能登半島地震で被災し消滅の危機にある里山集落において、公費解体される予定の古民家を救出(修復活用)し、清らかな山水と棚田が拡がる山里環境を活かして、アート×農林業で「紡ぐ学校」を拓きます。
山の斜面に綺麗に並ぶ棚田、あちこちに点在するため池、長い歴史を刻んできた古民家たち、自然と共に生きる農林水産のノウハウ…。日本で初めて『世界農業遺産』に認定されるほどの文化が今、次世代に引き継がれることなく被災と高齢化により失われようとしていることをご存知でしょうか?
今回のプロジェクトの舞台となるのは能登半島珠洲市上黒丸地区に位置する上黒丸集落。
上黒丸集落は、もともと高齢化が著しく進展していましたが、能登半島地震はそんな集落を直撃。民家は大きく損壊し、棚田などの農地は地割れが起きてしまいました。被災した住民の多くは、仮設住宅に移り住み、農地は手つかずのまま、今も集落には人の気配が感じられません。
家主を失った古民家は行き場をなくし、現在次々と取り壊されてしまっています。このままではいざ帰ろうにも帰る家がなくなり、ますます住民が戻って来られない状況に。農地は荒れ、人がいなくなり、大切な日本の里山文化が失われてしまうでしょう。
しかし、このまま世界的に評価された日本の文化が途絶えてしまうのはもったいない。どうにかこの里山の姿を未来に残したいと考えた私たちは、取り壊される前に古民家を譲り受け改修し、新たに人が集う場所を作り、里山集落を守るプロジェクトを立ち上げました。
このプロジェクトが無事成功すれば、定期的に訪れる人たちと一緒に里山を守っていくことができます。今回のクラウドファンディングは、そんな里山復活に向けた第一歩。ぜひ、皆さんのお力をお貸しください。
目次
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1:能登で急速に進む古民家の取り壊し
2:《プロジェクトで実現したいこと》集落に再び命を吹き込む
3:日本で初めて「世界農業遺産」に認定された里山・上黒丸集落を守る意義
4:これまでの活動
5:プロジェクトメンバーのご紹介
6:今後のスケジュール
7:最後に
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珠洲市の中でも里山環境のモデルと言われている上黒丸集落。地域の風土や気候を反映した伝統的建築様式の古民家群や棚田や森林などの農業基盤は、個人の資産である以上に、古くから住民総出で創り上げ、受け継がれてきた地域コミュニティの重要な資産です。
実は、このような受け継がれてきた文化が失われていく状況を目の当たりにしながらも、古民家の取り壊しが急速に進んでいるのには理由があります。それは『能登半島地震で損壊した民家は罹災判定が半壊以上であれば、公費解体を申請できる』制度があるということ。ご家族で十分に検討し古民家を残す手立てを考えることもできますが、申請期限があることから判断を急ぎ、修復すればまだ使える古民家がどんどん取り壊されようとしているのです。
集落住民のご子息たちは珠洲を離れた地で生活基盤を構えている方がほとんど。住み継ぐあてが無いので、将来に渡って「負の遺産」となるくらいなら、公費で解体してもらった方がありがたいと判断するのは、至極もっともなことでしょう。しかし、地域コミュニティという観点でみると、とてももったいなく残念なことなのです。
そこで私たちはまず、私たちの想いに共感してくださったご家族から、石川県珠洲市若山町の洲巻地区・上山地区・北山地区の3つのエリアで計5つの古民家を譲り受け、紡ぐ学校・上黒丸プロジェクトをスタートさせることに。
里山で生活できるノウハウを提供するという観点から、集落に根付く”農林業”と、もともと縁のあった”アート”とに着目し、それぞれの分野を学んだり、新たに創り出したりすることができる場所を創り出そうと考えています。
『稼げる百姓を百人育てる』というビジョンを掲げスタートした「のとひとカレッジ」は、現地の農林業の匠が先生となり、実習指導するプログラムを提供します。その実習フィールドとして、集落の農林業基盤である田畑と公費解体せずに残された古民家を活用します。
そのためにはまず、棚田や農業用水、森林などを修復が急務です。その後維持管理しながら従来の水稲以外の作物をも育てたいと考えています。実際に、陸稲のほか、オーガニックコットンやキクイモなどは非常に市場性が高く、環境負荷が小さいため、これらの作物も耕作する予定です。
