週刊誌『女性自身』にて好評連載中の人気コミック『キラー通リのソムリエ探偵』第2巻(光文社・定価880円)が、8月20日(火)に発売されます。
原作者は、累計1億部突破の『金田一少年の事件簿』、世界1500万部突破のワイン漫画
『神の雫』で知られる天樹征丸。
作画は、『ホリデイラブ~夫婦間恋愛~』で話題の草壁エリザ。
この人気話題作を担当する『女性自身』副編集長・吉田健一が企画・制作の裏側を語ります。
あのカリスマ原作者しか思いつかなかった!
もともと私は女性誌の実用やニュースの編集者で漫画に関してはズブの素人でした。
よって’20年秋に初めて、『女性自身』の漫画連載枠16ページをまかされることになり、真っ先に思ったことは、
「コミックでヒット作を生み出すには、優秀な漫画編集者なくしては実現できない。しかし、私にはその経験もスキルもない。しかも時間もなく急を要する」
……そこで考えた結論が、まずは私以外の「優秀な漫画編集者をつかまえること」、あるいは「編集者の視点を持ち合わせた作家に描いてもらうこと」でした。
ただし、優秀な漫画編集者をつかまえる道のほうが実現の可能性があり道筋は見えやすいものの、自分がやりたいことワクワクするのは圧倒的に後者のプランです。
そこで私が思い浮かんだのは、姉弟で活動しているあの超有名カリスマ原作者、
樹林ゆう子(きばやし ゆうこ)、樹林伸(きばやし しん)、両先生の名前でした。
樹林ゆう子・伸の両先生は、漫画の世界でしか表現できないビジュアル的なトリックを駆使し、『金田一少年の事件簿』『探偵学園Q』などの大ヒット作を生み出した、本格ミステリー・コミック作家の第一人者です。
作品によって、数々のペンネームを持っておられます。
「天樹征丸・あまぎ せいまる」(代表作『金田一少年の事件簿』『探偵学園Q』)
「亜樹直・あぎ ただし」(代表作『神の雫』)
「安童夕馬・あんどう ゆうま」(代表作『サイコメトラーEIJI』『クニミツの政』)、
「伊賀大晃・いがの ひろあき」(代表作『エリアの騎士*伸先生単独作品』)
「龍門諒・りゅうもん りょう」(代表作『BLOODY MONDY*伸先生単独作品』)
などマンガ好きではなくとも、作品名を知らない人はいないはずです。
つながりは一度だけのワイン会!
弟の伸先生は、もともと出版社(講談社)の社員として、『シュート!』『GTO』などの担当として辣腕を振るったレジェンド漫画編集者。その後、漫画原作者として独立したという経歴で、まさに私の構想にうってつけの先生です。
実は樹林両先生(以下・樹林先生)とは、私が弊社ファッション誌『STORY』在籍時代の’13年6月に、同誌のモデルさんやライターさんが同席するワイン会で一度だけお会いしたことがあったのです。
そのときの樹林先生は、私がワイン好きであることを知り、とても気さくに接してくださいました(もちろん、ワインの知識と経験については、先生と私では雲泥の差がありましたが)。
そして私は、『金田一少年の事件簿』の大ファンであることを告白し、恐れ多くも「いつかお仕事でもご一緒させていただきたい」とお願いしたのです。もちろん樹林先生は、酒の席での戯言と思っていらしたと思います。
’20年10月、吉祥寺にある樹林先生宅の門をたたく!
執筆依頼は、正直、ダメでもともとでした。普通に考えれば、漫画編集部にさえ所属していない素人同然の編集者が、大先生を口説き落とせるはずはないのです。
「漫画のことはまったくわかりませんが、大ヒット作を生み出したいです。漫画のことを一から教えてください」と、ただ率直に思いの丈だけをストレートに伝えました。
突然の、無謀としか言えないお願いの仕方です。
しかし、そのあまりに丸腰な姿勢を哀れに感じてくださったのか、なんと、樹林先生は苦笑しながらも連載を引き受けてくださったのです。
そして、‘21年4月に連載開始となった作品が『死ぬほど愛して』です。
同作は『女性自身』の「購入のきっかけとなった記事」アンケートで常に上位を獲得するなど人気連載となりました。LINEマンガやピッコマなどの配信でも高評、現在は映像化に向けて具体的な企画が進行中です。
『死ぬほど愛して』全5巻・70話、草壁エリザ先生の絵も話題に
『神の雫』×『金田一少年の事件簿』の良いところ取り!
