2025年4月から始まる大阪・関西万博。SMBCグループは「キャッシュレス決済・EXPO2025デジタルウォレットサービス」にプラチナパートナーとして協賛し、大阪・関西万博独自の電子マネー「
」および、ミャクペ!のチャージ額や万博関連イベントへの参加でステータスが上がる「
(※1)」の運営プラットフォームの提供を、2024年7月1日より開始しています。
ミャクペ!およびミャクミャクリワードプログラムとはどのようなものか。また、現金が使えない万博内における独自の電子マネーとして、ミャクペ!はどのような工夫を施しているのか。SMBCグループは今回の取り組みを通じて、万博および日本社会にどのように貢献したいと考えているのか?関係者に伺います。
(※1)会期前からのミャクペ!のチャージや万博への参加によりステータスが上がる仕組みで、ステータスに応じて万博会場内での特別な体験・サービスが獲得できる。
顔認証決済が可能な大阪・関西万博独自電子マネー「ミャクペ!」
ーー大阪・関西万博における「EXPO2025デジタルウォレット」がどのようなサービスなのか、概要を教えてください。
「EXPO2025 デジタルウォレット」は、大阪・関西万博でのキャッシュレス推進の理解促進や万博開催前からの盛り上げ、万博のテーマである「デジタル」「未来への行動」を理解いただき、万博に参加いただくことを目的としたアプリサービスです。
森
「EXPO2025 デジタルウォレット」は、5つの機能で構成されています。
1つ目は銀行口座やクレジットカードからチャージし、万博会場内外で利用できる万博独自の電子マネーサービスのミャクペ!(SMBCグループ担当)、2つ目は万博関連のプログラムへ参加すると万博独自のポイント(※2)が貯まるサービスのミャクポ!(りそな銀行さま担当)、3つ目は「EXPO2025デジタルウォレット」サービスを通して発行される万博独自のNFT付きの画像提供サービスのミャクーン!(SBIさま担当)、4つ目はSBTを通じて、大阪・関西万博を応援している協力会社と連携して、万博と利用者がつながる(機運醸成する)サービスのWeb3ウォレット機能(HashPortさま担当)、そして5つ目はミャクペ!、ミャクポ!を利用、万博関連イベントに参加することでステータスが上がり、ステータスごとに様々な特典がもらえるミャクミャクリワードプログラムです(2025年日本国際博覧会協会さま 以下、万博協会さまが事業運営、三井住友銀行が運営プラットフォーム提供を担当)。
(※2)貯まった独自ポイントを使って万博限定商品・サービスに交換することができます。
EXPO2025 デジタルウォレットアプリ画面イメージ ©Expo 2025
ーーSMBCグループが、「EXPO2025デジタルウォレット」プロジェクトにプラチナパートナーとして協賛した理由を教えてください。
森
2022年2月9日に、万博協会さまが「キャッシュレス決済システム及びデジタル地域通貨サービス」に関する協賛の募集を開始したことを受けて、グループ内で検討のうえ、協賛申出書を提出しました。関西地域をマザーマーケットの一つとするSMBCグループとして、キャッシュレス決済や独自の電子マネーの運営に携わることは、万博の成功はもとより関西をはじめ日本全体のキャッシュレス化の進展に寄与し、中長期的なSMBCグループの事業機会拡大にも繋がると考え、協賛を決定しました。
ーー万博独自の電子マネーであるミャクペ!とは、どのようなものですか?
