ダイキン工業とJDSCの長期的な協創を見据えて〜これからも多くの提案と、課題解決までの併走に期待したい〜【ダイキン工業株式会社 常務執行役員 米田 裕二さまインタビュー】

2024.02.01 15:00
ダイキン工業とJDSCは、
やデータサイエンス人材の育成、デジタルツインの構築などさまざまな協業をしています。今回は、同社常務執行役員でテクノロジー・イノベーションセンター長の米田裕二さまに、JDSCとの出合いから両社の協業、プロジェクト推進、そしてビジネス変革に対するお考えや今後の協業について伺いました。
– 本日は宜しくお願いいたします。はじめに、ダイキン工業さまとJDSCが出合ったきっかけを教えていただけますでしょうか。


UTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)さんから「有力なベンチャー企業」としてご紹介いただきました。いわゆる東大発のベンチャー企業はたくさんありますが、UTEC代表の方がJDSCさんを推しておられ、この方が言うなら間違いないと思ったのが最初です。


「AIのデータ分析をする会社」と伺って、私の方から話を聞きたいとJDSCを訪問しました。その際、初めて代表の加藤さんとお話ししたのですが、とてもハイレベルなことを考えていて、非常に優秀な方だと感じました。


私自身、さまざまな会社の代表者と面会するのですが、経営の話をすることなく、いきなり案件のお話し、つまりは何らかの業務発注の話になってしまうことが多くあります。しかし、加藤さんは違いました。「課題の発掘とインパクトを把握するところから一緒にやりましょう」という言葉が非常に刺さり、ぜひ一緒に何か仕事がしたいと思ったことを覚えています。


加藤さんが他のAIベンチャーとの違いを「成果を出し続けていくこと。そのために、クイックウィンの創出にこだわること」と語られたのも印象的でした。そして「UPGRADE JAPAN」という会社のビジョンにも感銘を受けました。


– 多くの企業がある中で、加藤の言葉が刺さったのは嬉しく思います。この出合いの後、当社への出資やプロジェクトの進行へと続きますが、どのように話が進んだのでしょうか?


もちろん、他にもいろんなCEOと会っておりまして、それぞれ良いものを持っていらっしゃる方が多くいます。その中でJDSCさんは、データ活用や社会実装の考え方などダイキンと多くの共通点があると感じました。


具体的なテーマづくりや課題設定など、プロジェクトを進めるうえでも両社の相性の良さを実感しました。長期的にお付き合いしたいという観点から、当時のJDSCさんに「困りごとがあれば一緒に考えましょう」と提案させていただき、出資にも至りました。


– 多くの企業を訪問されているとのお話しですが、ベンチャーとの協業で、どのような点を重視されていたのでしょうか?


当時は特にベンチャーとの協業に力を入れ始めた初期でしたので、自ら出かけていく機会が今以上にありました。というのも、私自身、自分の目で見て納得したい思いが強く、自ら出向くことが多いのです。


ベンチャー企業で最初に重視するのは、CEOの魅力と人間力だと思います。そして、ダイキンのやりたいことに柔軟に対応していただけるかという観点も大事です。もちろん、当社が上から目線で行くのではなく、ベンチャーの方々のお考えをしっかり聞いて、素晴らしい経営者、素晴らしい企業であれば、お付き合いをしていきたいと常々考えています。


– 実際に両社でプロジェクトを進める中で、大切にされていることをお聞かせください。


どのプロジェクトも「課題設定」が非常に重要で、これが仕事の半分だと思います。このプロセスは非常に大切なもので、JDSCさんとダイキンの双方の強みを生かして何をするのか、その課題を共に検討し、両社で共有すること。これが非常に上手くいきました。


そして、現場でやる気になってくれた社員がいたことも大きかったです。JDSCさんを紹介した際に生産本部のメンバーが「やるぞ」と言い出して、彼ら自身のやりたいことが形になったこと。これは非常に大きな成果です。JDSCさんは、現場のメンバーのモチベーションやプロジェクトの推進効率が上がるように入り込んでくださり、多くのサポートをいただきました。


最初の取り組みは、年間数億円の成果は既に創出できていますが、会社の全体の業績と比較すると、これ自体はそれほど大きいものではありません。ただ、現場メンバーのモチベーションを上げていただいていること、これはとても大きいものであると思っています。成果につきましても、地味ながらも、しっかりとした基盤構築の上にやっているので、方向性は正しく、今後は深掘りして更に広げていきたいと思います。故障検知やルームエアコンのクレーム推定など、まだまだ発展の余地があるのではないかと思っています。
– 協業の成果についてはどう思われますか?


