1人の大学生がルワンダのスラムで生まれ育ったアーティストと2人で創り上げるBizziとは。作品に込められた想い。現状から抜け出すためには。

2024.05.14 10:00
Bizzi(ビジー)は、2023年8月に慶應義塾大学の学生である藤井健人(以下、藤井)と当時ルワンダの首都キガリにあるスラムで暮らしていたBizimungu Olivier(以下、オリビエ)の2人で立ち上げました。主に、アーティストであるオリビエの作品・関連アイテムの販売を行う支援事業、アパレル事業を行なっています。どうして私たちは出会い、Bizziを始めることになったのか、これまでの道のりを振り返ります。
( 左:ビジムング・オリビエ 1999年生まれ24歳 右:藤井健人 2001年生まれ22歳 )
2人の出会い。勘違いさせてしまったことがきっかけで。
私たちは、2022年9月に私がルワンダを訪れた際に出会いました。私は、主に幼稚園で授業などを行うボランティア活動をしていましたが、それ以外に個人で日本から持参したさまざまな画材で現地の小中高生らと絵を描く活動をしていました。集まってくれた現地の子どもたちが初めて持った画材などで、ワイワイ楽しそうに描いている中、1人だけ真剣に描いている青年がいました、それが、オリビエでした。


オリビエは、10分ほどで1枚の虎の絵を描き上げ、それを見て「彼は絵が好きなんだろう」と思い、帰国日が近づいていたこともあって残っていた画材を全て彼に渡すことにしました。この時は、ただ単に「これで楽しんで!」というつもりで渡しただけでしたが、オリビエは私の帰国日に合わせて7枚の絵を見せにきました。私は、彼に何か勘違いをさせてしまって、ただの大学生の自分に何か期待してくれているのかと動揺したのと同時に、それらの絵が魅力的かつ彼の真っ直ぐな熱意に心打たれ、全て買い取ることを決め、帰国しました。それが、私たちの出会いでした。この時はまだ、彼のことは何も知りませんでした。
( 左下:画材を渡した時 真ん中:虎の絵 右上: 一緒に絵を描いた時)
なぜBizziを始めることになったのか。 壮絶な生い立ち。夢のため、家族のため。
私が帰国後も、オリビエはケータイを持っていませんでしたが、友人からスマホを借りてはFacebookのアカウントを使って連絡を取り合っていました。初めは他愛の無い会話ばかりでしたが、話をしていくうちに、オリビエの壮絶な生い立ち、生活の実情などを知るようになりました。幼い頃に父親が失踪。母親に仕事はなく、9人家族でスラムの小さな土壁の家で生活。唯一家族を支えていた母の姉が病死。明日の食料を確保することすらも困難な状況。低賃金の危険を伴う単発の仕事を探す日々。
(左:スラムにあったオリビエの家 右:オリビエの家族)


初めて聞いた時は、「そうだったのか、俺は恵まれているんだな」としか思うことができませんでした。そんな中でも、私たちは連絡を取り合い関係を深めていました。
ある時、彼の9人家族が1ヶ月で必要な金額を聞くことがありました。それを聞き、初めは自分では何もできないと思っていましたが、「それなら、何か少しでも助けになれるかもしれない」と思い、1人の友人として、彼のために動き始めることを決めました。


それから、単発的な支援ではなく、1つ職業として、彼自身が自分の力で継続して安定した生活をしていけるようになるためには、どうすればいいか考えました。
そこで、彼の夢である「アーティストとして、大好きな絵を描くことで生きていくこと」をも実現させるため、初めに1つのブランド " Bizzi " (ビジー)として、彼の作品をプリントしたアイテムを販売する形でスタートさせました。
立ち上げ当初、どのようにして約12,000km離れた2人で取り組んでいたのか。
日本とルワンダの距離は約12,000km。Bizziを進める上で、1番の問題であった連絡手段を解決するために、まずオリビエにスマホを買ってもらいました。スタート当初は、オリビエが紙切れとボールペンで描いた絵を写真で送ってもらい、それを私が編集・プリントする形でアイテムを製作していました。オリビエが暮らしている村は、ネット環境も不十分であるため、現在でもさまざまなことに時間を要します。
( 左:藤井とオリビエがビデオ通話している様子 右:オリビエがボールペンで描いている様子 )
1stアイテム「左の顔の見えない手は、この世の中を表している。そして、この女性は苦しい環境で生きる僕の周りに人々を指している。私たちは、この世の中、社会からどんなに理不尽で、どんなに傲慢なことをされようとも耐え続ける。なぜなら、私たちには夢、目標があるから。」
これまでの取り組みと現在。2度のクラウドファンディングと個展「 I'm here - アフリカの小さな村から 」の開催。
《 クラウドファンディング 》
私たちは、初めに資金調達を兼ねて、2度クラウドファンディングで製作したアイテムの販売を行いました。結果としては、総支援者数256名、総支援額1,844,000円を達成し、無事プロジェクトを進められるようになりました。
1st クラウドファンディング:
2nd クラウドファンディング:
《 画材寄付プロジェクト「 Colors for Olivier」 》
ルワンダでの画材は高価であるため、オリビエはそれまで画材を買うことができず、ノートや紙切れにボールペンで描いていました。そのため、私が用意する画材以外にも、応援してくださる方々の家で使わなくなった画材の寄付を募り、オリビエのもとに届けるプロジェクトを渡航前に実施しました。お礼として、Bizzi Online Storeにて使用できるクーポンをお渡しさせていただき、多くの方にご参加いただくことができました。
《 ルワンダ渡航 》
1度目のクラウドファンディング後、私は再度ルワンダへ渡航し、オリビエの生活・制作環境のサポートやPR用撮影などを行いました。滞在期間は、ビジムング家で衣食住を共にし、これまで知らなかった彼の一面を知ることができ、今後についても話し合いました。


