"徳川家康公ゆかりの産業を受け継ぐ一員として文化財保護に貢献したい" ―創業130年以上の鋳物屋による「金陀美具足」の再現秘話―

2024.03.11 09:00
#鋳物 #伝統工芸 #製作秘話
 静岡の鋳物(いもの)産業の発展に貢献すること130年以上。静岡県静岡市に本社を構える「栗田産業」は、2023年10月、地元・静岡にゆかりのある徳川家康公の甲冑「金陀美具足(きんだみぐそく)」を手の平サイズの鋳物で再現。実物の甲冑が保管されている同市「久能山東照宮」に売上金額の3割を寄付する取り組みを行いました。2023年はNHK大河ドラマ『どうする家康』が年間にわたって放送され、徳川家康公の歴史や静岡・愛知など地域の魅力がフィーチャーされた年。家康ブームをさらに盛り上げるプロダクトとして、多くの歴史ファンに注目されました。


 しかしながら、この取り組みは一過性のものではありません。「栗田産業」がこのプロジェクトに取り組んだ理由は、文化財保護に貢献するためでした。静岡のまちを鋳物で盛り上げてきた老舗鋳物屋の、地域に対する想いや製作ストーリーについてご紹介します。
●日常に寄り添い一生ものの鋳物製品を。栗田産業が手がける「しずおか鋳物」
 「栗田産業」の創業は1890年。鋳物によって地域産業の発展に尽力した創業者・重太郎の想いを受け継ぎ130年以上。現在はtoB向け工業製品に加え、しずおか鋳物「重太郎(JUTARO)」という一般向け商品を手がけています。


 時を遡れば江戸時代。静岡では盛んに鋳物づくりが行われていました。徳川家康公の隠居後・大御所時代ともなると、城下町である駿河の地で「駿河小判」とよばれる貨幣が鋳造されるほど。しずおか鋳物「重太郎」はそんな鋳物製品を身近に感じてもらうために"静岡らしさ"を表現。吟醸大国・静岡ならではの「ぐい呑み」や「ビアグラス」、ホビーのまち・静岡にちなんだ「ミニ四駆箸置き」など、日常に寄り添うかたちで、一生ものの鋳物製品をつくっています。
●400年経て現存する"金溜塗"の鎧。徳川家康公の甲冑「金陀美具足」
(金陀美具足 久能山東照宮蔵)


「金陀美具足(きんだみぐそく)」は徳川家康公が19歳のとき、桶狭間の戦い(1560年)の前哨戦で身に着けたとされる鎧です。表面全体が"金溜塗"と呼ばれる金箔押であしらわれているのが特徴。静岡市にある「久能山東照宮博物館」に国の重要文化財として所蔵されています。もともと江戸城に保管されていましたが、明治以降「久能山東照宮」に奉納され現在に至ります。こちらには、徳川家康公が使用した身の回りの道具から、武器・武具などの宝物が2000点以上収蔵されています。なかでも甲冑は初代・家康公から15代までの歴代将軍の甲冑を含む、計63領を完備。『どうする家康』にも登場した「金陀美具足」は、金溜塗・糸部分の修復など多くの手をかけながら、400年ものときを経て現存する、歴史的価値の非常に高い宝物といえます。
「鋳物と歴史的ご縁の深い静岡に貢献したい」徳川家康公の甲冑の再現への熱い想い
徳川家康公の甲冑の再現にあたっては「栗田産業」取締役副社長 栗田 圭(写真右端)の、静岡の歴史に対する熱い想いがありました。


栗田:「静岡の鋳物の歴史は徳川家康公お抱えの鋳物師によって発展し栄えました。地域性を持った自社ブランド[重太郎]の立ち上げ時から、そういった歴史文化や先人たちの取組みを埋もれさせず、当事者として背負い、本来静岡が持つ多様な一面を鋳物屋として発信し、地域のさらなる魅力づくりに貢献したいと考えていました。」


「久能山東照宮には江戸時代、駿府の鋳物師によって鋳造された「天水鉢」などが現存し、今も間近で見ることができます。数少ない歴史との接点として、当初はそういったもののミニチュアを鋳物でつくることを考えました。その後、宮司・姫岡氏に直接お話しする機会をいただき、取組みへのご理解をいただきました。その際に、400年前に創建された国宝社殿に加え、数々の重要文化財を受け継ぎ後世へ残す使命のこと。放っておけば朽ちてしまうものを、人の手で努力によって紡ぎ、数百年のときを越え現存していること。お話を伺うなかで、これまで現存していることが当たり前で考えたことすらなかった文化財の保護がどれだけ大変で大切か、どれだけたくさんの人の意志によって行われてきたのか、お金も時間も技術もすべて必要な、大変な取組みであることを知りました。」
文化財保護の莫大な費用、金陀美具足のペーパーウェイトで貢献
栗田:「国宝の久能山東照宮ではありますが、文化財保護に掛かる費用はすべて国から支給されるということではなく、自分たちで捻出しなければならないそうです。そのためにクラウドファンディングを含め、さまざまな取組みを行われています。当たり前ですが、文化財の保護には莫大な費用が掛かります。そして当時のつくり方によって補修されます。例えば、衣類などの補修に一切れ必要な場合でも、それだけ製造することはできないので、一反織ります。それも現代の規格品ではありませんから特注です。それらをつくる職人の技術と労力によって、わたしたちは現代において、中世日本でつくられたものを当時の姿で見て、知ることができています。しかもそれがひとつではありません。甲冑であれば63領、刀剣は40口、その他衣類や絵画など含め、総数2000点を超える歴代徳川将軍の文化財を久能山東照宮が守っています。実際に金陀美具足を修復したときには1000万円以上の金額がかかっているということで、すべての文化財の保護にどれだけ莫大な費用が必要か想像を絶します。そういう事実を知り、地域に住み、また、徳川家康公に所縁のある産業に取組む者として、何かできることがないかと考えました。」


