2024年8月、期間限定で登場している江ノ島電鉄・江ノ島駅の駅名看板…実はこの文字、誰もが知るスナック菓子で描かれていることをご存じですか?
スナック菓子の正体は、認知率98.2%(自社調べ)と、誰もが知るロングセラーの「ベビースター」。
ファストフードのように、どんぶりも箸もお湯も、麺が戻るのを待つ時間さえもいらない、ラーメンをそのまま手で食べられるようにした画期的なラーメンスナック菓子「ベビースター」で描かれています。そんな「ベビースター」は、ラーメンが国民食になるずっと前、スナックという言葉もまだ日本にない時代の1959年に誕生しました。
そして、発売65周年を迎えた2024年。ベビースターが普段よく目にするスナック菓子の棚から、遠く離れた場所でも次々と登場します。「電車ラッピング」「駅名看板」「純金・純プラチナ」、ファッションアイテムにまで…。そして、ベビースターで描かれた文字“麺文字”が、おやつカンパニー公式Xアカウントを飛び出し、海をも越えて台湾の第二の観光都市・高雄を走る「高雄メトロ」にも登場するという…
一見すると、ぶっ飛びすぎた奇策とも思える、こんなとこにも⁉ベビースターの登場には、ベビースターといくつもの時代の子どもたちと共に育んできた歴史に裏付けされた独創的なコミュニケーション戦略が隠されていました。
まずは、ベビースター発売65周年の歩みを紐解いていきます。
----------------------------------------------------------------------------------------1. 発売65周年の軌跡 ~ ベビースター誕生 ~
『ベビースター誕生のきっかけは、創業者の“もったいない”という想い』
製粉・製麺業を営んでいた当社は、即席麺(乾麺)の製造販売も行っていました。その即席麺の天日干し工程で出てしまう“麺のかけら”を見た創業者が、”もったいない”と、そのかけらをアレンジして従業員のおやつとして振舞ったことがきっかけでベビースターラーメンは生まれました。
そのまま食べて美味しい味わいにするため、試行錯誤を繰り返して1959年、ちいさなラーメンのかけら「ベビーラーメン」と名付けられた、後の「ベビースターラーメン」が誕生したのです。
2. 発売65周年の軌跡 ~ ベビースターのヒットの秘密 ~
この風変わりなスナック菓子「ベビースター」は発売後、『取引先などの大人からは戸惑いの声があったものの、子どもたちの目にはオモシロいと映った』ようです。
これまで取引がなかった新たな東海エリアの菓子問屋との出会いもあり、子どもたちの社交場である駄菓子屋に商品が並ぶようになると、たちまち東海地方の子どもたちの人気商品になり、発売からわずか2年で売上は倍増。その実績を伝え聞いた各地の菓子問屋からも注文が入るようになり、東海から全国の駄菓子屋へと広がっていきました。ベビースターは、大人たちの想像を超え、固定概念のない自由な発想の子どもたちと、みんなの社交場である「駄菓子屋」に育まれ、全国へと広がっていくのです。
そして1973年、“子どもたちのおやつの中で一番になるように”という願いを込め、名前に「スター」をつけ加えた「ベビースターラーメン」というおなじみの名前が誕生します。
3. 発売65周年の軌跡 ~ 独創的なコミュニケーションのはじまり ~
1988年、ベビースターは売上好調の中、パッケージを大規模リニューアルします。
『社内の営業からは “お客様を逃すのではないか?”と疑問の声。取引先様からも“売れているのになぜ変えるのか?”との声も。風当たりは強かったですが、決め手は子どもたちの“新しい方が断然いい”という声でした。』
1980年後半、折しも時代が昭和から平成へ変わる頃、ベビースターも転機を迎えていました。当時のベビースターの主要消費者層は、団塊世代とその子どもたち。その消費者調査によって「美味しいけれど、パッケージが古臭い」との声が浮き彫りになったのです。その当時もベビースターの売上は順調に推移していたものの、こういったお客様のお声を受ける形でリニューアルに乗り出します。
