真剣雑談 vol.1 【ゲスト:芦野恒輔(株式会社クアリア代表取締役】日本の未来を支える「教育」のあり方とは?(後篇)

2024.12.20 12:00
株式会社クアリアの代表取締役・芦野恒輔さんと株式会社グライダーアソシエイツ代表・杉本哲哉の対談・後編をお届けします(前編はコチラ)。日本の最高学府の頂点として君臨する東京大学。もちろん現在もエリートを輩出し続け、多くの高校生がそこを目指しているわけですが、実際に母校の役員として受験の現状を間近で見ている杉本は「それだけでいいのか?」と疑問を抱いているよう。実際に芦野さんがかかわる中学・高校教育の現場では、「東大至上主義」とは異なる価値観が生まれてきてもいるようです。Qareerが向き合う「総合的な探究の時間」はその観点でも重要な意味をもちます。「探究」が将来のキャリア形成や人生設計に役立つ未来をつくれるのか。2人の対話はますます熱を帯びていきました。
東大だけでなく、アメリカの有力大学への進学を意識的に押し出している学校も
杉本 いまオレ、出身校の聖光学院(神奈川県)の役員を務めていて。評議会の中ではどちらかというと浮いた存在だと思うんだけど(笑)。

芦野 でも大事だと思います。OB兼経営者として、ということですよね。

杉本 オレはその枠で呼ばれていると思っているから構わないんだけどね。そこで定員の話をしたことがあって、1学年230人で、毎年の大学合格者が慶應150人、早稲田180人とかって書いてあるわけ。だいたい1人1.15学部ぐらい受かっているんだよ。それってユニークユーザーの数とほぼニアリーイコールじゃん。でも東大に受かっているのも100人いるんだよ。そうすると、まず早慶は被ってくるわけで、その生徒は東大も受かっているから、東大に合格した100人を除くと、残りは50人くらいになるわけ。東大に落ちて、早慶に受かっている人数というのが。でもその全員が早慶に行くかというとそうではなくて、一浪して東大を目指しますってなる。そうやって集計してみたんだよ。

芦野 リアルな進学数ということですよね。

杉本 そう。それで見てみたら、1学年で早稲田に行った生徒は15人くらいしかいなかった。慶應は同じ神奈川県だけに20人ぐらいだったかな。けど、高校は大学から苦言を呈されたらしい(笑)。「受かっても大量に辞退するなら受けないでくれ」って。

――そのあたりの大学となると、前編の話とは立場が違いますね(笑)。

杉本 で、それを教員や理事は笑い話にしてるんだよ。もっと言うと鼻にかけてるというか。それがまずいなとオレは思ったんだ。というのは、大学に失礼でしょというよりも、「東大ってそんなにいいの?」って思ったんだよ。もちろん東大の学力レベルは相当なものがある。世界で見たら30位かもしれないけど、それでもすごいと思う。ただ、じゃあ東大を出た人がどれだけ出世しているのか、人生幸せかっていうと……。だからそれをオレは調べたんだよ。

――東大に行った卒業生がその後どういうキャリアを積んでいったか。

杉本 そう。何を出世というかはなんとも言えないけど、見る限りそんなにうまくいっているように見えないというか、他の大学とそんなに変わらないと感じた。生涯収入が若干高いくらいで。それってどうなの?と。全国からすごいCPUのやつを集めているのに、そのあと何してくれちゃってんの?という。たとえば、東大は大学院に進学している割合も大きいのね。

――研究に進む人は多そうですね。

杉本 東大って、理科系が60%前後いて、文系が4割くらいなので、半分ぐらいが大学院行くのが当たり前なんだけど、そうなると4年経ってもほとんど社会に出てこないんだよね。全力で税金使ってやってるのに。しかも国立大学助成金の予算って、およそ半分が東大なんだよ。それはどうなの?と。

芦野 ごっそり持って行ってますからね。

杉本 しっかりそれを社会に還元してるのか? そういう材料を用意して、東大以外の選択肢っていうのを生徒に提案してもいいんじゃないかと思うんだ。早慶に行ったほうが4年間でアップグレードできる可能性があるかもしれないじゃない。でも高校生なんて、言ってしまえば子どもですよ。普段どういう大人に会うのって言ったら親と先生くらいしかいない、みたいな。そんな子たちに「東大以外もあるぞ、東大だけを信じるな」って言っても響かないのかな。

