河口治也社長とCFRP製ロボットアーム
愛知県碧南市に本社を置く株式会社共和製作所(代表取締役社長:河口治也、以下、共和製作所)は、1962年の創業以来、自動車部品の金属加工を中心に事業を展開してきました。2020年からは、金属加工から撤退し、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を始めとした複合材の切削加工専門の会社として、様々な分野で精密部品の製造に注力しています。
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このストーリーでは、航空宇宙産業から自動車、医療機器、半導体まで、様々な分野で注目を集めるCFRPが、なぜ今、「未来の素材」として選ばれているのか、その魅力と可能性について迫ります。そして、CFRP加工のスペシャリストである共和製作所が、長年の経験と独自の技術で培ってきた高度な加工技術をご紹介します。CFRPを始めとした複合材の持つ無限の可能性を引き出す共和製作所の挑戦を、ぜひご覧ください。
創業者の精神を引き継ぎ、2014年からCFRP加工研究に本格着手
創業者の河口幸雄は加工技術へのこだわりが強く、その情熱から独立して共和製作所を立ち上げました。2000年代初期までは難削材の金属加工に挑戦していましたが、創業者が現場を離れると新規の加工への挑戦は停滞気味に。しかし、転機は、2011年の河口治也社長の入社でした。河口治也社長は入社前から前職の関係で、新素材であるCFRPに興味を持っていました。
前職の株式会社デンソーで建築関係に携わっていた河口治也社長は、様々な建築素材に精通しており、金属やプラスチックの長所・短所も理解した上で、用途・強度・美観を追求していました。その過程で、木材の変形という課題意識を抱き、そこから単一素材の弱点を克服する「複合材」の合理性に着眼しました。複合材の中でも特にCFRPの特性に興味を持った河口治也社長は、CFRPの主要材料である炭素繊維で世界トップクラスのシェアを誇る東レ株式会社を見学しました。この見学を通してCFRPの可能性を確信し、新しい価値を創造する素材として、いつか活用したいと考えるようになりました。
また、創業者の奥様からも「共和製作所は常に新しい加工に挑戦すべき」との声が上がっており、これがCFRP加工の研究を始める後押しとなりました。こうして、共和製作所は2014年からCFRP加工の研究に着手しました。
製造業を変える可能性を秘めた未来の素材「CFRP」
CFRPは、比類なき特性の数々を備え、まさに「未来の素材」と呼ぶにふさわしい存在です。その魅力は、鉄の約4分の1という驚異的な軽さと、同重量の鉄と比較して約10倍もの強度を併せ持つ点にあります。
さらに、薬品に強く、錆びない耐腐食性、繰り返しの負荷に強い耐久性、環境の温度変化による形状やサイズの変化がほぼ無い寸法安定性(低熱膨張率)、振動を吸収する高振動減衰性など、製造業のみならず、様々な産業にとって画期的な素材と言えるでしょう。これらの優れた特性により、CFRPは、様々な分野で革新的な進歩をもたらす可能性を秘めており、その活用がますます期待されています。
未開拓のCFRP加工市場への挑戦を決意
しかし、共和製作所がCFRPを研究し始めた2014年時点では、CFRPの加工は国内ではほとんど進んでいませんでした。また、加工業者の多くがプラスチック加工会社で、プラスチック加工の延長線上で行っていました。そこで、共和製作所では長年培ってきた金属加工の技術の観点からCFRPの加工を行えば、他社には無い技術が確立でき、新たな事業展開が可能になると考えました。
困難を極めたCFRPの切削加工。日夜研究に励み、2016年ついに実現
そこで共和製作所は、創業以来培ってきた切削加工技術を基に、CFRPの加工に挑戦しました。しかし、CFRPは硬い炭素繊維と比較的柔らかい樹脂から構成されており、この材料特性の違いにより切削加工が非常に困難であることが判明しました。既存の工具や加工条件では限界があることを痛感したのです。
そこで当社の技術者たちは、CFRPの素材特性を改めて見直し、最適な工具や加工条件などを試行錯誤しながら、日夜研究開発に励みました。そして幾多の失敗と試練を乗り越え、2016年にはついにCFRPの切削加工を実現。以降も研究開発を重ね、現在では高精度な切削を実現する革新的な加工技術を確立しています。
共和製作所のCFRP切削加工技術、5つの特徴を解説