パッケージリニューアルのテーマは、パッケージを左右するベースカラーの刷新とキャラクターの創造。商流はスーパーマーケットやコンビニエンスストアが台頭しており、ベビースターが並ぶ店頭の状況も変わっていました。そこでベースカラーを駄菓子屋の中で映えるオレンジ色から、蛍光灯照明の下でも目立つ白に変更。さらに、テレビを通してカラフルで洗練されたキャラクターたちを見てきた子どもたちの目にも留まるように、2代目キャラクター「ベイちゃん」が登場します。ラーメンから生まれたスナック菓子という独自性を打ち出しつつ、嗜好の多様化に応えるために味のバリエーション展開を検討していたこともあり、まだ文字が読めない子どもたちにもキャラクターの衣装で味のバリエーションの豊富さと美味しさを伝えることができる「ベイちゃん」が採用されたのです。
こうしてできあがった新パッケージですが、社内外から反対意見が多数出ました。売れていないわけではないのに、なぜ変えるのか?今のお客様を逃してしまうのではないか?と。しかし、子どもたちに新デザインを見てもらうと、“新しい方が断然いい”という声だったのです。こんな子どもたちの声が決め手となり、新しいパッケージでの発売を決断。
そして1988年、チキン味・カレー味・みそ味の3種類のベビースターを発売。新しい味への反応はとても良く、お菓子としての人気のカレー味だけでなく、ラーメンらしいみそ味も好評でした。
ここから、ベビースターならではの特長を活かした商品開発でお客様とのコミュニケーションが加速していくのです。
4. 発売65周年の軌跡 ~ カタチを進化させて広がるベビースター ~
ベビースター発売から40年。駄菓子屋で出会った子どもたちも大人になった1999年、
ベビースターの兄弟ブランド「ラーメン丸」「ドデカイラーメン」「ラーメンおつまみ」が誕生します。
『ベビースターの兄弟ブランドは、お客様の声をヒントに生まれました。これら兄弟ブランドの誕生により、駄菓子売り場が指定席だったベビースターの世界は、スナック菓子・おつまみ市場へと広がっていったのです。』
ベビースターラーメンは“ラーメンのかけら”のままのカタチが人気となっていますが、一方で「ポロポロとこぼれる」「子どもがこぼして掃除が大変」という声も寄せられます。こうしたお客様の“ご不満の声”を解消するために誕生したのが、ひとくちサイズに固めた「ラーメン丸」と、幅広くてつまみやすい「ドデカイラーメン」です。細かい麺をギュッとひとくちサイズに固めることで、ポイッと1粒食べれば、カリッザクッとした食感と噛むほどにホロホロッと麺がほどけるような食感変化を楽しめる「ラーメン丸」。ベビースターを横に何本もつなげたような幅広麺が特徴の「ドデカイラーメン」。
さらに、コンビニで缶ビールとベビースターを購入するお客様の姿をヒントに生まれたのが、ビールと相性抜群の「ラーメンおつまみ」。
ベビースターはお客様のライフスタイルに寄り添い、カタチを進化させることで、駄菓子からスナック菓子、おつまみへと、その世界を広げ、お客様との接点も拡大していきます。
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このようにして挑戦し続け、進化してきたベビースターは、幅広い年齢層に支持されるロングセラーブランドに成長するのです。
■発売65周年のベビースターが世代も垣根も海をも超えて挑戦し続ける理由
認知率98%・喫食経験94%と、誰もが一度は食べたことがあるベビースターですが、実は、「ベビースターを最近食べましたか?」の質問をすると、およそ8割ものお客様がお召し上がりになられていないという結果でした。お客様に食べていない理由を伺うと、ベビースターを嫌いになったわけではなく、ただ忘れているだけ、目に入っていないだけ…という実態が浮き彫りになったのです。この調査結果はとてもショックでした。高い認知率と喫食経験率のブランドであっても、お客様との接点を持ち続けていなければ忘れ去られていくのは当たり前です。従来のように、お客様との接点がスナック菓子の棚だけでは、ベビースターを思い出して手に取ってもらうことは難しい…。では、どうしたらよいか?と考えた時に、スナック菓子の棚やおやつという『枠の”外”にベビースターを出現させる』というアイディアが生まれたのです。
普段、スナック菓子の棚でしか見なかったベビースターが全く別の場所にある、それも食品でもなかったりする。そんな、「こんなとこにも⁉」と思っていただけるような”意外性”がフックになり、SNS等での話題になれば、その情報に触れた多くの人がベビースターを思い出すきっかけになると考え、あらゆる枠を超えたコラボ展開に乗り出したのです。
■コラボ企画を多数展開!企画設計に大事な「2つ」の要素
