誰でも扱えそうな装置だけど……じつは危険と隣り合わせ! トラックの「テールゲートリフター」の「法定教育」が義務化された理由

2024.08.24 20:00
この記事をまとめると
■運輸・物流業務の「法定教育」について解説
■「法定教育」とは事業者が従業員に定められた内容の教育を行うこと
■テールゲートリフターの操作にも「法定教育」が適用された
テールゲートリフターに「法定教育」を適用
  運輸・物流業務に携わっていると、よく「法定教育」という言葉を聞く。これは、読んで字のごとく「法律で定められた教育」という意味で、一般に「特別教育」と呼ばれているものだ。労働安全衛生法では、従業員に危険があったり有害になったりする可能性のある業務を行わせる場合、事業者が定められた内容の教育を受けさせたのちに、作業や運転をさせなければいけないと定められている。
  これが2024年2月1日以降、トラックに装着されているテールゲートリフター(パワーゲートともいうが、これはメーカーの登録商標)の操作にも適用されることになったのだ。
  この装置は、軽トラックから大型トラックまで、多くの車両に取り付けられているメジャーなもの。おもにトラック荷台後部に装着され、簡易なエレベータといったイメージである。動力や力の伝達には、電動モーター・油圧・真空・チェーン・ワイヤーなどが用いられており、これらが簡単な操作で大きな力を生み出しているのだ。
  テールゲートリフターは、かご車・ドーリー・台車などに搭載された重い荷物や、振動に気をつけなければならない精密機器などを、荷台から段差のある地上などに出し入れするときにたいへん便利。これを使用すれば荷役作業の効率がよくなることはもちろん、作業者であるトラックドライバーの負担が軽くなるので、労働環境の改善にもつながる。ひいては2024年問題解決の一助にもなるなど、メリットが大きいといわれているのだ。
  ところが、トラックの荷台から地上までは相当の高さがあり、さまざまな安全対策が行われているとはいえ、この装置にまつわる事故が少なくない。作業者や荷物が昇降板から転倒・転落したり、それによって人が下敷きになったりする事故のほか、昇降板と車体や地面などの間に挟まれるなどといったことも起きている。厚生労働省によると、発生した事故の65%程度は大事故になる可能性があったものとして、使用ルールの徹底を呼びかけている。
人手不足が悪影響を及ぼしている
  テールゲートリフターは、使用する前提として ・平坦な場所で使用する ・積載重量を守る ・荷物は昇降板中央に置く ・昇降板・キャスター(かご車・台車など)のそれぞれにストッパーを作動させる ・周辺の安全確認を怠らない ・作業するときは三角コーンなどを設置してまわりに注意を促す ・作業車は保護帽・手袋・安全靴など、作業装備をつける ・始業点検・定期点検は怠らない といったことを実施しなければならない。その上で、操作にあたっては以下の点を遵守する必要があるのだ。
 1)昇降板が荷台の高さにあるときは ・昇降板に荷物を移動させるときや降ろすときは地面を背にして後ずさりをしない ・昇降板上では作業可能スペースを確保する ・昇降板の揺れに注意
 2)接地しているときは ・昇降板の傾きによる荷の動き出しに注意(1も同様) ・昇降板のストッパーを踏みながら運搬しない(1も同様) ・昇降板の先端部と地面の段差に注意
 3)昇降板の昇降・展開・格納をしているときは ・原則として作業者が昇降板に乗ったまま作動させない ・昇降板からは荷物をはみ出させない ・昇降板を作動させるときは少し離れた横に立ち、作動中は周辺から目を離さない ・作動中の昇降板には触れないようにすると同時に近寄らない
  しかし、人手不足で時間に追われる現場では、効率を重視するあまりにこれらのことが十分に徹底されていないという現実がある。テールゲートリフターを扱う際に「特別教育」を義務化したことで、関連事故の撲滅につながることが期待されている。

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