共和製作所が誇る切削加工技術の特徴を、5つのポイントに絞ってご紹介します。
共和製作所の多様なCFRP切削加工技術の紹介
共和製作所の具体的な切削加工技術をご紹介します。
ポケット加工:部品を固定するための凹部や、電子部品を組み込むためのスペースなど、平面部分を特定の深さまで削り取る加工。溝加工:部品の嵌合や、液体の流れを作るための溝を彫る加工。繰り抜き加工:板材から特定の形状を切り抜く加工。文字彫り加工:製品名やシリアルナンバー、ロゴなどを精密に刻印する加工。平面平行出し加工:精度にばらつきのある材料を全面加工して、高い精度で平行及び平面に仕上げる加工。V溝加工:ロボットハンドやガイドレール、スライド機構、回転軸の固定や位置決めなどを目的として、V字型の溝を加工。球面加工:シフトノブのような、滑らかな球面形状を加工。2.5次元加工の一種。皿ビス加工:皿ネジの頭部がぴったり収まるように、円錐形のくぼみを作る加工。ネジ切り(ネジ穴)加工:ネジを締め込むためのネジ穴を掘る加工。内径加工:穴あけ加工などで開けた穴の内径を、さらに大きくしたり、正確な寸法に仕上げたりする加工。穴の直径や円筒度を調整し、滑らかで精密な内面を実現します。段付き加工:異なる高さや直径を持つ複数の段差を、一つの部品に加工。真円加工:真円度の高い円筒形状の加工または真円度の高い穴加工。
CFRP製品化を成功させる共和製作所の技術を紹介
CFRP単体では製品化が難しい場合でも、共和製作所のこれまでの知見を元に様々な対策や技術で製品化を実現します。共和製作所独自のCFRP製品化への具体的な技術をご紹介します。
組み付け対策
ネジ穴に金属製のインサート(ヘリサート)を圧入で埋め込む技術です。CFRP製部品を金属部品と組み付ける際にネジ穴を開けますが、何度も着脱を繰り返すとネジ山が損傷する可能性があります。インサートを埋め込むことで、ネジ山の耐久性を高め、繰り返し着脱を可能にします。
摺動部対策
CFRPは摺動性や欠けに弱いという弱点があります。機械部品の一部としてCFRP製部品を使用する際、金属部品と直接摺動するとCFRPが削れたり欠けたりする可能性があります。そこで、金属製のカバーを圧入ではめ込むことで、この弱点を克服し、CFRP部品の耐久性を向上させます。
コーティング
CFRP表面に特殊なコーティングや処理を施すことで、耐摩耗性、耐薬品性、耐候性などを向上させることができます。さらに、静電気の発生を抑制する帯電防止処理や、電流を効率的に流す導電処理、精密機器の故障を防ぐ粉塵対策も可能です。使用環境や用途に合わせて最適な表面処理を選択することで、CFRP部品の付加価値を高め、様々な産業分野での活用を促進します。
色付け
CFRP製のグッズやインテリアなどに色を付けることで、デザイン性や視認性を向上させます。様々な色や仕上げに対応可能です。
リバースエンジニアリング
既存の製品や部品を計測・分析し、3Dモデルや図面を作成する技術です。図面のない製品をCFRPで新たに製作する際に役立ちます。
複合材加工の可能性を広げる新たな挑戦
CFRPの精度加工技術を極めるだけでなく、共和製作所は今、複合材加工の可能性をさらに広げる挑戦を続けています。
植物由来の繊維を使用した環境に優しい「NFRP(天然繊維強化プラスチック)」、炭素繊維を30wt%含むことで強度を高めた「強化PEEK」、さらに抄造工法を用いて製造した「リサイクル製CFRP」など、多種多様な特殊複合材の加工技術を確立しています。
これらの素材を、それぞれの分野や用途に合わせて最適に選択し、高度な加工技術を駆使することで、日本のあらゆる産業の発展に貢献できると確信しています。
共和製作所は、これからも複合材加工の可能性を追求し、未来を創造することで、日本の製造業の活性化と持続可能な社会の実現に向けて邁進してまいります。
[会社概要]
会社名:株式会社共和製作所(キョウワセイサクショ)
代表取締役社長:河口 治也
所在地:〒447-0857 愛知県碧南市大浜上町二丁目35番地2
電話番号:0566-70-8481
創業:1962年1月
設立:1973年12月
資本金:1,000万円
従業員数:4名
事業概要:CFRPを始めとした複合材の製造・加工・販売とその導入支援
会社ホームページ:https://www.kyowa-tokai.com/
CFRPプレート(材料)の販売サイト:https://cfrp-plate.com/