シンガポールの自社ビル「The GEAR」がWELL認証の最高ランクを取得

鹿島

　鹿島（社長：天野裕正）が2023年8月にシンガポール共和国に開業した自社ビル「The GEAR」（Kajima Lab for Global Engineering, Architecture & Real Estate）が、WELL Building Standard(TM)（以下、WELL認証）の最高ランクであるプラチナを取得しました。

　WELL認証は、人の健康に焦点をあてて建物や街区の環境性能を評価する国際的な環境評価システムです。米国IWBI（International WELL Building Institute）が運営を担い、建物とその室内環境や運用において人の健康とウェルビーイング※1に影響を与える10の項目（空気、水、食物、光、運動、温熱快適性、音、材料、こころ、コミュニティ）を評価、そのレベルに応じてプラチナ、ゴールド、シルバーの認証を付与します。シンガポール共和国における最高ランク「プラチナ」の取得は2件目、新築建物では初となります。

※1 身体的、精神的に健康であり、かつ社会的、経済的にも満たされている状態のこと


　「The GEAR」は鹿島のアジア本社、R&Dセンター、イノベーションハブの3つの機能を併せ持つ建物です。スマートウェルネスオフィスを目指し、設計段階から利用者の快適性と建物の省エネルギー化の両立をテーマの一つとして取り組んできました。具体的な事例として、光や音、温熱環境に配慮したファサード設計、放射パネル※2とダクトレス空調を併用した省エネかつ快適性の高い空調システムの導入、AIを用いた人流解析による効率的な空調と照明制御、太陽光発電と屋上緑化の融合、雨水利用など、省エネや環境負荷の軽減に寄与する最新の技術を実装しています。

※2 天井、壁に金属製のパネル（放射パネル）を設置し、中に冷水や温水等を通すことで室温を快適に保つ空調方式。送風機を使用しないため、騒音が無く不快な気流を感じない

　加えて、シンガポール共和国が属する熱帯地域の気候特性を考慮しながら、建物内の半屋外空間をワークプレイスとして活用する「K／PARK」や「SKY GARDEN」を設置しました。自然通風とシーリングファンの組み合わせにより、空調機器を原則使用しない空間でありながら、快適で心地よいワークスペースを提供します。設計段階では気流や温熱環境シミュレーション技術を活用し、快適性の評価と設計の最適化を図りました。
　「K／PARK」は収納式のスライディングドアを使用することで屋外と区切られた閉鎖空間にもでき、気象条件などに応じた柔軟な施設運用が可能です。

　また、建物中央の「K／SHAFT」は直射光を制御しつつ自然光のみを取り入れる吹き抜け空間になっており、建物内部に変化をもたらすことで建物利用者に活力を与えます。内部に設けた階段は傾斜や段差を緩やかにすることで利用を促し、利用者のコミュニケーションを活性化する役割も果たしています。



　今回のWELL認証の取得にあたっては、これら利用者の環境に配慮した設計仕様に加えて、建物内50か所以上に設置した室内空気質センサーによる室内環境のモニタリングとIoTプラットフォームによるデータの見える化、さらには階段の利用促進、健康を重視した食品の提供、社員が参加できるエクササイズやジョギングなどのプログラム提供など、運用面での取組みも評価されました。

　「The GEAR」では、オープンイノベーションハブとしての機能を活用し、大学や民間企業とのコラボレーションにより、環境への負荷軽減ならびに快適で魅力的な空間の創出と実証に関する様々な取組みを進めています。今後、運用段階において、環境性能※3や利用者のウェルビーイングに関するデータを蓄積し施設の運営改善に活用していくとともに、環境性能と人の健康に配慮した空間の実現に関する研究開発や技術提案、事業開発を進めてまいります。

※3 環境負荷の少ない資機材を使用することに加え、建物内の快適性や景観への配慮を含めた総合的な建物の性能

（参考）
シンガポールにおける自社ビル「The GEAR」が開業
（2023年8月4日プレスリリース）

シンガポールThe GEAR建設工事記録映像（Youtube.com）