「地球沸騰化」の時代に、住めば住むほどCO2排出量を削減する「住宅」を考える

2024.03.07 10:00
目次
・日本の世帯あたりの年間CO2排出量は2.57トン】
・1年で使うエネルギーの約74%※1が自然エネルギーの「GREENMODEL」
・多雪エリア向け※2のモデル「GREENMODEL-S」はスマートハイムナビ(HEMS)が季節に応じて蓄電池の運転を自動で切り替え
・実証実験でCO2排出量マイナス0.8トン※3の「自給自足型住宅※4」


※1 [試算条件]太陽光10.36kW、蓄電池12kWh(グリーンモード) 、快適エアリー(1階)+エアコン(2階)、建築地:名古屋、電力データを基に試算、電力契約:中部電力(2023年4月時点)、オール電化、エコキュート、延床面積:134.12㎡、UA値:0.54。実際の数値はお客様の邸ごとの敷地条件、プラン、設備仕様、生活スタイルなどにより自給自足率や電力を賄える期間が上記数値に満たない場合があります。数値は目安であり、保証するものではありません。
※2 北海道及び一部離島地域を除く
※3 CO2排出量=(消費電力量-発電量)×CO2排出係数で試算。商用電力の排出係数:0.47kg-CO2/kWhとして試算。使用する環境等の条件によっては、当該数値を満たさない場合があります。
※4 すべての電力を賄えるわけではありません。電力会社から電気を購入する必要があります。




2023年11月末から12月初旬にかけて開催された気候変動に関する国際カンファレンス「COP28」。「およそ10年間で化石燃料から転換する」ことなどを盛り込んだ成果文書が採択され、大きな注目を集めた。日本でも地球規模の課題解決に向け、2050年カーボンニュートラルを宣言、脱炭素を推進している。昨年、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「地球は沸騰化の時代」に入ったと話したが、実際2023年の日本の夏は災害級ともいえる猛暑となり、世界の平均気温も7月に観測史上最高を記録した。
日本の世帯あたりの年間CO2排出量は2.57トン
環境省の調査によると、日本の家庭部門で世帯あたりの年間CO2排出量(電気、ガス、灯油の合計)は2.57t-CO2(令和4年度、
)だという。この数値を下げていくためには、住宅の太陽光発電などで電気をつくる「創エネ」や、エネルギーの使い方を効率化する「省エネ」が求められている。日本の温室効果ガス排出量のうち家計関連は21%といわれている(
)。企業・公共部門関連と比べると小さいが、無視できる数字ではない。


「セキスイハイムでは『GREENMODEL』(グリーンモデル)という積水化学の先端技術を集結させたエネルギー自給自足型※4を目指す住宅を提供しています」


※4 すべての電力を賄えるわけではありません。電力会社から電気を購入する必要があります。
豊田はHEMSの立ち上げにもかかわり、自然エネルギーに長年取り組んできた


そう話すのは積水化学の住宅カンパニー 経営戦略部の豊田洋一だ。豊田は技術系で入社、セキスイハイム独自のHEMS(Home Energy Management System)「スマートハイムナビ」の立ち上げなどにも関わり、その後GREENMODELの担当へ。このGREENMODELはセキスイハイムにおける環境フラッグシップモデルの住宅だ。大容量の太陽光発電システム(以下PV)で創電し、それを大容量蓄電池に蓄電しスマートハイムナビで効率的に使う仕組みを用意している。
1年で使うエネルギーの約74%※1が自然エネルギーの「GREENMODEL」
「GREENMODELの暮らしでは、1年で使うエネルギーの約3/4(約74%)※1に、化石燃料由来の電力ではない自然エネルギーを用います。できるだけ電気を買わない自給自足型※4を目指しており、地球環境に優しい暮らしができるのはもちろん、電気を買う量が少ないため光熱費の削減につながる経済性も兼ね備えています」
同社では、一日中ほぼ太陽光発電だけで暮らす日が年間で約200日と試算もしている※1。GREENMODELによる、環境貢献はどれくらいなのだろうか。


※1 [試算条件]太陽光10.36kW、蓄電池12kWh(グリーンモード) 、快適エアリー(1階)+エアコン(2階)、建築地:名古屋、電力データを基に試算、電力契約:中部電力(2023年4月時点)、オール電化、エコキュート、延床面積:134.12㎡、UA値:0.54。実際の数値はお客様の邸ごとの敷地条件、プラン、設備仕様、生活スタイルなどにより自給自足率や電力を賄える期間が上記数値に満たない場合があります。数値は目安であり、保証するものではありません。
※4 すべての電力を賄えるわけではありません。電力会社から電気を購入する必要があります。


