「電車に興味のない方でも楽しめる、街の交流の場に」ロマンスカーミュージアムの4年間とこれから

2025.07.28 11:43
小田急電鉄株式会社が運営するロマンスカーミュージアムは2021年に開業し、多くのお客さまや地域の皆さまに支えられてきました。
ロマンスカーミュージアムは、新宿と箱根などを結ぶ歴代の特急ロマンスカーを中心とした6車種11両の車両展示に加え、小田急沿線を再現した約190㎡の巨大ジオラマや、ロマンスカー運転シミュレーターなどの多彩なコンテンツを備えており、お客さまとのコミュニケーション活動の拠点となっています。
今回は、ロマンスカーミュージアムが愛される理由について、副館長の松村尚さんと、企画担当の箕田利広さんに伺いました。


小田急の象徴「ロマンスカー」


――まず、お二人のご経歴を教えてください。


松村:2022年4月からロマンスカーミュージアムに勤務しており、現在は副館長を務めています。主に営業活動を担当しつつ、アルバイトスタッフの管理やイベント運営なども行っています。
箕田:以前は小田急グループの別会社で日本酒を扱う仕事をしていました。ロマンスカーミュージアムには、開業の2か月前に社内公募で異動し、当初は館内コンテンツの運営や新型コロナウイルス対策を担当しており、企画として最初に手がけたのは、新江ノ島水族館さんとのコラボレーション企画でした。以降、さまざまな企画に携わっています。
――そもそも「ロマンスカー」とはどんな列車なのでしょうか?


松村:ロマンスカーは、小田急電鉄が運行する特急列車であり、小田急のアイデンティティのような存在です。もともと「ロマンスカー」という名称は他の鉄道会社も使用していたのですが、現在では小田急だけに残ったという背景があります。


名前の由来には諸説ありますが、新宿の映画館「新宿武蔵野館」で二人掛けの座席が「ロマンスシート」として話題になった時期に、小田急の特急も対面式の二人掛け座席を採用していたため、そこから「ロマンスカー」と呼ばれるようになったとも言われています。
特に、展示している1957年就役のSE(3000形)以降から、「ロマンスカーといえば小田急」というイメージが徐々に定着していったと感じています。
――ミュージアム開業のきっかけを教えてください。


松村:役目を終えた車両たちは長らく車庫で保管されていましたが、「せっかくなら多くの方に見てもらいたい」という想いがあり、以前からあったミュージアム構想が10年ほど前に本格化しました。その後さまざまな検討を経て、2021年4月、ついに開業を迎えることができました。


「子どもも大人も楽しめる場に」×コロナ禍の壁


――開業までに苦労したことはありますか?


松村:開業のタイミングが、まさにコロナ禍の真っ只中だったことが一番の壁でした。建設工事は2018年から始まっていましたが、当時はこうした事態を想定していませんでした。
特に「子どもも大人も楽しめるミュージアム」というコンセプトの実現と、感染対策の両立には難しさがありました。


――具体的に、どのような課題があったのでしょうか?


箕田:入場制限のため、お客さまに展示をじっくり見ていただきたくても「立ち止まらずに進んでください」と案内せざるを得ませんでした。
また、キッズエリアのアスレチックも密を避けるために開業時にはオープンできませんでした。また、開放後も吊り革型の遊具を毎回丁寧に拭くなど、遊具の一つひとつを定期的にスタッフが消毒する必要がありました。


――コロナ禍が明けてから、特に印象に残っている施策はありますか?


箕田:人数制限の解除により、ようやく大きなイベントが実施できるようになったり、アスレチックやペーパークラフトも多くの方に楽しんだりしていただけるようになりました。館内コンテンツだけでなく、お客さまに対面のイベントなども我慢していただいた悔しさがあったぶん、今はその想いを形にできていると感じます。
また、ロマンスカーミュージアムは、鉄道ファンだけでなく鉄道に興味のない方でも直感的に楽しめるよう、さまざまな工夫をしています。
例えば、学芸員によるガイドツアーなどは、コロナ禍では密を避ける必要があったため、大規模に実施することができませんでしたが、今年から、お客さまと対話しながら車両紹介をする取り組みを本格的に始めることができ、ミュージアムの魅力を直接伝えることができています。
スタッフと来場者の距離が近く、コミュニケーションが活発なのは当館の特長です。鉄道業務の勤務経験のないスタッフがほとんどで、お客さまからイベントや展示のヒントをもらうことも多いです。


松村:「ロマンスカーの魅力を通じて「感動」「笑顔」「未来」をつくります。」というのが、私たちのミッションですが、コロナ後は、スタッフの笑顔とお客さまの笑顔が交差する機会が増え、よりポジティブな空間になったと感じます。


――「オールターゲット」を掲げるからこその難しさもあるのでは?


