フェンディ、「ワンゲキ・ムトゥ:ブラックソイル ポエムズ」展に協賛

2025.06.10 17:00
フェンディ ジャパン
イタリア・ローマ(Rome)を代表するラグジュアリーブランド フェンディ(FENDI)は、ボルゲーゼ美術館(Galleria Borghese)が2025年6月10日(火)から9月14日(日)まで開催する、ケニア系アメリカ人アーティスト、ワンゲキ・ムトゥ(Wangechi Mutu)による「ブラックソイル ポエムズ(Black Soil Poems)」展に協賛します。クロエ・ペローネ(Cloe Perrone)がキュレーションを手がけ、バロック詩人ジョヴァン・バッティスタ・マリーノ(Giovan Battista Marino)をテーマに、本展はボルゲーゼ美術館が継続的に寄せる詩への関心から実現しました。空間に合わせて創作された作品群は、美術館内のギャラリーからファサード、そして秘密の庭へと展開され、吊り下げられたオブジェ、断片化されたフォルム、そして新しく解釈された神話などを通して、昔ながらの伝統に挑みます。アーティストの現代的な表現と、美術館という権威ある場所との間で、深く複雑な対話を生み出そうとする試みと言えるでしょう。

ムトゥの作品は、詩的で神話的な美しさと同時に、現代社会や物質世界との深いつながりという二つの側面を併せ持っています。展覧会のタイトル「ブラックソイル ポエムズ」は、その両面性を象徴しています。雨に濡れて豊穣な柔らかさを持つ粘土質の「黒色土」。秘密の庭をはじめ、ボルゲーゼ美術館の様々な場所に見られます。彫刻作品は、まるで根源的な力によって形作られたかのように、この土から生まれ出て、物語、神話、記憶、詩といったものを具現化します。この比喩は、ムトゥの作品が持つ創造性と変容の力を強調しています。作品は物質的な基盤を持ちながらも、様々な解釈を受け入れる可能性を秘めていることを示唆します。

ワンゲキ・ムトゥの作品は、ボルゲーゼ美術館の歴史と象徴性に新たな表現方法をもたらします。彫刻や映像などの作品を通して、美術館という空間が持つ階級構造や、永遠性、既成概念といったものに疑問を投げかけ、新しい見方を提示します。宙吊り、流動性、断片化といった手法を通して、美術館のコレクションが持つ重厚さや権威に揺さぶりをかけます。その結果、美術館はもはや静かな収蔵庫ではなく、喪失や変化を受け入れ、再構築を繰り返しながら、常に変化し続ける生命体のように表現されるのです。
この展覧会を特徴づけているのは、ブロンズ、木、羽根、土、紙、水、ワックスといった素材です。特にブロンズは、従来のイメージとは異なり、祖先の記憶、回復、多様性を象徴するものとして用いられています。大理石、漆喰、金箔が中心だった美術館という空間に、有機的で、流動的で、変わりやすい素材を持ち込むことで、ムトゥは変化と創造の美学を改めて示しています。美術館が2026年の展覧会で取り上げるテーマ「変容(metamorphosis)」を先取りするものとも言えるでしょう。

「ブラックソイル ポエムズ」展は、固定された見方にとらわれず、様々な物語が共存できるような、より広い視野を持つように私たちを誘います。美術館を、単に過去の記憶を保存する場所としてではなく、想像力と変化が生まれる場所として捉え直すことを促します。ワンゲキ・ムトゥの作品は、展示されているものだけでなく、そこから取り除かれたもの、語られなかったもの、見えなくされたものにも目を向けさせ、美術館を新たな視点から見るように、私たちに語りかけてくるのです。
美術館のファサードと秘密の庭には、ブロンズ彫刻が置かれています。現代版カリアティードともいえる「The Seated I」と「The Seated IV」は、2019年にニューヨークの「メトロポリタン美術館(Metropolitan Museum of Art)」の「The Facade Commission」のために制作されたもので、ムトゥと主要な公共機関との重要な連携を示すものです。その他にも、「Nyoka」、「Heads in a Basket」、「Musa」、「Water Woman」といったブロンズ像が、典型的な器を変化が生まれる場として再解釈しています。「The End of eating Everything」という作品で、ムトゥは彫刻の表現方法を映像に広げ、神話の世界をさらに深く、時間を感じさせる形で表現しようとしています。これらの作品には、東アフリカの伝統や世界各地の宇宙観に基づき、一部は人間、一部は神話、一部は象徴的な器である、新たなハイブリッドな形態を取り入れています。庭園や建築の入り口に静かに佇むこれらの作品は、理想化された形態や直線的な物語ではなく、曖昧さ、異質さ、そして精神的な存在感といった要素を取り入れることで、その場所が持つ古典的な秩序との調和を図ろうとしています。聞こえる音も、聞こえない音も、そしてその音の余韻も、繊細でありながら、いたるところに存在感を示しています。「Poems by my great Grandmother I」の宙吊りのリズムから、ボブ・マーリー(Bob Marley)の楽曲「ウォー(WAR)」から引用された歌詞が用いられた「Grains of War」まで、エチオピア(Ethiopia)最後の皇帝(1930年~1974年)であり、反植民地主義運動の重要人物であったハイレ・セラシエ1世(Haile Selassie I)への言及が見られます。ハイレ・セラシエ1世は、1963年の国連演説で人種差別の終焉を訴えました。言語は彫刻となり、音は記憶の形態となるのです。

展覧会はローマのアメリカン・アカデミーにも場所を移し、そこでは「Shavasana I」が展示されます。ヨガのポーズである「シャヴァーサナ(屍のポーズ)」から名付けられたこの作品は、藁のマットで覆われた横たわるブロンズ像で、作者の実体験に基づいています。古代ローマ時代の墓碑銘に囲まれた「アメリカン・アカデミー」の中庭に設置されたことで、死、降伏、そして生命の尊厳といったテーマがより強く意識されるようになっています。

ボルゲーゼ美術館は、近年の「ジュゼッペ・ペノーネ ユニバーサル ジェスチャー」展(2023年)や「ルイーズ・ブルジョワ:無意識の記憶」展(2024年)に続き、本展を通して、国際的に著名なアーティストの視点を通して新たな繋がりと視点を育み、現代アートへの取り組みをさらに深めていきます。
ワンゲキ・ムトゥ

「ワンゲキ・ムトゥ:ブラックソイル ポエムズ」展
会場 : ボルゲーゼ美術館(Galleria Borghese)
住所 : Piazzale Scipione Borghese, 5, 00197 Rome, Italy
開催期間 : 2025年6月10日(火)~9月14日(日)

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