私は常々「結果は結果だ」と思っています。何かしらの挑戦をしても、必ずしも成果につながらないケースが多々あります。しかしながら、結果だけにとらわれることはありません。結果以上に、関わっている社員の技術力やレベルが上がったり、他者から感謝されることがなかったりすれば、それは「やらされ仕事」になってしまい、大したことができないと思うんです。やりがいのあるテーマをいかにつくるか、これがつまり、先ほど申し上げた課題設定と一緒で、大変重要なことです。


1つの大きな成功を勝ち取るよりも、小さな成功を積み重ねていく方が当社にとって良いことだと考えています。大上段に最初から構えると大抵失敗するもので、無理のない自然な形で小さな成功を重ねていけば、次にもっと大きなものにつながります。野球でもそうですが、バッターボックスでずっとホームランを打ち続けることは無理ですので、まずは打席に立ち、そして出塁することが先だと考えます。


そして、そもそも技術開発というのは成功率が少ないものです。人員をかけるか、時間をかけるか、お金をかけるかのいずれかをすれば、今の世の中大抵のことはできます。ですが、会社にとって今必要なことを優先順位づけしていかなければなりません。


「面白いから」だけでやるのもリソースが分散してしまい成果が出ません。成功するためには領域を絞らなければならないのです。それでは、どこにフォーカスするのかが大事で、テーマを絞っていけば、自ずと結果が出てきます。JDSCさんとの協業については、私ひとりでは実現できないことがたくさんあるという意図を汲んで、生産本部メンバーは頑張ってくれたと思います。ルームエアコンの故障推定や統計などの解析は品質管理のプロセスは旧態依然としており、成果に期待していたところもあります。


JDSCの関与メンバーは皆、ダイキンや空調機器について理解すること、課題の解決に対して熱心だったこともありがたく思いました。誠実で優秀な方が多く、推進しやすかったと感じます。両社が同じ方向を向けたからこそ、成果につながりましたね。
– 現在は、業務用製品にもチャレンジさせていただいております。


両社のプロジェクト開始当初から、最終的には業務用製品をやっていきたいと考えていたのですが、品質データの分析という観点でいうと、台数が多いルームエアコンの方がデータが多く集まり、やりやすいと感じていました。


そもそものお話しですが、実はルームエアコンも業務用マルチエアコンも、内部の組み込みソフトの基本的な考え方については30年位前からそんなに大きく進化はしておらず、異常検知の方法も大きくは変わっていないんです。今の時代でしたら、推定のアルゴリズムやデータからの推定などがもっとできるはずで、これをどう突破していくかが課題でありますし、可能性があります。故障予知や内部アルゴリズムの進化は、アラートを発出する観点でも、まだまだデータ分析によって高度化できるところは多々あると考えています。
また、大事なことは、これらをどうマネタイズするかです。業務用製品はサービス収入を別途いただける可能性がありますが、ルームエアコンは厳しい面があります。ただ、両社の取り組みをフックにして、信頼性の高い機器を普及させることにつながると思いますし、安心、安全をしっかりやっている企業が最終的に生き残ると考えています。


もちろん、儲かるビジネスにできるかはまた別の話です。商品開発やサービスができたとして、それを事業にするには壁があります。商品開発は投資に見合うかを経営判断してGOとなりますので、最初にしっかりビジネスモデルを検討しないとPoCだけで終わってしまいます。これは避けたいことです。ビジネスをスタートするには、仮説を立てないとだいたい失敗してしまいます。そして、仮説でつくったものを適宜方向変換していかないといけません。100発100中というものはなく、製品を出す過程において市場ニーズを的確にとらえて変化していかないと、技術者満足だけで終わって結果として売れないことになってしまいます。ソフトウェアやアルゴリズムは大切ですが、競合との差別性もしっかり検討する必要があります。良い製品を出さなければ、自然淘汰されてしまいます。これはいわゆる「ダーウィンの海」(事業化から事業成功までの間にある障壁)を越えられるかという問題です。