箕田:鉄道博物館というと、世間一般のイメージとしては、「鉄道ファンや子ども向けの施設」と思われがちですが、私たちはもっと幅広い層に愛される場所を目指しています。
「電車だけじゃない、ワクワクを。」というキーワードを共有しながら、スタッフ全員で「ロマンスカーの魅力とは何か?」を日々見つめ直すことで、ミュージアムならではの体験を築いてきたと思います。


松村:展示車両に通勤車両がない点については、一部のお客さまからご意見もいただいています。現行の通勤車両の展示はありませんが、企画では小田急の通勤車両に関する企画やイベント、他社鉄道とのコラボレーションなども展開しており、「展示がないからこそ」できる伝え方を模索しています。
「車両」も「街」も大切に


――街の暮らしもテーマにしていると伺いました。


箕田:新宿から箱根・江ノ島まで、小田急沿線の街並みを再現したジオラマパークがあるのですが、そこでは、来館者が自分の思い出と重ね合わせながら楽しんでいる様子をよく見かけます。
沿線を颯爽と走行するロマンスカーの模型を見ると、その背景にある人々の暮らしが想像できる。それが当館のジオラマの魅力です。
――ウエディング企画もユニークですね。


松村:6月19日の「ロマンスの日」にちなみ、開業初年度から毎年企画を続けています。開館前・閉館後のロマンスカーミュージアムを貸切で、フォトウェディングの撮影や人前式を実施しています。最近では、海老名の結婚式場とコラボレーションしてブライダルフェアを開催いたしました。
ロマンスカーにまつわる「ロマンスシート」の逸話や、実際にロマンスカーで出会ったというカップルの存在など、「本当にロマンスが生まれる場所」として広げていきたい取り組みです。
将来的には、銀婚式や金婚式など、シニア層にも広げていけたらと考えています。
――音楽イベントなど、一見鉄道と関係のないイベントも多いですね。


松村:最初はDJの方の持ち込み企画でしたが、鉄道好きのその方の熱意に共感し、ロマンスカーギャラリーで初めての音楽イベントを開催しました。
車両の照明だけを残し、館内を暗くしてプロジェクションマッピングを行ったことで、「動かない車両が動いて見える」演出が大きな反響を呼びました。
これまで5回開催してきて、ロマンスカーギャラリー活用の新たな取り組みとして成功例となりました。
それ以外にも地元の中学校や高校の吹奏楽部や、和太鼓演奏なども実施しており、「音楽×鉄道」の新たな可能性が広がっています。


3歳の女の子でも楽しめる鉄道ミュージアムに


――地域とのつながりについては、どのような想いがありますか?


松村:ロマンスカーミュージアムは小田急の中心地・海老名にあり、地域の方々の集いの場として根付いていきたいと思っています。たとえば卒園式の後に園全体の謝恩会ができるような場所になればうれしいです。


箕田:私ごとですが、昨年第一子の娘が生まれました。その子が3歳ぐらいになったときに、女の子でも楽しめるミュージアムでありたいと思っています。
ミュージアムは、学びと楽しさを兼ね備えた場所。スタッフの笑顔が迎える空間で、さまざまな層のお客さまに、家族で「また来たい」と思ってもらえる場所にしたいですね。


――今後、どのような取り組みを予定していますか?


箕田:季節ごとに、鉄道以外のワークショップを企画しています。たとえば、ロマンスカーの行先の一つである箱根をテーマにした企画では、箱根の寄木細工の体験や、温泉について理解を深めながら入浴剤を作る体験など、鉄道に詳しくない方でも楽しめる工夫を凝らしています。
ロマンスカーを知らない人にもまずは足を運んでもらい、結果的に興味を持ってもらえたらいいなと思っています。


――最後に、来館者の方々へのメッセージをお願いします。


松村:館長も常々言われているのですが、「自分たちが楽しんで働くこと」が大切だと思っています。
スタッフの楽しさは、お客さまにも自然と伝わるもの。ロマンスカーのかっこよさ、館内のワクワク感、スタッフの笑顔。それらすべてが合わさって、「また来たい」と思ってもらえる体験になります。
ぜひロマンスカーミュージアムで、何度でも訪れたくなるような思い出をつくってください。

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