「GREENMODELを建てて暮らすことは、例えばですが杉の木約152本分を植林する環境貢献の効果に相当します」※1※5


※5 CO2排出量=(買電気量-売電気量)×CO2排出係数で試算。環境省・経産省令和4年度公表
より0.441kg-CO2/kWh(代替値)を用いて試算。電力データ:実邸HEMSデータをもとに試算。  「
」(関東森林管理局)をもとに作成。
吉弘は環境省からの委託事業を推進した


わかりやすい例で教えてくれたのは豊田と共に取材に応じた積水化学の住宅カンパニー 経営戦略部 マーケティング部の吉弘麻衣子だ。彼女は後述する環境省の委託事業でプロジェクトヘッドを務め、実証実験を推進した後、マーケティング部に異動。現在はGREENMODELを含めた積水化学の住宅性能を多くの人に伝えていく仕事をしている。


「経済性も高く、GREENMODEL入居邸(324邸)のうち光熱費収支で0円以下を実現されたのは95%にものぼります※6」
※6 実際のGREENMODEL入居邸のHEMSデータより「買電価格―売電価格=0円以下」の比率。電気代の基本料金、再エネ賦課金、燃料調整費は含みません。


昨今、光熱費の値上がりが話題となっているが、自然エネルギーをうまく利活用することで支出を削減、ついには収支のゼロ化も実現可能というわけだ。


「環境性能への注目度は年々高まっていますが、ここ数年はコロナ禍により家で過ごす時間が増え、電気代を節約したいというニーズの高まりがありました。それにより、想像以上のご相談をいただいています」と両氏は話す。


さらに最近では自然災害が激甚化し、レジリエンス性能にも注目が集まっているという。


「私たちは災害時だけでなく、平常時、災害発生時、災害後という三つの段階でそれぞれレジリエンス性能を高めていく取り組みをしています。例えば平常時、冬は心地よく、夏はエアコンに頼り過ぎない快適な暮らしのための空気質と温熱環境づくりを目指しています。また地震などの災害時においては強靱(きょうじん)な住まいの構造が求められます。1度だけでなく繰り返す地震にも強さを発揮する必要があります。さらに、災害後は停電時にも電気が使え※7、いつも通りに近い暮らしを送れることを目指しています」
そう豊田は話し、次に2023年に新しく登場したGREENMODELの多雪エリア向け※2のモデルについて教えてくれた。


※7 蓄電池の残量がないと復旧しません。停電時の電力使用が可能な範囲は、蓄電池や事前設計により異なります。同時に使用できる電力には限りがあります。
※2 北海道及び一部離島地域を除く
多雪エリア向け※2のモデル「GREENMODEL-S」はスマートハイムナビ(HEMS)が季節に応じて蓄電池の運転を自動で切り替え
太陽光発電の課題は日照時間によって創電に差が出てきてしまうことだ。多雪エリアでは積雪期間のPVの発電量が不足し、豪雪などによる停電時に蓄電池が十分に充電されないリスクがある。このためレジリエンスの観点から多雪エリアでの「GREENMODEL」シリーズの導入には至っていなかった。しかし多雪エリアでもGREEMODELを届けたいと豊田らは開発を試み、新たにHEMS「スマートハイムナビ」の「多雪エリア専用の蓄電池グリーンモード運転機能」(特許出願中)を開発。「スマートハイムナビ」が季節に応じて蓄電池の運転を自動で切り替える仕組みを実現した。一年中停電時の安心・安全を守りながら※7、夏季(5~10月)のエネルギー自給自足率85%※8を可能にしたという。


※7 蓄電池の残量がないと復旧しません。停電時の電力使用が可能な範囲は、蓄電池や事前設計により異なります。同時に使用できる電力には限りがあります。
※8 [試算条件]建築地:新潟、UA値0.46、延床面積:123.77㎡、太陽光発電8.64kW、蓄電池12kWh(グリーンモード多雪)、調理:IHヒーター、給湯:エコキュート、空調:快適エアリー(1階)+エアコン(2階)、電力使用量:実邸HEMSデータを基に試算。使用する環境等の条件によっては、当該数値を満たさない場合があります。


「これはスマートハイムナビが季節に応じて蓄電池の運転を自動で切り替えるというものです。例えば冬季(11~4月)は、深夜電力で毎晩蓄電池に充電して豪雪等による突然の停電に備え、夏季(5~10月)は日中のPV余剰電力を優先的に活用して蓄電池に充電することで、できるだけ電気を買わない暮らしを実現します」
多雪エリア向けの「GREENMODEL-S」を提供するまでには苦労もあったという


