2025年には自動運転車にお客として乗れる! 日産が自動運転の新たなステージに進んだ

2024.03.11 17:00
この記事をまとめると
■日産は2018年より横浜市内で自動運転の実証実験を行っている
■2024年度より新たな実証実験をスタートさせる
■段階を踏んで、全国に実験エリアを広げていく予定だ
日産の自動運転技術は次のパートへ
「自動運転」という単語、ここ数年でよく耳にするようになったという人も多いのではないだろうか。いま、物流や公共交通機関は深刻な人手不足に陥っていながら、需要は減るどころか増える一方で、人材確保が追いついてないのが実情だ。
  その人手不足を解消する手段として、「自動運転技術」の開発が急ピッチで進んでいる。実際、トヨタやホンダは実証実験と称し、東京オリンピック・パラリンピックの会場や、各自治体の施設内で走らせており、実用化に向けて日々データを蓄積している
  そんな自動運転の分野には、いまから6年前の2018年に日産も参入している(発表は2013年)。それが、神奈川県横浜市のみなとみらい地区を拠点に行われた、一般車混走環境下における実証実験だ。このときはLEAFをベースに、「セーフティドライバー」と「同乗エンジニア」、「車外補助員」の3人体制で運用し、課題出しなどを行っていた。
  その後、同じく神奈川県横浜市のみなとみらい地区〜石川町を拠点に、乗降地を15カ所ほど設置し、複数のルートを走らせるという実験に2019年に移行。このときの車両はe-NV200とし、2客席を設置。運用は「セーフティドライバー」と「同乗エンジニア」はそのままに、「車外補助員」から「遠隔監視」へとシフト。
  そして2021年には、同じ車両を用いながら、乗降地を同じエリア内のまま23カ所に拡大、客席を3席に増やし、車両には「セーフティドライバー」のみという段階に至るまで信頼性を構築した(遠隔監視は引き続き備わっていた)。このときの自動運転レベルは2相当であった。
  日産は、このように実際に公道で段階を踏んで実証実験を行ってきた、いわば公道における自動運転のスペシャリストでもある。
  その日産が2024年2月28日に、「自社開発のドライバーレス自動運転によるモビリティサービスの事業化に向けたロードマップ」というものを発表した。これはさらに領域を拡大した、自動運転に関する実験を行うという内容だ。
  順に説明しよう。
  まずは2024年度に、いままで同様に横浜市みなとみらい地区を拠点とし、車両をセレナに置き換えて自動運転の走行実験を行う。これは、2021年に行った実験内容をそのままスライドし、より多くの項目などを試すといった具合だ。
※今回展示された車両はリーフとなっているが、本車両に搭載されるユニットがそのままセレナに流用される。
  そして2025〜26年度からはより実用的な内容となる。このときに想定している自動運転車両における実証実験は、横浜市みなとみらい地区、桜木町、関内を拠点とし、20台ほどに増やして実証実験を開始する。これには「セーフティドライバー」が同乗する。2027年度には、地方を含む3〜4の市町村に車両を数十台配備し、自動運転車による送迎を可能とするサービスを開始するといった流れだ。
  ここで使われる技術は、最終的には「自動運転レベル4」という規格を目指すという。「レベル4」は、簡単にいうと、限定された条件下において、システムが運転操作のすべて実施し、ドライバーが運転席を離れることができる領域を指す。なので、スマートフォンやPCの操作、映像の視聴も可能だ。
「レベル3」ではドライバーがいなければならないほか、自動運転が可能となるのは渋滞時の高速道路などの限定された領域。「レベル2」とは異なり、自動運転中にドライバーが前方を注視不要な「アイズオフ」機能も備えているが、先述のようにこれらは限られた条件でしか作動しないほか、そもそもドライバーが必要なので、「人手不足」の壁を打破するシステムにはならない。
  しかし、今回の「レベル4」であれば、「レベル3」までにあったさまざまな課題を打破できる可能性を秘めている。
タクシーでもバスでもない位置を目指す
  今回、日産がこのような実験に踏み切った理由には、「移動の危機」があったという。というのも、コロナ禍もあり、地方では利用客減少に伴うバスやタクシーが激減している状況があるという。その数、2020年から2024年の現在までに20%減というデータが出ている。距離でたとえると、バスでは8667kmも減少しているそうだ。ちなみにタクシードライバーの平均年齢は58.3歳。こちらも高齢化が顕著だ。高齢ドライバーの免許返納に関する話題が大きくなる一方で、タクシー業界では真逆の現象が起きている。
  この実証実験で日産は、移動の自由をより普及させ、次世代の移動を目指すとのことだ。これは、「タクシーでもバスでもない」乗り物という位置付けになるようで、タクシーやバスのライバルを想定しておらず、パッセンジャービークルではないとのこと。あくまで公共移動の1種だそう。
  将来的にこの自動運転車は、バーチャルやデジタル技術を用いた停留所を設置して、「どこにいても1分歩けば停留所」というのをコンセプトとしている。「どこから乗り降りしてもいいじゃん」という声もあったようだが、これは「公共交通機関=停留所」という認識が強い高齢者に向けた配慮だという。
  なお、この実験では2025年より実際に乗客を乗せてテストすることを想定している。
  まずは、観光客や仕事で神奈川県外から訪れるユーザーをターゲットとし、その次に横浜市民に乗ってもらうように段階を踏むとのことだ。最初に20台しか用意しないので、この台数で足りるかどうかも様子を見ながら判断するそうだ。
  2027年からは有償化する予定で、価格は路線バス以上タクシー未満あたりになるよう考えているようだ。あくまで利益を生むためにやるサービスではないというスタンスだ。
  日産の自動運転に関する研究を行なっている総合研究所の所長である土井三浩氏は、「タクシーは1メーターごとに料金が上がっていくような仕組みかつ人が動かすので、使いづらいという声も多いので、気兼ねなく使い倒せるAIのメリットを感じてもらいたい。また、人間ではなくAIが動かす自動運転は、運転が人がやるよりも正確で上手なのが特徴です。実際、日産の看板技術でもある「e-4ROCE」と組み合わせた滑りやすい路面では、人間よりも素早く反応し車体を安定させます。こういった技術と自動運転はとくに相性がいいのが特徴です。自動運転技術の進化によって、より安心で安全なクルマが生まれると思います」と語ってくれた。
  いよいよ「自動運転? そんなのまだまだ先の話だし俺たちには無縁だね」といえない段階になってきた。確かに、自動運転が普及すれば人間がクルマを操るという喜びは薄れ、無機質で楽しくない乗り物になってしまうかもしれないし、「そもそも自動運転に頼るような人がクルマに乗るな」なんて声も一部からは聞こえる。
  しかし、ヒューマンエラーは絶対に避けられない要因であるし、人間である以上どんなに運転が上手い人であっても疲労や睡魔から逃げることは不可能。機械も誤作動を起こすかもしれないが、とある分野ではエラー率は人間の半分以下ともいわれており、人間よりはリスクが低い。今後、その数値はよりブラッシュアップされるはずだ。
  そして、どこでもある程度運転できる人材の育成も、そう簡単にはいかないのが実情。それがまさに今の社会で起きていて、人手不足を誘発している。そんな問題に、人やクルマがあってこその自動車メーカーが先陣を切って実験を行うのは大きな意味があるといえる。
  夢の世界はもうすぐそこかもしれない。

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