また、棚田近くにある古民家を借用・修復し、屋内での座学を開講する研修棟を整備します。修復にあたっては、大工や左官職人の指導の下、大学生や一般ボランティアが参集したワークショップ形式で進めていく予定です。4月8日にスタートし、現段階では体験入学者を受け入れ、2026年4月より本格的に授業を始めます。
2012年より上黒丸ではアートイベントを度々開催しています。そこで、アーティストが魅了されてきた集落環境を活かして、アーティストが創作活動に没頭できる環境を作り、人々が訪れる場所にしていきます。
アートビレッジでは上山地区の3棟の古民家を改修し使用。国内外のアーティストが中長期滞在しながら、創作活動に専念できる『アーティスト・イン・レジデンス・ハウス』、パフォーミングアーツ(映像・演劇など)の制作と発表の場となる『パフォーミングアーツ・ハウス』、解体された古民家から収集してきた建築資材や家財道具、農機具などを一時保管するスペースとなる『ストック・ハウス』を開設する予定です。
ひらけた環境と清流が残り、ゲンジボタルの里として整備されてきた北山地区において、古民家の一部をリノベーションして、地域に開かれたカフェスペースを設け、新旧の住民同士や来訪客らが集い交流できる場を整えます。
能登の里山里海が、佐渡の里山とともにわが国で初めて「世界農業遺産」に認定されたのは2011年。上黒丸集落は、珠洲市の最奥部に位置しており、典型的な里山環境をこれまで維持してきました。稲作に感謝する農耕儀礼「あえのこと」が伝承され、2009 年にユネスコ無形文化遺産にも登録されています。能登半島においても、日本全体を見渡しても、とても貴重でユニークな地域資源と言えます。
里山集落は、自然環境と地域社会が共生する重要な存在です。伝統的な農業や森林管理により、生態系の多様性が保たれ、土壌が肥沃に保たれるとともに、害虫の発生も抑制されます。地域内では住民同士のつながりが深まり、伝統や文化が継承され、助け合いの精神が育まれます。
また、里山は都市と自然をつなぐ「緑のインフラ」として、都市住民に自然の価値を再認識させ、環境保護への関心を高めます。里山集落は、持続可能な社会を支えるために不可欠な存在であり、その維持・発展が私たちの未来にとって重要なのです。
これまで譲り受けた古民家が3棟(上山地区)に加え、『ひとさまのためになるのなら』と、公費解体を取りやめてコミュニティに開かれた場として活用したいと申し出があった古民家が2棟(洲巻地区と北山地区)を、我々のプロジェクト資源として確保することができました。その古民家の修復活用に向けて、プロジェクトチームメンバーが屋根の修理費などを自己負担したり、ボランティアが家財道具の整理と廃棄処分を手伝うなどして作業を進めています。
3月末に、上黒丸の歴史を辿る写真と映像展示を開催しました。その準備には、仮設住宅で生活されている方々やボランティアキャンプすずメンバーが一緒になって取り組み、コミュニケーションを深めながら作品づくりと会場設営を行いました。
4月末、輪島市三井町仁行の紙漉き工房に遠見和之さんを訪ね、廃棄処分のコットンから採取した繊維と能登ヒバ、コウゾを原料とし、能登で産出される珪藻土もアクセントとした手漉きの葉書を制作してもらうことを依頼しました。世界に一枚の手漉き葉書をリターンの礼状にします。
渡邊が代表理事を務める「一般社団法人スパイラルオブライフwith能登」の法人登記の手続きを進めています。また、ゴールデンウィークには上黒丸集落の休耕田を借用して、耕運機で耕し、オーガニックコットンとキクイモの種を蒔いて、実習フィールドの実験を始めました。
能登半島地震の被災地支援のためボランティア活動拠点「ボランティアキャンプすず」を2024年3月に開設し、1年あまりでのべ1万1千人日を超えるボランティアが集結し、上黒丸集落でも被災者支援を行っています。これまで[金沢大野くらくらアートプロジェクト][輪島土蔵修復プロジェクト]など、コミュニティの遊休資産を修復活用する事業を多数手掛け、ティファニー財団伝統文化振興賞など受賞。
上黒丸集落で2012年よりアートイベントを企画・連続開催し、2017年から「奥能登国際芸術祭」へと繋がりました。国際展では「アートスフィア上黒丸」を掲げ、それぞれが土着的風士を背景に様々な関係を繋げるプロジェクトを実行し評価を得ており、現在も長年の住民との密接な信頼関係を基盤に活動を継続しています。
