生まれ育ったエリアと海や川の位置が違うと迷う!?方向感覚の不思議

2023.01.31 16:30
2023.01.31 up提供:RKBラジオ
福岡にいると、地下鉄の行き先を間違えたり、東西の向きが分からなくなったり…。生まれ育った関東で暮らしていた頃は方向感覚には自信があったはずなのに、なぜ? そんなモヤモヤした気持ちを抱えていたRKB毎日放送の神戸金史解説委員、最近はたと“理由らしきもの”に思い当たったという。専門家に聞いた方向感覚の不思議さを交えながら、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で語った。
自信があったのに福岡では「方向オンチ!」
多くの方が「私も同じです!」
空間認知の専門家に聞いてみた
海や山だけでなく主要道路の向きで判断も
頭の中にある2種類の「地図」
「地図が読めない女」は本当か?
方向感覚を磨くには?(おまけ)
自信があったのに福岡では「方向オンチ!」
年末年始に実家の群馬県に戻り、1月3日に新幹線で博多駅に着きました。そこから地下鉄に乗り換えましたが、天神方面とは逆の、福岡空港行きに乗ってしまいました。こんな乗り間違い、実は初めてではありません。「またやっちゃった!」という感じです。

僕はずっと「自分は方向感覚がいい」と思っていました。例えば、デパートの中でエスカレーターに乗って上の階に進んでいっても「どちら側が北か」がいつも分かっていて、それを軸にして「こっちに行ったらこれがある」と判断できていたんです。

それなのに福岡では、地下鉄に飛び乗ると反対向きに乗ってしまうことが本当に多い。ある時、妻から「あなたは本当に方向感覚が悪いねー」と言われて、すごくショックを受けたんです。

ところが、最近ふと気づいたんです。「川が流れる向き、海の方向が、生まれ育った関東と福岡では正反対だ」と。
多くの方が「私も同じです!」
僕の中では、「川はどっちに流れている」「海はどっちにある」という感覚が常にあるんです。関東生まれだったので、川は東か南に流れていって、南に海がある。これに原因があるんじゃないか? と考えて、フェイスブックにこんな文章を投稿しました。

本当に不思議なんだけど、福岡では方向感覚を一度リセットしないと、東西を間違う。人一倍方向感覚はよいと自覚してきた(ビルやデパートの中でも、東西南北が分かっていた)のだけど、ある時から突然間違えることが起きるようになった。
そして、間違うのは100%、川の流れる方向、海の位置と関係していることに気付いた。川は東か南に流れる関東で育った。日本海に面し、川が北に流れる福岡では、急ぐと必ず上り下りを間違ってしまう。
今日は急いでいなかったのに、博多駅で地下鉄に乗ったら、逆の福岡空港行きに。また群馬に帰る気かw 自分のことながら、本当に不思議だ。一駅で気づき、中洲川端行きに折り返す。(1月3日)
すると、かなりの方から「私も同じだ!」というコメントが寄せられました。まず、私と同じ、関東生まれで福岡在住の方。

(東京出身・福岡在住のAさん)
「ああ、一緒ですね! 私めは福岡にずーっと住んでるのに方向感覚が何時も逆なんです。他の町では分かる事多いのですが! 何なんでしょうね?」
次いで、福岡出身者のコメントです。

(福岡出身のBさん)
「凄く良く解ります! 私にとっての『海』は玄界灘でした。東京にいた頃は南北の感覚が???となる事が良くありました」
(福岡出身のCさん)
「福岡で育った私は全く逆で、就職で東京に出て暫くは海が有る方が北の感覚から抜け出せず、ドライブで地図を見るのに苦労しました」
こんなことが、あるんです。静岡の方2人からコメントを寄せていただきました。

(静岡出身のDさん)
「静岡県の裾野市というところで育ちました。北に富士山、東に箱根、西に愛鷹山。北に向かって緩やかな登りになっていて、方向感覚が全くありません。上り道を歩くと北に向かっていると思ってしまいます」
(静岡出身の転勤族・Eさん)
「海は南という感覚が身についていたので、北九州、福岡では変な感じだった。佐賀に行って内海の有明海でさらにわからなくなった」
空間認知の専門家に聞いてみた
これは一体どういうことなのか? 西南学院大学人間科学部(心理学科)の中村奈良江教授が「空間認知」を専門にしていらっしゃるので、お話をうかがってきました。
西南学院大学人間科学部(心理学科)の中村奈良江教授
神戸:人間は、方向を考える時に、海と川を意識したりしているものなのでしょうか。
中村:かなりの方がいらっしゃると思います。実際に私たちが方向を判断する時、一般的には地図を見て「こっちが北だ」と判断したり、太陽の動きで「東がこっち」と判断するんですけど、太陽が見えない時も地図がない時もあるので、これまでの経験から、山から太陽が昇ってきたら「山の方が、東だ」、海に太陽が沈んだら「海の方が、西だ」と、地形を方向に結びつけてしまっている。
神戸:あー…、はい。
中村:方向は、太陽とか磁石とか、何かの手掛かりがないと分からないですよね。ない時は、地形だけで判断するようになる。
神戸:なるほど!
中村:長いこと住んでいる時の地形が方向の手掛かりになる。どこかに移ると、地形だけが持っていかれて、その地形があるのがその方向だと決めてしまう。それで間違う。
僕の感覚は、間違っていなかった。本当にホッとしたんです。
海や山だけでなく主要道路の向きで判断も
でも、デパートなどの建物の中にいたら、海も山も見えません。それなのに、なぜ方向感覚がつかめたりつかめなかったりするのだろう?