芦野 まあ、ピンと来ないでしょうね。

杉本 じゃあ一方でどこに行ったらいいのかと聞かれても、それに答えられないオレたちもいる。そうなると出口がなくなってるんじゃないかっていう気も。海外の大学に活路を見出したりしていくようになるのかもしれないけど。

芦野 実際にそうなってきていますね。開成高校とかも、いまではホームページで海外大の実績を出すようになっていますね。いわゆる「アイビーリーグ」といわれる、アメリカの有力大学への進学を意識的に押し出している学校も出てきています。

杉本 そういう高校は増えていくと思うよ。減ることはない。

芦野 そのあたりが強いのは渋渋(渋谷教育学園渋谷中学高等学校)とか渋幕(渋谷教育学園幕張高等学校)ですね。そこで差別化しているというか、極端に言えば私には「まだ東大を目指す頂点としたレースをやってるんですか」というスタンスというか、価値観を持っているように見えます。面白いのが、結果的に東大にも多く合格するわけですが。

杉本 オレも東大を受けずにハーバードへ行った後輩を知ってる。彼はなぜそうしたかというと、たとえばアメリカでボーイング社に就職するとか、FBIの面接を受けるとかって、東大にいたらほぼあり得ないじゃない。でもハーバードを出ていればそれも視野に入ってくる。世界中の仕事に選択肢を持てると考えたらしい。

芦野 東大でも最近は官僚よりも外資系企業を志望する学生が増えているといわれるんです。でも外資系の日本法人に入ったところで……というのもあるじゃないですか。

杉本 そうかもしれないね。

芦野 日本の中だったらそれでいいのかもしれないけど、世界の中で考えると……それはちょっと悩ましいなと思います。
藤井聡太やONE OK ROCKのTakaみたいな子がいたほうがおもしろい
――でも一方で、日本という国の中では東大を出ていなくても、仕事もできるしちゃんと生きていけるという仕組みになってはいるじゃないですか。それはそれで素晴らしいことなのかもとも思うんですが。

杉本 うちの社員の家族にも、高校へは行かなかったけど大検受けてAO入試で慶應に入って、その後バリバリ活躍している人がいたりする。

――東大に入っても社会で通用しないというケースもあるし、高校出ていなくてもちゃんと仕事ができるというケースもたくさんあるっていうか、日本人の半分は高卒以下。

杉本 それと裏返しなのか、どっちが正でどっちが負なのかとかはわからないんだけど、政治家の麻生太郎さんっているじゃない。彼はご存知のとおり麻生財閥の出で、福岡で知らない人はいないぐらいの会社の御曹司で。地方の名家であり、大久保利通や吉田茂を輩出している政治家一族に生まれた麻生太郎は、射撃選手としてオリンピックに出るか否かみたいなところまでいった実力の持ち主で。つまり小さい頃から射撃に親しんでいるような、別に勉強をものすごくやっていたわけではないと思うんだよ。それでもおじいさんとか父親とかの票田を引き継いで政治家になって、結局総理大臣にまでなったよね。

芦野 はい。

杉本 その麻生さんが財務大臣をやっていたときに記者からの質問に答えたときのことなんだけどさ、経済がなかなか上向かない中、何か策はあるのかと問われた彼は「でもおまえらさ」って話し始めたんだよ。内容としては「そんなに勉強してなくても、お金持ってなくても、まあまあの暮らしができるようになってるだろ、この国は。それってすげえんじゃねえの?」みたいな。あの人、感覚的に話をするから、本当にそう感じていたまま喋ったんだと思うんだけどね。で、オレは彼の発言を聞いた瞬間に思ったんだよ。「確かにな」って。日本って別にあまり勉強しなくても、つまり蒸留とか濾過とか化合とか、融点と沸点とか引火点とかを説明できなくても、十分に楽しめるエンタメが分厚くあるじゃん。あとは外国人から見たらとても安い値段でこんなにおいしい料理を食べられる、とか。おそらく麻生さんはそういうことを言ったんだとオレは理解したのね。つまり、必要以上の教養を身につけるとか、それこそ深く「探究」していくというのはこの文脈においてはコスパが悪い、ということなのかもしれない。

