最近弱ってきたな……じゃなくて元気だったのに突然死! クルマのバッテリーがいきなりダメになる理由と避けるための対策とは

2024.10.01 07:00
この記事をまとめると
■クルマを動かすうえでバッテリーの存在は欠かせない
■バッテリーは充電と放電を繰り返しているので劣化は避けられない
■まめに専用機器でチェックしてもらうのがトラブルを避けるコツだ
バッテリーはなぜ上がる?
  クルマに長く乗っている人であれば、バッテリー上がりを経験したという割合はけっこう高いのではないでしょうか。その原因はうっかりヘッドライトやスモールライト、あるいは室内灯を消し忘れて長時間放置してしまったというケースが多いと思いますが、なかにはスマホの充電器など、あとから装着した室内のアクセサリーが知らぬ間に電気を消費していて、数週間乗らない間にバッテリーの残量が極少になってしまっていた、なんていうケースも近年では多いことでしょう。
  そして、ここ最近SNSや動画配信サービスで「バッテリーの突然死」というワードをちょくちょく見かけるようになってきていませんか?
  バッテリー上がりの場合は原因がある程度ハッキリしているので、「あー、やっちゃった……」とは思いますが、「突然死」とはあまりいいません。「突然死」というのは「昨日までは元気だったのにねぇ」というように、健康な状態から原因がよくわからずお亡くなりになることを指します。
  なかなかバッテリーとは結びつかない言葉だなと感じましたが、調べてみると、本当にバッテリーを上げてしまうようなことをしていないのに、突然使用不能になってしまった、というケースがあるようです。
  ここではその「バッテリーの突然死」について、その原因や対策を少し掘り下げてみたいと思います。
■バッテリーの突然死は性能向上の副作用!?
  昔からクルマに使われ続けている「鉛バッテリー」は、その内部の化学反応で電気を生み出しています。そのため、内部を構成する電極版やバッテリー液の劣化などで徐々に発電性能が劣化していくのは宿命です。
  エンジンの熱や住んでいる地域の気温、充放電の頻度など、環境の違いでその劣化の度合いは異なりますが、だいたいは徐々に劣化が進むので、「あれ? こないだよりセルのまわりが弱くなった?」という感じで劣化の気配をある程度知ることができました。
  しかし、バッテリーも進化しています。以前なら寿命は2〜3年程度といわれていましたが、近年では4年以上保つものも出ていて、ライフはどんどん長くなっています。
  そして、以前の鉛バッテリーであれば、寿命を迎える少し前から徐々に性能低下の兆候が現れていましたが、近年の製品は、寿命の直前まで基本性能を発揮出来るようになっています。
  そのことが逆に悪い方向として現れたのが「突然死」といえるでしょう。ギリギリまで性能を維持できるようになったことで劣化の兆候がつかみづらくなり、気がついたらもう手遅れだった、というケースが増えているのではないでしょうか。
■バッテリーが劣化するのはなぜ?
  バッテリーの内部では、化学変化で電気が生み出されているということは前述しました。具体的に、簡単に説明すると、+極に電子を放出しやすい酸化鉛の電極版を置き、ー極には鉛を置きます。それをひとつの槽に入れて電解液(希硫酸)で満たします。この+極とー極の間にモーターなどの電力を消費する「負荷」を繋ぐと、内部で反応が起こって電子がー極から+極に流れるようになります。これが電気を生む仕組みです。
  逆に、バッテリーにオルタネーター(発電機)から電子の流れが起こされると、発電とは逆の反応が起こって、内部に電気が蓄えられます。
  内部ではそのような反応が交互に行われているのですが、放電時に硫酸鉛という物質が発生します。それを放置すると結晶化して不活性物質となって電極の表面に付着します。これは「サルフェーション」という現象です。表面に付着した不活性の結晶は電気を通さないので、発電を邪魔する存在となります。
  また、電極はただの板ではなく繊細な格子状になっています。反応を繰り返すと、この細い構成部分が腐食して欠けてしまうことがあります。欠けた部分が増えるということは電気の通り道が減ることになり、結果発電能力が落ちます。
  このふたつが主な原因ですが、ほかにもなかで電極を隔てている「セパレーター」という素材が劣化して短絡を起こし、電気が本来の端子に流れなくなる現象なども絡んできます。
  以上のように、鉛バッテリーは、放電した状態がもっともサルフェーションなどの劣化が進行するとされています。
  劣化のメカニズムは違いますが、ガソリンタンクのなかにガソリンがない状態では、タンク内壁に酸化を促す空気が触れるためサビが進行してしまいます。それと同じように空っぽでの放置はよくないと覚えておいてください。
バッテリーを元気な状態で保つために必要なこと
■劣化の予兆は確認できるのか?
