活性化のためには町民の皆様の理解と協力が不可欠です。地域に住む住民と行政が歩み寄り、目線合わせができる施策が今まで以上に必要になってくるかと考えています。




ーーゲーミフィケーションが自治体や行政の分野で役立てることはどんなことでしょうか?


荻野:自治体の皆様が抱えている課題は様々ありますが、我々の得意領域である「ゲーミフィケーション」や「エンタテインメント」を活用した体験設計は、自治体や行政広報など情報発信の分野と相性が良いです。


自治体から発信する内容にゲームやエンタテインメントの要素を加えることで、「つい気になって見たくなる」ようなコンテンツにするなど「伝え方」をデザインすることで、今までの方法では解決できなかった課題をクリアできる可能性があります。


荻野:また、地方創生や地域活性化はさまざまなアプローチが考えられますが、どれも地域の方の協力が必要です。住民が自分の住む町に関心を持つことで、主体的に行政と関わるような世界を今後様々な自治体とのコラボレーションを通じて生み出していきたいです。


今回お声がけいただいたあさひ会計様をはじめ、「町ちがいさがし」第一弾の実施にあたり、ご協力いただいた金山町役場の皆様、プロジェクトにご賛同いただいた金山町議会の皆様に改めて御礼申し上げます。






金山町とは23年の4月より今後3年間において集中的に町の生活基盤となるデジタルサービスの導入・整備を行っていくことを目指して、セガ エックスディーとトータルアドバイザー契約を締結し、推進計画の策定、サービスの具体化を進めております。


今後も金山町の皆さんがより充実した毎日を過ごせるように町役場の皆さんと手を取り合ってプロジェクトを推進します。

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