この記事をまとめると
■自車でサーキット走行をする多くの人がなんらかのカスタムを加えている
■だがカスタムパーツのなかにはサーキット走行に向かないものもある
■機能パーツであっても素材や取り付け方によっては危険なものもある
ドレスアップ目的ではOKでもサーキット走行ではNGなものも
20年ほど前まではサーキットというと、GTやフォーミュラなどの大きなレースの観戦や、かなり特殊な走りを極めようとする人たちだけが利用する施設という認識でしたが、今ではカスタムショップやオーナーズクラブなどが主催する走行会が多く開催されるようになってきたこともあって、サーキットを自分の愛車で走行することはそれほど特殊なことではなくなってきています。
それに伴って、以前の本気の人たちだけが走っていた時代とは異なり、サーキット独自のマナーやルールをよく知らずにサーキット走行を行う人も多くなってきたという声も聞かれるようになりました。
走行ルールやマナーについては主催者や先輩方が教えてあげれば、それ以降は迷惑にならないような走り方ができるようになりますが、クルマの状態について他人がアドバイスするのはなかなか難しいものがあります。
ここでは、「サーキットを走るのにそれはないだろう……」という、もしかするとトラブルの原因になりそうな装備やパーツについて話していこうと思います。
■走行中に破損するような部品はNG
まずは、エアロなどの外装や足まわりのパーツでサーキットの走行には向かない恐れのあるものを挙げていきましょう。
見せかけだけのウイング
外装品でいちばん多く見られるのが、市販の大型ウイングをただ取り付けただけというケースです。
しっかりしたM8以上の太さのボルトで留めてあるならまだいいのですが、トランクの外板に穴を空けるのがイヤだったという理由で、強力な両面テープで留めただけというケースを、オフ会やミーティングの参加車両で見掛けることがありますが、あれはサーキットどころか街乗りでも不安です。装着直後はしっかり付いているようでも、気温が下がるとテープは弾力がなくなっていくので、ちょっとの隙間が広がって固定力が徐々に落ちる恐れがあります。
また、穴を空けてボルトで留めてあるケースでも、固定の相手がトランクの鉄板一枚だけでは、ダウンフォースに負けて曲がってしまい、最悪の場合は脱落してしまうこともあり得ます。
もし車幅いっぱいあるようなサイズのウイングを装着するなら、トランクの裏にしっかりとしたフレームを添えてガッチリ固定するようにしましょう。
万が一にも脱落してしまったら、後続の車両に大きな被害が及ぶ恐れがあります。
ホームセンター素材のカナード
これも上のウイングと同じですが、ただ形だけ真似て「アルポリ板」や「カーボンプレート」をM6サイズの小さいビス数本で留めただけのケースを見掛けます。面積的にもこの部分には大きなダウンフォースは掛かりませんが、高速走行での乱流で揉まれて脱落する恐れはじゅうぶんありますので、振動でモゲたりしないようにしっかり固定しましょう。
アルミ製のホイールナット
普段はしょっちゅう持ち上げる機会がないのであまり実感できないかもしれませんが、ホイールとタイヤの重量はかなりなものです。それが固定されるホイールハブには、高速で回転する重量物の負荷に加えて、コーナーやブレーキでは車体の重量の何倍かの荷重が掛かります。
鋼鉄製のホイールナットならまず強度面での問題は起こらないと思いますが、たまにファッション目的のアルミ製のアルマイト処理された派手なナットを装着している車両を見掛けます。ひんぱんに問題が起きているとの話も聞きませんが、鋼鉄とアルミでは耐久性で何倍かの差がありますので、何度もサーキットで激しい走りをする場合は強度限界を超えてしまうことも考えられます。
せめてサーキットを走るときだけでも鋼鉄製のナットに替えておきましょう。
ワイドトレッドスペーサー
ホイールのオフセットの「ツライチ」微調整用のアイテムとして、ドレスアップ系のカスタム車両ではよく使われている「ワイドトレッドスペーサー」ですが、あれもサーキット走行では使用しないほうがいいでしょう。ホイールとハブはボルトとナットの強度と並んで、接合面の摩擦で支えられているという側面があります。その間に余計な部品が挟まっていると、摩擦の効果が半減してしまいます。その状態で激しい走りをおこなうと、接合面がずれてしまい、ハブボルトに余計な負荷が掛かることになります。最悪の場合はホイールが脱落してしまうので、サーキット走行時は必ず外しておきましょう。
インテリアパーツであっても信頼できるブランドを選ぶ!
FRP(カーボン)製ボンネット
これについては、その品物自体がダメなのではなく、固定方法に問題があるケースをたまに見掛けるので注意して欲しいという話です。
純正のボンネットは鋼板でできているので、走行の風圧でも歪んだりすることはほぼありませんが、社外のFRPやカーボン製のボンネットの場合は軽量化の目的もあって、純正ほどの強度が持たされていないモノも多いようです。
これを純正の真ん中のキャッチだけの固定で使用すると、高い速度域では角がめくれ上がってしまう恐れがあります。たいていは速度が下がれば弾力で元に戻りますが、向かい風などで風圧が高まった場合はめくれが大きくなってキャッチの付け根からモゲてしまうこともあり得ます。アレだけの面積の板がめくれてしまうと、いくら軽量とはいえ、フロントガラスを割ってしまうくらいの衝撃になることもあります。しかも前方の視界はほぼゼロになり、危険極まります。
もしFRPやカーボン製のボンネットでサーキット走行する場合は、前の両脇付近で追加固定するための「ボンネットピン」を必ず装着しましょう。
メーカー不明のステアリングホイール
操作系のパーツでは、ステアリングホイールの強度が問題になる場合があります。有名メーカーの品であれば、強度的にサーキットの使用で問題が出ることはないと思いますが、WEBショップなどで販売されているメーカー不明の品物は、強度計算などしていない可能性がそれなりにあると思います。
サーキット走行では街乗りの何倍ものGが発生します。そのGに耐えながらコーナーリングのステアリング操作をおこなっているとき、ドライバーは無意識にハンドルで自身の体重を支えていることがけっこうあります。万が一その荷重に耐えられずにステアリングのスポークが折れてしまうようなことがあれば、クルマは操作不能になってしまいます。
これも、サーキットを走るときだけでもしっかりとした強度を持った製品を使うようにしましょう。
LEDテープなどの後付けイルミネーション
街乗りで個性のアピールをしたいということで、ボンネットとヘッドライトの隙間やサイドシルの下の方などにLEDのイルミネーションを追加している車両を街中ではたまに見掛けますが、サーキット走行では脱落の恐れがあるので外しておきましょう。事前の車検がある走行会なら間違いなく外して欲しいといわれると思いますが、ほかの参加者に迷惑を掛けることになる前に外しておいたほうがいいと思います。
自作のラッピング
これはパーツではありませんが、カッティングシートやバイナルなどを自分で入手して、自力で施工した場合は、サーキット走行の激しい風圧で剥がれないように、端をガムテープなどで押さえておくことを勧めます。これもボンネットと同様に視界を妨げる恐れがあるので危険です。
サーキットでは、街なかとは桁の違う激しい風圧や強いGなどの大きな負荷がクルマの各部に掛かります。それを踏まえないで安易に自分の判断でパーツを装着して走行してしまうと、自分だけでなくほかの参加者に迷惑を掛けてしまうこともあり得ます。サーキットは公道とは異なり保険も適用されませんので、自分の非が原因でトラブルを生んでしまわないように、十分強度などを検討したうえで装着するようにしましょう。
※記事内の画像は全てイメージです