PR用撮影には、オリビエと同じスラムで育ったフォトグラファー養成学校の生徒や友人らに協力してもらい、スラムや現在オリビエが暮らす村で撮影を行ないました。


ビジムング家は、2023年10月にそれまで暮らしていたスラムの家が本来建ててはいけない所にあったことで、政府から立ち退きを命じられ、首都キガリから離れたイヴィという村に移り住むことになりました。そこには、もちろん電気もガスも水道はなく、生活水を汲みにいくのにも片道40分かかります。
( 生活・製作風景 )
( PR用撮影 )
《 個展「 I'm here - アフリカの小さな村から 」》
ルワンダ渡航後、Bizziとして初めての個展「 I'm here - アフリカの小さな村から 」を2024年3月に東京・自由が丘 gallery yururiにて開催しました。オリビエが初めて自分の画材を手に入れ、描き上げた作品17点を中心に、僕らが出会う前にボールペンのみで描いた作品や彼の中学生時代のノートにペイントした作品などを展示しました。5日間で約110名の方にご来場いただき、展示作品のうち約8割が購入していただけました。
( オリビエの制作風景:家に電気がないため、懐中電灯を片手に持ち絵を描く。)
( 個展「 I'm here - アフリカの小さな村から 」の展示風景 )
Bizzi2回目となる個展「 Hope展 」の開催が決定。
そしてこの度、2度目の個展を開催することが決定しました。


ルワンダには、大きく分けて雨季と乾季があり、雨季の時期には、ゲリラ的に強烈な雨風に遭います。昨年11月、ビジムング家は村に移り住んで早々その豪雨に遭い、屋根が飛び、土壁の一部が崩れました。当時、オリビエは5点の作品が完成していましたが、4点は壊れてしまいました。そんな中、唯一生き残ったのがフライヤーの作品 " Hope " でした。今回の個展では、そのHopeが日本に届きます。


「 Hope展 」
開催日時:2024年8月24日(土)- 8月28日(水)|12:00 - 20:00
場所:Cloud Nine Gallery
〒158-0083 東京都世田谷区奥沢2-49-22(東急大井町線緑ヶ丘駅から徒歩1分)
入場料:無料
( 豪雨災害時の様子 )
( その他「 Hope展 」展示予定作品 左: Loneliness  右:Strength )
今後について。環境によって夢を諦めてしまっている様々な国のアーティストらと共に。
私は、彼の家で寝食を共にし、彼の知らなかった部分を垣間見ました。アートに対する愚直な姿勢、家族への想い。近隣の人たちへ見返りを求めない助け。口にはしないものの、それらを彼の行動の節々で確かに感じました。そんな彼を、1人の友人として尊敬しています。今後も、オリビエは絵を描き続け、私はルワンダと日本を行き来し、日本のより多くの方々に彼の作品を生で見ていただき、どんなに厳しい環境でも夢に向かって直向きに走り続けている彼からのメッセージを届けていきたいと思います。


そして、オリビエと共にBizziを作り上げ、環境や金銭面でアーティストという夢を諦めざるを得なくなってしまっている様々な国や地域の人をサポートし、そのアート・デザインが集まるブランドにしていきたいという目標ができました。そのために、今後もオリビエと二人三脚で精進していきます。
Bizzi
HP :
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Facebook :
Mail : bizzi.19990914@gmail.com

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