歩いて楽しむミニサッカー「ウォーキングフットボール」の聖地をめざす。滋賀県湖南市のスタジアムから魅力を発信

2024.10.27 17:31
「ウォーキングフットボール」とは、すべてのプレーヤーが歩いてプレーするサッカーのこと。2011年7月にイングランドで行われた高齢者の健康増進のためのサッカーが原点だといわれています。


特長は、年齢や性別、障害の有無、運動の得意・不得意に関係なく、誰でも楽しめるスポーツだということ。世界各国で普及が進んでおり、2023年8月にはイングランドで最初の世界大会が開かれました。日本でも生涯スポーツとして各地で普及が進んでいます。


滋賀県湖南市のフットサル施設「甲賀高分子スタジアム」を運営管理するフットサルシンクタンク有限会社、代表の香月芳晴さんも、その普及に尽力する一人。ウォーキングフットボールの魅力を多くの人に伝えたいと、体験会や交流会を開催しています。


香月さんは、1992年に滋賀県初のフットサル連盟を立ち上げ、その普及に貢献した人物。現在は会長を務め、2023年からウォーキングフットボールの普及にも力を入れています。2025年開催の国スポ・障スポ滋賀県大会ではデモンストレーションスポーツ種目に選ばれ、6月1日に交流大会と体験会を開催予定。これを機にファンを増やし、滋賀県を聖地にしたいと夢を描く香月さんに、その魅力をうかがいました。
(フットサルシンクタンク有限会社 代表 香月芳晴さん)


●勝つためのスポーツではなく、楽しむためのスポーツ。「走らない」「ぶつからない」、「ボールをうばわない」、思いやりのルールが特長


──最初に、ウォーキングフットボールと出会ったきっかけを教えてください。


初めて知ったのは2023年、SNSがきっかけです。こういう競技があると知って、「これだ」と直感が働き、当時、新潟でこの競技をやっていて世界大会にも出場した人に連絡を取りました。そうしたら滋賀県まで来てくれて、詳しい話を聞くことができました。


──どんなところに魅力を感じたのですか。
ウォーキングフットボールは、もともと運動医療からはじまったもので、子どもから高齢者、障害のある人、誰でも楽しくプレーできるところが魅力です。勝つためのスポーツではなく、楽しむためのスポーツで、勝ち負けよりも参加する人たちがお互いを尊重し、みんなで楽しむことを優先します。「走らない」ことはもちろん、ぶつかったり、ボールをうばったりすることもない。だからケガの心配もなく、安心して参加でき、幅広い世代が交流できます。そうした精神やルールに感銘を受け、本当にいいスポーツだと感じました。
滋賀県フットサル連盟を設立してから30年あまりが経ち、リーグ参加者も高齢化が進んできました。競技志向からエンジョイ志向、楽しめるスポーツとしての選択肢を増やしていきたいという思いもあって、ウォーキングフットボールは最適だと感じました。
参加選手の安全を第一に考え、けがをしない、させないことが大事。フットサルを引退した選手をピッチに戻したいという思いもあります。
       (ウォーキングフットボールの基本ルール)


●スポーツ普及活動のはじまりは「フットサル」。1992年に滋賀県で初めてフットサル連盟を設立


──滋賀県にフットサルを普及させようと思ったのは、どのような経緯からですか?


フットサルに興味を持ったのは新聞記事がきっかけです。今後注目されるニュースポーツとして紹介されていました。当時はミニサッカーと呼ばれていたんですが、ちょうどその頃はJリーグ全盛期、サッカーブームでした。関西でも京都や大阪、神戸にチームができた時期でしたが、滋賀県では難しいかなと思っていたんです。でも「フットサルだったら会場も小さくていいし、できるよね」と、その時に直感でひらめきました。
さっそく、その記事に載っていた人の連絡先を教えてほしいと新聞社に電話して、連絡を取りました。「滋賀県にフットサルを普及させたい」と思いを伝えたところ、会って話すことができ、当時住んでいた守山市で活動をスタートさせました。


──湖南市に専用のスタジアムが完成したのはいつ頃ですか?


