いまの自動運転のイメージを覆す「人型ロボット」による運転! 既存のクルマが使えてメリットだらけだった

2024.09.21 07:00
この記事をまとめると
■人手不足が深刻な旅客・運輸業界では「ヒト型ロボット」の導入の議論が本格化している
■ロボットのみのアップデートで済むので車両を新たに導入するよりもコストが抑えられる
■会話のできるロボット運転士が運転するタクシーが運用されるのも夢ではない
ヒト型ロボットが運転する自動運転社会が到来する
  ポール・バーホーベン氏が監督し、1987年(日本は1988年)に公開されたのが、映画「ロボコップ」。犯罪者との銃撃戦で瀕死の重傷を負った警察官アレックス・マーフィー巡査が「ロボコップ(ロボット警察官)」として復活し活躍するという映画である。
  大ヒットしたロボコップは「ハリウッドあるある」といっていい形で、その後監督を代え、「ロボコップ2」、「ロボコップ3」が製作され、いずれもヒットしている。
  筆者は初代シリーズのヒットを受けての続編については、ハリウッド的なエンターテインメント色が強くなる一方、初代作品はストーリーに彩りを添えるような、ポール・バーホーベン監督が混とんとした近未来の社会というものを見事に描いているところでより傑作だと思っている。
  1980年代後半、日本はまさにバブル経済に浮かれていた時代。世界的にもいまのような気候変動といった問題もなく、まさに大量消費社会を謳歌しており、そんななかながら未来といえばゼロエミッション車が空を舞うといった明るいものが描かれていた。
  ロボコップはアメリカのミシガン州・デトロイトが舞台となっているのだが、劇中では巨大企業グループが経営する民営警察が組織されていたりして、市より民間企業の影響力の大きさが描かれていたが、そのデトロイト市が2013年に財政破綻したときには、なんとなくロボコップが描いていた近未来がトレースされてきているような思いをもった。
  そのロボコップで印象的なシーンとしては、初代フォード・トーラスをベースとしたパトカーをロボコップが颯爽と運転するシーンであった。
  そしていま、まさにロボコップのような「ヒト型ロボット」が運転する、ある意味自動運転社会の到来が真実味を帯びてきているとは事情通。「もともとシステムとしての自動運転(完全無人運転)というもののほか、ヒト型ロボットが従来車両を運転する『自動運転』というものの研究開発も進んでいましたが、ここのところその動きが活発になってきているようなのです」とのこと。
ヒト型ロボットによる自動運転のメリット
  個人が所有する「マイカー」での自動運転は一般的に広く認知されている、いまのところはあくまでイメージとなるが、自動運転可能なシステムを搭載した新車の普及がメインとなるだろう。しかもマイカーであるので、「自分で運転を楽しみたい」とのニーズもあるから、自動運転自体がマストということもないだろう(市街地はマストなど規制が入る可能性はあるが……)。
  ヒト型ロボットによる自動運転普及は、バスやタクシー、トラックなどの「働くクルマ」の話と捉えてもらいたい。現状でも働き手不足に悩むのがタクシーやバス、トラック業界。その解決策として自動運転が提唱されているが、それは有人か無人かは別として、自動車がシステムによって自動運転されるものと考えるのが一般的。しかし、これにはシステム搭載車(システムの性格上後付けでの完全対応は難しいのでは?)、それを管理するシステム一式が必要となり、相当な初期投資が必要となる。
  また、導入後はシステムメンテナンスやバージョンアップなど「ランニングコスト」もそれなりの覚悟が必要となる。そこで注目されているのが、既存車をそのまま使った自動運転、つまりヒト型ロボットによる運転である。
「ヒト型ロボット導入最大のメリットはシステムのバージョンアップにあります。個々にエンジニアが行うことなく、生身の運転士の点呼のように一カ所にロボットに集まってもらうことで、QRコードスキャンなどその手法は別として一斉に手間なくバージョンアップ作業を完結することも可能とされています」(事情通)。
  つまり、エンジニアがわざわざシステムアップやメンテナンスをする必要はなく、ヒト型ロボット自らはバージョンアップやメンテナンスを行うことで、ランニングコストでシステムとしての自動運転よりコストを抑えられるのではないかというのである。
  運転士のいない無人での自動運転タクシーが実際に営業運行している国もあるが、誰もいないよりはロボットでもいたほうが、当面は利用者の安心感も高いだろう(世代交代が進めば違和感はなくなるかもしれない)。技術が進歩しているので会話させることも可能だから、乗車するときに「会話可能モード」なども選ぶことができるようになるかもしれない。もちろんロボコップのような見た目ではなく、見た目は人間とほとんど変わらないタイプが好ましいといえるだろう。
  気になるのはその導入コスト。ヒト型ロボットだから圧倒的に安いということはないだろう。ただ、自動運転システムはまだ発展途上にあり、すでにタクシーに導入している地域でも新たなトラブルを生んでいるといった報道が相次いでいる。それなら既存車を利用し、生身の運転士と同じようなオペレーションで稼働することができるヒト型ロボットの可能性に、旅客や貨物輸送業界が注目してもおかしくないものと考える。
  とくに旅客輸送では、導入コストにそれほど差がなければ、演出上でもヒト型ロボットが運転席に座って運転するだけではなく、利用者と会話ができたりしたほうがいいのかもしれない。
  昭和生まれの筆者にしてみれば、現代社会は子どものころ夢みた未来社会をある程度具現化しているように見える。この流れを見れば、そう遠くない先に、おしゃべりなロボット運転士の操るタクシーを利用するといったこともまったく夢物語ではないと考えている。

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