【落語ファン必携】人間国宝・五街道雲助師匠の待望の新刊が発売! 出版記念落語会も開催決定しました!

2025.06.20 11:30
株式会社朝日新聞出版
滑稽噺から芝居噺まで、多彩な持ちネタを誇る師匠が、厳選した55席についてたっぷり解説。

「師匠! 人間国宝がここまで喋っていいんですか!?」
五街道雲助師匠12年ぶり、人間国宝となってからは初の書籍、『雲助おぼえ帳 滑稽噺から芝居噺まで厳選55席を語る』(五街道 雲助 著/長井 好弘 聞き手)が6月20日(金)に発売されました。
落語界4人目の人間国宝(重要無形文化財保持者)となった五街道雲助。多彩な高座で常に客席を魅了する師匠が、評論家・長井好弘氏を聞き手に、自分の持ちネタについて解説します。その噺のポイントはどこか、どんな工夫を行い、本番でどう感じたか。弟子たちにどう教えているのか。初出しのエピソードも満載です。師匠・金原亭馬生の思い出、弟子たちとの交流、そして落語論も。落語初心者は落語通に、落語好きの人はますます落語好きに。
2025年7月22日(火)に出版記念落語会も開催します。東京証券会館ホールにて、午後6時30分開演。チケットぴあ/オフィスエムズにてチケット発売中です。
時に脱線しながらも、技術論から落語論にまで発展していく雲助師匠と長井先生のやり取りは、まさに「国宝級!」の面白さです。その一部(ごく一部です)をご紹介します。
●硬いお客さんの時だとちょっと怖い――『火焔太鼓(かえんだいこ)』
長井 雲助師匠は演者として『火焔太鼓』についてどう思っていますか? 
雲助 やっぱり、お客を見るというか。
長井 観客を見る?
雲助 ちょっと硬いお客さんの時だと、この噺をやるのは怖いです。だから、たとえば寄席で十日間、ずっと『火焔太鼓』でトリを取ってくれと言ったら、かなり苦痛でしょうね。
長井 どうして怖いのですか?
雲助 必ずウケるとは限らない。どこかで一つ滑ったら(ウケなかったら)、回復できずに最後までスベって終わるような、そういう怖さがあるんですよ。だから、普通の落語会のトリで、『火焔太鼓』のネタ出しなんてェのも、ちょっと遠慮したい。
長井 お客さんの様子を見て、「あ、これだったら今日は大丈夫かな」と思ったら高座にかける、という感じですか?
雲助 そういうことです。「ああ、このお客さんならなんとかなるな」と思えない時はどうも……。
●自分で自分の事を言ってるようでお蔵入りに――『火事息子』
長井 ご著書の『雲助、悪名一代 芸人流、成り下がりの粋』の第二章「そば屋の跡取り息子、芸人に成り下がる」を読むと、若き日の師匠の行状やご両親との関係が、『火事息子』の世界とかなり重なる部分があるのがわかります。戦後の焼け野原から一代で店を築いたお父さんは当然、跡取りの師匠に家業を継がせたかった。でも、師匠にそういう気はなかったんですね?
雲助 (キッパリと)ない(笑)。それだから噺家になったようなとこもありますからね。
長井 ご本によると、師匠が人形町の寿司屋で飲んでいたら、そこの板前が「前は本所の寿司屋にいた」という。「なんでやめたの?」と聞くと、「ろくでもない若旦那がいて、ここはダメだと思った」って、まさに師匠の家のことなんですね。
雲助 「昼間会ったこともねえ」と言われて。「それって、もろ俺じゃん」ということで(笑)。
長井 放蕩というよりは、ただ家に寄りつかなかったっていうことなんですよね。
雲助 あたしは、よそにずっと泊ってたということはなく、夜遅くに帰ってくるんですよ。昼出かけるときも裏から出かけてた。だからお互い会ってなかった(笑)。家は継ぎたくない、単位が取れずに大学三年に進級できない、八方塞がりの中、落語家への道がひらけたという……。
長井 そんなこんなで、何とか噺家になることができて、後に両親に逆らって火消しになる若旦那の噺をやるようになったんですね。
雲助 『火事息子』はまだ二ツ目の頃に根多下ろしをしたのですが、親父の「そこへ行くと家の馬鹿野郎は……」の件くだりが、自分で自分の事を言っているようでとても出来なくて、それきりお蔵になってしまった。二ツ目になってからも、親父には「まだ辞めないのか」と言われてましたし(笑)。
●女房が身籠っているという設定に――『芝浜(しばはま)』
長井 志ん生、志ん朝ラインは割と軽めの『芝浜』でしたね。
雲助 もう完全に落とし噺の『芝浜』ですよ。サゲの「また夢になるといけねえ」っていうのも落とし噺のサゲの言い方をしてますね。このサゲが難しいのは、「なぜ夢になるといけないのか」ということなんです。普通は「あ、また夢になって、かみさんに騙されるといけないから」とか、だいたいそんな感覚でのサゲの言い方ですよね。
長井 師匠のサゲは一味違いますね。
雲助 あたしのは、とにかく勝五郎が幸福の絶頂にある。せっかくこんなありがたいことがあるのに、これが夢になっちゃあいけないから、「また夢になるといけねえや」という落とし方にするんですね。
長井 勝五郎の至福の思いをちゃんと盛り上げておかないと、その台詞が生きてこないという。
雲助 そうですね。だから、あたしは女房が身籠っているという設定にしています。幸せの要素を積み重ねるには、子供ができたというのはかなり大きい。子供ができる、お酒が飲める、お金が戻ってくる。それで、除夜の鐘が聞こえて、年が明ける。「ああ、おめでとうよ」という絶頂感の根底に「子供ができる」というのがあるというのがいいなあという気がします。「子供ができた? じゃあ祝いに酒を」という口実もできるしね。
●稽古を頼まれるのは女性の噺家ばかり――『鰍沢(かじかざわ)』
長井 『鰍沢』は雲助師匠の工夫がいっぱい詰まった、いわば雲助一門の代表的な噺ですから、この形を何とか残してほしいなと思います。総領弟子はやらないと思うけど(笑)。
雲助 白酒はやらないでしょうね(笑)。馬石も、やらねえかな。最近は、龍玉がよくやっているらしいけど。実は『鰍沢』って、ずいぶん稽古頼まれてるんですよ。それが、ほとんど女性の噺家なの(笑)。
長井 へえー、そうなんですか。
雲助 お熊をやりたいというんです。ああいう悪女みたいなのをやってみたいって。もう、四、五人教えてるんじゃないかな、女の子ばっかり。男はいないかもしれない(笑)。
長井 雲助師匠は、「稽古をつけてください」っていう人には方は皆さん、教えてます?
雲助 もちろんです。
長井 「まだ早い」とか、そんなことは思わないですか?
雲助 うーん、思ったとしても、一応稽古はします。まず無理だろうなと思うときもあるけど、「稽古してくれ」と言われりゃ、断りませんよ。

