1都11県の非鉄金属回収・産業廃棄物リサイクルを行う株式会社宇津木金属では、環境保護に貢献するために、2024年5月より
というサービスを開始しました。
企業から出るごみを買い取り、再利用や販売を行うことでごみの量を減らし、企業のCO₂排出量を削減します。また、得た対価の一部は森林保全活動に使われます。
本来、産業廃棄物業者は、多くのごみを回収することで事業が成り立ちます。
リユース事業を新たに始めるということはつまり、社内の人的資源を使って回収できるごみの量を減らすということ。それでも実施に踏み切ったのは、日々廃棄物を回収する中で「綺麗で使えるのに捨てなくてはならない」という心苦しさを、社長と社員が何度も味わったことが根源となっています。
サービス開始後、最初の活動として、まずは既存の取引先の企業のみなさまにご協力をお願いし、リユース可能な商品を1点1円で買い取らせていただきました。
企業の方々からは、「廃棄にかかる料金を削減できた」といった喜びの声も頂いています。同時に、買い取った物品の購入者を募るため、地元・埼玉県比企郡川島町でのイベント出展や、リユースサイトへの掲載を行っています。
今回は、実際に企業で廃棄されるはずだった高価な道具が、別の方のもとに届き、再利用された事例をご紹介します。
廃棄される予定だった「土練機」
今回「なくステ」で買い取りを行ったのは、粘土を混ぜるために使う道具「土練機」。定価だと20万円以上もする高価な道具です。
この土練機を、不用品を譲り合える掲示板「ジモティー」に掲載したところ、数週間後に欲しいという方からご連絡いただき、2万円で買い取りいただきました。この方は、以前も「なくステ」の不用品をご購入いただいたリピーターさんです。
一般的に土練機を廃棄した場合、3,319gのCO2が排出されますが、それを今回のリユースによって削減できたことになります。
※リユース品の総重量に廃棄物1kgを処理する際に発生する、二酸化炭素量をかけた数字となります。
※二酸化炭素排出量は環境省HPから引用
※この数字はリユース転用によるCO2削減量であり、モア・トゥリーズの森林保全活動によるCO2削減量ではありません。
リユースにご協力いただいたナノオプテック有限会社様
不要になった土練機を、廃棄でなくリユースにまわしてほしいと快く許諾いただいたのは、東京都世田谷区でホワイトニング機器を扱う
様。
椅子や工具等の不用品回収をご依頼いただいたことがきっかけで、今回のご協力に結びつきました。
代表取締役の大工園 マチ子様、統括製造責任販売者の大工園 則雄様にお話を伺いました。
事業内容
ナノオプテック有限会社様は、医療機器製造業を15年ほど営まれています。
一般的な薬剤を使用するホワイトニングは、知覚過敏等のリスクがあり、妊娠中やお子様の施術はできませんが、独自の技術「トランセントホワイトニング」は、薬剤を使わずに済むため、飲食制限なしで、年齢に関係なく白い歯を実現できるとのこと。
また、歯が黄色くなる原因である「糖化」を防ぎ、歯と歯茎の美容と健康を守りたいという想いから、砂糖なしのヘルシースイーツの開発・歯科医への卸販売も約3年前に始められました。
不要品が出た背景
薬剤無しの「トランセントホワイトニング」では、施術後の歯を冷却するために、酸化チタンが含まれる粘土を使います。この粘土を錬るために、1年ほど前に新品の土練機を購入したそうです。が、実際に使ったところ、洗浄のたびにパーツを分解する必要があり、継続的な実用に結びつきませんでした。
使用したのはたったの数回。新品に近い状態の機械を捨てるにはもったいないという思いがあったそうです。しかし重量のある物品は、一般的なフリマアプリを利用すると送料がかなり高くつきます。そこで、「なくステ」についてお話したところ、快く承諾いただき、リユース品として買い取らせていただくことになりました。
統括製造責任販売者の大工園 則雄様からは、「陶芸家の方には人気のある製品。回収してもらえて良かった。内部のパーツを入れ替えてあり新品に近い状態なので、使ってくれる方がいるなら嬉しい」とコメントをいただきました。今後も、環境に配慮して事業を続けていきたいとのことでした。
買い取りした土練機は、宇津木金属の倉庫に保管され、先日無事に購入希望者へのお渡しが完了しました。
ご購入いただいた方によると、現在、制作中の小屋に搬入されたとのことで、「まだ定位置が決まっていませんが、いつか活躍してくれる時まで台車の上で待機です。」というメッセージとともに写真をいただきました。
捨てられてしまうかもしれなかった立派な道具が、別の場所でまた活躍できる時が来る。そのストーリーを知ると、あたたかい気持ちがこみ上げてきますし、いまあるものを大切にしたいと思えます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ゴミの中には価値あるものが多く、それを適切にリユースすることで廃棄時のCO₂排出を減らし、さらに森林保全活動につなげることができます。
私たちは、サステナブルな社会を多くの企業や個人と共に創り上げることを目指しています。
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宇津木金属が生まれたのは今からちょうど50年前。高度経済成長期にあった日本では金属加工業を営む町工場が至る所にあり、その工場から出る切削屑を、ちいさな中古トラック1台で回収し、再利用してくれる場所へ運ぶ事業から始まりました。
当時、法律の整備が整っておらず、不法投棄が多く発生しており、政府から産業廃棄物処理業の許可を取得していたのは限られた会社だけでした。そのような環境の中で、宇津木金属は正式な許可を得て、多くの企業様から廃棄物回収の依頼をいただき、事業が拡大していきました。2代目の代表が受け継いだ今も、私たちは厳しい項目をクリアし、優良事業者認定を受けています。私たちの使命は、環境破壊の根本的な解決です。3世代先の子供たちが安心して暮らせ、ゴミを減らす方法についての話し合いが自然と行われるような社会の実現を目指して、私たちは今日もまた、世の中のゴミと問題を片付けていきます。