芦野 たしかに。

杉本 もちろんある領域で、たとえばIPS細胞を世界で初めて作製した山中伸弥教授みたいな人もいる。あの人がいるのは「探究しなくてどうする」っていう世界で、そういうものも必要だし、我々の暮らしを引っ張っていく人として重視しなきゃいけないんだけど、ほとんどの大衆にとってはそういうものは不要なんだと、大臣をやるような政治家が言い放ったわけだ。

――確かに「そこまでいかなくても満足していいんじゃない?」と言っているように聞こえますよね。

杉本 「ふむ……」って思って。「あんた、仮にも総理までやった人だよね」と思った人もいただろうし、「いいこと言った」と思った人もいたかもしれない。確かに、戦争を起こさない、そして国民の衣食住を路頭に迷わせないのが政治家の最たる役割で、実際に日本は1945年以降1回も戦争をしていないし、円安だか円高だか知らないけど、夫婦でそれぞれ年収500万円くらいあれば世帯年収で1000万円、それぐらいあれば……。

芦野 まあ、困らないですよね。

杉本 うん。毎年iPhoneを買い替えるくらいはできるし、1台くらい車買って、ガソリン代を払ったって平気だし。つまり麻生さんは「そんな国にしたのは誰ですか? 自民党だよ!」と言ったわけよ。これはなかなかのロジックだ(笑)。

芦野 (笑)。

杉本 たぶんああいう価値観が、自民党の中には燻っているんじゃないかと思う。麻生さんにしろ安倍(晋三)さんにしろ、遊びを知っているお坊ちゃんが仲良く政治をした時代が10年、15年くらい続いたじゃないですか。でも戦争が起こったわけじゃないし、暴動が起こったわけじゃないし、一揆が起こったわけじゃないし、途中で石油がなくなったとかメシ食えなくなったとか、そんなこと一度でもあったのかと言われたら、「すみません」としか言えない。「じゃあ、いいじゃんか」ってなるじゃん。

芦野 まあ、そうですね。

杉本 そうやって政治の価値観ができあがっていくと、いつも難しく10年後とか30年後の日本を考えてシミュレーションをしてきた官僚もなんか馬鹿馬鹿しくなってくる。だから東大行っている人も「あんなところ行ってもしょうがない」ってなっていく。国家予算も将来明るくないし。それが今日なんだよね。

芦野 最近、地方国立大卒やMARCH卒の官僚も増えているみたいですからね。

杉本 地方国立大だけじゃない、中堅私大卒でも官僚になれる。そういう時代に突入してきたときに、いま、国民の教育について誰が何を考えているのかをオレは知りたいんだよ。東大に送り込んでも国の仕事に就いてはくれない。メディアにしても「今年も東大に何人入れました」みたいなランキングをいつまでやってるんだ、と。

――高校まで進んでしまうとルートの修正が効かないというのもありますよね。果ては東大しか見えなくなるという。

杉本 毎年東大に何人も入っているような高校で、ピアノをやりたいから芸大に行きたいと言っても許される雰囲気ではないよね。

――高校に入った瞬間に東大に行くことが絶対的目標になってしまう。スーパー進学校は。

杉本 で、東大に入れるんだけど、その連中は官僚にもならないし、そもそも社会に出てこない。それって子どもの可能性を潰しているんじゃないの?って。藤井聡太やONE OK ROCKのTakaみたいな子がいたほうがおもしろいじゃない。でもそうじゃない社会をいわゆるスーパー進学校はつくろうとしているんじゃないかとさえ思う。
みんな、教育をなんとなくのイメージで捉えすぎなんだと思う
芦野 そういう意味でいうと、最近は、中学受験でも偏差値とか進路実績を追求することから一線を画す学校が人気なんですよ。たとえば去年バブルが起きたのは芝国際という学校で、新設校なんですけど倍率が20何倍みたいになっちゃった。一部入試の不手際で倍率が上がったという経緯もあるのですが、とはいえ出願者の実人数も多い。名前に「国際」とついているのも、新しい教育をするということで分かりやすいんだと思いますその系譜で言うと、もともと麻布中学校みたいにリベラルな教育を標榜する学校はあって、1990年代くらいに渋渋が出てきて、2000年代に入ってかえつ有明、広尾学園、三田国際とかが来て。いまは武蔵野大学の附属がそういう学校になってきていたりもする。