森
ミャクペ!は万博会場の内外を問わず利用可能な大阪・関西万博独自の電子マネーです。会場内ではQRコード(※3)を読み取るコード決済に加え、Visaのタッチ決済やiD(※4)に対応しています。そして事前に顔情報を登録していただければ、スマートフォンやクレジットカードを使わず、会場内の決済端末(Stera Terminal)のカメラに顔をかざす(顔認証)ことで決済が可能です。
(※3)「QRコード」は、株式会社デンソーウェーブの登録商標・JIS、ISO規格です。
(※4)「iD」は株式会社NTTドコモの商標です。
万博開催目的の一つに「未来社会の実験場」というコンセプトがあります。
まさに、顔認証決済は「未来社会の実験場」に相応しい新たな挑戦であり、将来の日本や世界の成長に繋がるイノベーションを生み出していく万博ならではの体験だと考えています。
顔認証のためにご登録いただいたデータは、国内のクラウドサーバーでデータ暗号化等の国際セキュリティー基準を満たした対策によって厳重に管理していますので、安心して新技術を体験していただけます。
※ミャクペ!の決済音はコード決済と会場内顔認証決済のみ
後藤
私は前職も含めて決済領域の業務に長く携わっていますが、これほど大規模に独自電子マネーと顔認証決済が紐づくのは初めてだと思います。そういう観点でも、一人でも多くの方に顔認証決済を体験してもらい、未来社会を体感していただきたいです。
株式会社三井住友銀行 決済商品開発部 部長代理
後藤 建氏
オールSMBCグループでプロジェクトを遂行
ーー今回のプロジェクトの実施において、SMBCグループ内ではどのような布陣で臨んだのでしょうか?
森
最初はグループ内でタスクフォースを立ち上げ、万博協会さまとの議論を開始しました。私たち三井住友銀行内の担当者のほかにも、ミャクペ!で実装するシステム機能ごとに、どのようなスキルを持つメンバーが必要なのかを考え、SMBCグループ内のその道のプロフェッショナルに参画してもらいました。
商品設計については三井住友カード(以下、SMCC)のプリペイド担当部署、Apple Pay(※5)とGoogle Pay(※6)とのシステム連携についてはSMCCのシステム運用担当部署、銀行口座とクレジットカードのチャージについてはSMCCの担当部署が手がけています。安定的なシステム運用のために、NECさまと日本総合研究所さまの協力を仰ぎ、ユニバーサルデザインを実現するために日本総合研究所のデザイナーにも参画いただきました。
(※5)「Apple Pay」はApple Inc.の商標です。
(※6)「Google Pay」はGoogle LLCの商標です。
本プロジェクト立ち上げ時に経営会議役員の方から「大阪・関西万博での機運醸成のため、オールSMBCグループで臨むように」と指示をいただきました。この指示のもと、すべての担当者が同じ目的に向かって取り組んだ結果、タイトなスケジュールにもかかわらず2024年7月1日に
株式会社三井住友銀行 決済商品開発部 上席推進役
森 敦夫氏
安藤
通常、プリペイドシステム導入などの案件では、主に社外システムへのサービス導入が中心となるため、限られた打ち合わせの時間内で要件整理や業務調整をしなければならず、細かい認識相違が生じることがあります。その結果、プロジェクトの進捗に影響を及ぼすケースがよく発生します。
しかし、今回はSMBCグループ内への導入となるため、Teamsを活用した迅速なやり取りが可能で非常に効率的でした。
特にシステム担当だけでなく、業務担当の方も含めて直接議論することができたため、業務実態に即した運用設計が可能となり、SMBCグループ一体で開発できる最大のメリットであったと感じております。
三井住友カード株式会社 ソリューション開発部 部長代理
安藤 一裕氏
佐藤
ApplePayとGooglePayの導入はアプリ審査等のハードルが高く、スケジュールの遅延リスクのあるタスクでしたが、SMCCの既存サービスでの開発経験を活かして必要なサポートができたと感じております。
三井住友銀行、NECさま、HashPortさまとの綿密な連携が取れたため、スケジュール通りの円滑な進行ができました。
三井住友カード株式会社 ソリューション開発部
佐藤 秀平氏
関係各社と議論を重ね、お客さまにとって使いやすいサービスを目指す
ーープロジェクトの進行にあたり大切にしたことや苦労した点、やりがいについて教えてください。
岩崎
