ハイブリッド化はナシで自然吸気で突っ走る! フェラーリの新たな12気筒モデル「12チリンドリ」はクーペとスパイダー同時デビュー

2024.05.05 17:40
この記事をまとめると
■フェラーリが新型12気筒モデルとなる「12チリンドリ」を発表した
■ハイブリッドなどの電動化がされていない自然吸気の6.5リッターV12は830馬力を発生
■オープンモデルとなる「12チリンドリ・スパイダー」も同時公開
「チリンドリ」はイタリア語で「シリンダー」を意味する
  フェラーリは5月3日、長くその誕生が待ち望まれていた新型12気筒モデルの「12 Cilindri(12チリンドリ)を発表した。12チリンドリ、イタリア語読みでは「ドーディチ・チリンドリ」となるこの車名は、フェラーリ伝統のV型12気筒自然吸気エンジンをフロントミッドシップすることをダイレクトに表現したもの。
  この次期12気筒モデルに関してはハイブリッド化などさまざまな情報が流れていたが、フェラーリは見事に1947年に生み出された125S以来の伝統であるV型12気筒自然吸気を、現代の最新作として市場に送り出すことに成功したことになる。
  だが、フェラーリから発信されたプレスリリースの最初に掲げられたタイトル、個人的にはやや違和感を覚えるものだったことも正直な感想だ。「FERRARI 12 CILINDRI FOR THE FEW」。わずかな人、あるいは限られた人のために作られたという12チリンドリは、限定車ではなくシリーズモデルであるから、それはおそらく生産期間の短さを示唆するタイトルではないかと予想される。フェラーリはこの12チリンドリの開発に約4年という時間を投じたというが、さらに新たな技術を搭載したその後継車の開発も、かなりのレベルまで進んでいると考えるべきだろう。
  12チリンドリのデザインは、フラヴィオ・マンゾーニをチーフとする、フェラーリ・スタイリング・センターのデザインチームによって行われたが、そのデザインコンセプトが、前作の812スーパーファストから大きく変化しているのも見逃せないポイントだ。クリーンなライン構成で構成され、ボディ全体をシームレスな造形にまとめる手法は、フェラーリの作ではローマのそれに近く、同時に回顧主義的なデザインとは一線を画すと説明されるものの、フロントセクションのフィニッシュからは、1960年代にデビューした365GTB/4、すなわちデイトナのそれを直感的に意識させられるのは自然な感想だ。
  リヤのデザインもフロントと同様に、ボリュームを引き算していくことで独自の、そして厳格さをテーマとした造形が完成された。デザインチームは、おそらくはこのリヤセクションのスタイルと機能の両立には相当な苦労を強いられたに違いない。
  リヤスポイラーの代わりに、リヤスクリーンと最大10度ライズアップする2個の可動フラップを採用。特徴的な三角形のテーマを作り出している。テール部ではディフューザーのフィンが際立ち、ボディが浮かんでいるようにも見える。テイルパイプは12気筒車の象徴ともいえる4本出しでこれも新デザインとなる。
  12チリンドリに搭載されるエンジンは、前でも触れたとおり自然吸気のV型12気筒、フェラーリの社内型式ではF140HD型と呼ばれるものだ。6496ccの排気量から新たに得られた最高出力は830馬力、最大トルクは678Nmという数字だが、前者は9250rpmで、後者は7250rpmで発揮される高回転型ユニットであることに驚かされる。レブリミットは9500rpm。このV型12気筒エンジンに8速デュアルクラッチF1 DCTを組み合わせ、後輪を駆動するのがパワートレインの簡単な全体像となる。
スパイダー同時デビューは発売期間が短いことを示唆?
  すでに812コンペティツィオーネにも採用されているさまざまなチューニング技術は、この12チリンドリ用のF140DH型エンジンにも同様に採用されている。チタン製コンロッドの採用や、これまでとは異なるアルミニウム合金を使用することでさらに軽量化が図られたピストン、クランクシャフトもさらにバランス取りが施され、その重量は3%削減されたという。
  F1マシンからの技術導入によって採用が実現した、スライディング・フィンガーフォロワー式バルブトレインも、重量の削減とさらなるハイパフォーマンスを実現するために、このF140DH型に合せた特別な開発が施されているという。ダイヤモンド・ライク・コーディング(DLC)の技術などはその一例だ。
  組み合わせられる8速DCTも、新たなソフトウェアストラテジーが導入されたことで、選択したギヤの機能として利用可能な最大トルクを変更できるようになった。とくに魅力的なのは、3速から4速のトルクカーブを成形できるアスピレーテッド・トルク・シェイピング(ATS)の存在で、新たなギヤ比が導入されたこととの相乗効果で、さらに高いレベルの加速を維持することに貢献している。
  その究極的な運動性能に対応するダイナミクス制御技術も大幅な進化を遂げた。ブレーキ・バイ・ワイヤが導入されたことによって、296GTBで初採用されたABS Evoや6Dセンサーの搭載が可能になり、サイドスリップコントロール(SSC)も最新の8.0世代に。さらに、812コンペティツィオーネで採用された4輪独立操舵(4WS)も車軸の反応速度がより高速化し、ポジション精度の制御もさらに高まっているのも特長だ。
  ちなみに12チリンドリの前後重量配分は48.4:51.6。ホイールベースが812スーパーファストから20mm短縮されているのも興味深い。シャシーはオールアルミ製で、ショックタワーやAピラー、Cピラーといった鋳造コンポーネントのジオメトリーで、ねじり剛性を高めるとともに軽量化にも貢献。参考までにねじり剛性は812スーパーファスト比で15%増となる。
  最高速で340km/h、0-100km/hをわずか2.9秒で走り去る12チリンドリ。今回、さらに我々を驚かせたのは、そのオープン仕様である「12チリンドリ・スパイダー」を同時に発表してきたことだった。そのメカニズムは基本的にはクーペの12チリンドリと共通。ボディには、コクピット後方のロールバーとBピラーの間にアルミニウム製の補強連結材が組み込まれており、それによって重量の大幅な増加を避けるとともに低重心化も可能になった。
  スパイダーに採用されたルーフはアルミニウム製のリトラクタブル・ハードトップ(RHT)。ドライバーとパッセンジャーの頭上にはカーブが設けられ、キャビン内でのヘッドクリアランスを稼ぐ工夫が施されている。RHTの開閉時間は14秒間だが、車速が45km/h以下ならば走行中でのオープン、クローズのいずれも可能だ。またリヤスクリーンは電動で高さを調節することができ、それをクローズすれば200km/hでのオープン走行時にも、キャビンで通常の会話ができるという。
  クーペの12チリンドリからの重量増は60kg。オーバー800馬力というパフォーマンスを持つモデルにとって、それは大きなハンデとはならないだろう。事実、最高速はクーペと同じ340km/hと、また0-100km/h加速も0.05秒遅いだけの2.95秒とフェラーリからは発表されているのだから。
  この時代に再び自然吸気のV型12気筒をシリーズモデルのフラッグシップとして誕生させたフェラーリ。はたしてそれは、本当に限られた、数少ないカスタマーのためのモデルとなるのだろうか。
  そしてフェラーリが打つ次なる一手は? 彼らの動向からはますます目が離せなくなった。

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