杉本 玉川学園とかも国際バカロレアの教育プログラムをやっていて、駿台模試の序列とかはあまり気にしていない。それでどんどん海外へ送り出してる。若い子の才能っていろいろあるんですよ。それを「入試へ向けて勉強しようね」って、あまりに一律すぎないかと思う。それで東大に100人送り込んだとして、その先になにがあるのって。そこが本当は大事だと思う。だから、文科省が「探究学習」を必修化するなら、それがちゃんと個人の人生の充実につながっていく形にしないと、高校生がかわいそうだよね。見てくれる先生はいないわ、評価はされないわ、じゃ。

――Qareerではそのサポートもしていますけど、その先で、つまり興味をもったことを探究するということが将来につながる絵を描けるかどうか。

芦野 やっぱり教育をみんななんとなくのイメージで捉えすぎなんだと思うんですよ。「探究学習」も、「内発的に好きとか興味で突っ走ってほしい」みたいな思いはわかるし、望ましいことであるのも間違いないですけど、それをいきなり必修科目にして、しかも一人ひとりが良質な学びを得ることは簡単じゃないですよね。そして社会の実態はますます先が見えなくなっていってしまっている。結局、これからはジョブ型雇用だとか転職が当たり前と言いつつも、新卒採用文化、かつそこで学歴を見る文化はなくなってはいない。むしろ新卒の賃金を上げるとかで、能力主義みたいなものが強まってる側面もあるじゃないですか。

――探究学習自体にも両面ある気がしますね。ひとつには生徒の自主性や内発性を促して、才能を引き出していくという側面と、もうひとつは変容する入試や進学に応じて求められる能力を育成するという側面と。全員が打ち込めるテーマを見つけた上で、双方の側面が実現できたら素晴らしいことだとは思いましたが……。

芦野 文科省も探究学習というものにいろいろ盛り込みすぎていると思います。文科省の解説書を見ると、自分のありたい姿と紐付けたテーマを選んで探究していくことが望ましい、みたいなことが書いてあるんですが。

――高校生にそれを求めるのは難しくないですか。

芦野 難しいかどうかは生徒次第ですが、高校のときに朧げでも将来像を描きながら、自分ならではの学びに取り組むことは重要ですよね。その上で、すべての生徒が高校のときに人生に繋がる探究テーマが見つけるわけではない、高校卒業以降で本気で探究したいテーマに出会ったってOK、くらいのスタンスで「まずはそういった学びをやってみる」ことが大事だと思ってます。

杉本 社会に出てからでもいい。ゆっくり見つける子もいるからね。

芦野 そうです。

杉本 結構見切り発車的なカリキュラムなのかな。

芦野 やっぱり今日話していても思うのが、総合学習とかSSH(スーパーサイエンスハイスクール)・SGH(スーパーグローバルハイスクール)とか、20年以上も実践は溜まってるんですけどね。いつも感じるのですが、探究学習の話になると初めはみんな「できたほうがいいね」という雰囲気になったあと、段々「でも難しくない?」みたいになるんですよね。大切なことは、探究を自分で進めているうちにどんどん興味が大きくなる子もいるし、社会科の授業で講義をされているうちに内容に対する興味が大きくなる子もいる。それを許容することだと思うんです。変な2項対立とか、「この教育が絶対正義!!」「この教育で全ての生徒が良くなるのか?!」みたいなことは望ましくない。それこそ、それが一番子どもたちを苦しくしますね。

――部活でしか燃えないみたいな子もいていい。

芦野 もちろん。それをすべて包含しているのが学校とか学校教育だと思うので、そうなると一周まわって「学校に何を求めるんですか」という話になっていく。これは会社のミッションにもなっているんですけど、僕は部活も探究でも教科でも何でもいいから、「学んだら自分は変われるな」と思って卒業してくれたらいいと思うんです。学ぶことはその後いくらでもできるので、それが一番大事なんじゃないかなと。その上で、これまでの英国数理社のコースとは別のルールでチャレンジできるというのが探究学習だと思ってますし、この学びを人生の糧にした高校生をたくさん見てきた。だから、Qareerは探究学習の支援を通じて、「学ぶと変われるんだ」と思える一助になりたいと思ってやってます。ただし、ここで出てくる論点が先ほどの話。学歴や就職の部分と、保護者の教育観ですね。スーパー進学校に通う子の保護者からは、やっぱりできれば東大とかへ行ってほしいというのは根強いですよね。踏み込んで言えば、社会的に望ましいと思う教育、「学歴とか受験にとらわれずに子どもたちがイキイキと学べる教育であってほしい」と、自分の子どもの教育に対して思う「不安定な社会だからこそ『学歴一切気にしない』はできない」を一致させることが難しいということですね。これは合点がいく例えなんですけど、「東京一極集中ってよくない」という意見があるとしますよね。でもその意見に賛成している人に「じゃあ、東京から出ていきます?」って聞いたら、9割の人は出ていかないんです。教育もそれと似ているところがある。総論賛成だけど、自分の話になると反対ということになるので、難しいんです。
探究学習はあくまで手段。大切なことは「学んだら変われるんだという手応えを得ること」
――どっちも間違っていないだけに、両方を求められる先生は大変ですね。