女性週刊誌読者の嗜好を的確にとらえた樹林先生のヒットメーカーとしての実力は、『死ぬほど愛して』で見事に証明され、’22年に完結しました。
そして、このたび単行本第2巻が発売される『キラー通りのソムリエ探偵』は、『死ぬほど愛して』の関連作であり、“ソムリエ×週刊誌記者”コンビが、ワインをヒントに殺人事件の謎を解くミステリー。現在も『女性自身』にて好評連載中です。
『死ぬほど愛して』の評判がよかったこともあり、同じ世界感(同線上)の物語となっているので“関連作”ではありますが、樹林先生は「前作を知らない人にも届く作品にしたい」とおっしゃっています。
「『死ぬほど愛して』の中に流れる事件の気配、ミステリーの雰囲気といったものを展開して作品にできないか――。いろいろ考えるうちに、“神の雫×金田一少年の事件簿”というアイデアが浮かびました。そして、正体不明の探偵役“キラーさん”という魅力的なキャラクターを思いついたことから、”これはいける!“と確信しました」(樹林先生)
樹林先生が語る「安楽椅子探偵ミステリーの魅力」
「ワインとミステリーの相性はいい。ワインを飲むこと自体がミステリー的な行為と言っていいと思いますが、そんなワインのミステリアスな魅力を”キラーさん”が存分に引き出しながら、華麗に謎解きを進めていくところは見どころです。
それと、『ミス・マープル』シリーズなどに代表される、探偵役が現場に赴かずとも来訪者などから与えられた情報のみを手掛かりとして事件を解決する、いわゆる“安楽椅子探偵もの”……アームチェア・ディテクティブと呼ばれるジャンルに可能性を感じていたのも、執筆理由のひとつですね。
安楽椅子探偵ならではの、アクロバティックな推理アイデアが詰まった展開も楽しんでほしいです」
【『キラー通りのソムリエ探偵』あらすじ】
主人公は、謎多きソムリエ”キラーさん”。
週刊誌記者・真希あかねが持ち込む情報を頼りに、隠れ家的ワインバーにいながらにして難事件を次々と解決していく“安楽椅子探偵ミステリー”。
キラー通りにある隠れ家的ワインバーのソムリエ“キラーさん”から解決のヒントを得て、次々と難事件の犯人を的中させている週刊誌の若手女子記者・真希あかね。新たに真希が持ち込んだ事件は、フレンチのフルコースがずらりと並んだテーブルの前で男が息絶えているという異様な状況。奇々怪々な事件のトリック、その衝撃の全容とは――。
編集者冥利に尽きる、喧々諤々のネーム打ち合わせ!
私の漫画編集の仕事での失敗は数えきれません。
たとえば「…」というセリフを、何の気なしに光文社表記の「……」に変更してしまいました。そのとき、樹林先生からは、
「セリフのキレについては、我々は『…』のひとつにまでこだわっています」との強いお叱りを受け、一語へのこだわり、稀代のヒットメーカーである理由の一端に触れた気がしました。
とにかく樹林先生は、細部へのこだわりが強いです。
漫画作りの工程を簡単に説明すると、
「樹林先生が原作を上げる」→「漫画家の草壁エリザ先生がネームをつくる」→「そのネームをもとに、樹林先生、草壁先生、編集者が集まって推敲する“ネーム打ち合わせ”を行う」→「草壁先生が漫画として仕上げる」
という流れなのですが、この“ネーム打ち合わせ”を毎回3時間、紛糾するときは4~5時間かけて行っています。この時間は、樹林先生の漫画編集者としての豊富な経験を生かした“目からウロコ”の編集技術が存分に発揮される工程であり、「ここまで作品のブラッシュアップを徹底する原作者は、他にいない」と私は思っています。
ともあれ、ミステリー好きとしても、樹林先生の本格ミステリーを担当できるなんて編集者冥利に尽きます。
しかもそれが“安楽椅子探偵もの”なんて、最高すぎて震えます。
作品を通して進行していく“大きな謎”のスケールは壮大かつ深淵です。今後の展開をさらに期待していただきたいです。
『キラー通りのソムリエ探偵』は、間違いなく本格ミステリー漫画の傑作です。
ぜひ、お買い求めいただきお楽しみください!
【書誌情報】
『キラー通りのソムリエ探偵』2巻
原作/天樹征丸 作画/草壁エリザ
発売元:株式会社 光文社
発売日:2024年8月20日(火)
定価 :880円(本体800円+税)
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