未来のインフラを支える 積水化学が万博で示すサステナブル社会の姿

2025.06.20 10:00
2025年4月に開幕した大阪・関西万博に参画する積水化学グループは、再生可能エネルギーや資源循環、次世代モビリティなどを通じて、持続可能な未来社会の姿を提示した。技術の力で、社会課題解決と成長の両立を目指す――そう語るのは、積水化学工業株式会社 代表取締役社長 加藤敬太氏だ。


万博会場で注目を集める
ペロブスカイト太陽電池
「大阪・関西万博は、世界中が一つの舞台に集まる機会であり、未来社会のデザインを示す場になる。ここで当社グループの技術による持続可能な社会の実現に向けた挑戦を世界に示したい」と加藤氏は強い意志を持って参画したという。


同グループが参画する「未来ショーケース事業」では、万博会場を未来都市に見立て、来場者が先端技術を通じて次世代の暮らしを体感できる空間を創出している。そこでは、最先端の環境・エネルギー技術やバイオ・医療素材の展示などを通じて、私たちが描く未来社会のビジョンが具体的な形で表現されている。


「積水化学グループはビジョンステートメントとして『Innovation for the Earth』を掲げています。これは持続可能な社会の実現に向けて、イノベーションの力で地球環境と人々の暮らしを支えていくという私たちの強い意志の表れです。万博では社会課題の解決と経済的発展を両立させる先端技術の数々を紹介し、当社グループが実現を目指す未来社会の姿を来場者に伝えていきます」


万博会場西ゲートの全長250メートルにも及ぶバスターミナルの屋根に設置されたのは、積水化学が開発したフィルム型ペロブスカイト太陽電池だ。世界最大規模で実装されたこの設備から供給された電力は万博会場の夜間照明に利用されている。同社のペロブスカイト太陽電池は軽量かつフレキシブルであるため、このほかにも万博内ではスマートポール※や大阪ヘルスケアパビリオンの天井、キッチンカーにも設置されている。湾曲した場所や耐荷重性が低い構造物にも設置でき、これまで太陽電池の導入が難しかった都市部の建物にも利用可能であることを実証する象徴的な取り組みとなっている。
※スマートポールとは、街路灯・信号機・電柱などのポールに、IoT技術や先進機能を組み込んだもの
万博内に設置されている積水化学のフィルム型ペロブスカイト太陽電池
(左)万博内スマートポールに設置されているフィルム型ペロブスカイト太陽電池(写真提供元:関西電力送配電)
(右)万博内パビリオン天井に設置されているフィルム型ペロブスカイト太陽電池(写真提供:(公社)大阪パビリオン)


フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン型と異なりどこでも設置できる柔軟性を武器に、都市での“地産地消型”の再生可能エネルギー導入を後押しする。都市部での導入が進めば、郊外で発電した電力を都市部に運ぶ際に生じる送電ロスを削減でき、パネル設置のために行われる山林破壊の抑制にもつながる。積水化学はこの技術の2025年度の上市、2027年には年間100メガワット級の生産能力を持つ製造ライン立ち上げを計画しており、さらには2030年には年間ギガワット級の製造能力の確立を目指している。災害時の避難場所となる体育館などの公共施設をはじめ、民間の工場や倉庫、都市部のビルの屋根や壁面などへの展開を視野に入れ、コスト削減を図りながら着実に社会実装を進めようとしている。
薄さわずか1mmのフィルム型ペロブスカイト太陽電池
大阪本社にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を設置




生ごみを微生物の力で
資源化する“捨てない社会”


もう一つの注目分野が、循環型社会に向けた取り組みだ。大阪・関西万博日本館では、会場内で出た生ごみを微生物の力でエネルギーに変える資源循環の過程を体験できるという。積水化学工業はこのプロジェクトのコンセプトづくりに関与し、知見を活かした支援を行っている。


同社は以前からごみの資源化に取り組み、2017年には可燃性ごみをプラスチックなどの原材料になるエタノールに変換する生産技術を確立している。2022年には岩手県久慈市において実証プラントを新設し、標準的なごみ処理施設が処理する可燃ごみの10分の1程度の量で実証実験を進めている。
バイオリファイナリーのエタノール製造プロセスの概要
バイオリファイナリー 久慈実証プラント




CCU技術が切り拓く、
CO₂を活かす未来
さらに、資源循環のプロセスにおいて重要な役割を担う技術として、積水化学が推進するCCU(Carbon Capture and Utilization:二酸化炭素回収・有効利用)技術も注目されている。積水化学のCCU技術は工場やゴミ処理施設から排出されるCO₂を選択的に分離・回収した後、COに高効率で変換し、生成されたCOは、鉄鋼プロセスや石油化学製品、合成燃料、ポリマーなどに再び製品化できカーボンニュートラルと資源循環の両方に寄与する。同社のCCU技術の特徴は、90%以上という極めて高い変換効率と貴金属を使用しない独自の触媒技術だ。従来の触媒に多く用いられる白金やパラジウムといった高価な材料を排除することで、低コストでの製造と長期安定稼働を実現。触媒は劣化しにくく、経済性と持続可能性の両面で優れた性能を備えている。
ごみ焼却施設の排ガスに含まれるCO2をCOに変換し、微生物の力でバイオ由来の高機能化学品を製造するプロセス


すでに鉄鋼業界や炭素素材メーカーなどとの実証を進めており、2030年前後の実用化を視野に入れて開発を加速させている。今後は都市型のごみ処理施設や発電所などのCO₂排出源に併設するCCUシステムの導入も検討しており、既存インフラとの連携による展開が期待されている。