芦野 それもやっぱり、学校に何を求めるんですか?っていうことだと思うんですよ。東大行ってもアップサイドは限定的なんだったら、その指導スキルはいらないかもしれないし、ひとりひとりの興味関心を引き出してあげる、決まったレース、あるいは降りれなくなったレースから降ろしてあげるというのは大事なスキルなのかもしれない。でも、これは僕の私見ですけど、教科の指導力がある先生は探究もうまく指導しているんです。そういう先生はやっぱり一人ひとりをよく見ていたり、指導方法を常に研鑽していたりしているんですよね。現場ではそうやって教育ノウハウが積み上がってきてもいる。その上で、結局学歴社会は消えてないよねってなると、どうしたものかなと。真剣な雑談で良いかわかりませんが(苦笑)、先ほど出た政治的視点のように、社会として真剣な議論が必要だと思いますね。

杉本 社会課題としてはかなり根深いよね。Qareerはまだ探究学習に対する支援を拡大しているフェーズだと思うんだけど、そこからさらに発展することで貢献できることもたくさんあるんじゃないの? だから今後は、「こういう教育のあり方とか、こういう先生のあり方だったら、日本の教育がもっとよくなる」と提言していけるような会社になったらいいんじゃないかな、Qareerは。

芦野 はい。この後の展開として1つ考えているのは……僕らは数少ない探究学習に関するデータを扱っている会社なんですよね。この3ヶ月でも、1学年300人の学校だったら万に近いデータが入ってきたりしているわけで。それは共同創業者の平田がまさに学んでいるところなんですけど、データやエビデンスを持って、学習科学とかの理論に則って、かつ有識者にも入ってもらった上で「目下これが問題なんじゃないか」みたいなことが言えるようになりたいという話をしているんです。

杉本 いいね。

芦野 今日の話で展開された二項対立でいうと、受験のための勉強だろうと自分の興味のための勉強だろうと、大方の子は高校に入学した段階でどちらにも意味を見出せていないと思うんです。文科省がカリキュラムや学習指導要領をいじったところで、15歳の時点で「勉強ってそんなに面白くないし」みたいになっちゃっている子が過半なんじゃないかなって。

杉本 勉強に意義を感じていないということ?

芦野 はい。事実、PISA調査なんかでも継続して「意欲面に課題」とか「学習内容に対する興味・関心が低い」という結果になってますよね。じゃあその失った学びへの意欲を高校でどうやったら取り戻せるかっていうと、大学受験に向かってもう1回がんばれ、はないと思うんです。けれど、もしかしたら探究なら自分の興味で取り組める。で、やってみたら、自分なりに視野が広がるかもしれないし、成長できるかもしれない。それを生徒本人なりに評価基準を持ってやれるっていうことが重要なんじゃないかなと思ってやっています。繰り返しになりますが、探究学習はあくまで手段。大切なことは「学んだら変われるんだという手応えを得ること」であり、社会に出てからも学び続けられるようになることです。ただ、この目的を達成するために探究学習は重要な手段のはず。今日みたいな、本音かつ踏み込んだ議論を避けずに、すべての子どもたちにとってより良い教育環境ができていったらいいなと思います。
芦野恒輔さん
株式会社クアリア代表取締役。前職のベネッセグループ在職中は、一貫して学校向け事業に従事。2015年度から2年間、文部科学省「スーパーグローバルハイスクール事業」を担当し、探究学習への関心が強まる。以降、全国の探究学習を支援してきた。2022年度以降はベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター 主任研究員も兼務。当時高校生だった共同創業者平田の探究学習をサポートする中で問題意識が一致し、探究学習フィードバックシステム"Qareer"を構想。

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