この記事をまとめると
■クルマのグループ分けとして「セグメント」が使われる
■Aセグメントいった具合にA〜F+セグメントという表記をされる
■だがその区分けに明確な基準はない
ザックリとクルマの全長で区分されている
フォルクスワーゲン・ゴルフを評して「Cセグメントのベンチマーク」と書かれることが多い。
ベンチマークというのは、比較する際の指標になることを示す言葉であるので、この一文が表現しているのは、「ゴルフは同クラスのライバル比較における基準になり得る」ということであって、もっとも優れているという意味ではないのだが、なぜかベンチマーク=レーダーチャートにおいてもっとも高得点という風に理解されていることが多いようだ。
それはさておき、「Cセグメント」という言葉についても、なんとなく理解しているようで、しっかり説明できる人は少ないのではないだろうか。
先に結論からいってしまうと、意味合いとしては「A~Eまでのアルファベット+セグメント」によってクルマを分類しているのだが、その基準については曖昧といえる。
そのため、セグメントに使えるアルファベットとして「A/B/C/D/E」までは、多くの分類において共通だが、Eの上にあたるクラスについて「F」を当てるケースもあれば、「L」としている場合もある。
厳密な基準はないのだが、おおよそのイメージを掴めるよう各セグメントに属する国産車を記すと次のようになる。
Aセグメント:軽自動車、パッソなど Bセグメント:ヤリス、フィットなど Cセグメント:カローラ、MAZDA3など Dセグメント:スカイラインなど Eセグメント:クラウンなど
さらに、CセグメントとDセグメントの中間という意味で「CDセグメント」という表記を見かけることもある。実際、マツダはMAZDA6についてCDセグメントカーという表記をニュースリリースにて使っていたこともある。
MAZDA NEWSROOMマツダ、次期北米向けCDセグメントカーを防府で生産|ニュースリリース
さて、こうしたセグメント分けにについて全長を基準とすべし、という見方は多い。しかしながら、上記の分類例を見てもわかるように、各セグメントの代表モデルは、まだまだ非SUVであることが多い。そして、多くの人気モデルにはSUVバリエーションが存在するようになっているのが昨今のトレンドだ。
仮にBセグメントの基準を全長4000mm±150mmに設定したとする。もし、Bセグメントのプラットフォームを使ったクロスオーバーSUVの全長がこの範囲を超えてしまうと、厳密に全長の数値を当てはめることにすると、SUVはCセグメントになってしまうともいえる。
たとえば、フィットの全長は3995mmなのでBセグメントとなるが、同等プラットフォームのSUVモデルであるヴェゼルは4330mmのため、Cセグメントに分類すべきとなる。
また、ヤリスの全長は3940mmでBセグメントのど真ん中といえるが、ヤリスクロスは4180mmとなる。全長だけで杓子定規に分類すると、同じ名前のシリーズながら、SUVバージョンのほうはギリギリCセグメントに入るという風になってしまう。
そのため、ヴェゼルやヤリスクロスについて、プラットフォームやアーキテクチャーを参考にしながら、自動車メディアでは「BセグメントのSUV」といった風に分類することが多いようだ。逆いうと、こうした分類方法に疑問を覚えないのだとすれば、●セグメントという表記について明確な基準があるわけではないということも理解できるだろう。
次のフルモデルチェンジでゴルフが「Dセグ」になる可能性も!
そもそも全長で区切るという分類についても、モデルチェンジごとにボディサイズが成長していることを考えると、適切な分類法なのか疑問も残る。
コンセプトもターゲットユーザーも大きく変わっていないのに、ボディサイズが拡大しただけでセグメントが変わってしまうというのは逆にわかりづらい。
たとえば、冒頭でVWゴルフはCセグメントのベンチマークと紹介されることが多いと記した。現行モデルの全長は約4.3mとなっているが、仮にここから15cmほど全長が伸びると全長だけを基準にするならDセグメントに分類すべきという意見も出てくるだろう。
しかし、市場トレンドの変化を掴むという意味では、全長だけにこだわるのは逆にわかりづらくなるともいえる。おそらくゴルフが大きくなればCセグメントの基準を微妙に調整していくと予想される。
前述したSUVも含む話になるが、結果としてサイズによるセグメントの分類を曖昧にして、マーケティング的な視点も含めて、セグメント分類をしているというのが現実に近いのではないだろうか。
いずれにしても、アルファベット+セグメントと表記される自動車の分類については、絶対的なルールが存在しているわけではない。つまり、エビデンスに基づくものではなく、たぶんに主観的な面もあるといえる。
ちなみに、日本における乗用車の分類としてオフィシャルに扱うことができるといえるのは、ボディサイズや排気量によって分類される「軽乗用車/小型乗用車/普通乗用車」と、ボディ形状を示す「箱型/幌型/ステーションワゴン」だけとなっている。しかしながら、これらを組み合わせて、「幌型の軽乗用車」だとか、「ステーションワゴンの普通乗用車」といった分類だけでは実際のマーケット事情に即していないのも事実。
結果としてアルファベット+セグメントというのは、リアルなクルマ選びにおいてライバルをまとめる便利な表記となっている面は否めない。
まとめると、自動車を分類する「セグメント」という言葉が説明できないことは問題ない。むしろ、セグメントという言葉は、時と場合によって微妙に意味が異なり、文脈によっては示す内容が異なるケースもあり得るということを理解しておくことのほうが重要だ。