喉から手が出るほど欲しかったクルマを手放した理由はお金じゃない! やっぱり人は身分相応なクルマに乗るべきか?

2024.08.05 17:20
この記事をまとめると
■筆者は当時ポルシェ911RS(964型)に憧れていた
■奇跡的に激レアモデルとの縁があり愛車にすることができた
■乗りこなすのに難儀しポルシェライフは長く続かなかった
当時の憧れだった911RSをゲット!
  クルマを手放す理由は人それぞれかと思いますが、筆者の場合「身分不相応」という悲しい結末を迎えたことがありました。不相応などという言葉は最近のリベラル派からは「個人の自由を尊重せよ」などとおりを受けそうですが、当時(昭和)の価値観からすれば、「悔しいけど仕方がない」てな着地。いずれにしろ、魂と代えてでも手に入れたかったクルマをゲット→手放すというのは悲しくて、悔しくて、どうにもやりきれないエピソードとなったのです。
  筆者の喉から手が100本くらい出ていたのがポルシェ911RS(1994)でした。ディーラー車はとうの昔に完売で、新古&中古もまったくなし。オーナーズクラブの先輩たちが真夜中のデニーズに颯爽と乗り付けるRSを指をくわえて眺めているだけだったのです。もっとも、当時の愛車は1989年モデルの911カレラ4で、それを下取りに出してもRSには到底及ばなかったかと。
  ちなみに、カレラ4も嫌いではなかったのですが、とにかくコーナリングが難しくて、筆者の腕前では「安全、だけど遅い」わけで、ボット教授直伝の「コーナー手前でシフトダウン、スリップアングルを使いながら曲がりなさい」がなかなか理解&実践できなかったのです。
  そんなモヤモヤしているころ、クラブの先輩からRSの出物があるとの連絡。お台場にあった並行車ディーラーA社へと、それこそ最高速チャレンジ並みのスピードで向かったのでした。で、入庫したてということでショールームの地下にあった倉庫でご対面。薄暗い倉庫の片隅に、うっすらとツェルマットシルバーの車体が見えたときに心拍数バク上がり(笑)。
※画像はイメージ
  このRSは当時のA社がマカオから仕入れたワンメイクレース仕様車でした。さる大金もちがマカオでRSだけのレースを開催しようと、バイザッハに20台をオーダーしたのですが、どういうわけかレースは開催されずにRSはすべてお蔵入りになったとのこと。それをA社がまとめて買い取ったのか、ディーラー車よりもずいぶんお買い得な値付けとなっていたのです。当然20台は瞬時に売り切れてしまい、目をつけていた筆者は悔しさに舌打ちのひとつも出ようというもの。
  ところで、ワンメイクレース仕様といってもノーマルRSとの違いはさほど多くはありませんでした。まずは室内に張り巡らされた6点式ロールケージが鋼材むき出しでなく、すべてレザーとパッドでトリミングされていました。ヘルメットをぶつけて傷ついたりすることがないので、たしかにマカオのお金もち好み(笑)。
  また、マットも薄手で軽量なものながら室内全体を覆っていて、これはこれでリッチな雰囲気。むろん、リヤのバルクにはRSの刺繍がなされ、これがボディカラーと対のコーディネートとなり(ツェルマットシルバーにはマゼンタでした)カッコいいのなんの!
  そして、このマカオものの愁眉は20台すべて色違いというポイント。となると、厳密にいえばマカオトリムのツェルマットシルバーRSは世界に1台ということになり、筆者は「大それた買い物かも」と膝が震え出したこと、昨日のように思い出すのです。
RSに乗せられてるような光景に落胆
  と、ここまで書くと「ははぁ、貧乏編集者が無理してポルシェ買って、車検代にも事欠いたに違いない」と察する方もいらっしゃるでしょう。が、憎たらしいことにお金が原因じゃないんです。幸い、こっそりやってたブローカー業務でもってRS買えるくらい、新品タイヤ買えるくらいの稼ぎはあったのですよ。
  身分不相応だと感じたのは、とにもかくにもサーキット走行をした際のこと。頭のなかではポール・フレール先生や名手ハンス・シュトゥック、はたまたステファン・ローザ的なカウンターステアばりばりの走りをイメージしていたものの、そんなアグレッシブさは微塵も発揮できず、グリップ走行をしたとしてもタイムが一向に伸びないのです。
※画像はイメージ
  周囲はすでに993RSがちらほら走っていたりなんかして、あるいは964ターボ2なんかもブイブイいわしてるわけで、世界に1台! なんて自慢だって走りの世界じゃめっきり通用するものじゃございません。こんなはずじゃなかった! と、歯ぎしりしたってコンマ1秒も縮まるわけじゃなし。レカロのバケットシートでうずくまり、涙のひとすじも流れようというもの。
  結局、プライドと後悔が「世界に1台」を上まわり、自分にとっては不相応だと判断。RSは下取りに消えていったのです。早めの決断が奏功したと思ったのは、手放してから数年後にサーキットイベントでそのRSに再会した際のこと。懐かしいツェルマットシルバーRSを眺めていると、ボンネットフードとバンパーのチリがほんのわずかに合っていません。よくよく見れば右フェンダーも板金塗装されたこともわかりました。そこで「あのまま無理して走らせてたら、オレが事故っていたかもしれない」と背筋が凍る思い。
  リベラル派がなんといおうと、クルマの世界には身分や応分という概念は厳然と存在するのです。悪いこたぁいいません、命あっての物種ですから、くれぐれも皆さまも背伸びした走りにはご用心、ご用心(笑)。
※写真のワインレッドの911RSは筆者が入手した車両の同型色違いの車両となります