【著者】五街道雲助(ごかいどうくもすけ)
1948年、東京都生まれ。68年、十代目金原亭馬生に入門。69年、「金原亭駒七」で前座に。72年、二つ目に昇進して「六代目五街道雲助」に。81年、第1回真打昇進試験により、柳家さん喬らとともに真打昇進。寄席での軽い噺から三遊亭円朝作品の長講まで、その持ちネタは多彩かつ流麗。卓越した話芸で、常に聞き手を魅了する。2023年、落語界4人目の人間国宝となる。2024年、浅草芸能大賞を受賞。2025年、春の叙勲で旭日小綬章を受章。

【聞き手】長井好弘(ながいよしひろ)
1955年、東京都生まれ。演芸評論家。79年、読売新聞社入社。編集局文化部、日曜版編集長、編集委員、落語会「よみらくご」企画監修などを務め、2020年退社。現在は文化庁芸術祭実行委員、浅草芸能大賞専門審査委員、文春落語アドバイザーなどを務めている。著書に『新宿末広亭 春夏秋冬「定点観測」』(アスペクト)、『僕らは寄席で「お言葉」を見つけた』(東京かわら版新書)など、多数。
『雲助おぼえ帳』目次
まえがき 長井好弘
第一章 落し噺
火焔太鼓/お菊の皿/臆病源兵衛/勘定板/菊江の仏壇/禁酒番屋/くしゃみ講釈/汲み立て/子ほめ/持参金/死神/ずっこけ/千両みかん/幇間腹/代書屋/佃祭/二番煎じ/花見の仇討/身投げ屋/妾馬/宿屋の富/夢金/らくだ
コラム 人間国宝になって
第二章 廓噺
明烏/お直し/白銅/品川心中/付き馬/徳ちゃん/干物箱/木乃伊取り/山崎屋(「よかちょろ」含む)
コラム 一門のこと
第三章 人情噺
火事息子/芝浜/唐茄子屋政談/中村仲蔵/淀五郎/文七元結/夜鷹そば屋
コラム 師匠・金原亭馬生のこと
第四章 世話噺
お富与三郎/お初徳兵衛/お若伊之助/鰍沢/髪結新三/九州吹き戻し/真景累ケ淵・豊志賀の死/つづら/猫定/初霜/双蝶々/緑林門松竹/宮戸川/名人長二/もう半分
あとがき 五街道雲助
『雲助おぼえ帳 滑稽噺から芝居噺まで厳選55席を語る』
著者:五街道雲助 聞き手:長井好弘
定価:2750円(本体2500円+税10%)
発売日:2025年6月20日(金曜日)
体裁:400ページ、四六判(単行本)
イベント概要
雲助ボロ市番外編~「雲助おぼえ帳」出版記念落語会~
日時:2025年7月22日(火) 18:30~
場所:東京証券会館 ホール (東京都)
[出演]五街道雲助 [ゲスト]長井好弘(対談)
参加方法:全席指定 3500円
※予定枚数終了しだい発売終了となります。

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