メルセデスのマイバッハのようにアウディにはホルヒがある! 中国でグレート名でひっそり復活していた「ホルヒ」ってそもそも何?

2024.01.10 17:20
この記事をまとめると
■中国仕様のアウディA8には最高級グレードとして「ホルヒ」の名称が使われている
■もともと「ホルヒ」は創業者のアウグスト・ホルヒが設立した自動車メーカーの名称だった
■「ホルヒ」は高性能を売りにした高級車として欧州ではかなりの人気を博した
アウディの伝説のブランド「ホルヒ」が中国で復活
  アウディA8、いわずとしれた同社のトップレンジを担う高級セダンですが、じつは中国市場むけに「ホルヒ」の名が復活しています。A8のなかでも最上級グレードのみに使用される名前ですが、そもそもはアウディそのものの生みの親となったブランドネームなのです。
  安っぽいマーケッター的な表現をすれば「メルセデスにマイバッハがあるように、アウディにはホルヒがある」みたいな感じ。トップモデルに復活させるなど、売り方もマイバッハに通じるところがありますが、はたして「ホルヒ」の復活は成功するのでしょうか。
  アウグスト・ホルヒ、彼はもともとダイムラーとベンツが合併する以前のベンツ工場でエンジニアとして働いていた人物で、19世紀末(1898年)には独立して自らの名を冠した自動車メーカー「ホルヒ」を創立しました。といっても、クルマ作りはもうしばらくあとのことで、最初は修理&カスタム工場として商売をしていたとされています。
  オリジナルのTYPE4/5PSをリリースしたのが1901年といいますから、そのまま続いていたら100年ブランドの仲間入りを果たしていたはずです。その後、TYPE18/22PSという高性能版を作ると、ドイツの国内レース「Hel kommer Cup(ヘルコマーカップ)」に出場し、最小排気量クラスで見事優勝を飾ったのです。当時は珍しかったアルミ鋳造シリンダーブロックを使ったのが特徴で、高性能を宣伝文句として高らかに謳っていたのでした。
  ところが、1909年にアウグストはほかの重役と意見が対立し、自分が作った会社から追い出されることに。ドイツ人エンジニアって人種は、頑固というか偏屈というか、ビジネス向きなのはポルシェ博士くらいしかいないのでしょうね(笑)。で、アウグストはツヴィッカウという場所に「ホルヒ・ツヴィッカウ」なる会社を興したのですが、これに元祖ホルヒは裁判所を通じて名称変更を命じたのです。ちなみに、この命令にアウグストがしぶしぶ従って、新たな名称にしたのがほかならぬ「アウディ」だったのです。
「ホルヒ」の名に恥じる残念なコスメティックチューン
  さて、アウグストが去ったあともホルヒは高性能路線をまっしぐら。直列8気筒エンジンの「853」や、V12の「670」などを立て続けにリリースして、欧州の高級車市場を席巻しました。たとえば1931年の「670」はV12エンジンを搭載しながら廉価な設定で、マイバッハ・ツェッペリン、グロッサー・メルセデスといったライバルたちに水をあけたとされています。
  その後、世界大恐慌のあおりをうけてホルヒ、DKW、ヴァンダラー、そしてアウディの4社が合併して「アウトウニオン」となったのは皆さまご承知のとおりです。それにしても、自分が作ったホルヒを追い出されたアウグストが、再びホルヒと同盟を組まざるを得なくなった気持ちを考えるとじつに複雑です。
  およそ50年後の1985年にアウトウニオンが「発音しやすい」という理由からアウディに名変されたものの、すでにアウグストはこの世を去っていた(1951年没)というなんとも言い難い幕引きとなっています。
  ところで、中国版A8Lホルヒは、ノーマルA8Lよりホイールベースが130mm延長されたいわゆるリムジーネで、トップレンジを担うにふさわしいモデルかと。
  とはいえ、ホルヒを表徴するのはいくつかのバッジと、ホイールセンターのエンブレム、拡張されたインテリアのアップグレードくらいのもの。往時のホルヒを知る者はほとんど鬼籍に入っているとはいえ、マイバッハが専用ボディや最上級エンジンを搭載したことなどを考えると「手抜き」呼ばわりされても致し方ありません。
  一見、アウディが中国市場のためにエクスクルーシブなモデルとして作ったと見えるかもしれませんが、コスメティックだけというのは、彼らが中国をどんな目で見ているか透けてみえる気がします。
  仮に本来の「高性能」を旗印にしたホルヒが復活したとしても、中国版にガッカリした人々を呼びもどすのは決して簡単なことではないでしょう。

あわせて読みたい

やっぱり上級ミニバンはもはや消滅したV6エンジンだろ! たとえ燃費が悪くてもHVや直4じゃ味わえない魅力を知ってくれ
WEB CARTOP
中国の自動車メーカーが「PHV強化」を急ぐ背景
東洋経済オンライン
世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」が追い求める「人の可能性」
antenna*
【国内試乗】フラッグシップモデルにしてS63史上最もパワフルでダイナミック!「メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス」
CARSMEET WEB
こっそりトヨタや日産も作ってた! まだまだいくぜ! ロータリーを諦めないマツダに大拍手だ!
ベストカーWeb
限界に挑戦し続ける姿勢とサステナブルな価値観。ヨットレース「アメリカズカップ」に世界が熱視線を送る理由
antenna*
ボディが段ボールってホント? レトロな感じが今でもそそる! 33年も作られ続けた国民車トラバントを知っているか?
ベストカーWeb
センチュリーにロールスロイス……2000万円超えは当たり前の日本で買える高級車!! 超高級車はどうやって進化していく?
ベストカーWeb
はちみつビューティーブランドHACCI「モイスト リップエッセンス BEE KISS」の新色登場
PR TIMES Topics
ランボルギーニ、その60年はV12と共にあり|60 Years of Lamborghini V12 Power
octane.jp
あのフェラーリ250GTOを生んだビッザリーニが自動車メーカーとして復活! 日本上陸も決定した
WEB CARTOP
焙煎所移転を機に併設されたSingle O Ryogoku Caféをグランドオープン
PR TIMES Topics
アスペンからツヴィッカウまで! 2024年、多くの国際イベントにアウディ・トラディションが自動車の至宝と共に登場。
CARSMEET WEB
FFなのにエンジン縦置き? トヨタ車初の前輪駆動車ターセルの変態っぷりにマイッタ!
ベストカーWeb
カゴメの新にんじん100%ジュース、そのおいしさの秘密は!?
antenna
なにやらキナ臭い? プーチンが金正恩へ高級車『アウルス』をプレゼント!? 独裁者たちの最新クルマ事情
ベストカーWeb
アウディにBMW……560馬力が330万円で手に入る!? 中古輸入車「上級カテゴリーの一つ下」がお買い得すぎた
ベストカーWeb
昭和レトロな「アデリアレトロ」とコラボした「アデリアレトロ シーリングスタンプ」販売!
PR TIMES Topics
プーチン大統領も金総書記も乗ってる! 日本じゃ見たことないロシアの「アウルス」は結構衝撃のスペックだった
WEB CARTOP
【ショールームツアー】時期により世界観が一変する、世界初のメルセデスハイエンドモデル専売店「スターズ@メルセデス・ベンツ銀座」
CARSMEET WEB
新TVCM「アニメとススメ!」篇放送開始
antenna