じつは制動力が高いのは「ドラムブレーキ」のほうってマジ!? それでもディスクブレーキが主流になったワケ

2024.10.09 06:20
この記事をまとめると
■純粋な制動力だけならドラムブレーキのほうがディスクブレーキよりも優れている
■高速走行時や長時間使用時の熱に対する耐性や安定性などの総合的性能においてはディスクブレーキが優れる
■クルマの進化は必ずしも数値だけでは測れないことをディスクブレーキは教えてくれる
ドラムブレーキが標準のところにディスクブレーキが登場
  いまやクルマのブレーキといえばディスクブレーキだ。「昔」はドラムブレーキが標準で、ディスクブレーキといえばスポーツカーに搭載された最新ブレーキだという認識だった方も多いと思う。だが、ご存じだろうか。当初はドラムブレーキのほうが制動性能が高かったということを……。それなのになぜディスクブレーキにとって代わられたのか? 本記事ではその理由を紐解いていこうと思う。
ドラムブレーキとディスクブレーキの基本的な違い
  まず、両者の構造の違いを理解する必要がある。ドラムブレーキは、回転するドラム(円筒)の内側にライニングを押し付けて制動力を得る仕組みである。一方、ディスクブレーキは、回転するディスク(円盤)の両側からパッドを押し付けて制動力を生み出す。
  ドラムブレーキの大きな特徴は、サーボ効果と呼ばれる自己倍力作用にある。これは、ライニングがドラムに押し付けられる際に発生する摩擦力が、さらにライニングをドラムに押し付ける力として作用する現象だ。この効果により、比較的小さな力で大きな制動力を得ることができる。つまり、純粋な制動力だけを見れば、ドラムブレーキのほうが優れているのである。
  ただし、実際の運用環境での制動性能を考慮すると、ディスクブレーキのほうが優れている。とくに高速走行時や長時間使用時の熱に対する耐性や安定性など、総合的な制動性能において、現在ではディスクブレーキが優れていると評価されている。
フェード現象とメンテナンス性の問題
  というのも、ドラムブレーキには致命的な欠点がある。それが「フェード現象」だ。ブレーキを繰り返し使用すると熱が発生するが、ドラムブレーキはその構造上、熱を外に逃がしにくい。熱によってドラムが膨張すると、ライニングとドラムの間に隙間が生じ、ブレーキの利きが悪くなってしまう。
  さらに、メンテナンス性の面でも大きな問題があった。ドラムブレーキは密閉された構造で、ブレーキパッドの交換ひとつをとっても、ドラムを外しスプリングなどの部品を慎重に取り扱う必要があった。整備士泣かせの代物だったのである。ただ、使用部品などのコストパフォーマンスがいいので、現在でもパーキングブレーキや比較的サイズの小さなクルマの後輪にも使用されることがある。
あらゆる状況で安定した性能を発揮するディスクブレーキ
安全性と信頼性の向上でディスクブレーキが主流になった
  対して、ディスクブレーキは構造がシンプルで部品点数も少ない。熱による影響も受けにくく、フェード現象が起こりにくい。また、水濡れしたときの性能低下も少なく、より安定した制動力を発揮できる。
  整備性の面でも、パッド交換もしやすく、点検も目視でできることが多い。これは、整備コストの低減にもつながり、ユーザーにとってもメリットが大きい。
  さらに、近年の電子制御技術の発展により、ABSなどの安全装備との相性もいいことがわかってきた。ディスクブレーキは制御が容易で、より精密なブレーキコントロールが可能なのである。
  じつは、ディスクブレーキの歴史は古く、1900年前後にイギリスで基本特許が取得されたといわれている。しかし、当時の製造技術では精度の高いディスクを作ることができず、実用化には至らなかった。その後、材料技術や加工技術の進歩により、高精度なディスクの製造が可能になり、徐々に普及していったのである。
  現代の自動車には高い安全性と信頼性が求められる。ディスクブレーキはその要求に応えるべく進化を遂げ、いまでは当たり前の存在となった。基本制動力だけを見ればドラムブレーキに劣るかもしれないが、技術の進化により、現在では総合的な性能で圧倒的な優位性をもっているのである。
  クルマの進化は必ずしも数値だけでは測れない。ディスクブレーキの普及はそのいい例といえるだろう。

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