「CO₂や廃棄物を再利用するという資源循環の発想は、社会構造の転換に直結します。私たちのCCU技術は、CO₂排出量削減だけでなく石油使用量削減にも貢献し、ダブルの効果が得られます。世界中の国々と協力して技術開発や普及を進めることで、地球規模での温暖化対策が強化されると考えています」と加藤社長は語る。




軽くて強い素材が
空を飛ぶクルマを支える


また、未来のモビリティを支える素材開発も積水化学グループの強みの一つだ。万博でも話題の「空飛ぶクルマ」の機体に使われる素材であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の開発にも同社は尽力している。
アーチャー・アビエーション社の空飛ぶクルマに構成材としてCFRPを提供


空飛ぶクルマなどの次世代移動手段にとって最大の課題は重量だ。重量は、燃費だけでなく移動時間や安全性にも大きな影響を与える。CFRPはアルミと同等の強度を持ちながら約40%も軽い。さらに、積水化学グループは2019年に米エアロスペース社を買収し、複雑な形状にも対応でき、大量生産が可能なCFRTP(熱可塑性タイプ)の技術を獲得した。
「すでに航空機やドローン、MRIなどの分野で当社の素材が採用されており、実績を重ねてきました。今後量産化が進む空飛ぶモビリティへの展開にも大いに手ごたえを感じています」




社会課題の先取りで勝負する
加工技術のプラットフォーマーとしての挑戦


こうした多様な技術革新を支える原動力は何か。
「私たちは、自社で原料を持たない中、いかに加工で付加価値を生むかで勝負しています。つまり、調達した原料に自社の強みである加工技術を掛け合わせ、独自の価値を創出する。その鍵となるのが、我々が『テクノロジープラットフォーム』と呼んでいるコア技術群です。これらは世界のトップメーカーに対しても優位性を発揮できる水準にあると自負しています」
イノベーションを生み出す3つの力


この高い技術力をベースに「先取り」「加工」「変革」という3つの力を通じてイノベーションを創出すると加藤氏は語る。


一つ目の「先取り」は、社会課題と自社技術のマッチングを見極める力だという。「社会課題解決に寄与しない製品は淘汰されますし、独自性が発揮しづらい領域では競争に勝つのが難しい」と加藤氏。理想の姿を設定し、そこから今何をすべきかを考えるアプローチと、自社の強みが生きる領域を重ね合わせ、その部分に注力していると説明する。


二つ目の「加工」は、長年培ってきた素材開発・加工・複合技術などを掛け合わせて独自のソリューションを創出する力だ。加藤氏は「たとえばペロブスカイト太陽電池は、厚さ1mmの中に、当社グループが培ってきた封止技術、真空成膜や精密塗工、材料開発技術などのコア技術が詰まっています」と語る。さらに、新領域への挑戦にあたり、持っていない技術の獲得にはM&Aなど経営資源も積極的に投入し、技術開発を強化している。航空分野への挑戦として行った米エアロスペース社のM&Aもその一環だ。


そして三つ目の「変革」は、製品やサービスを元に新たな価値を創り出し、社会を変革していく力。「世界を大きく変える技術を、政官財様々なステークホルダーと協力して社会に普及させていきます」と力を込める。


この3つの力を背景に、様々な技術開発が進行中だ。ペロブスカイト太陽電池やCCU技術以外にも、iPS細胞などの培養に必要な合成足場材の開発など、長期的視点に基づいたR&Dを進めている。足場材は、従来の天然由来素材では品質のばらつきや重金属汚染のリスクが避けられないが、同社では安定性と安全性を両立した100%化学合成樹脂の新素材を開発。将来的には再生医療における基盤技術となる可能性を秘めているという。


そして、このような先端技術開発を推進する場として、関西の研究所隣接地にイノベーションセンターを設立し、顧客、大学、サプライヤーなど多様なステークホルダーらと共創を積極的に推進。同社の技術は、他社の技術と組み合わせることで新たな展開の可能性を広げられるため、M&Aやコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)など外部との連携も積極的に進めているという。1社単体では解決できない複雑な社会課題に連携の力で挑む場があることで、研究者たちのマインドにも変化が生まれ、イノベーション創出の動きが加速している。
「我々が掲げる『Innovation for the Earth』というビジョンは、単なるスローガンではありません。社会課題を解決することでこそ、事業は持続可能な成長を実現できると信じています。自社製品の中から、自然環境や社会環境の課題解決への貢献度が高い製品を『サステナビリティ貢献製品』と位置づけ、このような製品の開発を積極的に行っています。その取り組みの成果が着実に上がり、今ではサステナビリティ貢献製品の売上規模が1兆円に迫るまでになりました。これは全体の売り上げの約77%に上りますが、将来的にはこの比率を100%にすることを目指しています」


加藤社長のこうした言葉が示すように、積水化学グループの姿勢は万博という国際舞台でも揺るがない。今回の展示を通じて、同グループが見せるのはただの技術力ではない。持続可能な社会を実現する“意思”であり、“責任”でもある。


「思い描いていた未来がすでに始まっています。万博の展示を見れば、再生可能エネルギーや資源循環、次世代モビリティや再生医療など、社会課題に立ち向かう技術がすでに動き始めていることを実感できると思います。私たちはこれからも、社会とともに変化し、未来を形にする挑戦を続けます」と語る加藤社長。その言葉どおり、積水化学グループの取り組みは、訪れる来場者に社会の構造そのものを変えるイノベーションの可能性を示す。万博はその触媒にすぎない。積水化学グループの挑戦は、すでに社会実装と未来展望の両輪で動き出している。




本記事は、日経BPの許可により日経ビジネス電子版2025年6月20日-7月19日に掲載した記事広告を転載したものです。© Nikkei Business Publications, Inc.


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