カオナビ佐藤 × 野村総合研究所 内藤 × NEWONE上林 それぞれが考える「人的資本経営」とは? プレ鼎談「エンゲージメント・サミット2022」公開!

2022.06.23 10:00
今年3年目を迎える、2022年7月7日に開催予定のNEWONE主催「エンゲージメント・サミット2022」。【人的資本が問われる時代の人事・管理職のあたらしい常識】のテーマについて、当日に向けた3名の貴重なプレ鼎談を公開します。
上林:こんにちは。徐々にコーポレートガバナンスコードも変わっていき、今年1月には岸田首相が人的資本経営の元年だとメッセージを出されました。
我々NEWONEは、新人研修なども行っていますが、主に管理職研修を主軸に、エンゲージメント、マネジメント変革テレワークマネジメント等のプログラムなどを多数提供しており、今後人的資本時代の管理職のあり方としても研修も行っていく予定です。


5年前、「働き方改革」という言葉だけが出まわり、本質的ではない残業時間削減ばかりに集中した時期がありました。昨今、人的資本の時代になってきている中で、我々も「人的資本経営」や「人的資本の情報開示」についても、本当の意味で、現場レベルまで浸透して初めて価値があるものではないかと考えています。


今日は弊社主催の「エンゲージメント・サミット2022」に向けて、登壇予定のパネリストのお二方に、当日テーマでもある「人的資本が問われる時代に人事管理職が取り組むべきこと」について、さわりのお話を伺います。
それぞれ、カオナビ佐藤さんには、戦略論だけではなく実際現場の人的データ活用をどうされているのか、野村総合研究所の内藤さんには、先日出版された書籍から、人事制度や人材戦略、組織の作り方の冒頭をお伺いできればと思っています。
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<プロフィール>


株式会社カオナビ 代表取締役社長 Co-CEO 佐藤 寛之氏
リンクアンドモチベーションにて大企業向け組織変革コンサルティング部門で営業を担当。その後、シンプレクスにて人事開発グループ責任者として採用・育成・評価・配置等の人材開発業務に従事する。2011年より取締役副社長を務め、2022年に共同CEO制を採用し、代表取締役社長 Co-CEO就任。


株式会社野村総合研究所 グローバル経営研究室 チーフエキスパート 内藤 琢磨氏
慶応義塾大学卒業後、生命保険会社、会計系コンサルティング会社を経て2002年、株式会社野村総合研究所入社。専門領域は人事・人材戦略、人事制度設計、グループ再編人事、タレントマネジメント、コーポレートガバナンス。
主な著書・論文に『NRI流 変革実現力』(共著、中央経済社、2014年)、『デジタル時代の人材マネジメント(編著、東洋経済新報社、2020年』『進化する人事部(共著、労務行政、2021年)』『ジョブ型人事で人を育てる(編著、中央経済社、2022年』がある。


モデレーター:株式会社NEWONE 代表取締役社長 上林 周平
大阪大学人間科学部卒業後、アクセンチュアに入社。BPRコンサルティング、民営化戦略立案等に従事し、2002年、株式会社シェイク入社。
企業研修事業の立ち上げ、商品開発責任者として推進し、2015年より株式会社シェイク代表取締役に就任。
2017年9月、これからの働き方をリードすることを目的に、エンゲージメントを高める支援を行う株式会社NEWONEを設立し、ソフトバンク様はじめ多くの企業の支援を実施。
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「人的資本経営」、日本企業の課題は?
上林:本日は、「人的資本経営」というテーマについて、例えばクライアントさんと喋られているときに感じる問題意識、実際の日本の企業の実態など、ビジネスをされている上で感じていらっしゃることをそれぞれ少しお伺いしたいなと思っています。佐藤さん、いかがですか?


佐藤:人的資本の開示の話は、IRの話から始まっていますよね。当社も上場してるので、コーポレートガバナンスコードも何を開示するのかの議論もしています。IRのための人事基準を開示という話になるとはいえ、急に男性の育休取得率や、プリミティブな1個1個の項目の話、例えば当社はエンジニアが多い会社のため、女性従業員の比率が少ないです。その中で、男女差別もないですし、ダイバーシティを推奨してますが、女性の管理職の比率だけ上げる、というのは無茶がありますよね。
そもそも、開示を行い株価を上げるために、人件費をどうのと議論するのではなく、今後そのビジネスモデルが、コロナ禍の変化を経て、どんな事業展開していきたいので、どのような人を育てていくべきか、どういう人たちに働いていただくために、どんな施策をしていかないとエンゲージメントできないのか、と極めて当たり前の話を今からやっています。
また本質的な組織人事の目的として、潮流に合わせて改めてCEOとCHROとCFOが議論するのは非常に良い時代が来たなと思いますが、本質的な目的を間違うと、数字遊びみたいになってしまうのは違いますよね。


