TYPICAプラットフォームのニューモデルが始動。新機能でコーヒー生豆流通の構造転換を目指す。

2024.08.07 10:00
TYPICA Holdings株式会社
コーヒー生豆の取引における売り手と買い手の情報の非対称性を飛躍的に改善しうる新機能「ウィッシュリスト」などの搭載によってダイレクトトレードの主流化を促し、コーヒー産業が抱える諸問題の解決を目指します。
世界中のコーヒー生産者とロースターなどのバイヤーを繋ぎ、コーヒー生豆のダイレクトトレードを推進するTYPICAは、2024年8月6日に、運営するグローバルオンラインプラットフォームをニューモデルへとアップデートしました。このアップデートにより、コーヒー生豆のバイヤーが世界中のコーヒー生産者に向けて調達リクエストを公開できる「ウィッシュリスト」をはじめとする、様々な新機能が搭載されました。バイヤーの理想のコーヒーとの出会いを叶えるとともにコーヒー産業のサステナビリティを高める、まったく新しい調達のかたちが今日から始まります。

・コーヒー産業の構造と諸問題
石油に次ぐ国際商品であるコーヒーは、世界で1日に22億杯消費されていると言われます。ですが、先進国で暮らす我々がおいしいコーヒーを楽しむ背景に、生産者たちが苦しむ負の構図が存在することも事実です。

旧来の国際市場において、コーヒー生豆の取引価格は、先物市場の国際価格をベースに決定されてきました。それゆえに、ブラジルやベトナムのような大量生産品を中心とする地域で豊作が見込まれると、取引相場が下落。これはすなわち、世界に1,200万軒近く存在するとされる中小規模生産者の収入の減少を意味します。場合によっては、生産コストを下回る価格での販売を余儀なくされることも少なくありません。

さらに、この国際価格は先物市場に流れ込む投機マネーの影響で激しく変動するため、約550万軒のコーヒー生産者が、今も貧困状態にあると言われています。こうした構造的な問題によって、コーヒーは儲からない高リスク作物だと捉える生産者も多く、コーヒー生産から離れる事例も見られます。加えて、コーヒー生産量全体の約60%を占める高品質なアラビカ種の栽培に適した土地が、気候変動の影響で2050年までに半減してしまうかもしれないという「コーヒーの2050年問題」も指摘されており、コーヒー需要が世界的に拡大を続けているにもかかわらず、コーヒー生産のサステナビリティには大きな懸念が投げかけられています。

・TYPICAの事業とその意義
TYPICA(読み:ティピカ)は、民間発でコーヒー産業を革新する「新国際コーヒー市場づくり」を主題に、2019年に創業したグローバルベンチャー企業です。現在は日本、韓国、台湾、オランダ、米国の5カ国に拠点を置き、80カ国・地域で事業を展開。11万軒以上のコーヒー生産者とロースターのネットワークを構築し、実際に57カ国・地域でTYPICAを介したコーヒー取引と流通が実現しています。

コーヒー産業の根本的な革新を通してコーヒーのサステナビリティ向上を目指すTYPICAのオンラインプラットフォームでは、生産者とのダイレクトトレードによって、先物市場に依存しない価格決定を追求しています。これにより、世界中のコーヒー生豆バイヤーが、国際価格に左右されることなく、品質と生産コストに応じた適正な価格で安定的にコーヒー生豆を調達することが可能になりました。これは小規模生産者の収入の向上と安定化にもつながるため、コーヒーのサステナビリティ向上に直結します。
・ニューモデルでの新機能とその革新性
8月6日にニューモデルへとアップデートされたTYPICAのオンラインプラットフォームには、コーヒー取引の飛躍的な進化とサステナビリティ向上を担う新機能が搭載されました。
全世界の生産者とつながる「ウィッシュリスト」機能
ウィッシュリストは、世界中のコーヒー生産者に調達リクエストを公開する機能。希望の品種、精製方法、価格などを登録するだけで、パーソナライズされたオファーが生産者から届きます。
スマホで農園やドライミルを視察できる「バーチャルツアー」機能
360°カメラを用いて撮影されたバーチャルツアー。コーヒー農園の風景、生産者の表情や言葉、そこに響く音までをリアルに感じることができ、生産地を旅する時の気分の高揚をまるごと味わうことができます。
サステナブルなコーヒー調達のために「GHG排出量可視化」対応
コーヒー生豆の生産と輸送過程における温室効果ガス(GHG)排出量を可視化。来るべき脱炭素社会への適応に必要不可欠なこの機能を、業界に先駆けて実装しています。
アクティブなイマジネーションを育む「ダイナミックオファーリスト」機能
ダイナミック・オファーリストは、AIによるマッチング機能で動的に変化するオファーリスト。好みにぴったりのコーヒーや、ワクワクするような新たなコーヒーと出会うことができます。(2024年10月公開予定)