 <バッテリーの健康診断項目>
 1:電圧の測定 2:CCA(コールド・クランキング・アンペア)の測定 3:内部抵抗の測定 4:バッテリー液の状態(量・色など)の確認(※鉛バッテリーのみ)
  バッテリーの健康状態を調べる方法は主にこの4項目になります。
  まずは1の電圧について。この項目はクルマのエンジンにたとえるとアイドリングの安定感です。アイドリングというのはエンジンが動くための力が1番低い状態なので、エンジンのどこかにちょっとした不具合が起こると、アイドリングに影響して不安定になります。
  バッテリーの発電性能が落ちると、一定の電圧が保てなくなって基本の電圧が下がってしまいます。12Vの鉛バッテリーの場合は健康な状態の目安がだいたい12.6V以上とされており、12.5Vを下まわると健康状態に黄色信号が点ります。電圧が低ければ低いほど劣化が進んでいると考えていいでしょう。クルマのバッテリー警告灯もこの電圧低下を監視していて、その多くは12.0Vを下まわると点灯するようです。
  2のCCAというのは「コールド・クランキング・アンペア」の略で、要するにどれだけ多くの電気が流せるかという放電性能の基準値です。
  具体的には、「摂氏-18℃の環境でバッテリーを30秒間定電流放電させて、そのときの電圧が7.2V以上を保てる限界の電流値」となっていて、その値が大きいほど多くの電流を安定して放電できるということになります。
  この値は、クルマのエンジンでたとえると加速力になるでしょうか。エンジン内部パーツの摩耗などによって圧縮が落ちてくると本来のパワーが発揮できなくなり、加速力が鈍ってきます。
  この数値を測定するには専用のテスターが必要になるので、それを購入するか、カー用品店や整備工場、ディーラーなどに行って計測してもらうことになります。
  3の内部抵抗というのは、バッテリーの発電を妨げる要因の大きさです。クルマのエンジンでたとえるとフリクションロスが該当するといっていいでしょう。
  そのフリクションロスはバッテリーでいうとサルフェーションや電極版とバッテリー液の劣化などです。それが進行すると化学反応自体が鈍くなり、本来の性能が発揮できない状態になります。
  内部抵抗もその機能をもった専用のテスターで行います。ザックリとした基準は10mΩで、それよりも大幅に大きい場合は内部の劣化が疑われます。
  最後にある4のバッテリー液の状態は、クルマのエンジンでたとえるのは難しいですが、燃料の濃さが近いでしょうか。インジェクターやセンサー類に不具合が起きると、エンジンが好調にまわせなくなってしまいます。
  実際のバッテリーでは内部で化学反応が起こっています。なかに満たされているバッテリー液の状態が悪いと十分な発電が行えません。
  そのバッテリー液の状態を確認するには、まず目視でのチェックです。色は基本的に無色透明なので、黄ばんだり白っぽい感じに色味が付いている場合は変質している可能性があります。
  そして、重要なのがバッテリー液の量です。健康な状態なら規定量から少し低いぐらいだと思いますが、極端に減っている場合は何らかの不具合が起きている可能性があります。単純に電極板が液に浸かっていない部分は発電できないので液を足してやる必要がありますが、ここで注意しないとならないのは液の比重です。
  バッテリー液は「希硫酸」で、その濃度はバッテリーの充電状態で変化します。濃度は重さと比例するので、専用のスポイト状の器具を使ってその比重を調べてから、濃ければ精製水を足して薄めたりする必要があります。
  このとき、色は透明で量は十分、そして比重が適正なのに電圧が低いという場合は、電極版に劣化やサルフェーションが進んでいる可能性が高いので、液の補充では復活できない可能性が高いでしょう。
  ただ、最近ではこの液を補充しないで済む密閉型のバッテリーも増えています。
■「突然死」を防ぐことはできるのか?
  前述のように、進化したいまのバッテリーはギリギリまで性能を維持する工夫がされているので、お亡くなりの時期の見極めが困難なケースが多いようです。そのため、日常でクルマを使っていて感じる情報だけでは劣化の兆候をつかみ取るのはカンタンではないでしょう。
  しかし、車検や点検のタイミングなどで定期的にバッテリーの診断を行えば、数値で劣化の具合を予測することは可能です。
  また、バッテリーの劣化はバッテリーだけが原因ではなく、充放電の具合によっても大きく左右されます。たとえばスマホの充電器などの機器を使うためのアクセサリーを装着したり、あと付けのナビゲーション、オーディオシステムの追加などで電力消費が増えると、もとの車両の想定電力消費量を大きく上まわることもあります。その場合は常に放電が多くなった状態となりますので、サルフェーションなどの劣化が進むでしょう。
  あとはここ近年の夏の猛暑でクーラーをガンガン利かせているような状態もバッテリーにとっては過酷です。熱は化学反応を促進させますので、劣化に関わる物質の精製の割合も多くなるでしょう。
  それらのことを踏まえて、バッテリーに優しい環境を考えてクルマを運用してやれば、突然死を遠ざけられると思います。
  以上は鉛バッテリーを中心とした解説ですが、いまはその鉛バッテリーの進化版といえるドライバッテリーやカルシウムバッテリー、PCやスマホなどの電子機器に多く使われているリチウムイオン電池、そしてリン酸鉄バッテリーなど、さまざまな方式の高性能な製品も出てきています。
  それぞれが異なる特性をもっているものなので、もし鉛バッテリーからそれらに換える場合は、しっかりと特性と取り扱い方法を把握しておきましょう。最悪の場合は突然死どころか、発火してクルマが全焼、なんていう惨事になる可能性もあります。

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