「パンテーラ」は知ってるけど「グアラ」「ビグア」って? デ・トマソのパンテーラ後を支えたクルマとは

2024.09.10 17:30
この記事をまとめると
◾️デ・トマソのヒット作であったパンテーラの後継モデルがグアラだ
◾️バルケッタ・クーペ・ロードスターの3種類のボディがグアラには存在した
◾️グアラはあまりに高価だっため量産モデルのビグアも併せて生産された
デ・トマソの威信にかけて誕生したグアラを振り返る
  デ・トマソにとって、その黄金時代はいつだったのかと問われれば、やはり多くの人は日本でも人気のミッドシップスポーツ、パンテーラが生産されていた時代と答えるに違いない。
  そのパンテーラは、1970年から24年間にわたり、トータルで7298台が生産されたヒット作となったが、デ・トマソはその後継車として1994年になると「グアラ」と呼ばれるニューモデルを発表する。まずはこのグアラが誕生するに至った背景を簡単に解説しておこう。
  グアラは、そもそもマセラティが1990年代初頭に提案したチュバスコを原案としたスポーツカーだった。かのマルチェロ・ガンディーニのボディデザインに、当時マセラティの親会社であったデ・トマソとの関連性を物語るかのようなバックボーンフレームを採用した基本骨格を特徴としていた。
  マセラティは当然のことながら、チュバスコをプロダクション化する計画をもち合わせていたが、それは当時、デ・トマソとともにマセラティの経営にも大きな影響を及ぼすようになっていたフィアットの意向でキャンセルされてしまう。これはおそらく、すでにフィアットの傘下にあったフェラーリとの競合を避けるための判断ではなかったのかというのが一般的な推測だった。
  だが、デ・トマソの総帥アレッサンドロ・デ・トマソは、このチュバスコをベースに、ふたつのニューモデルを生み出すことに成功した。ひとつはワンメイクレース用の「マセラティ・バルケッタ」、そしてもうひとつは今回の主題である自社ブランドの新型車「グアラ」である。
  かつてアレッサンドロの祖母が経営した牧場で使用された焼印を、その母国であるアルゼンチンを意味するブルーとホワイトのベースにあしらったエンブレムは、グアラで再びその存在を世界に強くアピールすることになったのだ。
  最初に誕生したグアラは、マセラティ・バルケッタのデザインによく似た、フロントウインドウやリヤビューミラーさえオプション設定とされたスパルタンなバルケッタで、その後にクーペとロードスターが続いて製作されている。
  つまり、デ・トマソ・グアラには、3タイプのボディバリエーションが最終的には出揃ったことになる。
3つのボディバリエーションをあわせても販売されたのは52台のみ
  バックボーンフレームは、もちろんチュバスコから継承されたもので、ミッドには1993年から1998年まではBMW製の4リッターV型8気筒エンジン(304馬力)が、また1998年から生産最終年の2005年まではフォード製の4.6リッターV型8気筒+スーパーチャージャー(282、もしくは300馬力)が搭載されていた。ミッションはいずれもゲトラグ製の6速MTを装備。
  筆者は幸運なことに、日本とイタリアでこのすべてのボディバリエーションを取材することができたが、やはりもっともデ・トマソらしいフィニッシュを見せていたのは、高性能なスポーツカーであると同時に、ラグジュアリーなGTとしての感覚も強いクーペにほかならなかったことを記憶している。
  ちなみにグアラシリーズのデザインは、これもまたガンディーニデザインの流れを汲むもの。ロードスターはこのクーペを改造するプロセスで生産され、イタリアのカロッツェリア・アウトシュポルト社が、そのオープン化を請け負った。
  実際の生産台数は、バルケッタが10台、ソフトトップをもつロードスターは4台、そしてクーペは38台の合計52台がグアラの全生産量であるとされる。
  グアラを生み出したことで、再びスポーツカーメーカーとして表舞台に復活を遂げたデ・トマソ。しかし、グアラの価格はけして安いものではなく、アレッサンドロ・デ・トマソは、さらに安価な量販モデルの生産化を意識するようになる。
  その結果、1996年に誕生したのが「ビグア」というニューモデルで、これはひとつのボディでクーペ、タルガトップ、フルオープンの3スタイルを楽しめる、しかしながらフロントには強力なフォード製4.6リッタースーパーチャージャーエンジンを搭載し、その高性能ぶりをアピールした。
  シャシーはパンテーラ時代のセミモノコック構造を再び採用し、デ・トマソは上級車種のグアラと、この量産モデルのビグアで21世紀を迎える体制を整えた。
  だが、デ・トマソはこのビグアのプロジェクトを、アメリカのカリフォルニアでMGなどの英国車販売に携わり、その後イタリアの高級スポーツカー販売にも進出していたクベース社に売却。さらに、デ・トマソはそれに前後してマングスタ、ならびにグアラの商標権も同社に売却している。
  パンテーラ以降のデ・トマソを象徴するグアラ。それはまさに彼らが歩んだ激動の時代を見届けた生き証人といっても過言ではない1台なのである。

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