その他、コーヒー取引の飛躍的な進化とサステナビリティ向上を担う新機能の搭載や今後のバージョンアップにもご期待ください。



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執行役員Technology Officer 有澤高介コメント
コーヒー産業の構造的問題に挑戦し、生産者の生活向上とサステナビリティの実現を目指してきました。
自分自身も実際に生産地を訪れ、小規模生産者や生産国を目の当たりにしたことで、この革新的プラットフォームが持つ可能性を実感しています。
TYPICAを通じて、公正な取引を促進し、より良い社会と持続可能な未来を築く第一歩を踏み出せることを誇りに思います。



代表取締役CQO(品質管理責任者)山田彩音コメント
TYPICAを創業した5年前、現在のビジネスモデルであるプレオーダー(収穫・精製直後、コーヒー生豆がまだ生産地にある段階で予約を受け付ける)はまだ一般的であるとは言えない状況でした。数多くのコーヒー生産者やバイヤーのみなさまのご共感とご協力によって、今ではコーヒー生豆調達の選択肢の一つとして商習慣の中に根付いたと感じております。
そして、5年目という節目に、さらに新たな選択肢を生み出せることをとても嬉しく思います。
新機能の筆頭である「ウィッシュリスト」は、コーヒーのサステナビリティを高めるまったく新しい調達のかたちです。バイヤーが購入したいコーヒー生豆の条件をリストに登録すると、生産者はそのリストを閲覧し、条件に合ったコーヒーをバイヤーに直接オファーすることができます。また、生産者は登録者情報を集約したグローバルの需要データを閲覧し、計画的に生産を行うことができます。ウィッシュリストを通じて、コーヒー生産者の「何を作ればいいか分からない、それが売れるかどうかも分からない」という状態から「何を作ればいいか事前に分かり、売れることが決まっている」という状態へ導くことは、生産地に大きなインパクトを生み出すと確信しています。
加えて、バーチャルツアーやGHG排出量可視化などを通じて、バイヤーのみなさまだけでなく生活者のみなさまにも、コーヒーそのものの価値をより解像度高くお伝えします。
TYPICAのプラットフォームは、創業時からロースターのみなさま、生産者のみなさまとともに育まれてまいりました。これからも引き続き、ニューモデルを育む主体者としてご参画いただけましたら幸いです。



代表取締役CEO 後藤将 コメント
ダイレクトトレードは、品質すなわち生産者の努力が価格に直接反映可能な仕組みだと言えますが、間接取引では買い手企業の需要が生産者に直接開示されることは少なく、特に大口の取引の場合には、投機マネーが大量に流れ込む先物市場の国際相場に基づき、中間業者主導で間接的に価格決定がなされることがほとんどでした。
そのような問題意識から、今回ニューモデルで実装された「ウィッシュリスト」機能の開発に際しては、逆転の発想による情報のパラダイムシフトを追求しました。全世界のコーヒー企業の需要データを集約して生産者に公開することは、コーヒーの歴史上初めての挑戦であり、テクノロジーを駆使して世界80カ国でダイレクトトレードコミュニティを育み合うTYPICAだからこそ実現可能な民間発の世界的なイニシアチブであると言えます。また、日本政府やJICA(国際協力機構)との連携を通じてコーヒー生産国の公的機関との協働にも着手していることから、世界規模での産官連携によって、より公共性の高い産業構造への革新を追求します。
TYPICAに登録されているバイヤーの年間買付総量は、コーヒー生豆市場全体の約18%と試算できます。仮に全ユーザーのウィッシュリスト、いわば、全世界のコーヒー需要データに世界中の生産者がアクセスできれば、実需に基づく価格形成を基本とする「ニューコモディティマーケット」をつくることができます。その結果、為替と相場に依存するためにボラティリティが激しく不安定な旧来のマーケットに代わって、安定的な長期取引を可能とする「ニューコモディティマーケット」がデファクトスタンダードとなっていくでしょう。
つまり、TYPICAがこれからみなさまとともにコミュニティ全体で育んでいくニューモデルは、これまでコーヒー産業に厳然と存在してきた売り手と買い手の情報の非対称性を改善することで産業全体の生産性を劇的に高める、コーヒーの歴史的な構造転換と言っても過言ではないと私たちは確信しています。




奴隷制の拡大とともに発展した負の側面も背負うコーヒー産業は、貧困や人権問題など未だ多くの諸問題を抱えていますが、TYPICAはコーヒーを愛する全ての人々とともに、それらの諸問題を解決すると同時に、コミュニティが一丸となり、コーヒーの新しい歴史の始まりを担っていく決意を新たにしております。

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