XRの進展:3つの主要ボトルネックとの対峙

2025.03.04 15:06
JBD
XR技術は視覚体験革新の大きな可能性を持つが、高コスト、複雑な製品形態、実用アプリ不足が普及の障壁となっている。技術進歩によりこれらの課題は徐々に解決中。

数あるテクノロジー製品の中でも、XR(仮想現実=VR、拡張現実=AR、複合現実=MR)は、非常に大きな将来性を秘めたカテゴリーであることは疑いようがありません。XRの魅力は、人間が情報を受け取るうえで中心的な役割を果たす視覚のニーズを大きく満たす点にあります。実際、人間が得る情報の約85%は視覚を通じて取得されるとされ、視覚体験の変革をもたらす製品は歴史的に大きな成功を収めてきました。雑誌、テレビ、映画、短編動画などはいずれも、人々の視覚的インタラクションを変化させ、時代をリードしてきた代表例と言えるでしょう。ARであれVRであれ、空間的制約を打破し、視野を広げたいという人々の需要を満たす点が、両者に共通する重要な特徴となっています。

こうした背景から、XRは単なる新しい情報提示手段にとどまらず、新しいインタラクション様式をも生み出し、スマートフォンに続く「次世代テクノロジー時代のエントランス」として期待されています。業界の一般的な見方としては、XR技術が普及することで企業に数百億ドル規模の市場価値がもたらされると考えられています。

しかしながら、これほどまでに潜在力を備えながらも、XRの普及にはなお多くの難題が存在します。例えば、高い技術コスト、複雑な製品形態、そしてユーザーが継続的に求めるアプリケーションシーンの不足などが挙げられます。多くの企業がこの領域で努力を重ねてきたものの、スマートフォンのような“爆発的普及”の瞬間はまだ訪れていないのが現状です。

それでもなお、技術の絶え間ない進歩を背景に、XRの発展を阻んできた「製品ポジショニング」「技術的アプローチ」「製造能力」の三大ボトルネックは、徐々にではありますが打開されつつあります。
1.製品ポジショニングのブレイクスルー
XR技術の開発初期には、しばしば“技術主導”の姿勢が先行し、“ユーザー主導”のアプローチが十分にとられないというジレンマがありました。技術チームは“究極の製品”を追い求めるあまり、ユーザーの実際のニーズに寄り添った段階的な改善を軽視してしまうことが少なくありません。結果として、AR製品では重量の増大や電池持ちの短さ、高コスト、高消費電力といった課題が顕在化し、普及性や実用性に支障をきたしていました。

しかし、業界全体が試行錯誤を重ねるなかで、XR製品のポジショニングは徐々に現実路線へとシフトしてきています。各社はユーザーニーズをより的確に捉え、具体的な利用シーンにおける課題解決に集中する方向へと動き始めました。

さらに、軽量化ARグラスのデザインは消費者の目線に寄り添い、日常の眼鏡に近い外観へと近づいています。ファッション性と実用性を両立したこれらのグラスは、徐々に多くの消費者の関心を集めるようになってきました。

各社ともARグラスへの注力を強めており、この市場は今後さらに拡大するものと予想されています。IDCのレポートによれば、新技術の推進力と価格低下の後押しにより、2025年にはMR(混合現実)およびARのハードウェア分野において前年比41.4%という高い成長率が見込まれています(1)。
2.技術的アプローチの成熟
XR発展のもう一つの大きなボトルネックとして、技術イノベーションの困難さが挙げられます。これまでのXR分野では、多種多様な光学ディスプレイ技術が乱立し、各社が選ぶ技術路線にもばらつきがありました。その結果、業界全体で十分なスケールメリットが得られず、技術進歩やコストダウンの速度が限定的で、普及を促進するうえで高いハードルとなっていました。