神戸:天神にいても、いつも川を見てるわけじゃないんです。
中村:そうなんです、海も山も見えないんです。おそらく、海とか山とか川とか、主要な地形に対する「道路の向き」というものを私たちは把握していて、地形の次に「メイン道路の向き」で判断しているんじゃないかな、と思うんですよね。 
神戸:間違いなく、私はそうです。渡辺通りが、少しだけ西に傾いていますよね。
中村:すごーく正確だと思います。ほとんどの人は北に向いていると思ってます。
神戸:うちの妻は「全く考えない」と言っていました。「そんなことを考えているのはおかしいよ」と言われたんですけど。
中村:そんなことないです。大都市から移って来られて、福岡に来てショックを受けられる方がだいぶいます。前に、大阪の方も同じことをおっしゃいました。
神戸:よかった、勘違いじゃないですね。
中村:そうですね。
頭の中にある2種類の「地図」
面白いですね。方向感覚を考える時に、2つの種類に分けて考えるといいらしい、と先生が話されました。

神戸:妻から「あなたは本当に方向感覚が悪いね」と言われた時のショックは、非常に大きかったんです。
中村:いや、そうではないですね。ものすごく大きな範囲で東西南北を把握して方向を基準に行動する。その次に狭い領域ってやる。参照するから間違えるのであって、参照する人の方が基本的には方向感覚がいいんですよね。
神戸:ふむ、そうですよね。
中村:参照しないでも、全部覚えていれば行けるんです。
神戸:方向じゃなくて、「次は右に曲がる、次には左に曲がる」と覚えている人は行ける…。
中村:名前がついていて、そういうのを「ルートマップ」と言っていて、全部を参照するのを「サーベイマップ」と言うんです。
神戸:サーベイは、「俯瞰している」という意味ですね。ルートマップとサーベイマップ。僕は、サーベイマップで行動していて、それを1回変換しなきゃいけないから、福岡でかなり苦しんだ、と。
中村:そうです、そうです。
「ルートマップ」と「サーベイマップ」、2つあるんですって。妻はルートマップで、「右に曲がる、次は左に曲がる」と考えて動く人。私はサーベイマップ、頭の中でなんとなく地図を思い浮かべて動く人。

何度も引っ越ししている人は、サーベイマップ感覚が生まれにくい、というのです。妻の親は転勤族だったので、海がどちらにあるかなんて関係ない。
「地図が読めない女」は本当か?
20年前に「話を聞かない男、地図が読めない女」という本がベストセラーになりました。中村先生に「性別は関係あるのですか?」と聞いてみたら「基本的にはないでしょう」と。あるとすれば、育てられ方=ジェンダー(社会的・文化的につくられる性別)ですね。



男の子 外に出て活発に 男らしく

女の子 家の中でおしとやかに 女らしく



こういう育てられ方をする傾向がまだありますから、サーベイマップ感覚を男の人が持っていることが多い、というだけの話みたいです。

方向感覚を考える時、自分はどちらのタイプかと考えるのはいいかもしれません。自分が方向音痴だと思っている人は、「地図感覚の問題なんだ」と思うと安心するかもしれません。私はこの取材で、かなり安心しました。
方向感覚を磨くには?(おまけ)
時間の関係で番組内ではお届けできなかった、中村先生の言葉です。方向感覚を磨く時の参考にしてください。

中村:方向感覚を取り入れるとか、小学校で勉強しないので、本当は子供の頃から「今、海はどっち?」って聞くとか、見えない所の方向を聞くような行動をしょっちゅうしてれば、できるはずなんですよ。
中村:娘が神戸の大学に行ったら、神戸のデパートはエスカレーターの上り下りが「海側に行く」「山側に行く」って書いてあるんですね。ものすごい方向音痴だったのに、それで移動のたびに「自分は山の方に行ってる」「海の方に行ってる」というのを身につけた。今は東京に住んでいますけど、 方向感覚の取り入れ方がわかって、だいぶ鍛えられて。
神戸:福岡に来た時は間違うんじゃないですか?
中村:そうかもしれないですね。やってみないといけない。ほんとですね。
神戸:面白い!
◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。
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田畑竜介 Grooooow Up放送局:RKBラジオ放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分出演者:田畑竜介、武田伊央、神戸金史
※放送情報は変更となる場合があります。

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