2005年です。当時、メイン会場として使っていた滋賀県のスポーツ施設が使えなくなり、急遽、場所を探して現在の地にたどり着きました。最初は荒地だったので、まず整備から始め、設備を整えていきました。
活動を始めた当初はホテルの駐車場を借りて、砂利や雑草を取り除いて整備し、ゴールは水道のパイプで手作りし、地面に線を引いてコートを作っていました。その後も大学や企業のグラウンドを借りて活動していました。フットサルはもともと室内の競技なんですが、体育館はなかなか貸してもらえなかったんです。
盛り上がりのきっかけは、地元のラジオ局「FM滋賀」とのタイアップでした。全国で初めてラジオで試合の実況中継をしたり、フットサルの特別番組もありました。こうした宣伝の効果で一気に普及し、滋賀県は全国でもっとも多い登録数100チームを記録しました。
その後、滋賀県で全国フットサル大会を開催したのですが、当時はまだどこも大会をやっていなかったので、ラジオで情報発信をすると大反響で問い合わせが殺到し、全国から300チームが集まりました。県内の体育館を確保して試合の予定を組み、スタッフを確保して、と、妻や息子の手も借り、大会の準備と運営に奔走しました。大変でしたが、いい思い出です。


●毎週土曜日にウォーキングフットボール体験会を開催。幅広い世代が一緒にプレー


──毎週土曜日に行われている体験会はどのような内容ですか?


予約制で参加者を募集し、当日はゲーム方式でプレーを楽しみます。歩いてプレーする、接触しない、ボールをうばわないなど、基本的なルールはありますが、ウォーキングフットボールは、大会やイベントごとに独自に決めたルールで行われるのが特長です。体験会では、当日の参加者の年齢や人数によって1チームの人数や試合時間を決め、柔軟に対応しています。審判はいないので、反則は自己申告。コーディネーターがゲームの進行役とピッチマネージャーを務めます。プレー中は選手同士が笑顔で声をかけあい、相手チームのゴールが決まっても「ナイスゴール」とみんなで一緒に喜ぶ、いつもなごやかな雰囲気です。
(一緒にプレーする人を尊重して楽しむことがルール)


──どんな方が参加されていますか?


下は幼稚園児から、上は60代、70代、障害のある人など、さまざまな方が楽しまれています。サッカーやフットサルは難しいと感じていた人も、これなら楽しめると始めた人もいます。選手同士の接触がなく、叱責されることもないので、そういうことが苦手な障害を持つお子さんも、いつのまにか打ち解けて前向きに楽しむ姿が見られたり、運動が苦手な肥満症のお子さんが、通院の必要がなくなるほど改善したり、そうした変化を実際に目にし、効果を実感しています。歩くといってもボールを追って考えながら全方向へ動くので、全身の筋肉と頭も使います。シニア世代にはフレイル予防や認知症予防に効果があるという研究結果も報告されており、ユニバーサルスポーツとしてうまく普及できればと考えています。
(初心者も運動が苦手でも、誰でも楽しめるのが魅力)


●滋賀をウォーキングフットボールの聖地に。2025年の滋賀県国スポ障スポ大会に向けて委員会を設立


──2025年に滋賀県で開催される国スポ障スポ大会では、新感覚スポーツとしてデモンストレーションスポーツ種目に選ばれています。


全26スポーツの一つとして、6月1日(日曜日)に第1回の全国交流大会と体験会を開催する予定です。交流試合には北海道から九州まで12チームが参加する予定で、同じ日に地域の人たちが体験できる時間も設ける予定です。2026年には第2回全国交流大会の開催も予定しています。
大会に向けて体制を整えるため、滋賀県スポーツ協会への登録と、滋賀県フットサル連盟の下部組織として、2024年10月1日にウォーキングフットボール委員会を設立しました。ウォーキングフットボール普及に取り組むきっかけをいただいた大学教授に委員長をお願いし、地元の整形外科院長には医務担当をお願いしています。このほか広報担当や委員として、フットサルを通じて集まったメンバーがスタッフになり、運営に尽力してくれます。皆さん仕事を持ちながらの活動ですが、優秀なスタッフの方々に助けられています。


──今後の目標をお聞かせください。


委員会の結成を機に、今後は広報活動に力を入れ、ますます普及と交流が進むことを期待しています。自社のスタジアム(甲賀高分子スタジアム)は、もともとフットサルを目的に作り、運営してきましたが、自前の基地があることを強みとし、滋賀をウォーキングフットボールの聖地にしたいという夢を抱いています。
2025年の交流試合の参加は12チーム、本当は参加希望チームがもっとあるのですが、宿泊施設やいろいろな準備の関係で難しいのが現状です。そうした課題をクリアし、全国から集まったさまざまな人が交流できる場所をつくりたいと思います。
(「滋賀をウォーキングフットボールの聖地にしたい」)


■フットサルシンクタンク有限会社
代 表:香月 芳晴
所在地:滋賀県湖南市石部北1丁目2-1677(甲賀高分子スタジアム)
TEL:0748-77-5170(滋賀県フットサル連盟)
FAX:0748-77-5171
E-mail:futsal@mx.bw.dream.jp
URL:
(滋賀県フットサル連盟)


■ウォーキングフットボール メンバー募集中
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