オーガニックコットンを我が国に導入しビジネスとしたことで、2009年経済産業省「日本を代表するソーシャルビジネス55選」、2010年NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』に社会起業家として取り上げられました。東日本大震災では、「東北グランマの仕事づくり」「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」に取り組みました。地震で被災した珠洲で一次産業の担い手を育成するフリースクール「のとひとカレッジ」の開講準備を始めています。
能登地域で2019年より空き店舗を改修した活動交流拠点 NOTO CROSS PORTの整備、やなぎだ植物公園の将来構想と利活用の実践、地域の古民家の調査・再生・継承など、様々なプロジェクトに関わってきました。現在、金沢大学の教員として、学生と共に地域で活動しています。公費解体で能登の貴重な地域資源である古民家が取り壊されていく状況に危機感を感じ、能登民家修復活用プロジェクト推進チームを結成しました。
集まった支援金は以下に使用する予定です。
古民家の改修費 950万円(まずは2棟)
農業基盤の修復費 450万円(農業用水等)
設備・資機材費 300万円
ワークショップ費 200万円
リターン仕入れ費 100万円
※目標金額を超えた場合は3棟目以降の改修費に充てさせていただきます
《2025年》
6月下旬 古民家借用の契約完了
7月上旬 リターン手漉き葉書発注/古民家修復デザイン検討ワークショップ開始
7月中旬 棚田修復ワークショップ開始
7月下旬 クラウドファンディング終了
8月上旬 古民家修復ワークショップ開始(A棟から順次)
8月下旬 プロジェクト報告オンラインセミナー開始
9月〜 リターン発送開始
《2026年》
1月中旬 のとひとカレッジの生徒募集開始
4月上旬 研修棟(古民家A棟)の修復完了/アーティストインレジデンス開始
5月上旬 棚田での田植えワークショップ
紡ぐ学校・上黒丸プロジェクトメンバー4人は、それぞれが異なる活動をしてきた中で上黒丸集落をどうにか再生したいというそれぞれの想いを持って集まりました。
中瀬は、上黒丸の豊かな環境に魅せられて、2012年よりアート活動の一環として通いながら、地区住民とのコミュニケーションを深めてきました。地震の後、昨年3月に集落に入り、損壊した民家の修復を手伝ったり、公費解体を申請された民家の所有者に何度も解体を留保することを伝えてきました。
そして水野は、昨年2月に「ボランティアキャンプすず運営協議会」を立ち上げ、同3月から被災地支援活動を展開。今年から上黒丸集落の支援も始まり、これまでに1万1千人日を超えるボランティアが市内外で活動を行ってきました。
渡邊は、昨年5月から珠洲市に入り、疲弊した珠洲市を救うための手立てとして、百姓を育てる「のとひとカレッジ」を構想し、今年4月9日に「一般社団法人スパイラルオブライフwith能登」を設立。その後珠洲市内外で実習フィールドを探す中で上黒丸集落の素晴らしい棚田に魅了されました。
豊島は、地震の前から能登町を中心に様々な地域づくりの活動を行ってきました。3月には能登復興建築人会議が行う能登半島地震住宅資源調査に参画し、集落として面で古民家が継承されていく価値・重要性を強く感じました。そんな中、能登の里山環境を代表するような上黒丸集落と出会いました。
このように、一人一人が自身の専門分野を通して珠洲・上黒丸集落と関わる中で、中瀬と水野は今年1月に古民家修復活用について情報交換。その後渡邊と豊島にも声を掛けて「能登古民家修復活用推進チーム」を組織し活動を始めました。その後、中瀬が上黒丸集落の古民家の素晴らしさと危機的な状況を発信し、3月には4人全員が訪れ、この地区を重点的に取り組むことにしたのです。
もちろん、ここまでの道のりも簡単ではありませんでした。しかし、粘り強く所有者の方とコミュニケーションをとり、上山地区の古民家3棟を譲り受けることに成功。また、洲巻地区・北山地区の公費解体の工事延期を実現することができました。
地震で甚大な被害に遭った上黒丸集落、1年半経っても復旧作業はまだまだですが、貴重な里山環境を次の代に繋げていくためには、多様な人と環境資源を紡いで育てていく学校が必要です。
私たちはこのプロジェクトを通して、農林業とアートでひととひとを紡ぎ新たなコミュニティを創り上げたいと日々取り組んでいます。このクラウドファンディングだけでなく、活動助成金の獲得も目指しています。ぜひ、ページを読んでくださった皆様も、新しい集落づくりにご支援ご協力をお願いいたします。