あわせて読みたい

誰もが「ポルシェ」に憧れるのはナゼか? 基礎知識から人気モデル、中古相場まで徹底検証
e-Begin
【大阪】〈タグ・ホイヤー〉カレラの 体験型ポップアップイベント開催!
Safari Online
あなたの動画を自然に翻訳!「AI動画翻訳くん」とは?
antenna
3つの伝説が織りなすタイムピース タグ・ホイヤーとポルシェ、そしてカレラ・パナメリカーナ・メヒコ
PR TIMES
伝説のネーミング「RS」グレードも登場!ホンダ、「シビック」のマイナーチェンジを発表・9月13日発売
CARSMEET WEB
ブランド創立40周年記念「J&M デヴィッドソン」、マッキントッシュとコラボレーションした限定コート発売
PR TIMES Topics
歴史的勝利へのオマージュ。「ポルシェ718スパイダーRS パナメリカーナ・スペシャル」
CARSMEET WEB
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)淡く自然光の射し込むコックピット
RESENSE
「ポトン!」と落とす楽しさが味わえる新感覚の知育玩具発売
PR TIMES Topics
「赤坂のサニー」も「六本木のカローラ」も衝撃の品質! 1980年代のドイツ車は「オーバークオリティ」っぷりは突き抜けていた
WEB CARTOP
医師とレーシングドライバー、”二足のわらじ”!? 米国人ドクターの「情熱の共生」
CARSMEET WEB
ミルクの可能性を探究するスイーツブランド誕生
PR TIMES Topics
ホンダが「今あえてマニュアル車」にこだわる意味
東洋経済オンライン
話題のクルマを品定め!超絶ベストハンドリングカー! 〈ポルシェ〉911 カレラT
Safari Online
ロキソニンにまつわる素朴な疑問を薬の作り手が解決! 小さな錠剤に込められた想いとは
antenna
伝説のためのタイヤアップデート。「ポルシェ・カレラGT」のタイヤダイナミクスがさらに向上
CARSMEET WEB
【海外試乗】新開発のアクティブサスペンションにより実現した快適性とダイナミクスの絶対バランス「アウディ・RS e-tron GT」
CARSMEET WEB
わんちゃんと泊まれる都市型ホテル「ザ・スクエアホテル銀座」予約受付開始
PR TIMES Topics
ハリウッドのユニバーサル・スタジオでお祝い! ターボ誕生50周年の「ルフトカルト10」
CARSMEET WEB
セナ・シューマッハ・佐藤琢磨も優勝してF1へ! 東洋のモナコ「マカオGP」とは? 当時日本人最高位を達成したレーシングドライバーが語る!!
WEB CARTOP