ARの光学ディスプレイを例にとると、光学ディスプレイモジュールはARデバイスのコスト全体に占める比重が大きく、製品の映像品質にも直接影響するため、非常に重要です。ARの光学ディスプレイは大きく、光学透過型(OST)とビデオ透過型(VST)に分けられます。VSTはカメラを用いて現実世界の映像を取り込み、ディスプレイに投影する方式で、没入感の高いシーンに適しています。一方、OSTはユーザーの視界に直接仮想映像を投影する手法で、軽量化を実現しやすく、日常使用に向いている点が特徴です。
長年にわたる研究開発の成果として、OST技術は着実に成熟し、さまざまなAR製品に組み込まれるようになってきました。なかでも光波導技術は、透過率の高さ、小型化設計の容易さ、デザインの柔軟性などの強みを持ち、“軽量化”へ向かうARのトレンドを支える主流のOST光学手法として定着しつつあります。

また、近接ディスプレイの分野ではMicroLEDがARの第一候補として注目されています。MicroLEDは高輝度、小型、低消費電力といった利点を兼ね備えており、ARグラスが求める映像品質の厳格な要件をクリアできます。特に、光波導方式は光の効率が低いため、ディスプレイからの高輝度が欠かせませんが、MicroLEDであればこの課題を十分にクリアできるのです。

YOLEの過去の調査によれば、2022年にリリースされた複数の軽量MicroLED ARグラスの大半にJBDの技術が採用されており、この分野での導入・普及がコンシューマー向けARの加速を牽引しています。2024年末までには、JBD技術をベースとしたARグラスの機種が合計30種類以上にのぼる見込みです。
3. 製造・量産能力の向上
XR製品が急速に普及するためには、製造能力のブレイクスルーが不可欠です。光波導技術が成熟しつつあるなか、業界の関心はMicroLED光学エンジンの量産体制に移行しています。2015年に設立されたJBDは、MicroLED微小ディスプレイ技術を核とした研究開発を続け、2021年には業界で初めてMicroLED微小ディスプレイの量産化を達成しました。先述のARグラス各種が市場に出始めているのも、この量産技術の進歩による恩恵が大きいと言えます。

さらにJBDは、MicroLED微小ディスプレイや光学エンジンの技術を絶え間なくアップグレードし、MicroLEDの輝度を引き上げ続けています。現在では、緑色で1,000万nit、青色で200万nit、赤色で150万nitという高輝度を実現しており、今後の製品開発にも高い期待が寄せられています。
ARの「軽量化」という大きなトレンドに対応するべく、JBDはMicroLED光学エンジンのアップグレードと小型化にも注力しています。たとえば単色光学エンジンの場合、2021年にリリースした「Hummingbird Mini I」は体積が0.3ccでしたが、2024年に発表された「Hummingbird Mini II」では0.15ccまで縮小されており、テンプル(メガネのツル)部分への簡易的な組み込みが可能となっています。これによりARグラスのデザインやファッション性、個性表現の自由度が飛躍的に高まりました。さらに最新の「Hummingbird I」カラー光学モジュールでは、入眼輝度が6000nit以上を達成し、従来のカラー光波導が1500nit程度だった水準を大幅に上回る性能を実現しています。その結果、屋外のような明るい環境下でも高品位な映像体験を提供できるようになりました。

MicroLED微小ディスプレイの量産化とARグラスの軽量化推進により、JBDはYOLEのレポートにおいて、2020~2030年のAR用途向けMicroLED分野でAppleやMetaと並ぶキープレイヤーの一社として位置づけられています(2)。

結語

「製品ポジショニング」「技術的アプローチ」「製造能力」の3つのボトルネックが徐々に克服されつつある今、AR産業は新たな発展期を迎えようとしています。この過程で、コンシューマー向け電子機器ブランドやサプライチェーン企業も大きく進歩し、業界全体で技術革新と製品成熟が加速していると言えます。将来的には、さらなる技術の進歩によって、ARはより幅広い分野で活用されるようになり、次なるデジタル時代の中核技術として大きな役割を担うことになるでしょう。


参考文献
(1)
(2)

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