おやつの常識や枠にとらわれないベビースターならではのコラボ企画を2年連続で25件以上も展開しています。
こうしたコラボ先とのマッチングは、マーケティング部門のメンバーだけでなく、他の部署からのアイディアも参考に担当チーム内で、「次はこういうことやりたいよね」「この時期はアルコール系がよさそう」などとブレストでアイディアを出し合って選出しています。
これらのアイディアをオモシロ企画に転換するために重要な要素は2つあります。
一つは「意外性」、そしてもう一つは「納得感」です。
日常生活でもそうですが、意外な出来事ほど人に話したくなるものです。(当たり前ではありますが)やはり意外性のあるものほど話題を生みやすいということが弊社が実施した調査でも判明しています。そこで、私たちは世の中にベビースターの話題が拡散していくことを目論んで企画を投下していますので、そこに「意外性」を感じられるかどうかを、重視して企画の判断をしています。
次に「納得感」。驚きたっぷりの「意外性」があるオモシロ企画で話題を喚起しても
「納得感」がなければ、受け手はしっくりと来ず、深く心に留められないと考えています。この考え方は「パーセプション(認識)」を拡げたいというところにも通じており、「ベビースターをお料理に使う?」→「意外にも美味しそう!」→「よくよく考えたらもんじゃ焼きにも入れるし、ラーメンのお菓子だし・・・、なるほど!」
こうした思いをオモシロ企画に触れた方々に感じていただけるよう、そこはかとなく「納得感」が得られるかどうかも企画設計において、とても大事にしています。
その上で、先にお伝えしたような“お料理にも使える”の他、“遊べる”や“お酒にも合う”というという、様々なシーンに対応するベビースターの多様性を活かし、「味を再現したベビースターの発売だけでなく、相互でコラボする」「電車の車体ラッピングするだけでなく、駅名看板も麺文字でジャックする」「プロ野球の冠試合の開催だけでなく、試合観戦にもピッタリでおつまみになるベビースターを使ったレシピも展開する」など、表層的な意外性コラボではなく、ひとつのプロモーションの中に連動性を持たせた複数のタッチポイントを作ることで納得感を高める企画とすることを心掛けています。
こうした工夫が、お客様とのコミュニケーションを立体的にし、「こんなとこにも⁉」と驚きとともにワクワクするような取り組みになると考えています。
■ベビースターの熱い想い。65年にわたってベビースターが届けてきたもの
ベビースターを幼少期の頃から長年愛してくださっている様々な年代層のお客様に、どのようにベビースターと出会い、ベビースターをどう捉えていらっしゃるのか、個別でインタビューを実施しました。すると、「遠足に持って行って友達と一緒に食べた」「高校時代の受験勉強の合間に、友達と学校の中庭でワイワイ食べた」など、お客様がこれまで過ごしてきた、かけがえのない楽しいひとときにベビースターがいつも寄り添っていて、今でも食べるとその頃を思い出し「また頑張ろう」と、励まされたり、ちょっと上向きな気持ちになるといったお声をいただきました。その声を踏まえ、『閉塞感が漂う今。いくつもの時代を乗り越えてきたベビースターだからこそ、日常の中で忘れがちな、あの頃のワクワクする気持ちと上向きになれる明日をお届けできる』と考えました。
「ベビースター」が長い歴史の中で蓄積してきたお客様との思い出の数々。それは、ベビースター独自の見た目、食感、美味しさという機能的な価値だけでなく、時代とお客様によって育まれたベビースターならではの情緒的価値でした。
風変わりなラーメンのスナック菓子「ベビースター」は今、こんなとこにも⁉という思いがけない場所や意外な場面、カタチとなって、“おやつの常識”にとらわれない遊びゴコロあふれるオモシロ企画をお届けしています。
ベビースターのこうした常識や枠にとらわれず挑戦する様々な姿をお届けすることによって、あらゆる世代が少しだけ忘れがちな“あの頃“のワクワクした気持ちを思い出していただきたいと思っています。そしてこれからも『ベビースターがあれば、ちょっとでも上向きな気持ちになる。』そんなブランドの姿であり続けることが私たちの夢です。
ベビースターを食べるとき、袋を開けて食べると自然と顔が上向きになりますよね?ポロポロッとこぼれてしまっても、なぜか自分も周りまでも笑顔にしてしまう、そんな魅力が「ベビースター」にはあると思っています。
さぁ、みなさんもベビースターと一緒にワクワクする時間を楽しみ、上を向いて歩きませんか?