すでに多くのキャッシュレスサービスが乱立している状況の中で、新しいサービスの導入には、さまざまな課題がありました。どの観点で既存の先行サービスと差別化するのか、ミャクぺ!ならではの強みをどこに持ってくるのか非常に難しかったです。
株式会社三井住友銀行 決済商品開発部 部長代理
岩崎 修典氏
後藤
三井住友銀行においても、ミャクペ!のような「前払い式支払手段(プリペイド型電子マネー)」のサービスを立ち上げるのは初の試みです。前例のないプロジェクトを実現するにあたり、関係部署との調整や、リリースの道筋をつけていくことがとても大変でした。
しかし前例踏襲に陥ることのないよう、プロジェクトメンバー各々が主体性をもって議論できたと思います。そして、トラブルの際にも責任の所在を探すのではなく、どうやって最短距離で解決していくかを全メンバーが念頭に置いて行動していたので、大きなやりがいがありました。
森
今回、ミャクペ!が搭載されたEXPO2025デジタルウォレットは電子マネーだけではなく、万博独自のポイント「ミャクポ!」、万博オリジナルNFTの「ミャクーン!」、NFT技術を活用したSBT(Soul Bound Token)を用いた「事業連携サービス」というサービスも提供しています。そのため、大阪・関西万博の運営を行う万博協会さまとの定例ミーティング以外にも、それらのサービスを手がけるりそな銀行さま、SBIホールディングスさま、HashPortさまと議論を重ねる必要がありました。
3社とのミーティングを定例化し、各社さまのご意見を取りまとめたうえで、全社が集まるミーティングで対応方針を協議することを大切にしてきました。
富田
関係する企業が多いため、各社の目的や必要な要件を理解しながら密にコミュニケーションを取り、EXPO2025デジタルウォレットというサービス全体としての最適解を模索しました。保守的な意見を主張するだけではプロジェクトが前に進みませんので、腹を割ってあるべき姿をともに考えるスタンスで企画を進めました。
株式会社三井住友銀行 決済商品開発部 部長代理(三井住友カード出向中)
富田 晃啓氏
森
時には各社の意見が異なることもありましたが、そんなときはお客さま目線でのユーザビリティの観点に立ち返り、意見の調整を図りました。さらに、私自身はシステム企画・開発に携わって20年以上になりますが、万博という大規模なプロジェクトに携わったことで、普段連携させていただくことがないSMBCグループ以外の方と日々密に連絡を取り合い、多様な視点と知識を身に着けられたことが一番のやりがいであり、自分自身の成長も感じることができました。
万博オリジナル特典も。ミャクミャクリワードプログラム
ーー提供を開始したミャクペ!を、どのように進化させていきたいですか?
岩崎
現在のミャクぺ!は、キャッシュレスサービスとして支払い機能のみを備えています。このままでは他サービスには勝てないため、「ミャクぺ!を使いたい」とユーザーに思われるサービスに進化させる必要があります。キャッシュレス以外の領域も含めて、ユーザーにとっての付加価値、例えば、万博独自のユーザー体験などのメリットがあるサービスにしていきたいと考えています。
森
EXPO2025デジタルウォレットには、会期前からミャクペ!やミャクポ!を利用したり、万博へ参加したりすることでステータスを獲得し、ステータスごとにさまざまな万博を楽しむベネフィットを受け取れる「ミャクミャクリワードプログラム」を用意しています。現在、SMBCグループと万博協会さまとの間でさまざまなイベントやサービスを企画しているところです。万博に協賛されている企業さまとのコラボレーションも実現できれば、より特別な体験が提供できると思います。
富田
リワードプログラムの作りこみ次第で、来場を促進するだけでなく来場者にプラスアルファの体験をしてもらうなど、他のキャッシュレス決済手段では絶対に出来ない体験をもたらすことも可能です。いちユーザーとしても、自分が期待できるようなサービスに仕上げられたらいいなと思っています。
大阪・関西万博公式キャラクター ミャクミャク ©Expo 2025
ミャクペ!を通じて、日本のキャッシュレス化推進に貢献
ーー万博およびミャクペ!に期待することについて教えてください。
後藤
ミャクペ!はただの決済手段ではなくて、万博における電子マネーという独自性と優位性があります。他の決済手段とは異なる万博独自路線で差別化を図り、「万博に行くならミャクペ!を事前登録しよう」と思っていただけるよう、サービスのレベルアップを図っていきます。そういった魅力づけによって、初めてキャッシュレス決済に触れた方々が、万博が終わったあともミャクペ!に限らず、引き続きキャッシュレス決済を使っていただけるようにしたいですね。
