後期型、純ガソリンエンジンモデルに込められた進化 ポルシェ「911カレラ」

2025.02.14 12:49
スポーツカーの代名詞といえば、ポルシェ「911」。1963年の誕生以来、そのDNAは変わることなく受け継がれてきた。その象徴が、リアエンドに搭載される水平対向6気筒エンジン。どれほど時代が変わろうとも911という名を冠し続けるのは、この伝統が脈々と息づいている証だ。
現行モデルは2018年にフルモデルチェンジを果たした8代目。今回試乗したのは、そのマイナーチェンジ版「992.2」だ。ポルシェのマイナーチェンジは、単なる小変更にとどまらない。歴代モデルがそうであったように、今回も「新型」と呼ぶにふさわしい進化が施されている。たとえば前世代の991.2では、エンジンが自然吸気からターボへと変貌を遂げたほどだ。
今回の992.2で最も注目すべきは、シリーズ初の電動化。「911カレラGTS」にはT-ハイブリッドと呼ばれる電動システムが搭載された。しかし、今回試乗したのはハイブリッドを持たない“素”のカレラ。このピュアなガソリンモデルには、どんな進化が込められているのか。
まず目を引くのは、フロントバンパーのエアインテーク。新たに縦型フラップが採用され、かつてその位置にあったドライビングライトは、丸型ヘッドランプユニット内へと移された。装飾を加えるのではなく、技術の進化によって造形をよりシンプルにする。これぞポルシェ流のミニマリズムだ。
コクピットに身を沈めると、メーターがフルデジタル化されているのがわかる。かつて911のアイコンだった5連アナログメーターは、中央のレヴカウンターを含む横長の湾曲ディスプレイに集約された。さらに、すでに物理キーからノブ式へと進化していたイグニッションは、ついにスイッチ式へと変貌。新しい時代の911であることを、静かに、しかし確かに主張している。
PDKのノブを引き、アクセルを踏み込む。すると、ステアリングから伝わるシャープな応答性と、背後から響くフラット6の咆哮が、911であることを力強く証明する。3リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンは、先代よりも9ps増しの394psを発揮。スペック上の差異はわずかだが、1520kgのボディを軽々と引っ張るその感覚は、数値以上にダイナミックだ。
前期型との違いは、明らかに乗り心地の向上にある。試乗車にはオプションの1サイズアップしたタイヤが装着されていたが、それ以上にダンパーやブッシュ、アライメントの最適化が効いているのだろう。911は、そのリアエンジンレイアウトゆえにリアタイヤが太くなり、乗り心地が硬くなる傾向がある。しかし、新型は角が取れたような洗練された乗り味を手に入れ、長距離ドライブへの適性をさらに高めている。
ワインディングロードへ持ち込むと、足回りの熟成が如実に感じられる。ステアリングの切り始めからフロントタイヤが路面を捉え、リアがしっかりとついてくる一体感が増している。アクセルを踏み込めば、フラット6が低音から高音へと一気に駆け上がり、そのサウンドが背中越しに響き渡る。中速コーナーでは軽快に鼻先が入り、高速域ではしっとりと落ち着く。まさに、「操る楽しさ」を磨き上げた一台だ。
また、新型は先進運転支援システム(ADAS)も強化されている。フロントナンバープレート下には大型センサーが備えられ、高速道路の渋滞からワインディングロードまで、あらゆるシーンで安心感を提供する。
電動化が加速する自動車業界において、ピュアなガソリンエンジンを搭載するカレラの立ち位置は、今後さらに価値を増していくだろう。ターボやGT3といったハイパフォーマンスモデルが話題をさらう中、敢えてベーシックな911を選ぶ。それは単なるスペックの追求ではなく、ポルシェの本質を知る者だけが味わえる、贅沢な選択肢なのかもしれない。911は、時代とともに進化し続ける。それでも、根底に流れるポルシェの哲学は変わらない。「純粋なスポーツカーとは何か?」その答えが、この新型カレラには凝縮されている。
ポルシェ 911 カレラ  車両本体価格: 1694万円(税込)ボディサイズ | 全長 4542 X 全幅 1852 mmホイールベース | 2450 mm車両重量 | 1520 kgエンジン | 水平対向6気筒ターボ排気量 | 2981 cc最高出力 | 394 ps(290 kW)最大トルク | 450 N・m変速機 | 8速 PDKお問い合わせ先www.porsche.com
Text : Takuo Yoshida

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