いまの軽自動車が霞むほどの個性の塊! 1960年代の軽自動車がヤバイくらい面白い

2022.11.02 17:20
この記事をまとめると
■日本のモータリゼーションは軽自動車によって育ってきた
■その代表といえるのが1958年に登場したスバル360
■今回は1960年代に売られていた軽自動車を振り返る
軽自動車という規格が日本の自動車産業を育てた
  日本のモータリゼーションは軽自動車によって育ってきたというのは事実です。実際、新車販売の4割弱は軽自動車となっていますし、保有台数全体でみても軽自動車のシェアは40%となっています。
  ちなみに、2022年3月末時点での保有台数(ナンバーがついた状態で世の中に存在している台数)は軽自動車が3130万8530台、登録車は4699万5718台となっています。
  現在、軽自動車を生産しているメーカーは、N-BOXが大ヒットし続けているホンダをはじめ、スペシャリストであるダイハツやスズキ、そして日産との協業による軽自動車の生産を担っている三菱自動車の4社だけとなっています。
  しかし、かつてはもっと多くのメーカーがオリジナルの軽自動車を開発・生産していました。むしろ軽自動車という規格が日本の自動車産業を育てていったといっても過言ではありません。
  その代表といえるのが、1958年に富士重工業が初めての量産四輪車として生み出した「スバル360」でしょう。
  1955年に通商産業省(現在の経済産業省)の提唱した「国民車構想」を受けたモデルといわれることもあるスバル360ですが、厳密にいうと国民車構想は“最高時速100km以上、定員4人、エンジン排気量350~500cc、燃費30km/L以上、販売価格25万円以下”といった内容で軽自動車に限った話ではありませんでした。
  とはいえ、軽自動車のサイズで4人を収めるパッケージを実現していたことで「まさに国民車の姿」とスバル360は評価されたと伝聞されています。もっとも、国民車構想自体はトヨタを中心とした自工会によって否定されていましたので、スバル360が国民車を目指して作られたわけではありません。
  当時の軽自動車規格は、全長3m全幅1.3mで、エンジン排気量は360cc以下でした。この小さな規格で4人の座る場所を確保するというのは至難の業と考えられていましたが、なぜスバル360が見事なパッケージングを実現できたのかといえば、大きくふたつの要因が挙げられます。
  ひとつは「モノコックボディ」、もうひとつが「リヤエンジンレイアウト」の採用です。当時、富士重工業という社名だった同社のルーツは、中島飛行機という航空機メーカーにあります。そのノウハウを活かしたモノコックボディは軽量かつ頑丈で、小さなボディに大きな室内を与えることに成功したわけです。モノコックボディの教科書のような丸っこいシルエットは、また独自のキュートなルックスの実現にも貢献しています。
  リヤエンジンで後輪を駆動するレイアウトであればプロペラシャフトも不要ですし、床下にマフラーを通すスペースを確保する必要もありません。それはそのままキャビンの広さにつながります。ただ可愛いだけでなくスバル360の設計は理にかなったものでした。
  同時期、3輪トラックを中心にした商用車メーカーとして存在感を示していたのがマツダです。同社が初めて乗用車に参入するときに選んだのも、また軽自動車というカテゴリーでした。
  1960年に誕生したマツダ初の乗用車は「R360クーペ」。国産車として初めてクーペという言葉を車名につけたモデルとしても知られています。軽自動車のサイズを感じさせない流麗なボディのリヤに空冷V型2気筒エンジンを搭載するというメカニズムも、オリジナリティを感じさせるものでした。
  そしてR360クーペといえば、白いボディに赤いルーフの2トーンカラーというイメージも強いところですが、そのボディカラーが設定されたのは1961年。最高速度は90km/hと喧伝されましたが、当時としては驚異的なパフォーマンスにはいかにも空気抵抗が小さそうなクーペボディが寄与しているとユーザーは期待したものです。
360cc軽自動車におけるスポーツモデルの究極形はフロンテクーペ
  とはいえ、R360クーペのリヤシートはとても実用的とは言い難いものだったのも事実。そこでマツダは1962年に「キャロル360」という、しっかり4人が乗れる軽自動車をリリースします。
  キャロルもリヤエンジンのレイアウトは踏襲しますが、エンジン自体は水冷4気筒へと大きく進化。しかもアルミブロックで軽量に仕上げられていました。エンジンにこだわるマツダの原点といった印象もあるモデルです。
  というわけで、1950年代後半から1960年代前半にかけては軽自動車といえばスバル360が大きなシェアを確保していました。SUBARUというブランドは軽自動車のイメージが強かったともいえます。
  そんな軽自動車マーケットを変えることになったのがホンダN360です。1967年に誕生したN360は「Nコロ」という愛称で親しまれることになりますが、それまでの軽自動車とはまったく異なるメカニズムを持っていました。
  ボクシーなボディを見ればわかるようにエンジン搭載位置はフロントで、フロントタイヤを駆動するFFレイアウトとなっていたのです。
  空冷2気筒OHCエンジンの最高出力は31馬力、カタログスペックでの最高速は115km/hとなっていました。軽自動車の制限速度は高速道路でも80km/hだった時代に、余裕のありすぎるパフォーマンスを示したのです。
  特別なスペシャリティモデルではなく、スタンダードな軽自動車にこれほどのパフォーマンスを与えたことで、Nコロは爆発的に売れまくります。軽自動車市場における力関係が変わっていったのです。
  それは軽自動車にパフォーマンスを求めるというユーザーマインドが強くなっていったことも意味しているといえます。
  高まるスポーツモデルへのニーズに最初に応えたのがダイハツ・フェローSSでしょう。1968年に誕生したフェローSSはフロントに2気筒エンジンを積むリヤドライブのホットハッチ的モデルです。
  エンジンの最高出力は32馬力、タコメーターやバケットタイプのシートを装備するなど、スポーツモデルとして仕上げられていました。角目のヘッドライトとしたのも軽自動車としては新鮮で、上級モデル的な印象がありました。
  こうした提案が、後にミラターボTR-XXやアルトワークスといったホットハッチ軽ムーブメントにつながったともいえます。
  こうして1960年代には軽自動車は最盛期を迎えます。360ccという小さな小さなエンジンだったのに、これほど多様なモデルが登場したのは、それだけ市場が盛り上がっていたからといえます。
  そんな360cc軽自動車におけるスポーツモデルの究極形といえるのがスズキ・フロンテクーペでしょう。RRレイアウトで、エンジンは水冷2サイクル3気筒で3連キャブを備えるなどチューンナップされ、最高出力は37馬力となっています。リッターあたり100馬力を超えていたのです。
  しかも、1971年のデビュー当初は、2シーターだけの設定という本格的なクーペでした。写真ではわかりづらいかもしれませんが、全高は1200mmとかなり低く、本物を目の前にすると完全にスポーツクーペとしてデザインされていることが実感できるはずです。
  さすがに2シーターは不評だったようで、翌年には4シータークーペに改良されますが、360cc時代にフロンテクーペがあったからこそ、1990年代にAZ-1・ビート・カプチーノというABCトリオが生まれ、さらにコペンやS660の誕生につながったといえるかもしれません。

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