豊田は「私どもは2011年からスマートハイムナビを標準採用しており、蓄積されてきたデータは10年以上となっています。この膨大なデータから商品開発を進めており、通常のGREENMODELはもちろん、今回のGREENMODEL-Sの性能も当社ならではのものといえます」と胸を張る。
今回の新機能「多雪エリア専用の蓄電池グリーンモード運転機能」も、過去の気象データと多雪エリアのセキスイハイム約1800棟の最大4年分のHEMSデータをもとに、季節に応じて二つの蓄電池運転モードを自動で切り替える。まさにデータの蓄積が商品開発に生かされているのだ。
また、GREENMODELをはじめとする積水化学の住宅セキスイハイムは、家づくりの大半を工場で行うユニット工法を採用している。これは現場で組み立てるよりも、断熱性能や気密性能などの精度を高めるための工夫だという。「工場でつくることで計画通りの断熱・気密性能を実現できる」と話し、ソフトウェアだけでなくハード面での工夫もあり進化を続けられているのだという。
実証実験でCO2排出量マイナス0.8トン※3の「自給自足型住宅※4」
※3 セキスイハイムのオーナー累計478邸で電力量をモニタリングした結果。CO2排出量=(消費電力量-発電量)×CO2排出係数で試算。商用電力の排出係数:0.47kg-CO2/kWhとして試算。使用する環境等の条件によっては、当該数値を満たさない場合があります。
※4 すべての電力を賄えるわけではありません。電力会社から電気を購入する必要があります。


積水化学では、環境省の委託事業に採択され、2021年6月から技術開発とその技術を実装したオーナー宅にて実証実験を行った。実証実験はセキスイハイムのオーナー累計478邸で電力量データをモニタリングし、実生活において居住中に消費するエネルギーを上回るエネルギーをPV等により創出できるかどうかを検証するというもの。
「実証実験にあたって、最大10.08kWの大容量PVと12kWh※9の大容量蓄電池、さらにV2H(Vehicle to Home)を1台のパワーコンディショナーで接続する新トライブリッド蓄電システムを開発しました。各設備は電力変換ロスの少ない直流で接続され、効率的なエネルギー活用を可能としています。PVによりたっぷり発電したエネルギーを自家消費し、さらに居住者の省エネ行動を促すことで自邸でのCO2排出量が抑制されます。余剰電力は売電し、地域社会へ還元しています」


※9 カタログ値であって実際に使用できる容量とは異なります。
吉弘は「自社だけでは実証実験のスピード感は出せなかった」と環境省らと一体となって取り組んだメリットを話す


現状のGREENMODELにないものとして、新たにスマートハイムアプリもプロジェクトで開発した、と吉弘は話す。
「居住者の行動変容によるさらなるエネルギー消費量低減を図るため、省エネ生活をサポートするスマートハイムアプリの試作開発も行いました。アプリ利用で設備を効果的に使うためのスケジュール生成と各自の省エネ行動により、オーナー様の実生活におけるエネルギー消費量が低減し、CO2排出量削減効果が発現することを実証しました」
スマートフォンアプリは調整を加え、今後のGREENMODELに展開していくことも目指しているという。
今回の実証実験でCO2排出量は1邸あたり平均で実質マイナス0.8t- CO2/年※3となったという。つまり、住めば住むほど自然エネルギーの活用で年間のCO2排出量収支の実質マイナスを目指せる。


※3 CO2排出量=(消費電力量-発電量)×CO2排出係数で試算。商用電力の排出係数:0.47kg-CO2/kWhとして試算。使用する環境等の条件によっては、当該数値を満たさない場合があります。


「文字通り、自給自足型※4住宅を実現できそうな結果となりました。今後はこの実証実験の成果もふまえて、GREENMODELへ組み込んでいき、アップデートをしていけたら」と吉弘が話すと豊田もうなずき、続けた。


※4 すべての電力を賄えるわけではありません。電力会社から電気を購入する必要があります。


「積水化学は昨今話題のペロブスカイト太陽電池などの先進エネルギー設備に加え、多様な材料・素材を資産として持っています。これらの資産を住宅に活用していくことも検討しながら、GREENMODELは常に環境性能・経済性・レジリエンス性能の先進モデルであり続けたいという思いで、日々企画開発をしています」


そして、この実証実験について紹介した研究論文が、電気・情報工学分野の世界最大規模の学術研究団体・技術標準化機関(IEEE)が主催する国際学会で最高位の「金賞」を獲得した。これは積水化学にとっても初であり、住宅業界としても珍しい快挙だ。


世界中が気候変動問題に向き合う中、この大きな社会課題に対して住宅性能で挑戦を続ける豊田たちの取り組みに終わりはない。GREENMODELは常にアップデートを続けている。
(関連リンク)


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