私自身、うまくいかなかったということも、ごまんとありますよ(笑)


ですが、私は「やらない後悔よりも、やってみて後悔したい」と考える人間です。


– 「空気で答えを出す会社」というキーワードに我々JDSCも貢献していきたいと考えています。JDSCへの期待を教えてください。


「空気で答えを出す」は少し抽象的な表現でもありますので、このコンセプトをどういうビジネスにつなげていくか、どう技術に落とすかが重要です。ぜひJDSCさんには、引き続きオペレーションの最適化から新たな価値作りまで提案をしていただきたいです。
JDSCさんはすでにダイキンのことも空調機器のことを十二分に知っていらっしゃるので、当社のバイタリティがあって行動力のある社員に新しい提案をいただくと花が開くことが多いと思います。


JDSCさんには、これからもどんどん提案していただきたいです。面白いテーマをたくさん持ち込んでほしいですね。面白そうなことには、いろんな人が寄ってきます。
そして、今後もどう社会貢献につながる協創ができるか、日頃からコミュニケーションを続けていき、課題設定から課題解決の最後まで並走、併走していただきたいと思います。非常に期待しています。


– 世の中に新たな価値をつくっていきたく、これからも連携させていただけますと幸いです。本日はありがとうございました。




JDSCは蓄積されたデータサイエンスの知見を基に、AIや機械学習、数理最適化などの先端技術を社会実装することで、日本のアップグレードを目指しています。


■ JDSCホームページ
■ 製造業向けDX支援AI・データサイエンスの叡智で、製造業のDX改革に貢献

あわせて読みたい

デル・テクノロジーズ、企業や大学が、AIを通じてイノベーションを促進する「DXイノベーションコネクト」を提供開始
PR TIMES
キリンビバレッジは今年10月から導入、ソフトバンクがAIを活用した自販機業界向けDXサービス「Vendy」を提供開始
@DIME
子どもから大人まで楽しめる!ライチ収穫体験プラン
PR TIMES Topics
IT・DXの課題に幅広く対応し、企業の変革に伴走するDX支援コンサルティング
talentbook
あなたの会社のDX、勘違いしていませんか ? 「わかる」と「役立つ」の違い
現代ビジネス
【想いが伝わる贈り物】希少なリベリカ種を使用した豊かな味わいのバラココーヒー
PR TIMES Topics
転職せず「この会社にいて大丈夫」と思ってほしい──そんな企業が実はやっていること
ITmedia ビジネスオンライン
ダイキン、日立、三菱電機、三菱重工…3Q決算で前期の「通期受注額に到達」した会社とは? - ダイヤモンド 決算報
ダイヤモンド・オンライン
新TVCM「アニメとススメ!」篇放送開始
antenna
「やってる感」に陥りがち…DXに悩む日本企業で変革を阻む壁の「正体」 
現代ビジネス
【新刊】生成AI活用の最前線部隊が得た知見を大公開!
PR TIMES
「クロワッサン・ブッシュ」綿半スーパーセンター権堂店で先行発売開始
PR TIMES Topics
出身者が考える「コンサルティング会社」の活用方法
ZUU online
DATAFLUCTのPerswellが、経済産業省主催「SUPER-DXコンテスト」で優秀賞を受賞。「スーパーマーケット・トレードショー」での表彰と展示が決定。
PR TIMES
plus eauより初夏の限定フレグランス“紫陽花”シリーズ数量限定発売
PR TIMES Topics
プロ人材活用が新規事業推進の“案内人”に。創業124年のNECが「HiPro Direct」を導入した理由
PR TIMES STORY
アクセンチュアとアドビがマーケティングの変革を加速させる業界特化型の生成AIソリューションを開発
@DIME
はちみつビューティーブランドHACCI「モイスト リップエッセンス BEE KISS」の新色登場
PR TIMES Topics
生成AIで薬機法チェックを効率化!Allganizeの新アプリが業界を変える救世主に
PR TIMES STORY
働き手を確保するために求められるのは、求心力
ZUU online
昭和レトロな「アデリアレトロ」とコラボした「アデリアレトロ シーリングスタンプ」販売!
PR TIMES Topics