田中拓馬 個展 【3月28日 綱町三井倶楽部】開催直前インタビュー

2025.03.26 12:20
2025年3月28日、東京都港区に佇む綱町三井倶楽部にて、画家・田中拓馬の個展が開催されます。埼玉、東京、ニューヨークの路上からキャリアをスタートさせ、独自の画風で国内外を魅了してきた田中氏。由緒あるこの場所での個展開催直前、その胸中に迫りました。
▲田中拓馬本人からの個展招待状
■路上から世界へ、掴み取ったチャンス
▲今回、展示される作品の一部


ーー綱町三井倶楽部での個展開催、おめでとうございます。率直な感想をお聞かせください。
田中氏
「ありがとうございます。でも、これはまだ通過点だと思っています。偶然出会った方からご縁を頂いて開催に至りましたが、路上からスタートして、積み重ねてきた経験があったからこそ、掴み取ることができたチャンスだと感じています。」


ーー 今回の個展はどんなテーマですか?
田中氏
「テーマは、桜です。単に美しい桜を描くだけではありません。
僕の作品は、歴史的な背景や、日本人の精神性、民族性といったものを深く掘り下げ、表現しています。
例えばある作品は、安土桃山時代の画家、長谷川等伯とその息子、久蔵の桜の絵からインスピレーションを得ています。彼らの作品に、建仁寺の龍の構図などを組み合わせ、僕なりの解釈で再構築しました。
もともと僕の創作のテーマは『路上から世界へ』なんですが、それは感情や本能といった不確かなものの中にも、実はマーケティングに基づいた、論理的な構造や普遍的なパターンがあるんじゃないか、という探究からきています。
現代のアートシーンでは、表面的な美しさや分かりやすさが重視されすぎるあまり、軽薄になってしまう傾向がありますが、そういった系譜を継ぐアプローチを重視することによって、世界で通用する作品を生み出すことができるのではないかと考えています。」
■田中拓馬が捉える、アートの核心
▲綱島三井倶楽部での個展に向けて制作途中の様子


ーー作品を生み出す上で重視していることはどんなことでしょうか?
田中氏
「これまでに作品を購入いただいた方に満足して頂ける作品を生み出すことです。一度手にしていただいた作品を『ずっと手元に置いておきたい』と思ってもらえなければ、作品は世に残り続けることはできませんから。
そのためには、いい作品を残すこととバリエーションを増やすことが重要だと思っています。先程話したように歴史や世界から学んだり、色んなものを組み合わせたりして、実験しながらバリエーションを増やしていくことが、表現や技術の向上だけでなく、経営的にも重要だと考えています。」


ーー田中さんにとって、絵を描くことはどんな意味を持っていますか?
田中氏
「一番錬金術に近いなと思うんです。
白い紙という二次元の平面に、色んな細工をすると世界観ができて感動する人がいる。非常に面白い現象ですよね。僕には、画家という仕事が面白いものと写ったわけですが、普通の感覚からすると、これを職業にすることというのはなかなか難しいですよね。
一方で、作品が素晴らしいから価値があることでもないと思います。その辺の子どもが描きました、では誰も買わないですよね。その画家の生き様や顔となる部分が重要な価値になるのだと思います。
『路上から世界へ』というテーマの下で25歳のときに、まったくのゼロから画家を目指しました。統合失調症を抱えながらも、ここに至るまで挑戦し続けてきたという意味では、その価値があるのではと思っています。」
■対話の価値と、田中拓馬の生き様
▲田中氏のアトリエには、アメリカの著名な財閥など各国からゲストが訪れる


ーー 個展に足を運んだからこそ味わえる価値もありますか?
田中氏
「対話しないとわからないことが多いと思うんです。僕の価値が伝わっていない部分もきっとあるけれど、実際に会って話をすることでこそ、伝わるものがある。
アートは非常に非言語的な部分が大きいですが、それを理解するには、やっぱり直接会って感じるものがあると思います。オンラインで見るだけでは伝わらない、もっと深いものがあるんですよ。対話を通じて、作品やその背景に込めた意味が伝わる瞬間がある。それは、言葉では説明できない、身体的なものだったりするんです。だから、アートが持っている力を完全に引き出すためには、対話が不可欠だと僕は思っています。
だからこそ、展覧会ではできるだけ多くの人と直接対話し、作品の背景や思いを共有したいと考えています。作品について語り合うことで、僕自身も新たな発見がありますし、観る人にとっても、作品とのつながりがより深まるはずです。」


ーー最後に、今回の展覧会を通じて伝えたいメッセージを教えてください。
田中氏
「『チャンスを作ることの大切さ』です。SNSが発達した今、一見すると誰にでもチャンスがあるように思えますが、実際にはそれを掴むための準備や行動が必要です。
僕は20年間かけてここまで来ました。その過程で何度も壁にぶつかりましたが、『やり続ける』ことで道が開けました。今回の個展を通じて、『自分にも何かできるかもしれない』と感じてもらえたら、それが一番嬉しいですね。
そして、最近は『家族に届くぐらいになったらいいな』ってことをちょっと思っています。正直なところ、僕の家族は作品をあまり見ていないかもしれません。それでも、もし僕の作品が本当に価値のあるものならば、いつか自然と家族にも届くはずだと思っています。市場や批評の評価ももちろん重要なんですが、やっぱり最も身近な人こそ一番大事なんじゃないかってね。」

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