・文化財を模った商品をつくりPRに役立てる
・商品代金の一部を文化財保護の為に寄付させていただく


この2つを目的に、地元の鋳物メーカーとして貢献すべくつくったのが、徳川家康公所用「金陀美具足」のペーパーウェイトでした。
関係者の協力を経て、金陀美具足を鋳物で緻密に再現
栗田:「金陀美具足を鋳物でつくるためにまず取組んだのが原型づくりです。金陀美具足は若き日の家康公が着用されていた実用的な甲冑で、余計な装飾のないシンプルなかたちをしています。久能山東照宮博物館で一目実物を見たとき、その金色の美しさはもちろんですが、それにも増して、その佇まいの美しさに目を奪われました。そこに存在している様(さま)が美しい。原型担当者と、この佇まいの美しさを再現しようと細部まで観察。紐の一本一本に至るまで、資料などと比較しながら忠実に原型をつくり込みました。その後、久能山東照宮博物館の学芸員の方にチェック・アドバイスをいただき、修正を重ね、原型が完成。それをもとに型取りして純錫を注ぎ鋳造を行いました。」


「金陀美具足は[金溜塗]という、金泥と透き漆による加工が施された美しい金色が特徴です。それを表現するため、今回、金箔押しと純金メッキ2種類の加工を行っています。金箔については石川県金沢市の[株式会社ゴールデンバロール]にて、縁付金箔と呼ばれる、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている伝統技術によってつくられた金箔を押しています。この縁付金箔は東照宮社殿の補修にも使われている、繋がりのある金箔です。このように原型師・鋳物職人・金箔職人の技術を集め、金陀美具足のかたちをした精巧なミニチュアができあがりました。」
想いはつながり「五月人形」へ。文化財で地域を活性化し後世へ繋ぐ
歴史や伝統技術に関わるさまざまな方たちの協力を得てかたちとなった、手のひらサイズの鋳物製「金陀美具足」。発売日当日は「久能山東照宮」にて奉納をさせていただき、無事、希望者のもとへ届けられるようになりました。そんなあるとき、この製品を見た方から「五月人形としてもよさそうね」という感想が。


 武将の身を守る鎧や兜を飾ることで、男児が病気・事故などの災厄に遭わず、力強く成長してくれること願う端午の節句。そして、天下統一を成し遂げ、平和の世を築き上げた徳川家康公。親和性のあるこの組み合わせを、地域の方のために実現しようと、「五月人形・金陀美具足(徳川家康公之鎧)」を新たにつくり上げました。五月人形らしい「金屏風」「立て札」「敷板」が雰囲気を盛り上げます。黄金の輝きで存在感抜群ながら、高さ15.5cm・幅20cm・奥行き13cmというコンパクトなサイズ。現代の暮らしに合わせた大きさとあって、こちらも親世代・祖父母世代から評価をいただくこととなりました。






・・・・・


 "徳川家康公ゆかりの鋳物産地・静岡の鋳物メーカーとしてPRし地域を盛り上げたい"という想いからはじまったこのプロジェクトでしたが、地域の文化財保護に貢献し、家康公の功績にあやかり日本の未来を背負う子どもたちの健やかな成長を願う取組みへと昇華しました。


栗田:「久能山東照宮の方々からさまざまな学びをいただくことで、地域のみならず日本の宝とも言える重要文化財保護のための取組みに結実できたことは、個人的にも企業としても大変ありがたいことだと思います。弊社の取組みが、商品として購入いただいた方々にはもちろんですが、文化財を後世に繋ぐことに少しでも貢献できるよう、益々邁進し、本当の意味で地域を盛り上げ、繋ぐ活動にしていければと思います。」








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 ※期間限定


関連サイト



本件に関するお問合せ先
栗田産業株式会社
広報担当:栗田
TEL:054-282-0644(代)
FAX:054-282-0645
受付時間 平日9:00-17:00(祝祭日はお休み)
info@kuritasangyoh.co.jp

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