上林:ありがとうございます。二つお伺いしたいんですが、一つは、CEO・CHRO・CFOと対話する時代になって、カオナビさん的にはビジネス的には良い流れと感じられますか。


佐藤:結局、人的資本を開示しなければならないときに、離職率や採用率はすぐ出る数字です。問題はそういった表面的な数字の裏側にある、人材育成の状況はどうか、マネジメントは機能しているか、エンゲージメントの状況はどうか、といったような現場に埋もれがちな情報をいかに可視化し人事施策に落とし込めるかがポイントになってくるので、まさにタレントマネジメントに直結するテーマだと思います。


上林:佐藤さんの肌感覚では、開示義務から人的資本と向き合ってる会社と、そもそも人的資本の本質を捉えてビジネスモデルを強くするために開示という本流で考えられてる企業は、どのような割合でしょうか。


佐藤:セミナーに行ってみようと思うきっかけとしては、7、8割方、コーポレートガバナンスコードの話が多いと思います。人材の見える化の話は、コロナ禍のような大きなビジネス変化のタイミングに、さらにコーポレートガバナンスコードのような話が来て、自分ごととして捉える会社さんはこの数年で増えたんじゃないでしょうか。
しかし、アメリカみたいに全部が規定されてるわけじゃない。だから何が正しいか正しくないかもわからない状態が続いていますよね。


上林:やはりコロナというものが結構な影響力があったんだなと改めて思いました。ちなみに、内藤さんは、同じ課題感として人的資本や、実際現場でクライアントさんと関わられているときに感じる問題意識など、どのように見られていますか。


内藤:言葉としては「人的資本経営」は割と新しい言葉ではありますが、経営のリソースとして、ヒト・モノ・カネ・情報は別にそれ自体が変わったものではないので、ビジネスモデルと人材戦略を結びつけましょうという話に尽きます。


いわゆる人的資本という部分がなぜ日本で遅れてしまったかには理由があります。それはモノとかお金みたいなはっきりできないところ、つまり”人”というリソースがもつ曖昧さだと思います。金融だとか情報だとかはある物差しで計って、見える化しやすい。しかし”人”をはっきり客観的な物差しで測るのは、非常にチャレンジングです。よくリスキリングだとか言いますが、人を成長させていくことは、1ヶ月・半年でできるかというと、できることもあれば、例えばマインドセットを変えるのは難しいところがありますよね。特に日本の経営においては、”人”の持っている能力・スキルの曖昧さに便乗して人材戦略を突き詰めてこなかったところに問題がある気がします。
ただその節目が変わってきたのが、一つはやはりデジタル化、デジタルトランスフォーメーションの時代の流れが来たことにより、曖昧さが許されなくなったということはあると思います。デジタルのテクノロジーによって、いろんな業務が可視化しやすくなり、デジタル人材が出てきたことは、人的資本や、これからの経営に対してインパクトがある話になっています。


二つ目は人事的な話です。
これまでは”人”の能力は段々上がっていく想定で処遇するものでしたが、ジョブ型人事制度によりお仕事に値段をつけるという考え方に変わってきたことで、事業戦略と人材戦略を結びつけやすくなってきました。現在のポストが20しかないんだけど、将来100必要だろうという議論ができるようになってきました。
従って様々なものが曖昧でいられなくなり、デジタルトランスフォーメーションや、ジョブ型人事制度に環境が変わってくることによって、事業戦略と人材戦略は結びつけて考えられるはず、つまり経営はちゃんと人的資本経営を説明できるはず、という時代に昨今なりつつあります。


