遠く離れていても愛する人に花を贈りたい。フラバーズ(FLOVVERS)は、生花を撮影して作ったデジタルアートを遠く離れた家族や友人、恋人に届けるという個人的なプロジェクトから始まりました。
その小さな愛の表現が、次第に都市と産地の経済的および文化的な隔たりを埋める取り組みへと成長し、やがてひとつのブランドへと発展しました。
『LOVERS, 2022』 – 生け花をテーマにしたフラバーズ初のアートコレクション
ブランド名のフラバーズ(FLOVVERS)は、「FLOWER(花)」と「LOVERS(愛する人たち)」を組み合わせた造語であり、大切な誰かのために存在するブランドであることを象徴しています。単なる商品の販売やアート表現ではなく、大切な人への思いを込めた作品を届けるという理念が込められています。
本記事では、フラバーズがどのようにしてこの独自のアートを生み出してきたのか、その背景や活動、挑戦を深掘りします。
個々の多才なスキルとチームワークで創り上げる、独自のスタイルを持つフラワーアートブランド
株式会社カイトが展開するフラバーズ(FLOVVERS)は、2022年に代表の吉澤威一郎が立ち上げたフラワーアートブランドです。映像作家、写真家、グラフィックデザイナーでもある吉澤は、母方の姓「北条」を雅号に取り入れ、北条威一としてこれまでの経験を活かしながら新たにフラワーアートの世界に足を踏み入れました。
吉澤の幼少期は、母が手入れする庭の花々や、華道家の叔母が毎日活ける花に囲まれて過ごしました。中学時代に母から贈られたロバートキャパの写真集とキースヘリングのデザインに触発されたことが、クリエイティブな道を歩むきっかけとなりました。
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『Bloom, 2022』 – 吉澤が監督・編集した映像作品
安藤忠雄建築を舞台に、花柄の衣装を身にまとった5人のアスリートが出演
フラバーズでは、吉澤が企画、映像制作、写真撮影、グラフィックデザイン、ウェブサイト制作など、ブランドの多くの工程を一人で手がけています。この一貫したアプローチには、吉澤の強いこだわりと探求心が感じられます。一方で、花の装飾に関しては、チームでの制作を大切にし、それぞれがフラワーアーティストとして活躍する仲間とともに作品を作り上げています。こうして生まれるフラワーアートは、生花とデジタルアートを組み合わせた、吉澤ならではの独自のスタイルを持っています。
吉澤の作品には、自然への深い愛情と丁寧な手仕事が息づいており、全ての工程に対する真摯な姿勢が、フラバーズというブランドに独特の温かみと魅力を与えています。
都市×産地、生花×デジタル。分断されていた両極的な要素をアートの力で結びつける
フラバーズが掲げるテーマは「都市と循環」です。都市と産地、生花とデジタルメディアという異なる要素を組み合わせ、新たな視点を提供するフラワーアートブランドとして展開しています。
和歌山県みなべいなみ、希少なピンクのかすみ草「マイピンク」の圃場
花は装飾品としての役割を超え、人々の心をつなぎ、価値観を共有する重要な媒介です。フラバーズは、都市の消費文化と産地の生産活動を結びつけることで、これまで分断されていた両者の関係性を再定義し、都市と自然が共生する未来を考えるきっかけを作り、都市と産地の持続可能な未来を目指す取り組みを進めています。
フラバーズの作品は、生花で作る装飾とデジタルアートを組み合わせることで、花の一瞬の生命を超えて、人々に持続する感動を提供することを目的としています。視覚的な美しさだけでなく、花が持つ一時的な美を永続的な記憶として保存するフラワーアート体験を提供しています。
和歌山県みなべいなみのピンクのかすみ草を使用し、都市部の来場者から大反響を呼んだ桜フェス日本橋の装飾
2024年3月に開催された桜フェス日本橋での展示は、フラバーズにとって大きな転機となりました。
桜フェス日本橋で展示された、ピンクのかすみ草を使った桜をイメージした装飾
使用花材:かすみ草、スターチス、流木、観葉植物 サイズ:横4.2m×縦2.5m
このイベントでは、和歌山県みなべいなみのピンクのかすみ草を使用し、都市と産地をつなぐ新たなアート表現に挑戦しました。このプロジェクトは、自然素材を取り入れたデザインを通じて、都市部の来場者に産地の魅力を伝えることを目指しました。
展示では、生花を飾りながらドライフラワーに変化させるプロセスと、デジタルアートをダウンロードできる要素を取り入れ、4週間にわたり屋外での展示を行いました。イベント最終日には展示で使用したドライフラワーになったかすみ草を来場者に配布し、600人もの行列ができるほどの大盛況となり、フラバーズの活動が多くの人々に受け入れられたことを象徴していました。
桜フェス日本橋最終日、装飾で使用した花の無料配布
フラバーズの「都市と循環」というテーマは、都市と産地、アートとテクノロジーの融合を通じて実現されます。特に、自然素材を使ったアートが持つ社会性や人間性は、現代社会において重要なメッセージを伝えています。持続可能な社会を目指す中で、自然資源の大切さや環境保護の必要性をアートを通じて発信することは、フラバーズの重要な使命です。
また、フラバーズの活動には常に新しい挑戦が伴います。特に、都市部での展示やイベントでは、人々の動きや気温、雨風、光など、環境条件が不安定で、繊細な自然素材を長期間美しく保つのは非常に難しい課題です。フラバーズは、こうした課題に対応するため、安全対策を最優先に展示環境を細かく管理し、最適な条件を整えることに細心の注意を払っています。自然素材が持つ儚さや変化を作品の一部として取り入れることで、時間とともに移り変わる美を表現しています。こうした細部へのこだわりと努力を重ねることで、フラバーズは独自のアートスタイルを確立し、多くの支持を得ることができました。
このプロジェクトは、従来の展示の枠を超え、花の美しさと産地の魅力を新たな形で発信する試みとして評価されています。
自然と未来を紡ぐ、フラバーズが目指す新しいアートの可能性
フラバーズは、これからの展開において、デジタルメディアを活用した展示の拡大だけでなく、独自の花柄を使ったファッションの展開にも注力しています。
2025 SSコレクションから始まる「Tapestry(タペストリー)」シリーズは、自然の複雑さと美しさが織りなす独自の調和を表現しています。様々な花や植物が絡み合い、まるで繊細に織られたタペストリーのように、色や形が美しく調和する様子をイメージしています。花々が川の流れのように繋がり、互いに支え合うことで、豊かで立体的な視覚効果を生み出しています。
『Tapestry, 2024』 – 2025 SSコレクションのための花柄
吉澤がデザインする花柄は、自然の美しさを繊細に捉えたもので、それをファッションに取り入れることで、身につける人が日常の中で自然の豊かさと調和を感じられる新たなライフスタイルを提案します。この展開は、都市部の消費者に自然の魅力を伝える手段として、ブランドの幅を広げる重要なステップとなります。
また、国際的なアートシーンへの進出を視野に入れ、今後、教育機関や環境団体と協力しながら、自然保護や環境意識の啓発に取り組む予定です。これらの活動を通じて、アートを通じた社会貢献を深め、持続可能な未来の実現に向けた取り組みを進めていきます。フラバーズの作品は、視覚的な美しさだけでなく、自然と人間の関係を再考させ、自然と共存する社会を目指した新たな視点を提供し続けます。
フラバーズ
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