Global X Japan 株式会社(東京都千代田区)は、2024年9月で設立から5年を迎えました。設立当初からこれまで、日本で唯一のETF専門資産運用会社※として、東京証券取引所に47銘柄のETFを上場させ、運用資産残高は4,000億円に迫る勢いで増加しています。そこで今回、同社のこれまでの歩みと今後の展望について、代表取締役社長の姜昇浩氏にインタビューをしました。
※自社調べ(2024年9月時点、日本国内でETFのみを取り扱う資産運用会社として)
Global X Japan株式会社 代表取締役社長 姜昇浩
設立5年を迎え、運用資産残高は4,000億円に迫る勢いで増加
2019年9月に、日本で唯一のETF専門資産運用会社として設立された当社は、今月で設立5年を迎えました。私が前任の社長からバトンを引き継いだのは2022年のことで、ミッションはとにかく会社を成長させること。つまり、運用資産残高を増やすことでした。そこで、まずは日本の機関投資家の皆さまにETFを広めるべく、活動をしてまいりました。
そして2024年1月には新NISA(少額投資非課税制度)がスタート。個人投資家による投資機運の高まりも追い風となり、当社の運用資産残高は今年3月に3,000億円を突破、その後も4,000億円に迫る勢いで成長を続けています。
20世紀最大の発明と言われるETF。米国で活用が広まるも、日本はブルーオーシャン
ETFは、「20世紀最大の発明」とも言われる金融商品です。それを証明するかのように、過去10年で急拡大を遂げてきました。世界のETF運用残高は13兆ドル超(2024年6月末時点)です。その約7割が米国で占められており、個人投資家の保有率が高いとされています。このように、米国ではETFが個人の資産形成の手法として積極的に活用されています。
一方、日本のETF残高は約90兆円(2024年6月末時点)あるものの、その内、約8割程度は日本銀行が保有しています。このように、ETFは日本においては、個人投資家に十分に認知・活用されていないのが現状です。日本の個人投資家が保有するETF残高は2兆円程度と推定できるのですが、日本の家計における金融資産残高は約2,000兆円と言われておりますので、日本のETF市場はブルーオーシャンであると認識しています。
日本のETF市場を開拓すべく設立されたGlobal X Japan。エッジの効いたETFで、運用成績に貢献したい
米国の状況を鑑みると、いずれ日本にも必ずETFの波がやって来る。その時にアドバンテージを取れるよう、米国のGlobal X社と日本の大和証券グループが共同出資をして設立したのがGlobal X Japanです。
日本の市場に流通しているETFは、「日経平均」や「TOPIX」といった伝統的な指数をベースにしたものがほとんどです。指数ベースのETFへの投資では、マーケットそのものの成長分しかリターンが見込めません。
そこで当社は成長テーマ型やインカム型など「エッジの効いた」付加価値の高い商品を提供しています。商品を「資産運用のパーツ」として捉えると、商品種類は豊富であるほど良いため、どのような市況でも対応できるよう、商品ラインアップを拡充しています。
新NISAがスタートし、個人投資家からの資金流入は4.5倍に。資産形成に対する考え方に変化も
日本の個人投資家の間でも少しずつ、ETFは広がりを見せています。今年の1月にスタートした新NISAも追い風となり、大手ネット証券経由の当社への資金流入は新NISA前と比較して4.5倍になりました。このように、個人投資家からの資産運用ニーズは確実に高まっています。
これまで多くの日本の個人投資家はバブル崩壊がトラウマとなり、長きに渡って「資産運用は自分とは遠い世界の話」と捉えていた方が多いのではないでしょうか。しかし、アベノミクスで日経平均株価は順調に上昇し、今年の7月には34年ぶりの史上最高値を更新しました。さらには日本企業のPBR・ガバナンス改革が進み、持続的な成長のためのサイクルが回りだし、日本株への評価を見直す動きが起こっています。新NISAも始まり、資産形成に対する考え方は着実に変わってきています。
日本でETF普及の鍵を握るのは個人投資家
個人投資家の間でETFが広まりつつあるとは言え、日本人が保有する金融資産2,000兆円を踏まえると道半ばです。米国と同様、日本でもETF普及の鍵を握るのは個人投資家です。
では、どうすれば個人投資家にETFが広がるのか。まだ方程式は見えていませんが、まず認知をしてもらえれば、ETFの良さが伝わり、広がっていくものと考えています。そこで、当社ではTVCM(8月末で終了)やトレインチャンネルなどへの出稿や、各イベントにも積極的に参加し、プロモーション活動を展開しています。
ETFは経費率が低く、積立投資に向いている。日本の証券会社が変わった時がETFの本当の出番
認知に加えてポイントとなるのが証券会社(=販売会社)での取り扱いです。現状、当社ETFへの資金流入はネット証券が中心ですが、対面型の証券会社での取り扱いが増えれば、よりETF投資が広がりをみせると考えています。
今年の8月5日、日経平均がブラックマンデーを超える歴史的な大暴落をしました。この暴落で、新規の個人投資家の方を中心に、保有する商品を慌てて売ってしまった方もいらっしゃると思います。しかし、統計データなどを見ると、長期的な目線で「買い」の判断をした方も少なくないことが分かります。これは個人投資家の投資に対する意識が変わってきていることへの証拠だと感じています。
株価は変動を繰り返しますが、長い目で見ると世界の資本市場は成長を続けています。世界の枠組みが変わることがない限り、継続的な投資が資産形成に寄与することは、すでに証明されていると考えています。
投資を継続するために、大切なのが分散投資です。投資信託で積み立て投資をしている方は多いと思いますが、ETFにおいても可能です。現状、新NISAの成長投資枠では購入できないなどの制約はあるものの、一般的にETFは投資信託よりも経費率が低く、長期の資産形成に向いていますので、ぜひ活用して欲しいです。
また日本の証券会社は直近10年ほどで、営業スタンスやフィロソフィーの転換期を迎えています。当社の親会社の1つである大和証券グループでは、中期経営計画にて「お客様の資産価値最大化」を掲げています。日本の証券会社がお客様の資産の最大化にコミットする体制に変われば、ETFの本当の出番がやってくると考えています。
グローバルネットワークを駆使し、面白いETFを生み出したい。ETFこそGlobal X Japanの生きる道
現在、東京証券取引所に上場している当社のETFは47銘柄。新規上場本数は4年度連続で1位を獲得しています。今後もアイディアを出し、商品数を増やしていこうと考えています。
「よくそんなに短期間で多くの商品をつくれますね」と他社から言われることがありますが、新商品の開発にこそ、我々の強みがあります。背景にあるのは、当社が保有する各国のGlobal X とのネットワークです。米国をはじめ、カナダやヨーロッパ、オーストラリア、中国等、世界各国で展開しているグループのノウハウを活用しています。
投資家の方に対しては、多くの選択肢を提供するために、引き続き他にはない「エッジの効いた」商品ラインアップを充実させ、存在感を発揮したいです。
当社は設立当初から現在に至るまで、日本で唯一のETF専門資産運用会社です。ETFにしか生きる道がないからこそ、本気で取り組んでいきたいと考えています。
Global X Japan株式会社
代表取締役社長 姜昇浩
1987年、大和証券入社。国際営業部からシンガポールに10年、タイに4年赴任し、その後シンガポール現地法人の社長へ就任。帰国後は債券営業やマーケット部門の企画に従事し、2014年にグローバル・マーケッツ企画部長。2016年に執行役員、2019年に常務執行役員、2020年に常務取締役を経て、2022年にGlobal X Japan代表取締役社長に就任。現在に至る。
(取材・執筆/藤井恵)