上林:なるほど。例えばいま野村総合研究所さんでは、具体的にどんな案件が多いですか?例えばジョブ型の人事制度が多いのか、それとももっと人的資本経営で実はこんなプロジェクトがある等、お伝えいただける範囲でありますでしょうか。
デジタル人材と既存人員、人的資本経営からの最適配置とは?
内藤:やはりデジタル化に伴ってデジタル人材を強化しなければという案件が多いですね。そのために、例えば年功的な制度改定のようなところにサポートを必要とされる会社さんは多いと思います。あとデジタルに限りませんが、デジタル化の影響で、会社の収益構造やお金の稼ぎ方を変えたいという要望ですね。そこまでは事業計画とか経営計画で済むのですが、そこに対して人の配置を変えていかなければならない。
古いビジネスや、今後収益が見込めないビジネスに人がたくさんいて、これから成長していきたい分野や領域に実はまだ人が少ない。当然外から人を採用してくるというのももちろんありますし、長期的に見ると日本の社会は人不足なので、できれば会社内とかグループ内で人をうまくアロケーション(※)していきたいんです。
人材の最適配置化をしていくことで、人のスキルを変えていきたいところがありますが、結構大じかけの話なので、コンサル的なサポートを求められているケースがあります。


※アロケーション..:理想の状態あるいは求められた状態になるように、予算や資源を分割して適切に割り当てることの意味。


上林:対流動化や、必要な事業のところにどれだけいい人を持っていけるかや、アロケーションも大事というのはおっしゃる通りだと思います。カオナビさんは、今内藤さんがお話しされた最適配置のようなことに向くツールだなと思いますが、最適配置の文脈でうまく運用されている会社さんはいらっしゃいますか。


佐藤:結局、人を育てるのはそんなに簡単な話じゃないので、戦略的にいくつかの経験をさせ、配置を通して育てていくという使い方は多いと思います。リスキリングと言っても、研修を受けてもらうのは簡単ですが、2、3個のポジションを経験するリスキリングを誰からスタートしてもらうか、異動のシミュレーションをして検討していくといったことは多くの会社で行われていますし、特に人が多い大企業さんほど、そういうお話が多いですよね。


上林:カオナビさんの場合、サクセッションプラン的には、戦略をデータベースに入れたり、計画をナビゲートされることもしていますか?


佐藤:そういったリストを多数作り、人材ポートフォリオを組んで、戦略的に異動してもらい段階的に育成を支援するというケースは非常に多いです。どうしても僕らが事例化するのは、若手の優秀人材を鍛え直していく話が多いですが、しかし本当は大企業がリスキリングしたいのって、本来は滞留してしまっている中高年の方たちかもしれませんね。
外から取るよりも、元々は優秀な人たちなので、本当はそういうところにも最適な人材の流動化にタレントマネジメントシステムを使われるべきだろうなと考えていますが、リスキリングの対象はどのゾーンで、どんなふうに鍛え直して実際のポートフォリオを変えているのかというところは興味あります。内藤さんそのあたりはいかがですか?


内藤:我々も全部を見ているわけではないですが、今リスキリングや、事業ポートフォリオに合わせてリスキリングや人の再配置を行っていこうという取り組みは、まだ始まったところだと思います。
今の時代になる前も、ローテーションという名のもとに以前からあったことですが、今はそういう話よりも、事業のポートフォリオが変わることによって、そのリスキリングを促していくということですが、佐藤さんもおっしゃっていただいた通り、例えば中高年の方をターゲッティングしてやりたいと考えたときに、今は会社で成功事例を作ることがフォーカスされています。
年齢問わず、ポテンシャルがある方、あるいは学ぼうという気持ちがある方の見極めをして、少人数でもまず成功事例を作る。ここで失敗してしまうと、会社主導で人を移したけど、あの人さらに駄目だった、という話になると、会社内でアロケーションできなくなってしまいます。
そこで難易度が高いところより成功確率が高いところから小さく成功事例を作っていくことに今は多くの会社さんが考えられていらっしゃいます。


上林:なるほど。エンゲージメント・サミット前の本番にも関わらず、濃いお話をありがとうございます。
さらにアロケーションの成功事例を作っていくにあたって大事なポイントなど、具体的なところも皆さんもご興味あるところかと思いますが、今日はプレ鼎談という位置づけのため、ここはもったいぶって、イベント当日の議論にしていければと思います。
佐藤さん、内藤さん、本日はありがとうございました。


当日はさらに、人的資本経営時代における組織の在り方、キーとなるミドルマネジャーの役割、現場レベルまで浸透、などについてなども議論できればと思っています。
当日の視聴については、下記よりお申込みください。皆様とお会いできるのも楽しみにしております。




▼エンゲージメント・サミットのお申し込みはこちらから
エンゲージメント・サミット2022~人的資本が問われる時代の人事・管理職のあたらしい常識~
2022年7月7日 13:00 ~ 15:40

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