森
現状は約4割といわれている日本のキャッシュレス化の推進に寄与すること、さらに高齢者やデジタル技術に不慣れな人々にとって、新しい技術に触れる良い機会になると思います。ユニバーサルデザインを十分に意識して、使いやすいUX・UIを目指し、レベルアップを図っていきます。「ミャクペ!」、「ミャクミャクリワードプグラム」を通じて、現金を利用することでは体験できない顔認証決済、万博会場内での様々な特別な体験を味わっていただくことで、万博にいる・参加している実感がより深まり、没入いただけるような魅力的な企画を万博協会さま、協力企業の皆さまとともに検討しております。
岩崎
昨今の日本では急速にキャッシュレス対応が進みましたが、依然としてキャッシュレス非対応の店舗は存在しています。大阪・関西万博の会場内では国際博覧会として初めてとなる全面的なキャッシュレスが導入されます。今回のミャクぺ!が、キャッシュレスに触れたことのないユーザーやお店にキャッシュレス体験を提供して、日本のキャッシュレス化に貢献できる存在になれることを期待しています。
安藤
ミャクペ!は、三井住友銀行の案件推進力やコンソーシアム内での交渉力、SMCCのキャッシュレス領域のノウハウ、日本総合研究所さま、NECさまの開発力を結集した特別な電子マネーとなりました。
多くの方に使っていただける便利で楽しい商品になっただけでなく、SMBCグループにとっても、会社の垣根を越えてより一層価値あるサービスを提供することができたという、成果にもなったのではないかと思います。
森
万博独自の電子マネーであるミャクペ!への協賛は、SMBCグループが提供するシステムの認知度の向上、事業機会拡大にも資すると考えています。ミャクペ!のユーザー全員が万博会場内で没入体験を楽しめるよう、万博協会さま、協力企業の皆さまとより魅力的な企画を検討し、システムを構築していきますので、どうぞお楽しみに。
三井住友銀行が特注した万博カウントダウンモニュメント前での記念撮影
【プロフィール】
株式会社三井住友銀行 決済商品開発部 上席推進役
森 敦夫氏
2000年 ITエンジニアとして日本総合研究所へ入社。地方銀行の情報系システム、勘定系端末更改案件を担当後、2016年よりSMBC信託銀行統合案件のタスクフォースメンバーとしてプロジェクトを推進、その実績によりIT協会「2018年度 Super SE 100人衆」を受賞。2020年2月よりSMBCシステム統括部に異動し、新技術、AI等を活用したSMBCグループ共通基盤システムを企画・推進。2022年10月より現職。
株式会社三井住友銀行 決済商品開発部 部長代理(三井住友カード出向中)
富田 晃啓氏
2009年に三井住友銀行へ入行。事業承継や法人営業を経験した後、SMBC日興証券にて法令対応の業務企画や銀証協働の企画推進を担当。帰任後ほどなくして三井住友カードへ出向し、国際ブランドプリペイドカードの商品企画に従事。その知見を活かす形で、2022年10月より大阪・関西万博案件にジョイン。
株式会社三井住友銀行 決済商品開発部 部長代理
後藤 建氏
2015年に新卒で国際カードブランドに入社し、九州エリアのアクワイアリング事業・イシュイング事業の推進、海外拠点の国際ブランド事業企画、推進に従事。その後、QRコード決済事業者にて、BtoC送金サービスに関するビジネス開発、システムベンダーとのアライアンス企画業務を経験。2024年3月より現職。
株式会社三井住友銀行 決済商品開発部 部長代理
岩崎 修典氏
新卒で大手決済代行会社に入社し、非対面決済領域のキャッシュレス推進業務に従事。その後、大手の通信系会社にて国際ブランドの方針に準拠した決済サービスの企画・開発を経験。2023年3月より三井住友銀行決済商品開発部に入行し、大阪・関西万博案件にジョイン。万博案件他、給与前払いサービスも担当。
三井住友カード株式会社 ソリューション開発部 部長代理
安藤 一裕氏
2011年に新卒でシステムインテグレーターにITエンジニアとして入社。証券会社の投資家向けシステムや決済代行サービスの更改案件を担当。2023年7月より三井住友カードに入社し、大阪・関西万博案件にジョイン。
三井住友カード株式会社 ソリューション開発部
佐藤 秀平氏
2020年に新卒で三井住友カードに入社。キャッシング事業において会員向けキャンペーンの企画・推進に従事。2023年10月より現職。
【関連リンク】
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